テレワークできない職種&できる職種一覧|製造業と総務はなぜNG?

テレワークできない職種&できる職種一覧|製造業と総務はなぜNG?

記事更新日: 2022/01/21

執筆: 宮林有紀

時間や場所を制約されずに働けるのがテレワークの魅力。しかし、テレワークできない職種も存在します。

自宅で業務を行う人と出社して働く人がいると、不公平感が生まれやすいのが問題です。

理想的なのは、それぞれの社員が望む働き方ができること。働きやすい環境を整えるために、テレワークができない理由従業員の不満を解消する方法について考えてみましょう。

当記事では、テレワークできない職種一覧を紹介し、在宅勤務が難しいと言われている製造業と総務部の裏事情について解説します。

テレワークを検討している方に向けて「在宅勤務手当」と「導入前の準備」についても説明するので、ぜひ役立ててください。

テレワークできない職種・業務一覧

まずは、国土交通省が行った「令和2年度 テレワーク人口実態調査」による業種別導入率を見てみましょう。

どの業種でも令和1年度よりも令和2年度のほうがテレワーカーの割合が増えていますが、伸び率には差があります。

このグラフを参考にして、テレワークできない職種を一覧表にまとめました。

職種(業務) テレワークできない理由
飲食業 レストラン・居酒屋などの商品を提供する店舗で働く
宿泊業 宿泊施設に出勤して行う業務が大半を占める
医療・介護・福祉 対象者がいる場所に出向かないと支援できない
娯楽業 娯楽施設で業務を行ったりテレビ局等で番組制作する
理美容業 理美容室に備わった設備を使って業務を行う
冠婚葬祭業 セレモニーを行う式場に出向く必要がある
運輸業 荷物を指定された場所まで届けないといけない
小売業 オンラインショップ以外では接客・会計係が必要
農林水産業 畑や海上など特定の場所でしか業務が行えない
公務員 役所の窓口業務や消防・警察は現地に赴く必要がある
建設業 現場作業員・現場監督はテレワークできない
学校の教員 対人関係の学習などオンラインでは不十分な部分がある
製造業 特殊な機器がある工場等でしか業務が行えない
不動産業 取扱物件がある場所まで出向いて行う業務がある
警備・ビル管理・清掃業 現場作業がメインの仕事

 

テレワークできる職種・業務一覧

テレワークできる職種一覧はこちらです。

職種(業務)  
情報通信業 テレワーク導入率がトップの業界
金融・保険業 融資担当、コールセンターのテレワーク導入率が高い
IT系技術職 オンラインで業務が完結するエンジニアやプログラマーなど
企画マーケティング職 現場に行く必要がない業務が多いのでテレワークしやすい
Web系クリエイティブ職 パソコンさえあればどこでも業務が行える仕事
コンサルタント職 オンラインで顧客やメンバーに連絡すればテレワークできる
研究職 実験以外の調査や計画立案はテレワークでも可能
管理職 IT技術を駆使すれば遠隔でも部下のマネジメントができる
営業職 特に法人向け営業職のテレワーク導入率が高い
事務職 パソコンに向かって1人で作業する業務が多い

 

参考:
令和2年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-
第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの 影響に関する緊急調査
「コロナ禍でのテレワーク」調査 | エン・ジャパン(en Japan)

製造業のテレワークはやっぱり不可能なのか?

