企業が人を採用する際にかかる採用コスト。
より少ない費用で質の高い人材を採用するためには、採用コストの本質や効果的な採用方法を理解する必要があります。
今回は、採用コストを考える上で押さえたい基礎知識とデータ、採用コストを節約、削減するためのポイントについて見ていきましょう。
これを読めば採用コストの意味や考え方、より確実な採用コストの削減方法について理解できますよ!
このページの目次
採用コストはその名の通り、企業が人材を「採用」する際にかかる費用全般を指す言葉です。
そもそも会社が人を採用するには、採用担当者の人件費や応募者への交通費、広告求人への掲載費など様々な費用がかかります。
まずは、そんな採用コストの基礎知識について見ていきましょう。
採用コストは主に「外部コスト」と「内部コスト」に分けられます。まずは、これらの意味について整理しましょう。
採用活動を行う自社「以外」に支払われるコストが「外部コスト」です。より自分の会社を多くの人に知ってもらうため、採用活動では様々な他社のサービスを活用します。
ぱっとイメージできるのは「求人広告費」ですが、以下のような費用も外部コストの1つです。
採用活動を行う自社内、そして応募者に支払われるコストが「内部コスト」です。
採用活動では、社員だけでなく内定の決まっていない応募者に対しても様々なコストがかかります。その例を以下にまとめました。
※「内定者へのSNS支給費」は、支給先=内定者ですが支払先=SNS会社(他社)のため外部コストと考えられます。
では、それぞれの採用コストはどのように算出するのでしょうか。
採用コストは一般的に「総額」と「採用者1人当たりの額」が算出されます。
「総額」はシンプルに「外部コスト+内部コスト」で算出できますが、「採用者1人当たりの額」を計算する場合、式は以下の通りです。
【外部コスト + 内部コスト】 ÷ 採用人数 = 1人当たりの採用コスト
しかし、ここで1点注意したいことがあります。
外部コストは「何にいくらかかったのか」はっきりしている一方、「採用担当者の人件費」など一部の内部コストは数字をはっきり出せない場合があるという点です。
というのも採用活動において、同じ採用課の社員でも面接担当人数や稼働時間、業務内容など、その実情はそれぞれ異なってきます。
それらを明確に数値化することは難しいので、働いた時間をもとに時給換算でコストを決めるなどの工夫が必要です。
ここまでで、採用コストの基礎知識について確認しました。続いては上記の知識を踏まえて、今実際に提供されている採用コストにまつわるデータをチェックしましょう。
社会では採用活動に今どのくらい費用をかけているのか、その規模感のイメージを掴む為の参考にしてみてください。
まずは、企業が採用活動にかけるコスト総額の平均を確認しましょう。コスト総額のため、1人当たりでなく1社あたりのコストである点に注意が必要です。
新卒採用の採用コスト総額は、全会社と大企業・中小企業に分けたデータをまとめました。
全会社の総額平均 | 557.9万円 |
大企業(上場企業) | 1,783.9万円 |
中小企業(非上場企業) | 375.1万円 |
出典:『2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』(PDF)
いわゆる「大企業」にかかる採用コストと「中小企業」にかかる採用コストでは、会社の規模や予算から規模感が変わってきます。
そのためこのデータを見る際は、今回のように「総額」だけでなく会社の規模感ごとに分けたデータもチェックすることが大切です。
では、中途採用を行う企業ではどのくらい採用コストがかかっているのでしょうか。こちらは、企業の社員数により分けられたデータが見つかりました。
300名以上の企業 | 1290万円 |
60~299名の企業 | 397万円 |
60名未満の企業 | 209万円 |
300名以上になったとたん、採用コストがグッと伸びていますね。
中途採用の場合「広告掲載費」が高い傾向にあるため、外部費用がかさんでいる可能性はあります。また、中途採用では価値の高い専門職を採用することも多いため、それに伴うコスト増加は無視できない要素の1つです。
続いては、労働者1人当たりにかかる採用コストを見ていきましょう。「新卒採用」と「中途採用」、そして「アルバイト・パート採用」にデータを分けてまとめました。
新卒採用にかかる1人当たりの採用コストは、全会社・大企業・中小企業ごとのデータがありました。
全会社の総額平均 | 48万円 |
大企業(上場企業) | 45.6万円 |
中小企業(非上場企業) | 48.4万円 |
出典:『2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』(PDF)
総額では分かりにくい部分でしたが、こうして見るとそんなに金額が開いていません。だからこそ、金銭的規模が小さい企業の方が採用活動による負担は大きいとも言えますね。
中途採用についてはデータが少々足りない部分もあるため、分かる範囲で紹介していきます。1人当たりの採用コストの平均と、各業界ごとの平均データを持ってきました。
1人当たりの採用コスト全体平均 | 39.2万円 | |
業 界 |
IT・通信 | 39.8万円 |
製造・メーカー | 112.4万円 | |
サービス・レジャー | 26.6万円 | |
流通・フード | 26.5万円 | |
金融・保険 | 39.4万円 | |
建築・土木 | 46.2万円 | |
運輸・流通 | 109.2万円 | |
医療・福祉 | 122.7万円 | |
