労務管理と勤怠管理の違いは、業務範囲にあります。
労務管理は従業員の雇用や福利厚生、コンプライアンスなどの幅広い管理を指し、勤怠管理は労働時間や休暇を正確に記録・管理する業務です。
本記事では、労務管理と勤怠管理の違いをわかりやすく解説し、システム導入によるメリットや注意点を詳しく解説します。
このページの目次
まずは労務管理と勤怠管理の違いについて解説します。
労務管理は、法律に基づいた職場ルールを整備し、従業員が働きやすい環境を構築することです。
労務管理の難しさは、常に流動的で、その都度対応していく業務が多い点にあります。
具体的には、法改正や労務トラブルへの対応、就業規則の改善など、知識や情報収集が重要になる業務です。
勤怠管理は労務管理で定められたルールに基づき、従業員の労働時間を正しく管理することです。
現行の法律では、勤務時間の上限・残業時間、有給休暇の取得の管理は企業側の義務になっています。
また、勤怠管理は従業員の給与計算や健康管理にも密接に関わっており、労務管理の基礎となる重要な業務です。
労務管理と勤怠管理は、どちらも組織の健全性を保つために欠かせない重要な業務です。
ここでは、労務管理と勤怠管理、それぞれの重要性について解説します。
労務管理の目的は、従業員が安心して働ける環境を整えることにありますが、企業の成長・発展に欠かせない取り組みでもあります。
労務管理を実施し、給与の適正化や職場環境の改善によって従業員が働きやすくなれば、業務効率やモチベーションが向上し、企業の生産性は高まります。
また、労働に関する法令の管理や福利厚生などの諸手続きを滞りなく進めることで、法令違反による罰則や社会的信用の低下といったリスクを回避することが可能です。
勤怠管理の目的は、労働時間を適切に把握し、従業員の健康と権利を守ることにあります。
また労働基準法でも、従業員の勤怠管理を行うことは、企業の義務であり責任でもあると定められています。
特に、長時間におよぶ残業や休日出勤は、従業員の心身の健康状態に悪影響を及ぼし、過労死や自殺につながる深刻な問題です。
また、労働時間が適切に管理できていないと、給与を正しく支払うことができず、未払いトラブルを引き起こす危険もあります。
さらに、ずさんな勤怠管理が明るみになれば、ブラック企業の烙印を押され、社会的な信用を失うリスクも大きいです。
労務管理の業務では、具体的に以下のような業務を行います。
労務管理の業務の基礎となるのが、就業規則の整備です。
法律の基準をクリアし、企業に合わせた働き方のルールを整備する事が目的です。
企業の拡大や働き方の多様化、発生したトラブルを踏まえての変更など、その都度変更と改定を繰り返し、従業員の働く環境を整備していきます。
就業規則の改定を従業員へ周知するのも労務管理の仕事です。
労務管理が行う「労働時間の把握」は、勤務管理の側面だけでなく、給与計算や従業員の健康管理の面からも重要な業務です。
打刻の正確さや勤務管理の業務改善などの「労働時間の把握」の監督が労務管理の業務になります。
労務管理には、従業員が就業時間内でケガや病気になった時の対応窓口です。
労災が発生した時の状況調査や賠償金など、慎重な対応が求められる業務ですが、法律に照らし合わせて対応しなければなりません。
セクハラやパワハラなどの各ハラスメント対応や未払い・労働時間の超過などの労務トラブルも労務管理の担当業務です。
労務管理担当者は、トラブルを未然に防ぐ事と発生してしまったトラブルの対応を解決する事、2つが重要な業務です。
労務管理は、労働基準監督署や従業員・退職者からなど様々な企業のトラブルの窓口と調査を担当することも業務です。
コンプライアンスの意識を高く持ち、対応する事が求められます。
勤怠管理では、従業員ごとの労働状況を正しく把握するために、以下の管理を行います。
勤怠管理の中心は、勤務開始時間と勤務終了時間、休憩時間から算出される勤務時間の管理です。
労働基準法などが改正され、今では客観的な記録に基づいて勤務時間は管理しなければなりません。
以前のような従業員の自己申告制には、管理する側の調査が必要となっていますので、勤怠管理システムのような客観性を持った管理体制が必要です。
さらに、労働時間・残業時間の管理は給与支払にも関わるため正確性が求められます。
従業員に有給休暇取得を周知するのも勤怠管理の業務です。
現在は働き方改革に関する法律の影響で、従業員によっては年間5日以上の有給休暇を取得させる必要があります。
有給の付与日数は従業員ごとに異なることが多々ありますので、各々の付与日数がわかるように管理しなくてはなりません。