工場でモノづくりをするイメージが強い製造業は、テレワークできない仕事として有名です。

しかし、職種によっては製造業でも在宅勤務できます

「製造業は本当にテレワーク不可能なのか?」について深掘りしてみましょう。

製造業の職種を大きく分けると3つ。

1つ目は設計や商品開発を行う「技術職」、2つ目は現場で組み立て等を行う「技能職」、3つ目は「事務職」です。

それぞれ業務内容が異なるので、製造業のテレワーク導入について職種ごとに説明します。

1. 製造業の技術職はテレワーク導入への課題が多い

技術職はテレワークしやすい職種のひとつ。しかし、製造業は設計書や図面など秘匿性が高い情報を扱うので、強固なセキュリティ対策をしないとテレワークできません

未発表商品の情報が漏洩したら、企業存続を左右する大問題になる恐れがあります。

それに加えて、設計業務に最適な作業環境を構築しにくいのも課題です。

製造業では、データ容量が大きい3D CADを快適に使うためのハイスペックPCや大型ディスプレイを準備しないといけません。

試作品作成のための3Dプリンター、A3サイズ以上の図面を印刷するプリンターを使う場面もあります。

環境整備が他の業種よりも難しいので、製造業では技術職でもテレワーク導入が進まないのでしょう。

2. 技能職でテレワークできるのはごく一部のみ

工場での生産ラインや品質管理を行う技能職は、テレワークがほぼ不可能な仕事です。

最新技術を使って遠隔操作できる機器もありますが、現場に出向いて行う業務が大半を占めています。

テレワークができるのは、現場仕事をしない指導者や管理職の社員です。

トラブル発生時は指導者も現場に行く必要があるとはいえ、遠隔監視システムを使えば一部の業務はテレワークに移行できます。

ただし、管理者が在宅勤務になると新たな問題の懸念も。

現場の不満①:「トラブルが発生してるのにすぐに連絡がとれない!」

現場の不満②:「現場で教えてもらえないと指示が分かりにくい!」

そのため、遠隔指示でもスムーズにトラブルが解決できるか試すなど、準備期間を設けてからテレワークを導入しましょう。

3. 製造業でも事務職ならテレワークしやすい

製造業で最もテレワークを導入しやすいのは事務職です。

業務内容が他業界の事務職と大差ないので、一般的な準備をするだけでテレワークが行えます。

なぜ総務部のテレワークは難しいといわれるのか?

総務部は事務系の仕事なのにテレワークが難しいと言われています。

その理由は、出社しないとできない業務があるからです。詳しい事情をこれから説明します。

1. 紙の書類と押印作業がなくならない

総務部のテレワークを妨げる要因は、紙の書類と押印作業です。

すべてペーパーレス化してあれば自宅でも業務が行えますが、紙の書類と押印作業があったら出社しないといけません。

デジタル化が遅れているヘルスケア、飲食、小売業界や小規模な企業を筆頭に、ハンコ文化が残っている企業が結構あります。

解決策は...?

この課題を解決できるのは、オンラインで契約締結できる「電子契約サービス」や紙書類も電子化・管理できる「文書管理サービス」です。

申請作業を電子化する「ワークフローシステム」や人事情報を一元管理できる「労務管理システム」も候補にあがります。

2. 来客対応・郵便物の管理などはテレワークが難しい

総務部の特徴は、来客対応や郵便物の管理などテレワークが難しい業務があること。

総務部全員がテレワークを行うためには、来客や郵便物に関する業務の見直しが必要です。

解決策は...?

例えば、AIロボットが来客対応を行う「デジタルヒューマン」が注目を集めています。

郵便物を電子化できる「クラウド郵便サービス」を使えば自宅で業務を行えます。

訪問ではなくオンラインでのやり取りに切り替える、郵便の代わりにメール利用を取引先に依頼する、といった方法も有効です。

3. 部門間連携を強化する仲介役としての役割がある

様々な部署の従業員と関わる総務部は、異なる部署の社員同士をつなげる仲介役。

出社している総務部社員が1人もいないと、社内のチームワークが悪くなる恐れがあります。

解決策は...?

この問題に関しては、社員同士で直接コミュニケーションがとれるチャットツール等を利用すれば解決するでしょう。

このように総務部がテレワークできない理由はデジタル化の遅れなので、業務を改善させれば在宅勤務は不可能ではありません。

テレワークできないのは不公平?

同じ会社にテレワークできる社員とできない社員がいると、不公平感が生じる恐れがあります。

多いのは、テレワークできない人が不満を抱くケースです。

社員間のトラブルに発展しないよう、不公平だと感じる理由や対処法を知っておきましょう。

不公平に感じる理由

  • テレワークの人だけ通勤しなくていいのはズルい!
  • 出社した人が雑用を引き受ける羽目になる!
  • 自由な環境のテレワークの人はサボり放題?


テレワークできない人が不満を感じるのは、通勤に関しての条件が大きく違うからです。

毎日満員電車に乗って通勤していたら、在宅勤務の人を妬むのも自然なこと。

それに、在宅勤務だと、通勤時間がかからない分プライベートの時間が増えるのも不公平に感じる原因です。

2つ目の理由は、出社した人が面倒な雑用を引き受ける羽目になること。

テレワーク中の人は自分の仕事に集中できるのに、出社した人は会社にかかってきた電話や来客に対応しないといけません。

出社している従業員の中には「誰にも監視されてないテレワークの人は仕事をしてないのでは?」と感じる人もいます。

「今日はやる気が出ないからのんびりしたい…」こんな心理があったら、自由に休憩できるテレワークの人を羨ましく感じるでしょう。

不公平を感じやすい人

  • 派遣社員など正社員と待遇が違う人
  • 出社するのがごく一部の人だけの場合
  • いつも真面目に働いている人


テレワークできないことに不満を感じやすいのは、派遣社員やパートなど正社員と待遇が違う人です。

年収が正社員より低いのにまったく同じ業務をこなしていると、普段から不公平だと感じがちです。

その上、正社員だけにテレワークが認められたら、我慢の限界を迎えてしまう恐れがあります。

NHKの記事によると「“テレワークが認められず” 派遣社員から相談相次ぐ 裁判にも」と書かれているので、トラブルには十分に注意しないといけません。

他には、半分以上の社員がテレワークをしていて、ごく一部の人だけが出社してる場合も不公平を感じやすいです。

みんなと違う働き方を強制されたら、「なんで私だけ…?」と思っても不思議ではありません。

いつも真面目に働いてる人は真剣に仕事に打ち込んでいるからこそ、損な役回りになった時に強いストレスを感じます

モチベーションが下がらないよう、一生懸命働いてる職員へのフォローを忘れないようにしましょう。

参考:“テレワークが認められず” 派遣社員から相談相次ぐ 裁判にも | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース

