「ポテンシャル採用」とは、将来的な成長が期待できる人材を採用する手法です。
スキルよりも、やる気や熱意、ビジョンを重視します。
本記事では、大手企業も注目するポテンシャル採用のメリット・デメリット、成功のポイント、そして具体的な導入事例を解説します。
ポテンシャル採用に興味のある採用担当者の方は必見です。
このページの目次
ポテンシャル採用とは、専門的な知識や経験、スキルを問わず、求職者の人柄や資質、可能性を含めた潜在能力を重視した採用手法です。
近年、大手企業がポテンシャル採用の導入を始めたこともあり、若手人材の獲得に積極的な多くの企業が導入しました。
特にIT業界やエンジニアなどの採用枠を増やしたい企業が多く導入していて、素質のある人材確保のために採用の間口を広げています。
ポテンシャル採用は主に新卒や第二新卒など、20代半ばの求職者を対象に行われていますが、厳密に何歳までという決まりはありません。
ポテンシャル採用と中途採用の違いは、「即戦力となるスキルや経験を保有しているかどうか」です。
中途採用とポテンシャル採用は、採用の目的や、企業が求める人材像によって使い分けられます。
では、中途採用とポテンシャル採用の違いをより具体的に見ていきましょう。
中途採用は、主に欠員の補充や新規部署の立ち上げなど、特定の場所で活躍できる人材を確保したいときに導入します。
入社後すぐに、ある程度の業務を任せたい場合には中途採用が有効です。
ポテンシャル採用は、特定のポジションに縛られず、会社のさまざまな分野で活躍できる可能性がある人材を採用したいときに導入します。
入社後は、長期的な視点で人材育成に取り組み、企業の将来を担う人材へと成長させます。
中途採用 | ポテンシャル採用 | |
採用対象者 | 社会人経験者・転職経験者 | 社会人未経験者・若手・キャリアチェンジ希望者 |
採用の目的 | 即戦力の確保 | 将来的な中核メンバーの育成 |
重視する点 | 経験・スキル・実績 | 資質・意欲・適性 |
求める人材像 | すぐに活躍できる人材 | 育成して戦力にしたい人材 |
入社後の期待 | 既存の業務をスムーズに遂行 | 新しいアイデアや価値を生み出す |
ポテンシャル採用を行うメリットは、これまでの採用手法では得られなかった優秀な人材の確保や企業の発展が見込まれることです。
ここでは企業が得られるメリットの中でも、特に大きなメリットを4つ紹介します。
ポテンシャル採用では中途採用と同じく、基本的なビジネスマナーを習得している人材が採用できる可能性が高いです。
新卒の場合、業務を覚えてもらうよりもまず電話の受け方や名刺の渡し方など、基本的なビジネスマナーを身につける必要があります。
その点、一度就職した経験のある若い人材を採用できれば、ビジネスマナー研修の費用や時間が削減でき、いち早く即戦力としての育成ができるでしょう。
本人の考え方や人柄を重視して採用するポテンシャル採用は、幹部候補生となり得る人材を採用できる可能性があります。
企業に就職したことのある若手人材は、基本的なビジネスマナーやセルフマネジメントスキルが高い傾向も。
まだ前職での凝り固まった考え等もないため、柔軟性と吸収力を持ち合わせている可能性も高いです。
スキルを重視した中途採用よりも、ポテンシャル採用のほうが企業の理念を素直に吸収できる幹部候補生を見つけやすいといえます。
ポテンシャル採用は、明確なキャリアプランを持っていたり、スキルを磨いてさらに成長したいといった高い意欲を持った人材を採用しやすいです。
モチベーションの高い若手人材は、自分の目標や適正に合った企業で働きたいと考えています。
新卒で大手企業に就職後、自分の積極性を生かすためにベンチャー企業へ転職する若手人材も少なくありません。
第二新卒や中途採用と同じく、ポテンシャル採用は他業界・他職種の経験を持った人材を採用できるため、ダイバーシティ化が期待できます。
全く違う業界経験や考え方を持っている人材を採用できれば、これまでの経験を生かして斬新なアイデアやイノベーションが生まれるかもしれません。
ポテンシャル採用は組織の柔軟性を保つためにも、企業の発展を勢いづけるためにも有力な採用方法といえます。
企業の若返りや幹部候補生の採用など、企業にとって多くのメリットがあるポテンシャル採用ですが、デメリットももちろん存在します。
ここでポテンシャル採用を行うことで発生するデメリットを3つ確認していきましょう。
スキルを重視した中途採用に比べ、ポテンシャル採用で獲得した人材は育成コストがかかります。
基本的なビジネスマナーが身についていても、即戦力となってもらうためには、専門知識やスキルを少なからず補足する必要があるでしょう。
