一人会社とは、自分が社長・株主である「一人で株式会社を経営している会社」のことです。
一人会社の株主総会は実質的には「一人で議事録を作成する」作業なので、みなし決議・報告という制度を使えば株主総会の開催は省略できます。
ただし、株主総会の開催は省略できても、報告として議事録は残さなければなりません。
この記事では、一人会社の株主総会と議事録の書き方をひな形付きで解説します。
このページの目次
一人会社とは、たった一人が株主・取締役(社長)・従業員である「自分一人で株式会社を経営している会社」を指します。
一人会社でも「株式会社」である以上は、大企業と同じように会社法施行規則72条に従って、定時株主総会の開催が義務です。
全て一人なので面倒と思っても、年1回の定時株主総会を開催をして「決算報告」を行い、議事録を作成・保管をしないと法律違反になります。
定時株主総会 |
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臨時株主総会 |
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一人会社の株主総会も、開催の手順は、複数の株主参加の場合と変わりません。
1、招集通知を出します
2、招集通知で指定した日時と場所で株主総会を開催します
3、議事録を作成し、保管して終了です
一人会社の株主総会は、招集通知を自分宛てに発送して、決めた日時に一人で株主総会と称して、一人で議事録を作成して終わりです。
複数の株主がいる場合は、報告以外にも、会社に関する話し合いと多数決による承認が発生しますが、一人会社は「株主全員の同意=自分一人」となるため、議事録に記載すれば可決です。
つまり、「株主総会開催時間=議事録作成時間」なので、時間はかかりません。
一人会社の株主総会は、「みなし決議・報告(書面決議・書面報告)」という制度を利用すれば開催を省略できます。
みなし決議・報告とは、株主総会を実際に開かなくても、書面上で決議と報告があったとする制度です。
「事前に株主全員の同意があるなら、株主総会を開催しなくてもいい、事業報告も書面やメールで十分」という考えから、株主が少人数だったり、株主との関係が良好な企業がこの制度を活用しています。
一人会社の株主総会を「みなし決議・報告」にすると、「招集通知」「日時・場所を指定した株主総会の開催」「開催した株主総会での報告」が省略され、議事録作成だけになります。
細かい手順が省略され、議事録作成だけが正式な株主総会となるのがメリットです。
一人会社の株主総会を「みなし決議・報告」とするには、「今後の株主総会はみなし決議・報告とする」と記載した株主総会の議事録を作成するだけです。
一人会社は「株主全員の同意=自分一人」となるため、議事録に記載するだけで認められたことになり、実行できます。なお、通常の株主総会開催に戻す場合も一人株主の場合は「みなし決議・報告ではなく、株主総会の開催に戻します」と議事録に明記すれば戻せます。
みなし決議・報告を決定した事が明記された議事録は、10年間保管します。
一人会社の株主総会を省略して、みなし議決・報告にしても「議事録の作成作業」は発生します。
みなし決議・報告は「株主総会の開催を省略」であって、定時株主総会に該当する報告は必要なので「何もしなくていい」わけではありません。
一人会社であっても、株式会社である以上は「会社で決めた事」の証拠として議事録は必要です
第●●回 定時株主総会議事録
会議名:第●●回定時株主総会
日 時: ●●年●●月●●日●●時●●分~●●時●●分
場 所:【開催場所】
出席者:【代表取締役社長(自分の名前)】(議長兼議事録作成者)
第1号議案: 第●●期決算報告書の承認に関する件
当期(自令和●●年●●月●●日至同●●年●●月●●日)における事業状況を下記書類を提出して事業報告をした。
1、貸借対照表
2、損益計算書
3、株主資本等変動計算書
4、個別注記表
第2号議案:今後の株主総会開催についての承認に関する件
令和●●年●●月●●日以降の株主総会は原則「書面決議・書面報告」とする。ただし、●●●●をする場合は別途通知・開催を行う。
第3号議案:●●●●の承認に関する件
●●●●●●は、●●●●●●。
第1号議案、第2号議案、第3号議案、全ての議案が承認可決した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長,出席取締役がこれに記名する。
令和●●年●●月●●日
