労務管理とは?意味や目的・業務内容・課題を解説

労務管理とは?意味や目的・業務内容・課題を解説

記事更新日: 2025/02/27

執筆: 編集部

労務管理とは、従業員の従業員の労働に関するさまざまな事項を管理する業務のことです。

適切な労務管理は、生産性の向上や企業の安定した成長にもつながります。

本記事では、労務管理の基本的な意味や目的、具体的な業務内容、直面しやすい課題について詳しく解説します。

労務管理をしっかりと行い、企業の地盤をつくりましょう。

労務管理とは?

労務管理とは、従業員の雇用や労働環境を適切に維持するために、従業員の労働に関する全般を管理することです。

ここでは、労務管理の基本的な役割や人事管理との違いについて解説します。

労務管理の主な目的

労務管理の主な目的は、「生産性の向上」と「コンプライアンス強化によるリスク回避」です。

適切な労務管理によって従業員が安心して働ける環境が整えば、従業員のモチベーションは高まり、離職率の低下や生産性の向上につながります。

また、労務管理を徹底し、労働基準法や労働安全衛生法などの法令を順守すれば、労務リスクを未然に防ぐことが可能です。

特に、労働時間の適正な管理は、従業員の権利を守るだけでなく、企業の信頼性向上にもつながります。

労務管理と人事管理との違いとは?

労務管理と人事管理の違いは企業によってさまざまですが、一般的には次のような違いがあります。

労務管理は、従業員の労働に関するあらゆる管理を行い、組織を整備・運用することが主な役割です。組織全体を管理する側面があります。

一方、人材の成長・組織の発展を目的とし、人材採用や人事評価、育成を行い、従業員一人ひとりの能力・適性を伸ばすことにフォーカスしているのが「人事管理」です。

労務管理の具体的な業務内容

ここでは、労務管理の具体的な8つの業務について解説します。

労務管理への理解が深まるので、ぜひ参考にしてください。

  • 法定三帳簿の作成・管理
  • 勤怠管理
  • 給与計算
  • 雇用契約書・労働条件通知書作成と管理
  • 労働保険・社会保険の手続き(法定福利厚生)
  • 就業規則、各協定等の整備
  • 安全衛生管理
  • 働きやすい職場環境の形成(ハラスメント対策も含む)

法定三帳簿の作成・管理

法定三帳簿とは、労働基準法で企業に作成・保存が義務づけられている帳簿のことです。

具体的には、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿(またはタイムカード)」の3つが該当します。

これらの帳簿は、税務調査や労働基準監督署の監査の際に必要となるため、適切な管理が求められます。

勤怠管理

主に労働時間の管理です。

出勤状況(遅刻・早退・欠席等)の把握から、有給休暇の管理、残業時間の管理等が含まれます。

給与計算

勤怠管理を基にした、毎月の給与計算です。

所得税・住民税を特別徴収している会社は、毎年12月には年末調整も行います。

雇用契約書・労働条件通知書作成と管理

従業員を雇用する際には、「労働条件通知書」を交付する義務があります(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条4項)。

「雇用契約書」には法律上の作成義務がありませんが、適切に作成しなければ、労使間でトラブルが発生する可能性があります。

労働保険・社会保険の手続き(法定福利厚生)

各種保険の加入条件に応じて、従業員の取得・喪失手続き、保険料納付の手続きを行います。

また、従業員のライフイベントに応じて、育児休業給付金の申請や、傷病手当金の支給申請等の各手続きを行います。

就業規則、各協定等の整備

1つの事業場の従業員人数が10人以上になったら、就業規則の作成・届け出義務があります。

注意するべきは、企業単位ではなく、「事業場単位」という点です。

例えばA社全体では50人いて、本社(20人所属)の他に、B支店(15人所属)、C支店(15人所属)がある場合、就業規則はそれぞれの事業場の管轄である監督署へ、それぞれ届け出しなくてはいけません。

本社と同じ内容だから、本社の1つが届け出していればいいかというと、そうではないのです。都度、内容を改訂する場合は、3つとも届け出し直す必要があります。

また必要に応じて、各協定の作成・届け出もしなくてはなりません。残業をする場合の36協定が有名です。

協定の種類と書式は、厚生労働省のHPから確認できます。

先に述べました「労働条件通知書」や「法定三帳簿」も、ここからひな形をダウンロードできます。

安全衛生管理

法定の健康診断やストレスチェックの実施はここに含まれます。

これ以外にも、常日頃から会社には従業員の安全配慮義務がありますので、労災の起きないような職場環境の整備や、安全大会の開催、作業手順の周知・声かけ等、様々な安全衛生の管理が求められます。