先に述べた通り、労務管理にはさまざまな業務があり、アナログな方法で行うのは効率が悪く、ヒューマンエラーも起こりがちです。
また、法改正の対応といった観点からも労務管理システムの導入がおすすめです。
ここでは、労務管理システムのメリットと注意点について解説します。
労務管理システムでは、従業員の勤怠状況・給与・社会保険・福利厚生などの情報を一元管理できます。
検索機能で必要な情報にすばやくアクセスでき、見直し・更新の手間を削減することが可能です。
また、変更が必要な従業員の情報のみを抽出した一括変更が可能で、入力ミスや漏れなどのヒューマンエラーを防止できます。
労務管理システムを導入すれば、従業員に手続き情報や個人情報を入力してもらい、自動で書類を作成できるため、担当者の負担を大幅に削減することが可能です。
また、クラウド型システムならオフィスにいなくても必要な情報にすぐにアクセス可能で、忙しい従業員でも効率的に作業できます。
多くの労務管理システムが電子申請に対応しており、役所に足を運ばずともボタンひとつで書類を提出できます。
また、最新の法改正にもタイムリーに対応しているため、コンプライアンスの強化にもつながります。
労務管理システムを導入する際は、従業員にもシステムの使い方や利用に関するルールを周知する必要があります。
従業員がシステムを正しく利用できなければ、管理者の負担が増え、業務効率化からもかけ離れてしまいます。
労務管理システムがスムーズに浸透するには、システム導入に関する説明会やフローの整備といった導入前の準備が重要です。
労務管理業務の情報には、従業員の個人情報や給与情報などが含まれているため、セキュリティ対策をしっかり行う必要があります。
システムを選ぶ際は、アクセス制御やデータの暗号化、不正ログイン対策などの主要なセキュリティ機能が備わっているか確認しましょう。
また、クラウド型システムの場合は、セキュリティのアップデート頻度やサポート体制をチェックすることも大切です。
勤怠管理システム は、従業員の出退勤の時間や労働時間、休暇の取得状況などの記録・管理に特化したシステムです。
対応している各種の労務管理システムとも連携して使うことができます。
ここからは、勤怠管理システムを導入するメリットと注意点について解説します。
勤怠管理システムを活用すれば、従業員の出勤・退勤時刻、休憩時間、残業時間などをリアルタイムで記録・管理でき、労働時間の正確な把握が可能になります。
また、長時間労働や休日出勤が多い従業員を自動で検出する機能を備えたシステムもあり、過重労働を未然に防ぐことができます。
アナログな方法での勤怠管理は、法改正がなされた際に対応しきれず、気づかないうちに労働基準法に違反していたという事態にもなりかねません。
法改正によるバージョンアップに適応しているシステムを導入すれば、法令を遵守した勤怠管理が可能です。
システムを導入すれば、出退勤データの入力や修正、給与計算用データの作成といった勤怠管理業務を自動化でき、担当者の負担を大幅に軽減することが可能です。
また、フレックスタイム制やテレワークのような多様な働き方に対しても、個別設定で簡単に労働時間を集計できます。
勤怠管理システムの導入には、初期費用や月額利用料、研修やマニュアル作成のコストも考慮しなければなりません。
また、「自社の勤務体系に合うか」「社員が使いやすいシステムか」「サポート体制は充実しているか」などを事前にチェックすると、導入がスムーズになり、無駄なコストを抑えられます。
勤怠管理システムは、さまざまなメリットはあるものの、利益に直結するものではないため、必要性を理解してもらえないこともあります。
しかし、勤怠管理システムを導入後に、勤怠データの集計にかかる時間や人数が削減されていれば、業務の効率化が上がっていると考えられます。
また、従業員の有給取得率や労働時間の削減率が向上していれば、費用対効果が高いと判断できます。
労務管理と勤怠管理の違いについてまとめました。
勤怠管理は労務管理の一部であり、労働時間の管理に特化しているのに対し、労務管理は従業員が安心して働けるように労働条件や労働環境を整備することを目的としたより広範囲な業務です。
どちらの業務にも、正確な情報管理、労働関連法令の知識、そして現状の課題や改善点を見つけていく姿勢が求められます。
しかし、担当者がすべてを人力で管理するには限界があります。
労務管理システムや勤怠管理システムを活用し、従業員が安心して働ける環境を整え、企業の生産性向上につなげましょう。
画像出典元:Burst
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