AI技術の発展とともに、ここ数年で音声認識システムがどんどん進化しています。
ビジネスシーンでも効率化や生産性の向上が期待できますが、システムによって精度や価格に違いがあるため、製品選びが重要です。
このページの目次
システム選びに入る前に、まずは音声認識システムの基本について理解しておきましょう。
音声認識システムとは、人間の発した言葉や声をテキストデータに変換して出力する仕組みを指します。
身近な例でいえば、スマートフォンやホームスピーカーに搭載されているSiri、Alexaなども音声認識技術を活用しています。
技術自体は古くからありますが、ここ10年ほどでAI技術の発展とともに認識精度が高まり、ビジネスや日常生活でも十分実用に耐えるレベルにまで進化しました。
すでにコールセンターや議事録作成などで活用されていますが、これからさらに用途が広がって、私たちの生活を変える可能性を秘めています。
続いて、音声認識システムがビジネスで役立つシーンをさらに具体的に見てみましょう。
音声認識と聞いて真っ先に思い浮かぶ用途が議事録の作成ではないでしょうか。
従来の会議では書記の役割にひとり必要でしたが、音声認識システムを使えば記録に気を使わず会議に集中できて、生産性の向上につながります。
システムによっては、話者を識別して書き分けたりテキスト化する際に口語を整型してくれたりと便利な機能が備わっており、より効果的です。
コールセンターでは顧客対応がどのようにおこなわれたかを記録して改善に活かす必要がありますが、その際にも音声認識システムが役立ちます。
まず、オペレーターが自身で履歴を作成する手間が省けるため、顧客対応に集中でき、業務効率化につながるのが最大のメリットです。
テキストデータなら音声よりも圧倒的に効率良くモニタリングや共有がおこなえるため、オペレーターの教育やサービス改善の高速化も期待できます。
音声認識をボットと組み合わせれば、顧客に自動対応する仕組みも作り上げられます。
たとえばヘルプデスクなら、まず音声認識で顧客の質問を聞いて回答のリンクを自動で送り、それでも解決しなければオペレーターにつなぐという対応が可能です。
窓口対応なら音声システムやタブレットなどと連携して顧客と対話して案内する仕組みも作れるでしょう。
コロナ禍で特に需要が大きくなりつつある分野です。
実際にシステムを選ぶ際は、いくつかの重要なポイントを基準に各システムを比較すると良いでしょう。
音声認識システムを選ぶうえで最も重要な基準です。
搭載されている語彙の数が多く、繰り返し使うことで自動学習する仕組みが備わったシステムを選ぶと失敗が少ないでしょう。
音声認識と文字出力のほかに、拡張機能としてリアルタイム認識、語彙の追加、音声によるアプリ操作やチャットボットなどを備えているシステムもあります。
導入する目的を明確にしたうえで、必要十分なシステムを選びましょう。
システムごとに価格体系が異なり、海外大手企業のサービスは従量課金、国内のものは月額制が多くなっています。
また、拡張機能の多いシステムは料金が高い傾向にあり、さらにオンプレミス、クラウドと導入形態によっても価格が異なるため、その点も比較しましょう。
画像出典元:「Google Cloud Speech-to-Text」公式HP
Google Cloud Speech-to-Textは、Google独自のAI技術を活用した音声認識システムです。
対応言語は125以上と業界最多クラスで、かつ認識精度やカスタマイズ性にも優れています。
全体として、他のポピュラーな音声認識システムと比べても性能面では第一の選択肢になるシステムと言えるでしょう。
無料で利用できる量がIBMやMicrosoftの製品と比べてやや少ないことだけは注意すべきポイントですが、コスパが悪いというほどではありません。
▶初期費用:なし
▶月額利用料:
・標準モデル:60分/月まで無料、60分超~100万分まで0.004ドル/15秒〜
・拡張モデル:60分/月まで無料、60分超~100万分まで0.006ドル/15秒〜
画像出典元:「Watson Speech to Text」公式HP
業界最高クラスの性能を誇るAI「Watson」を活用した音声認識システム。
繰り返し使って分野独自の言語や声の特性に適応するトレーニング機能や話者を識別する機能などが特徴です。
また、カスタマーケア(カスタマーサービス)向けに最適化されたモデルを利用できるため、コールセンターでの活用には最適なシステムと言えます。
導入形態も幅広く、またIBMの万全なセキュリティ体制によって運用されるため、安心して利用できるシステムです。
▶初期費用:なし
▶月額利用料:
・Lite:無料(500分/月まで)
・Plus:0.02ドル/分〜
・Premium:要問い合わせ
・Deploy Anywhere:要問い合わせ