スキルの高い人材をポテンシャル採用できる可能性もありますが、可能性としてはそう高くありません。
自社の状況に合わせて、スキル重視の採用をするのか、将来性の高い人材を育成するのか検討する必要があります。
ポテンシャル採用の場合、早期離職のリスクも見逃せません。
一度転職した経験がある人材は転職への抵抗がないことも多く、入社後にミスマッチを感じると離職してしまう可能性も。
特に同期のいないポテンシャル採用は、新卒採用と比べて孤独感を感じやすくなる懸念もあります。
若手人材を定着させるためにも、志望動機や前職の退職理由については詳しく確認しておきましょう。
将来性を感じてポテンシャル採用をしても、思っていたより伸びが感じられない可能性もあります。
中途採用ならスキルや実績でパフォーマンスレベルがわかりますが、ポテンシャル採用は手厚いサポートや教育体制を整えても、活躍できる保障はないのです。
ポテンシャル採用は見極めが難しい可能性も含め、リファレンスチェックなど書類選考や面談以外の判断材料を増やすといいでしょう。
応募者のポテンシャルを見極めるには、スキルや経験だけでなく、その人が持つ「伸びしろ」や「やる気」を評価することが重要です。
目には見えないポテンシャルの見極め方を3つ紹介します。
ポテンシャル採用では、経験よりも、新しい知識やスキルを吸収し、成長しようとする意欲を重視します。
常に新しい知識やスキルを習得しようとする意欲があるか、過去のエピソードを交えてもらうなど、具体的に尋ねましょう。
たとえば、エンジニアのような技術系の職種を希望している人材の場合は、新しいスキルを習得するためにどのような努力をしてきたか、過去の学習経験を尋ねるとよいでしょう。
また、将来どのようなスキルを身につけたいのか、どのようなキャリアを築きたいのかを尋ねることで、意欲の高さを判断できます。
退職の理由をただ聞くだけでなく、その理由に至った経緯や、その経験から何を学んだのかまで掘り下げることで、応募者の性格や考え方などを把握できます。
また、「もし同じような状況になったらどうしますか?」と尋ねれば、応募者の問題解決能力を判断できます。
さらに、退職の理由を踏まえ、なぜ当社に興味を持ったのか、どのように貢献したいのかを尋ねることで、意欲の高さを確認できます。
自社の社風に応募者がマッチしていなければ、適切な育成ができずに苦戦する可能性や、早期離職につながるリスクがあります。
面接では、過去の経験やエピソードを通して、応募者の価値観を探り、企業の価値観との共通点を見つけるようにしましょう。
また、ミスマッチを防ぐためには、自社の雰囲気や求める人物像が伝わる発信を心がけることが大切です。
自社のHPや求人サイトだけでは、自社の雰囲気をなかなか伝えられない場合は、LINEやXなど、SNSでの情報発信もおすすめです。
ここでポテンシャル採用を導入している企業を4社紹介します。
ヤフー株式会社は2016年10月から新卒一括採用を廃止し、30歳以下の通年ポテンシャル採用を導入しました。
新卒や既卒、第二新卒など経歴を問わず選考時期も通年です。
海外留学や博士号取得などで4月入社の選考には間に合わない学生も、選考チャンスが得られます。
エイベックス株式会社は社会人歴4年未満であれば、学歴問わず選考を行うポテンシャル採用を導入しています。
何度でもチャレンジ可能なオープンポジション採用なので、経歴やスキルに変化があれば再度応募でき、夢を諦めたくない人にはもってこいです。
株式会社コロプラも2021年4月より、新卒一括採用から通年ポテンシャル採用に切り替えています。
28歳以下ならいつでも応募が可能で、入社時期も応募者の希望に合わせて調整できる自由度の高い採用が特徴です。
※3年以上の就業経験がある場合はポテンシャル採用ではなく、キャリア(中途)採用での募集になります。
株式会社サイボウズは、「新卒」「キャリア(中途)」「ポテンシャル採用」の3つの採用方法を導入しています。
ポテンシャル採用では、キャリア採用の要件を満たしていない、IT業界に興味がある・チャレンジしてみたい方が対象です。
年齢制限がないので、30代の方でもIT業界やサイボウズに興味があれば選考チャンスが得られる体制になっています。
ポテンシャル採用は、若手を積極的に採用したい企業に適した手法です。
すぐに即戦力とはいかなくても、将来の自社を担う多種多様な人材を採用できるメリットがあります。
時期を特定しないポテンシャル採用により、企業の採用活動が分散される効果も。
大手企業も導入しているポテンシャル採用は、今後さらに多くの企業に浸透していくでしょう。
画像出典元:写真AC、O-DAN
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