 働きやすい職場環境の形成(ハラスメント対策も含む)

2020年6月から、大企業ではパワハラ防止のための措置が義務づけられました(中小企業は2022年4月から)。

以前からパワハラ以外にもセクハラ・マタハラ等の各ハラスメントへの対策は望まれていましたが、これにより、明確にハラスメントの防止と、起きてしまった時の適切な対処が企業に義務づけられました。

常日頃から相談窓口をしっかりと機能させることと、従業員への教育・啓発活動の実施が必要です。

退職の手続き

従業員が退職すると各種保険の喪失手続き以外に、退職証明書や源泉徴収票の発行、退職金制度のある会社では退職金の支払い等を行います。

年末調整の計算と法定調書作成

給与や報酬などを支払った場合は、「給与所得の源泉徴収票」「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」「退職所得の源泉徴収票」といった法定調書の作成が必要です。

年末調整で計算した給与や所得税の計算結果を記載し、原則として翌年の1月31日までに税務署に提出しなければなりません。

労務管理の課題と注意点

ここでは、労務管理が抱える課題と注意点を解説します。

コンプライアンスの強化

労務管理において最も重要な課題の一つが、コンプライアンスの強化です。

労働基準法や労働安全衛生法、育児・介護休業法など、企業が順守すべき法律は多岐にわたります。

これらの法令を正しく理解し、適切に運用しなければ、未払賃金の発生やハラスメント問題に発展し、法的リスクが高まる恐れがあります。

労務管理システムや専門家への相談を活用し、コンプライアンス違反を未然に防ぐことが重要です。

多様な勤務体系への対応

働き方改革やコロナウィルスの蔓延によって、時短勤務やフレックスタイム制度、在宅勤務、テレワーク等、新しい働き方が一般化しつつあります。

人口が減少するこれからの日本で、従来の日本型雇用システムや雇用の慣習に固執し続けるのは、もはや時代錯誤です。

従業員や社会のニーズに柔軟に対応して、トライアンドエラーを繰り返しながら、労務管理の方法を「自社仕様に」変化できる会社が生き残れると考えます。

 

副業・早期転職・独立など働き方への理解

近年、終身雇用、年功序列等の日本型雇用システムが崩壊しつつあります。

副業・兼業等の解禁は、従業員とその家族の生活を企業が守り続けることが当たり前ではなくなったともいえます。

若い社員の中には、これらの動きを敏感にキャッチして、早期に独立を考える方や、身につけたいスキルを、ほかの会社で得ようと前向きに転職をする方も珍しくありません。

労使のお互いが、契約内容の履行、守秘義務等、しかるべき「義務」を果たしたうえで、さまざまな働き方や考え方があるという「権利」への理解は深めた方がよいでしょう。

個人情報の適切な管理

労務管理は、従業員の個人情報を取り扱う必要がある業務です。

万が一、従業員のマイナンバーを書き写した紙や給与明細書の紛失が起きた場合、労務担当者の責任が問われるうえ、企業の社会的信用の失墜は免れません。

労務管理をデジタル化する場合は、セキュリティ性が高い労務管理システムを導入することが重要です。

計算・手続き上のミスの防止

労務管理では、ミスが許されない業務が多いため、正確な処理が求められます。

例えば、給与計算のミスは、従業員からの信頼を失うだけでなく、法令違反で労働基準監督署から指導を受けることもあります。

また、社会保険や税務手続きのミスは、修正や再申請の手続き、延滞税などが発生する事態となるため、確実に処理する必要があります。

ミスを防ぐためには、システムを活用した業務の標準化を検討しましょう。

労務担当者に必要なスキル・資格

労務管理の業務は、労務管理システムの普及により、昔ほど専門的なスキルは求められなくなりました。

しかし、法改正への対応やミスが許されない業務が多いため、基礎的な知識や正確性が求められます。

ここでは、企業のコンプライアンス強化や働きやすい環境づくりに貢献するため、労務担当者に必要なスキル・資格について解説します。

1. 都度変化する法律の知識を取り入れ、実務に対応するスキル

「労務管理は生もの」です。

労働関係の法律は、都度改正していますし、労働環境を取り巻く情勢も、刻々と変化しています。

労務管理担当者は、常に法改正の知識をブラッシュアップする必要がありますし、ニュースで労働問題や人々の関心がどこにあるか等、最新の情報を知っているべきです。

化石のように凝り固まってしまっては、目の前の新しい事象に対処できません。柔軟で向学心のある方の方が向いている業務かもしれません。

2. 細やかな配慮や、秘密厳守、法令等がきちんと守れること

労務管理で扱っているものは、あくまで「人」です。

会社としてのしくみや制度をつくったり、画一的な手続きを行ったりしていると、その向こうにある「人」の存在が薄れがちになりますが、「人の心」があることを意識して業務にあたるべきです。