画像出典元:「Microsoft Speech Services」公式HP
Microsoftの提供する音声認識ソリューション。
受賞歴のある認識品質の高さに加えて、リアルタイム認識や話者認識などの機能もしっかりカバーしています。
また、音声→文章だけでなく文章→音声の技術も兼ね備えており、会話型アプリや音声制御システムの作成もできます。
価格設定の柔軟性、セキュリティの高さ、豊富な導入実績なども魅力で、バランスが良く使いやすいシステムと言えるでしょう。
▶初期費用:なし
▶月額利用料:
・Free:5時間(300分)/月まで無料
・従量課金:1ドル/1時間〜
・コミットメント:1,600ドル/2,000時間〜
画像出典元:「Amazon Transcribe」公式HP
AWSソリューションのひとつとしてAmazonが提供するクラウド型の音声認識システム。
他ツールと同様に充実した機能を備えており、さらに他にはない医療業界に特化した音声認識モデルを提供している点にも注目です。
医療業界での活用を考えている企業にとってはうってつけのシステムと言えます。
また、ユースケースや改善実績の豊富さ、すでにAWSを導入している企業であればすぐに利用できる手軽さなども魅力的です。
▶初期費用:なし
▶月額利用料:
・60分/月まで無料(12ヶ月間)
・スタンダード:0.0108ドル/分〜
・拡張機能(PIIリダクション/CLM)の追加料金:0.00108ドル/分〜
画像出典元「Enour CallAssistant」公式HP
「Enour CallAssistant」は、音声認識・自然言語解析といった高性能なAIエンジンを活用し、通話をリアルタイムにテキスト化することにより、電話応対のサポートから教育、分析まで、コンタクトセンター業務を高度化するサービスです。
シンプルで誰にでもわかりやすい管理画面を提供し、知識や技術がなくても直感的な操作で利用できるシステムであるため、習得に時間がかからず、またクラウドサービスのためスピーディにスタートすることが可能です。
オペレーター業務の改善・品質アップだけでなく、業務の効率化やコスト削減を図りたい企業にもおすすめです。
・音声テキスト化
・FAQレコメンド
・自動要約、VoC分析
・リアルタイムモニタリング
・要注意ワードアラート
・レポート機能
・会話タグ
・チャット連携
Enour CallAssistantの料金プランについては、席数単位により月額利用料が課金されますが、詳細は問い合わせが必要です。
低額料金からの利用や、目的に応じてオプション機能の追加も可能となっています。
画像出典元:「Nuance」公式HP
AIをコアにした包括的なソリューションで、アメリカのフォーチュン100企業でも数多く導入されています。
音声認識を活用したソリューションとしても、会話型AIシステム、生体認証、コールセンターのオペレーターへの自動サポートなど幅広い内容を提供しています。
単純な音声認識というよりは、その先の課題解決や業務変革までワンストップで済ませたいという企業が利用するべきサービスと言えるでしょう。
詳細についてはお問い合わせが必要です。
画像出典元:「AI Dig」公式HP
AI Digは、音声認識技術を活かしてコールセンターのオペレーター業務を支援するサービスです。
応対中のやりとりをテキストに起こすだけでなく、回答の候補をAIが推測してオペレーターに表示することも可能で、応対品質の向上や教育に役立ちます。
また、管理者向けのモニタリングや分析機能も充実しています。
コールセンター業界に特化した国産システムのため、ニーズと合致していれば大手企業のシステム以上に有力な選択肢になるでしょう。
▶初期費用:
・2ヶ月検証パッケージ:150万円〜(利用料含む)
・本番導入:30万円
▶月額利用料:
・本番導入:40万円〜
画像出典元:「AI Log」公式HP
AI Logは、コールセンターの応対品質管理を効率化するサービスです。
通話内容をリアルタイムでテキスト化するとともに、チャット形式で整理して表示してくれるのが大きな特徴。
また、特定のワードを指定することで、禁止ワードを使っていないか、伝えるべき内容を話しているかを確認して抽出できます。
AI Digと同様、コールセンター業務への活用を考えている企業にはうってつけのシステムと言えます。
▶初期費用:
・2週間トライアル検証パッケージ:無料
・2ヶ月検証パッケージ:200万円〜(利用料込み)
・共有環境プラン:25万円
・占有環境プラン:60万円
▶月額利用料:
・2週間トライアル検証パッケージ:無料
・共有環境プラン:30万円
・占有環境プラン:50万円
画像出典元:「Hmcomm」公式HP
