最近、社外取締役ってよく耳にしますが、具体的にどのような役割を果たしているのか知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、社内の取締役との違い、役割や任期、どんな経歴の人が向いているのか、気になる報酬などを分かりやすく解説していきます。
また「社外取締役」と一緒に目にする「コーポレート・ガバナンス」の意味なども併せて理解しましょう!
このページの目次
社外取締役とは、書いて字のごとく、社外にいる会社の取締役のことです。
主に、上場している大企業において導入が進んでおり、経営者が大株主であることの多いベンチャー企業や中小企業では導入があまり進んでいません。
社内から昇格した取締役との違いは、内部のしがらみや利害関係を持たず、社外から客観的に会社の経営状況を見て、意見することができる立場であることです。
社外取締役について調べると、まず目にするのが「コーポレート・ガバナンス」。
「企業統治」という意味で、会社が法令を守り、不正行為や暴走をしないよう監視しする仕組み(体制)のことです。
企業は、会社は経営者ものではなく、投資している株主のものであるという考えが根本にあります。
要は『会社や従業員は企業価値の向上に努めてくださいね。株主には利益を還元してくださいね。その為に監視してますからね。』という、仕組みです。この中心を担うのが、社外取締役です。
特にバブル崩壊以降、粉飾決算など相次ぐ企業の経営不祥事から、株主からコーポレート・ガバナンスの強化を求める声も多く上がっており、上場企業では、社外取締役を最低2名を置くことが義務付けられています。
では、詳しく仕事内容を解説していきましょう。
まず、企業の経営方針は、取締役が集結する取締役会で決定されます。
上場している企業であれば、取締役会は3ヶ月に一度以上設置されています。
もちろん、社外取締役もこれに出席します。遠方に住んでいたり、やむを得ない事情で出席できない場合はスカイプなどのテレビ会議や電話会議での出席も可能です。
この他、株主総会や経営状況の報告や会議などの特別案件がある際も、出欠を調整し、社外取締役としての務めを果たします。
取締役会では、外部からの客観的な視点で経営方針を判断し、企業(社長)に対し、意見やアドバイスをしていきます。もちろん、事前に配布される資料を理解しておく必要があります。
企業(社長)も時には迷うこともありますし、間違えることもあります。
その際に、企業(社長)とは利害関係のない社外取締役が、客観的に感じる事を意見し、企業(社長)が間違った方向に舵を切らぬよう軌道修正して行くことが重要です。
この会社と株主の関係や企業への監視がうまくいっていれば、上記で説明したコーポレート・ガバナンスが保たれていると言えます。
社外取締役は兼務する事が可能です。
複数の企業の社外取締役を掛け持ちするのも可能ですし、自身で起業している方、副業禁止規定の問題もありますが、他の企業で会社員として働いている方でも可能です。
実際、社外取締役として、一部の優秀な有識者に依頼が集中する傾向があるので、兼務している方が多数います。
兼務している数で有名なのが、社外取締役のプロと揶揄される夏野剛氏です。夏野氏は十数社の社外取締役を兼任する他、ドワンゴで代表取締役も務めています。
ただ、兼務社数が多いと、本来社外取締役に期待されている経営監視の役割が果たせないのでは?という懸念もあり、自社の活動に専念してもらう為、兼務を制限する企業も増えているようです。
また掛け持ちする際には注意しなければいけないことがあります。次の章で解説していきます。
社外取締役は通常の取締役と同じく、会社に対する義務を負います。これを理解していないと、思いがけないところで多大な賠償責任を負うこともあります。
中でも、特に重要な義務が競業避止義務で、掛け持ちのときも注意すべき事項となります。
社外取締役を務めているA社と競合するB社との取引や就職、または自分で競合会社を立ち上げるなどし、A社に損害が生じた場合、損害賠償義務を負います。
A社で得た知識や情報を他の会社に流したり、その知識や情報を元に自ら起業したりしてはいけないという義務です。
仮に、競合企業と取引が生じる場合は、事前に取締役会または株主総会で、その内容を開示して承認を得る必要があります。