例えば、私傷病等で休業する従業員がいるとします。その方は自分の病名を公表してほしくない可能性もあります。

会社のルールだ、決まり事だからと、機械のような対応をしていると、時に労務管理担当者として機能しなくなることもあります。

相手の立場に立った、適切な配慮ができる方がいいでしょう。

また、重要な従業員の個人情報や、毎月の給与額等を知れる立場でもあるため、言うまでもないですが、秘密厳守が求められます。

従業員に啓発活動や安全衛生研修等を行う場面もあるかと思いますので、率先して法令遵守(コンプライアンス)の意識を持ち、お手本となるような行動ができることも必要です。

3. 持っておいた方が良い資格:社会保険労務士

労働基準法をはじめとした、労働関係の法律の知識に長けていた方が、やはり実務的にも向いています。

労務関係の国家資格である「社会保険労務士(社労士)」の資格があると、社内外で一目置かれるでしょう。

また、社労士にしかできない独占業務があるので、その意味でもとても有力な国家資格です。

先に述べました、「労務管理に必須の知識」が網羅されているのが「社労士」の勉強範囲です。近年は合格率の低い難関資格ですが、取得できたら自身の強みとなります。

労務管理システムを導入するメリット

労務管理システムの導入は、人的ミスを防ぎ、コンプライアンスの強化にもつながります。

労務管理システムを導入すると得られる主なメリットを3つ紹介します。

  • 業務の大幅な時間短縮ができる
  • 人件費の抑制や、人材の効果的配置ができる
  • 誰もがその業務を担えるようになる(リスク回避)

 

1. 業務の大幅な時間短縮ができる

従来の勤怠管理や給与計算には、タイムカード等の紙での集計や、会社保存用のために、エクセル等へデータを再入力するといったような、手作業で行うことによる「業務のムダ」が発生していることが多いです。

その点、労務管理システムを導入すると、業務の自動化・効率化が図れますので、業務の大幅な時間短縮が期待できます。

昨今の働き方改革で、労働時間の削減は必須ですので、その動きともマッチします。

2. 人件費の抑制や、人材の効果的配置ができる

従来の作業を、給与締日から給与支払日までの短期間で行うには、それ相応の人員を確保する必要がありました。

また、多少労務管理部門に残業させても、全従業員の生活費である給与は、必ず期日に間に合わせなければならず、割増賃金もある程度は発生していることが多いと思います。

その点が、システムの導入で作業時間の短縮ができると、ひいては残業時間の短縮にもつながり、人件費の抑制に繋がります。

また、場合によっては、時間が余った労務管理部門の人員を、労働力が不足している他部署へ応援・異動等ができたり、部署内の他の業務の遂行にあてたりといったような、限られた人材を、効率的・効果的に用いることができるようにもなります。

3. 誰もがその業務を担えるようになる(リスク回避)

働き方改革の1つである、有給休暇の取得義務や、残業時間の削減をきちんと会社として達成するためには「その人でしか、できない業務」はなるべくない方がいいでしょう。

もちろん、マイナンバーの関係など、そもそも取り扱うことのできる担当者が限られているということはありますが、可能な限り誰もができる状態にしておくべきです。

リスクを回避する意味でも、労務管理システムは情報を一元管理でき、広く会社で共有できるので、おすすめです。

労務管理システムによっては、自動作成した書類をそのままe-Gov(イーガブ)へ電子申請できるものもあります。

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まとめ

労務管理は、従業員が気持ちよく、本来のマンパワーを発揮して働くためには「要となる業務」です。

最近はさらにシステムが便利になっていますので、安全なツールを活用しながら、効率的に業務を行い、人しかできない業務にこそ、本来の労力をあてられるといいですね。

労務管理システムについて、他社サービスも比較したいという方は以下の記事もご参照ください。

画像出典元:Pixabay、Pexels

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