広告・デザイン | 39.8万円 |
出典:『マイナビニュース 2014年中途採用状況総括』、マイナビ『中途採用状況調査』(2018)
業界ごとに振れ幅がありますが、こちらは広告掲載費の影響を受けているものと考えられます。以下に参考として、職種ごとの1人当たりの広告掲載費データを持ってきました。
専門職の広告掲載費は高い傾向にあり、その金額もかなり差がついていることが分かるかと思います。この外部コストによる影響が、各業界に出ているようです。
最後は、アルバイト・パート採用にかかる1人当たりの採用コストを見ていきましょう。
こちらも少々データが少なく、『株式会社ツナグ・ソリューションズ アルバイト・パート1名の採用コストは4年で1.7倍上昇! 人材確保のポイントは「応募時の対応」。』の2014年データにて、1人当たりの採用単価は5.2万円とされていました。
アルバイトやパートでも採用にお金がかかるの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしアルバイトやパートでも広告掲載費はかかりますし、求人掲載サイトのお祝い金制度や人件費など、細々としたところでも採用コストは発生しているんです。
各データで、大まかな採用コストの規模感はつかめたでしょうか。採用活動1つを取っても、様々な部分で費用がかかっています。
採用コストを抑えつつ質の高い人材を確保するには、ただやみくもにコストカットを意識すればいいわけではありません。
最後は、採用コストをより効果的に抑える方法を「内部コスト」「外部コスト」に分けてご紹介します。
どちらかと言うと「外部コスト」の方が抑えるのは簡単ですので、その点も踏まえてぜひ、できそうなことから試してみてください。
まずは、先ほど取り上げた外部コストの一覧を改めて確認しましょう。
外部コストは内部コストに比べ、ちょっとした工夫で確実にコストを削減できます。ここでは、いくつかその例を持ってきました。
リファラル採用は別名「紹介採用」とも言われる採用形式です。現在自社で働く社員の知人や友人、親族などに会社を紹介し、うまく希望が合えば採用する手法を指します。
この形式なら「情報掲載サイト、広告、採用代行サービス費」を削減しつつ、職場をよく知る社員が人材を集めるため「ミスマッチによる離職」も減少します。
ちなみにリファラル採用では通常、紹介の成功した社員にインセンティブが発生します。
そのため内部コストが増える結果にはなりますが、リファラル採用のインセンティブは数万円から数10万円のところ、有料広告サイトなどでは費用を年収から割合で算出するため100数万に至ることもあるため、差を考えるとリファラル採用の方がコスパが良いと言えるでしょう。
自社で採用ページや採用サイトを作り、「広告掲載費」を減らす方法もおすすめです。
企業から有益な情報の載った採用サイトが出ていれば、応募者もそのサイトを使って応募やお問い合わせをしてくれます。
もし採用サイトや採用ページを作るのであれば、以下のような応募者にとってためになる情報を載せましょう。
また、作成したページをマイナビなどの求人掲載サイトと併用しても構いませんし、SNSと連動して運用するのも効果的です。
「どんな人材を求めているか」「その職場がどんな環境なのか」伝わるよう、TwitterやInstagramなどでも情報を積極的に発信しましょう。
求人掲載サイトそのものを変えてしまうのも、手っ取り早い採用コスト削減方法の1つです。
ハローワークや、Indeed・求人ボックス・Googleしごと検索などの無料検索サイトを活用してもいいでしょう。
ただし、無料の求人掲載サイトは有料サイトと比べて求人が埋もれやすいというデメリットがあります。また専門職の場合、専門サイトと比較して質の高い求職者の割合が下がります。
そのため無料の求人掲載サイトは、状況をよく見て活用することが大切です。複数の求人掲載サイトを活用している場合は、部分的に無料へ移行しても良いかもしれません。
続いては、内部コストの削減方法です。こちらも、先ほどの一覧を持ってきました。
上記を見ていただくと分かるように、内部コストは思い切ってカットするにはリスクを感じる項目ばかりです。
応募者や内定者に行うフォローの質を落とせば応募者減少や内定辞退に繋がりますし、社員の給与もすぐに変えられるものではありません。
だからこそ、以下の3点から業務効率化を図るのがおすすめです。
採用活動におけるマニュアルを整備することで、業務効率化を図りましょう。社員のストレスも減りますし、一旦マニュアルを整えてしまえばその後の改善過程にも役立ちます。
マニュアル整備と繋がる部分もありますが、選考プロセスを見直すのも効果的な方法の1つです。面接の回数や一次試験の形態などを確認し、より効率的な方法がないか探してみてください。
採用管理システムを導入することで、業務効率はグンと向上します。選考に伴う手間や時間の削減は勿論ですが、応募者の状況・進捗把握や求める人材像の明確化なども行えるので、無駄な調整や確認作業を各段に減らすことが出来ます。
採用管理システムについては下記記事を参考にしてください。
採用コストの意味や種類、その削減方法について実際のデータと一緒にご紹介しました。
採用コストの削減方法は色々ありますが、コストを削減したことで採用者の質が落ちてしまっては元も子もありません。
コストと質のバランスに注意しつつ、より効果的な採用プロセスを組み立てていってみてください。
画像出典元:o-dan
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