●●株式会社 第●●回定時株主総会
【代表取締役社長(自分の名前)】
一人会社の株主総会の議事録には、下記の6点が分かるように記載します。
会議名:第●●回定時株主総会
日 時: ●●年●●月●●日●●時●●分~●●時●●分
場 所:【開催場所】
議事録の最初の項目として株主総会の開催された日付と場所を記入します。
出席者:【代表取締役社長(自分の名前)】(議長兼議事録作成者)
第1号議案: 第●●期決算報告書の承認に関する件
当期(自令和●●年●●月●●日至同●●年●●月●●日)における事業状況を下記書類を提出して事業報告をした。
1、貸借対照表
2、損益計算書
3、株主資本等変動計算書
4、個別注記表
第2号議案:今後の株主総会開催についての承認に関する件
令和●●年●●月●●日以降の株主総会は原則「書面決議・書面報告」とする。ただし、●●●●をする場合は別途通知・開催を行う。
第3号議案:●●●●の承認に関する件
●●●●●●は、●●●●●●。
第1号議案、第2号議案、第3号議案、全ての議案が意義なく承認可決した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長,出席取締役がこれに記名する。
株主総会の議事の内容を記載します。議案がいくつかある場合は「第1号議案」「第2号議案」と議案ごとに分けます。
一人会社の場合は、他の株主からの意見はないのでこの部分は省略されます。
複数の株主が参加する一般的な株主総会では、株主側から意見や発言がある場合があるので、その内容の概要も株主総会の議事録には記載します。
出席者:【代表取締役社長(自分の名前)】(議長兼議事録作成者)
一人会社の場合は、議長も議事録作成者も同じ人物なので一行にまとめて構いません。
一般的な会社の株主総会では出席取締役に複数の名前が記載され、監査役が参加すればその監査役の氏名も記載されます。
一人会社の場合は、議長も議事録作成者も同じ人物なので、「4:出席した役員名」のように一行にまとめて構いません。
一人会社の場合は、議長も議事録作成者も同じ人物なので、「4:出席した役員名」のように一行にまとめて構いません。
一人会社の株主総会の議事録に押印は不要です。もともと、株主総会の議事録に押印の法的な義務はありません。
多くの株主総会の議事録に押印があるのは、議事録の内容に参加者が納得している事を担保するためなので、一人会社の場合は省略します。
例外として、定款の変更など登記に関わる議事録は、押印をして法務局へ提出しなければなりません。議事録内容によって押印する・しないを変えるのが不安という場合は、一律で「押印する」を選びましょう。
一人会社の議事録は、10年間の保管が必要です。会社法318条により、株主総会議事録は、本店では株主総会の日から10年、支店ではその写しを5年保管することが義務づけられています。
10年間劣化や紛失せずに保管するのは、特に一人会社の場合、文書管理システムなどのツールを使って、電子化してしまった方が効率的です。
文書管理システムとは、文書や記録情報の保管から活用、廃棄までの一元管理を、コンピューター上で電子化して行うサービスのことです。
文書管理システムに関する詳細は、以下からご確認頂けます。
株主総会の議事録は、書面でもデータ保管でも法的効力は変わりません。ただし、確認が求められたときにプリントアウトできる状態で保管する事が望ましいとされています。
書面の場合は、Wordなどを利用してデータで作成し、プリントアウトして保管するのがいいでしょう。
議事録の書面はなく原本も含めデータ保管の場合は、電子契約システムなどデータ文書に特化したシステムで作成・保管する事をお勧めします。
議事録は堅苦しい言い回しのイメージがありますが、内容に差異がなく誰が読んでも分かる文章であれば細かい規定はありません。難しく考えずに手間をかけずに作成しましょう。
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画像出典元:クラウドサインSCAN 公式HP
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一人会社の株主総会の議事録をひな形付きで解説をしました。
株主総会はみなし決議・報告の手続きを行えば、省略することが出来ます。
ただし、株主総会は省略できても、議事録の省略はできません。
一人で会社運営する以上は、株主総会や議事録については正しく理解しましょう。