アグリテック(AgriTeck)とは?意味・国内外の事例13選!

アグリテック(AgriTeck)とは?意味・国内外の事例13選!

記事更新日: 2022/07/29

執筆: 太田繙

アグリテックとは、AIやドローンなどの最新技術を農業分野に活用することを指します

従事者の減少などが問題となる中、人力ではなく最新技術を用いて農業の効率化を図ることが目的です。

今回の記事では、アグリテックの意味や重要性、具体的な活用事例などを紹介します。

アグリテックとは?

「アグリテック」とは、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。

これまで人力で対応していた部分に、AIやドローンなどの最新技術を活用することで生産性を向上させます。

なぜアグリテックが必要?4つの理由

アグリテックが必要とされる主な理由は以下の4つです。

  • 農業従事者の減少・高齢化を打破する
  • 異常気象の影響を受けない農業環境をつくる
  • 人手不足でも食料自給率をアップできる
  • .農業ノウハウをデータで次世代に継承

1.農業従事者の減少・高齢化を打破する

近年、日本では少子高齢化が問題となっています。

若い世代が減少すると次の世代で農業を担う人物も減るため、国の食糧事情を考えるうえでは大きな問題です。

現役で農業に携わる世代も高齢化が進み、身体的な問題で引退せざるを得ないことがあるでしょう。

現役世代の引退に加え、次世代の担い手もいなければ、国の食糧生産性に打撃を与えることは間違いありません

アグリテックでは上記の現状を打破するために、AIやドローンなどの最新技術を活用しています。

2.異常気象の影響を受けない農業環境をつくる

地球温暖化などの影響により、異常気象が発生するケースもあります。

従来は気象の予測が難しく、育てた作物が無駄になるケースも存在しました。

アグリテックの技術革新によって、「最適な気温を保ち工場などの室内で作物を育てる」などの施策が打てるのです

異常気象の影響を受けない農業環境を整えられれば、食料の安定供給につなげられます。

3.人手不足でも食料自給率をアップできる

日本では現在、食料自給率の低下が問題となっています。

食料の半分以上を海外からの輸入に頼っている状態です。

食料自給率の低さを打開するために、日本では「2030年までに食料自給率を45%に引き上げる」という目標を策定しました。

従事者が減少する中で、自給率の改善を達成するには、アグリテックによる農作業の効率アップが不可欠です

4.農業ノウハウをデータで次世代に継承

従来の人力で行う農業では、蓄積されたノウハウや技術などは、口頭や実体験を通じて伝授することが主でした。

しかし、正確な技術が伝わる確証はありませんし、伝授する前に現役世代が亡くなるおそれもあります。

アグリテックでは、次世代への技術やノウハウなどをデータベースとして可視化し継承可能です

データとして残っていれば損失の可能性も軽減できるため、重要な技術を次世代以降にも引き継ぐことができます。

アグリテックで活用されている3つの技術

アグリテックで活用されている技術としては以下が挙げられます。

  • AIやloT
  • ドローン
  • ロボット技術

1.AIやloT

IoTとは「モノのインターネット」とも呼ばれています。

従来はインターネット接続されていなかったモノが、ネットワークとつながることで、利便性や効率性の向上に期待できるでしょう

アグリテックにおいて、IoTやAI技術を活用した例は以下の通りです。

  • 農場の気温や湿度などのデータを10分間隔で計測する
  • スマホをかざすだけで食物内の栄養素の供給量や追肥肥料の可否を判断する
  • 牛に装着して、該当個体の体調を自動で管理する