Hmcommは公的研究機関である産総研発のベンチャーとして、音とAIを活用したさまざまな音声解析ソリューションを提供する企業です。
AIの自動学習を活かした高精度の音声認識が特徴で、コールセンター業務の見える化、自動応対などを実現できます。
そのほかAI議事録の「ZMEETING」や、製造業や医療機器のメンテナンスに役立つAI異音検知ソリューションなども提供。
国産システムらしく細かい機能も豊富で、かつ国内大手企業への導入実績も豊富なため、使い勝手を重視するのであればぜひ検討したいサービスです。
詳細についてはお問い合わせが必要です。
以下はいづれも、議事録に限らずコールセンターなど多用途に対応した音声認識システムです。
一語一句の全文書き起こしや口語の整形など、議事録作成にとくに便利な機能をもつため、こちらで紹介しています。
画像出典元:「YOMEL for コールセンター」公式HP
「YOMEL for コールセンター」は、コールセンターに特化した音声認識システムで議事録の自動作成も可能です。
話す速度や、話す必要のある内容、具体的な顧客への質問対応についてオペレーターが画面で確認できるため、新人オペレーターへの教育に時間を要しません。
NGワードを使用した際には、自動で管理者に通知が送られるため、管理者はNGワードを使用したオペレーターに即座にアドバイスできるので顧客対応の品質向上に役立つでしょう。
リアルタイムで表示された会話記録は、個人情報を隠して保存されるためセキュリティ面でも安心です。
YOMEL for コールセンターの料金プランは席数によって変動します。
オペレーターIDは何でもID追加可能で、席数に対する課金となり、オペーレーターの在籍数は料金に影響しません。
席数 | 月額料金(1席あたり) |
1〜20席 | 15,000円 |
21〜50席 | 13,000円 |
51〜100席 | 11,000円 |
101〜200席 | 10,000円 |
201〜500席 | 9,000円 |
501席〜 | 8,000円 |
*席数=同時接続の上限数。
「amptalk(アンプトーク)」は、IP電話とオンライン商談の内容を自動的に書き起こし・解析して、時間や労力を削減しながら商談の共有・振り返りを実現させるツールです。
SalesforceやHubSpotと連携させれば、企業全体で商談情報の共有が可能となり、マネージャーからのフィードバックやチームの円滑なコミュニケーションにつながります。
自動的に解析された情報は、数値として可視化されることで、説得力のある客観的データとなり、社内でのコーチングにも大いに活用できます。
amptalkの料金プランは2種類です。
下記の費用は年間契約の場合の金額であり、初期費用が別途必要ですが、詳細は問い合わせになります。
Salesforceと連携させて最大限に活用したい場合は、PROプランをおすすめします。
BASIC | PRO | |
初期費用 (税抜) |
要問い合わせ | 要問い合わせ |
月額費用 (税抜) |
4,000円/ユーザー | 5,900円/ユーザー |
画像出典元:「NTT SpeechRec」公式HP
SpeechRecは、 NTT研究所が持つ最新メディア処理技術を活かして作られた音声認識システムです。
議事録やコールセンター、CRM自動入力など、業界や利用用途に合わせてシステムをチューニングして提供してくれるため、認識精度が高いのが特徴。
また、認識した内容をテキスト化する際に読みやすいように整型する処理も可能で、修正の手間が少なくて済みます。
オンプレミスにプライベートクラウドと導入形態も豊富で、NTTが提供していることもあわせて、全体的に安心して利用できるサービスと言えるでしょう。
詳細についてはお問い合わせが必要です。
画像出典元:「AmiVoice」公式HP
Amivoiceは、7年連続で国内シェアナンバーワンを誇り、大企業への導入実績を豊富に持つ音声認識システムです。
コールセンター業務や議事録作成に限らず、医療、製造、建設などさまざまな業界、業務向けにソリューションを提供しています。
さらに、AI対話ソリューションや音声認識に適したデバイスの制作など拡張製品も豊富で、国内の音声認識システムではトップの技術力とノウハウを持っています。
詳細についてはお問い合わせが必要です。
音声認識システムは、ビジネスから「会話を記録する」業務の無駄をなくし、効率アップや生産性向上を実現する仕組みです。
特にコールセンターや対話での顧客対応が多い企業にとっては大きな効果が期待できるでしょう。
技術の発展とともにシステムの選択肢も増えているため、認識精度や拡張機能、価格などさまざまな点で比較して最適なシステムを見極めるのが大切です。
今回紹介した比較ポイントや国内外のツールを参考に、自社にぴったりな製品を選んでみてください。
画像出典元:O-dan