労務費とは円滑な経営を行うために、しっかりと把握しておかねばならない費用です。
人件費とも混同されやすく、どういった費用を指すのかあやふやになっている方も多いのではないでしょうか。
今回は具体的な労務費の解説、人件費との違い、労務費に分けられる5つの費用など、労務費についてわかりやすくまとめました。
労務費の計算方法についてもご紹介しますので、これから経理に携わる方はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
労務費とは「製品の生産に必要な原価」のことを指し、人件費の1つにあたります。
製品を製造するために要した人件費や手当、社会保険など従業員の賃金以外にもさまざまな費用が含まれています。
労務費は製品を生産するために使用した労働力を指しますが、一般的に考えられている人件費とは異なります。
人件費は大きく分けて3つに分かれていて、会計処理上労務費は人件費の一部に含まれます。
労務費 | 製造・生産に使用された費用 |
販売費 | 製品を販売するために使用された費用 |
一般管理費 | 総務や経理など社内業務に従事する費用 |
労務費とは簡単に言うと「製品を生産するために必要な労働コスト」を指し、製造原価として定められています。サービス業や小売店では基本的に労務費は発生しません。
労務費の計算は、製品を生産するためにかかった費用の「直接労務費」、直接労務費に含まれない「間接労務費」の2種類を使用して計算されます。
直接労務費とは「製品を直接生産するためにかかった人件費」を指します。
具体的には以下の2つが該当します。
直接労務費の内訳は、製品の組み立てや加工などを行う従業員に支払い賃金がほとんどです。また製品を修繕するなど間接な作業を担当する従業員の賃金は、直接労務費ではなく間接労務費に該当するので、計算時は注意しましょう。
間接労務費とは「直接労務費に含まれていない製品を生産するためにかかった費用」を指します。
直接労務費よりも該当する項目が多く計算が複雑になりますが、代表的な間接労務費を挙げると以下の通りです。
製品の生産に関わる福利費や手当なども間接労務費です。また停電や部品の調達不調によって作業ができない間の手待賃金、運搬に関わった人件費や現場監督の給与も間接労務費に含まれます。
労務費にはさらに細かく5つの分類があります。
労務費の計算において把握しておかねばならないポイントなので、ここでしっかりと確認しておきましょう。
労務費用の内訳について詳しくご紹介します。
製品の生産に関わる正社員、契約社員、派遣社員の給与です。
残業や休日出勤の割増賃金も含まれます。この賃金は、月給制の従業員のみが該当します。
雑給とは、アルバイトやパートタイムなど時給制の従業員に支払う給与を指します。
賃金と同様、残業などの割増賃金も雑給に含まれます。
従業員に支払われる賞与や通勤手当、家族手当など各種手当ても労務費に含まれます。
残業手当は、賃金または雑給に含まれるため計上の際は注意しましょう。
退職給付費用とは、製造部門に在籍している従業員の退職金支払いに備え、積み立てる費用を指します。
他部門の退職金積立は、労務費として認められません。
労務費の5つ目を法定福利費と言い、健康保険や厚生年金など企業が負担する社会保険料を指します。
雇用保険や労災保険も該当し、こちらも退職金積立同様に、製造部門に在籍している従業員の分だけが計上されます。
画像出典元:厚生労働省|令和3年度の労災保険料率について
また労務費率についても忘れてはなりません。労務費率とは具体的に「請負金額に対する、賃金総額の割合」のことを指し、労災保険料を算出する際に用いられます。
製造業や建築業では労災保険の加入は必須とされているため、労務費率への理解は事業を行う上でとても重要になります。
一般的な労災保険料の算出は、次の計算方法は適用されます。
賃金総額 × 労災保険率 = 労災保険料
しかし1・2次請けの多い建設事業や製造業などは、事業に対して正確な人数や賃金総額の算定が困難です。そのため厚生労働省が、事業内容によって労務費率を定めています。
労務費率を用いた計算方法は次の通りです。
請負金額 × 労務費率 × 労災保険率 = 労災保険料
労務費率は3年ごとに見直しされるため、労災保険料を算出する際は料率が変更されていないか確認を忘れずにしましょう。
労務費を詳しく解説してきましたが、労務費の計算は、直接労務費と間接労務費で算出方法が異なります。
直接労務費を算出するためには、直接製造に関わっている従業員の給与と作業時間から賃率を割り出さなければなりません。
複数の製品を製造している従業員が多いため、1つの製造にかかる直接労務費の計算には賃率の算出が必要です。
賃率の算出方法は以下の通りです。
賃率 = 生産に関わる従業員の給与 ÷ 製造に直接関わっている作業時間
また賃率を用いた直接労務費の計算方法はこちら。
直接労務費 = 賃率 × 製品製造にかかる時間
従業員は一般的に、直接作業以外にも修繕などの間接作業も行っています。正確な直接労務費を計算するためには、1つの製品を製造する作業時間を把握しておくことが必要です。
間接労務費は間接作業に関わった従業員への給与や、各種手当など、直接労務費以外にかかった金額を加算していくだけで算出できます。
該当する項目は複雑ですが、直接労務費が算出できていれば、間接労務費が算出しきれていない場合も計算が可能です。
間接労務費 = 労務費 - 直接労務費 or かかった間接労務費を合計する
自社の経理システムや体制によって、どちらの計算方法が合うか確認してみてもいいでしょう。
労務管理は複雑な計算が多く、特に工数の見積もり、把握は困難になりやすいでしょう。特に経理担当が少ない企業であれば、より多くの手間と人材コストがかかります。
そこで必要な情報を入力すれば、自動で計算、管理してくれる労務管理システムの導入がおすすめです。
労務管理システムは工数管理や原価管理も行えるシステムもあり、自社に合ったものを選べば従来の労務管理作業を大幅に軽減できます。
労務管理システムによって搭載されている機能が異なるので、自社に必要な機能を検討してみてもいいでしょう。
細かい労務費の把握は、より高い利益を得るために必要です。
人件費との違いを理解し、正しい労務費管理ができれば、不要な製造コストを下げられるかもしれません。
今回の記事をまとめると以下の通りです。
適切な労務管理を行うためには、労務費の内訳や計算方法を理解しておかねばなりません。
特に直接労務費の算出は複雑なので、賃率や製品ごとにかかる製造時間など必要な情報は事前に確認しておきましょう。
また少ない手間でも簡単に労務管理ができる労務管理システムの導入も、ぜひ検討してみてください。
画像出典元:写真AC
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