2.ドローン

アグリテックにおいてドローンは、農薬散布だけでなく食物の種蒔き、遠距離からの農場チェックなど、幅広い用途で利用可能です。

従来は人力で実行していた、農薬散布や種蒔きなどをドローン一台で実行できれば、農業従事者の負担を大きく軽減できます

3.ロボット技術

ドローンと同じくロボット技術も、農作業の人的負担軽減に貢献しているのです。

代表的な例としては「牛の搾乳ロボット」が挙げられます。

牛の搾乳ロボットは、自動で乳頭の位置を感知して搾乳が可能です。

絞った生乳をもとにした、一頭ごとの体調管理もできます。

「乳を搾る」という作業以外もロボット化できるため、農業の労働環境改善にもつながるでしょう

世界のアグリテック企業3選

現在、世界の中で先進的技術を持っているアグリテック企業としては、以下の3社が挙げられます。

  • 1.Agrobot
  • 2.エアシード・テクノロジーズ
  • 3.Plenty
  •  

1.Agrobot

画像出典:「Agrobot」公式サイト

「Agrobot」は、スペインを拠点とするアグリテック企業です。

Agrobotは「イチゴ収穫ロボットEシリーズ」というロボットを開発しています。

Eシリーズでは、先端のセンサーを活用してイチゴの熟度を自動で判断。

食べ頃のイチゴだけを傷つけることなく収穫する技術を有しています

一度に最大4列のイチゴを収穫できるため、農業生産性の向上に大きく貢献するでしょう。

2.エアシード・テクノロジーズ

画像出典:「エアシード・テクノロジーズ」公式サイト

「エアシード・テクノロジーズ」は、オーストラリアのアグリテック企業です。

エアシード・テクノロジーズでは、ドローンを活用して森林再生に向けた製品を開発しています。

該当の土壌に合わせた種子カプセルをマシンに設置すると、土壌硬度に合わせて種子カプセルを適切な圧力で投下できるのです。

人力よりも圧倒的に効率よくカプセルを蒔けるため、より世界の植樹作業を活発にできるでしょう

3.Plenty

画像出典:「Plenty」公式サイト

「Plenty」はアメリカのアグリテック企業です。

Plentyでは、すべての作物を自社内で栽培しており、土も一切使用していません。

社内栽培のため異常気象の影響も受けないうえ、データもすべて収集・管理でき、次世代への農業技術継承にも活用できます

日本のアグリテック企業10選

続いては日本の代表的なアグリテック企業を10社紹介します。

  • 1.株式会社オプティム
  • 2.株式会社セラク
  • 3.ヤンマーホールディングス株式会社
  • 4.inaho株式会社
  • 5.株式会社アグリメディア
  • 6.株式会社農業総合研究所
  • 7.株式会社ファームノート
  • 8.株式会社AGRI SMILE
  • 9.クレバアグリ株式会社
  • 10.メビオール株式会社

 

1.株式会社オプティム

画像出典:「株式会社オプティム」公式サイト

株式会社オプティムは、ドローン技術を中心に活用しているアグリテック企業です。

ドローンなどを活用したアグリテック技術については、以下の特許を取得しており、農業への高い貢献性が期待されています

  • ピンポイントな無農薬散布テクノロジー
  • 土壌の状態に応じて種蒔きを制御する技術
  • ライブ映像を活用した遠隔操作による指示出しなどの技術

「農業の省力化と高収益化を実現」を目標としており、多彩な技術で多くの課題を抱える農業分野の解決を図っています。

2.株式会社セラク

画像出典:「みどりクラウド」公式サイト

株式会社セラクは、デジタルマーケティングなどIT分野で幅広い事業を展開する企業です。

アグリテックの分野では「みどりクラウド」という、農業従事者支援サービスを展開しています。

みどりクラウドは、生産支援として以下2つのサービスを展開中です。

  • みどりモニタ:環境モニタリングシステム
  • みどりノート:農作業記録・管理サービス

生産支援に加えて、経営面および販売支援を実施できるサービス(一部準備中)も展開しています。

生産〜流通まで、幅広く農家をサポートする企業といえるでしょう

3.ヤンマーホールディングス株式会社

画像出典:「ヤンマーホールディングス株式会社」公式サイト

ヤンマーホールディングス株式会社は、ロボット化された農業機械を主に扱うアグリテック企業です。

乗り物技術は最先端を走っており、以下のようにさまざまな機能を備えたトラクターなどが複数用意されています

  • 熟練度に関わらず誰でも運転できる
  • 肥料を自動で調節できる
  • 自動で真っ直ぐに田植えできる
  • 作物の刈り取りや旋回などを自動で実施する

大規模農業に取り組んでいる農家にとって、大掛かりな乗り物を気軽に操作できるのはありがたいですよね。

4.inaho株式会社

画像出典:「inaho株式会社」公式サイト

inaho株式会社は、自社の自動収穫ロボット技術などをもとに、受託開発や農業参入支援などを行っている企業です。

病害認識技術や自立走行技術なども保有しているため、アグリテックに参入したい企業にとって力になります

農業参入支援では、事業計画書の策定や補助金情報の共有など、経営的側面からもバックアップを得られるのです。

5.株式会社アグリメディア

画像出典:「株式会社アグリメディア」公式サイト

株式会社アグリメディアは、「農業の課題を解決する」という目標のもと、農地活用・経営支援など幅広い事業を展開する企業です。

農業における各フェーズの課題を解消する事業を展開して、日本の農業界全体にインパクトを与えることを目的にしています

具体的には以下4つの事業を展開です。

  • 1.農地活用事業
  •    非農家の土地と農家をマッチングしたり、農地の維持管理を実施したりしている
  • 2.流通事業
  •    流通面における事業者の負担を減らし収益を伸ばすためのサポート
  • 3.農業HR事業
  •    農業専門求人サイト「あぐりナビ」の運営
  • 4.経営支援事業
  •    法制度や栽培ノウハウも含めた経営支援
  •  