社外取締役の掛け持ちをする際はもちろんですが、前会社を退職後でも、退職時に競業避止義務の誓約書をサインをする場合もあります。
自分自身の経歴や現在の役職などを考慮し、就任できるか検討する事が大切です。
また、オファーする側も相手の競合企業との関わりを良く調べる必要がありますし、就任の際には秘密保持条項が含まれた契約を締結するなど、対策をしましょう。
主に上場企業を中心に導入されている社外取締役ですが、株式で資金調達をし、上場を目指すベンチャー企業でこそ、社外取締役の真価が発揮されるといえます。
なぜなら、ベンチャーの社外取締役こそ株主の代表として、経営陣と投資家の利害を一致させ、企業価値の向上を目指すという役割を果たすからです。
ベンチャーの社外取締役は、その会社に投資しているベンチャーキャピタルなどから派遣されることが多いです。
ベンチャーキャピタルは株式の値上がり、すなわち企業価値の向上によって利益を得るわけですから、当然社外取締役は企業価値向上のために株主の代表としてアドバイスを意見を言うことになります。
社外取締役は、単なる外部アドバイザーのように捉えられることも多いですが、このように株主の代表として、経営陣と投資家の利害を一致させる役割を持つのが社外取締役の本来の意義なのです。
2018年4月末時点に東証一部に上場する企業の社外取締役が、平均で663万円/年の報酬を受けていることが、朝日新聞と東京商工リサーチの調査で分かりました。
中でも高額なのは日立製作所で、その報酬は3,944万円。次いで岩谷産業が3,900万円、住友不動産は3,225万円でした。複数の企業の社外取締役を掛け持ちし、合計の報酬が5千万円を超える人もいます。
ちなみに、報酬以外の福利厚生などは無く、必要に応じて旅費やタクシー(ハイヤー)代が出る程度です。
社外取締役の導入の進んでいないベンチャー企業や中小企業では、経験や経歴の為に、無報酬で引き受けている人もいます。
客観的な視点で経営状況を監視する必要がある為、企業(社長)と利害関係が無い人でなければいけません。
上記が、社外取締役として認められる要件です。
詳細は法務省の資料を参考にしてください。
要件を満たせば、原則誰でもなれるわけですが、的確なアドバイスをするには、やはり業種は問わず、経営者や元経営者が適任ですし、企業からのオファーも多くあります。
また、企業の経営力を高めて行くには法律や財務などの専門知識を持った、弁護士や会計士、税理士も適任といえます。
また、女性の有識者は人気です。男性とは違った多様な視点から物事を観察する事も期待でき、役員に女性がいることで外部からの評価も高まるので、会社の株式価値を高める為にも企業が女性に積極的にオファーをしています。
ただ、務まる女性が少ない為、同じ女性にオファーが殺到しているのが現状です。
最近では、社外取締役が『おいしい仕事』として、官僚や日銀などのOBの天下り先としてメディアで話題に上ることも増えましたが、その分、過去に起こった巨額損失隠しの「オリンパス事件」をはじめ、不適切会計処理問題の「東芝事件」、マンションの杭打ち工事関連の「旭化成事件」などの不祥事から、社外取締役の機能や適性を問われ、求められる責任も重くなりました。
平均的な任期は1~2年で更新という企業が多いです。
心構えの基本は、社外取締役を引き受けた以上は、その企業を好きになることです。
その企業を本気で応援し、経営陣の一人とし、本気で経営に参画します。
企業価値の最大化の為に務め、一般株主の代表者として、利益を代弁する役割であることを忘れてはいけません。
時には、企業(社長)に対して嫌な事を言わなければいけないですが、企業を思うからこその意見なので、面と向かって意見し、議論していく強さも必要となります。
社外取締役は客観的な目で会社の経営を判断し、アドバイスする言わば、ご意見番的な存在です。
企業にとって口うるさく面倒くさい存在と思われそうですが、指摘される側には、視野が広がるなどのメリットもあります。
上場した企業が主に導入している社外取締役ですが、経営レベルを上げる為にもベンチャー企業でこそ導入すべきという声も多くあがっています。
今後、更に一般化していくのではないでしょうか。
画像出典元:Pixabay
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