6.株式会社農業総合研究所

画像出典:「株式会社農業総合研究所」公式サイト

株式会社農業総合研究所は、生産者と生活者をつなげるプラットフォームを運営する企業です。

最短で翌朝にスーパーで商品を購入できる「農家の直売所」では、新鮮な作物を楽しめます。

「産直卸事業」では、商品買い取りのうえ、生産者へのヒアリングをもとにブランディング戦略を実施して販売するのです。

QRコードによる生産者の確認も可能であり、テクノロジーと人とのつながりを両方実感できる事業といえるでしょう

7.株式会社ファームノート

画像出典:「ファームノート」公式サイト

株式会社ファームノートは、牧場管理者向けに以下の製品を提供している企業です。

  • Farmnote Color:牛向けウェアラブルデバイス。牛の体調や分娩兆候などを自動でチェック
  • Farmnote Color アプリ:牛の繁殖管理に特化したスマホアプリ(基本機能無料)
  • Farmnote Cloud:牛の管理に必要な個体情報などをクラウド上で共有できるシステム
  • Farmnote Compass:牧場の経営状況などを可視化できるシステム
  • Farmnote Gene:牛の遺伝子調査サービス

牧場では数多くの牛を飼育するため、個体の記録やチェックなどを人力で実施すると、莫大な時間がかかります。

ファームノートでは通常の個体管理だけでなく、繁殖管理・後継牛を見つける遺伝子調査など、牧場のあらゆるニーズを満たせるでしょう

8.株式会社AGRI SMILE

画像出典:「株式会社AGRI SMILE」公式サイト

株式会社AGRI SMILEは、農業技術の次世代継承に重きを置いたアグリテック企業です。

栽培データを一元管理するシステムを活用できれば、履歴をもとに次の栽培に活用できます。

栽培技術をVR動画として共有するサービスも展開しており、より正確な次世代への農業技術継承に期待されているのです

9.クレバアグリ株式会社

画像出典:「クレバアグリ株式会社」公式サイト

クレバアグリ株式会社は、IoTを活用した農業機器の開発だけでなく、経営や金融面でのサポートシステムも提供する企業です。

金融面の支援では、生産場の状況などをもとに収益性を評価し、資金調達時に活用できます。

保険制度やクラウドファンディングにも対応できるため、便利なツールも使いつつ金融基盤を固めたい従事者にピッタリです

10.メビオール株式会社

画像出典:「メビオール株式会社」公式サイト

メビオール株式会社は、フィルム農法と呼ばれる「アイメック」という世界初の技術を開発した企業です。

アイメックで使う特殊なフィルムは水と養分だけを通し、作物の下に敷くことで農薬を使わずに、細菌などをカットした栽培ができます

植物がアミノ酸や糖分を生成する手伝いもするため、高糖度・高栄養価の作物になる点も大きな魅力です。

アグリテックの市場規模はどのくらい?

日本の農業界に大きな影響を与えるアグリテックですが、具体的にどれくらいの市場規模になるのでしょうか?

これまでの市場規模

これまでのアグリテック市場規模は、世界と日本、それぞれで以下の通りでした。

世界:約24,287百万米ドル(2022年まで)

日本:約1,944億円(2021年まで)

今後の見通し

世界の市場は「2030年に約77,366百万米ドル」、日本市場は「2025年に3,885億円」への到達が見込まれます

アグリテックは、農作業時に使うシステムだけでなく、経営や流通面など農業全体に影響を及ぼす技術です。

ワンストップで農業を支援できるシステムだからこそ、これだけ大きな市場になっているといえるでしょう。

まとめ

アグリテックは、多くの課題を抱える農業分野において、利便性や効率性などを向上させる重要な技術です。

日本や世界を問わず、多くの企業が農業に生かすための最新技術を日々研究し続けています。

アグリテックは、私たちの食生活にも深く関わる技術であるとぜひ覚えておきましょう

画像出典元:Pixabay、Unsplash

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