テレワークの不公平はどうすれば解消される?

テレワークできない職種の人が不公平だと感じるのは、在宅勤務のメリットしか知らないからです。

そのため、テレワークのデメリットを周知させる方法が問題解決に役立ちます。

テレワークのデメリット

  • 作業環境の整備や光熱費の負担で出費が増える
  • 孤独な環境で誰にも相談できない
  • 途中過程を見てもらえず結果だけで評価される
  • 家族がいると仕事に集中できない
  • 仕事とプライベートの切り替えが難しい


実際には良いことばかりではないと知ったら、不平等感が和らぎます。

コミュニケーションを密に

また、社員が不満を感じるのは、コミュニケーションが不足してるのも原因です。

従業員が気軽に会話できるようチャットツールやWeb会議システムを導入しましょう。

テレワーク中のサボり問題に関しては、Webカメラで時々働いてる様子をチェックするなどの対策を行えば解決します。

加えて、テレワークしてる人と出社してる人の業務量に差が出ないよう調整すると不公平だと感じにくいです。

仕組みから変える

そして、在宅勤務を行うなら、評価方法の見直しを忘れてはいけません。

働く場所にかかわらず正当な評価が受けられる仕組み作りをしてから、テレワークを開始しましょう。

コロナ禍でもテレワークできない社員には『出社手当』を支給している企業もあります。

感染リスクがあるので危険手当と同じ意味があり、従業員への感謝や労いの気持ちを示せるのがメリットです。

テレワークできる社員・できない社員両方をケア

しかし、出社手当がテレワークをする社員の不満の種になってはいけません。

対策として、『テレワーク手当』を支給する方法があります。次はテレワーク手当について見ていきましょう。

テレワーク手当とは?検討される理由とメリット

多くの企業でテレワークと一緒に導入されるのが『テレワーク手当(在宅勤務手当)』です。

手当は義務ではありませんが、働きやすい環境づくりに役立ちます。

テレワーク手当(在宅勤務手当)とは

『テレワーク手当』とは、会社以外の場所で勤務する際にかかる費用を賄うための手当。

『在宅勤務手当』とも呼ばれていて、「現金支給」と「現物支給」の2種類があります。

テレワーク導入時に初期費用として一括支給されたり、毎月一定額が給与と共に支払われるなど、支給方法は企業によって様々です。

現金支給の相場は3,000円~5,000円/月と言われています。

例えば、富士通株式会社は2020年7月から通勤定期代の支給を廃止し、在宅勤務手当月額5,000円の支給を始めました。

note株式会社の場合は、雇用形態にかかわらず「500円×出勤日数分」を半年ごとに支給するルール。株式会社メルカリは、6万円(半年分)がテレワーク手当として支給されます。

参考:
ニューノーマルにおける新たな働き方「Work Life Shift」を推進 : 富士通
在宅勤務の長期化に備えて、従業員がはたらく環境整備のサポートをします。|note株式会社
メルカリCEOから緊急事態宣言を受けてのメッセージ

テレワーク手当は必要?

テレワーク手当は、企業に義務付けられている制度ではありません

しかし、従業員だけでなく企業にとってもメリットがあるので、導入を検討する企業が多いです。

次はテレワーク手当のメリットを詳しく説明します。

テレワーク手当のメリット

仕事用PCの購入やWiFi契約など、テレワークを始めるためには初期費用がかかります。

手当があれば、お金の心配をせずに準備できるのでスムーズに在宅勤務に移行できるのがメリットです。

それに、家にいる時間が長くなると電気代や水道代が増えますが、毎月の手当があれば社員の負担を減らせます。

テレワークは、モチベーションを維持しにくいのが問題点です。

手当には社員のやる気を上げる効果があるので、生産性の低下を防げるでしょう。

企業にとってもメリットがある

企業側のメリットは、コストを削減できること。

テレワーク手当よりも高額な傾向がある通勤手当をなくせば、経費を削減できる可能性が高いです。

もうひとつの利点は、労働力の確保に役立つこと。

在宅勤務手当を導入して働きやすい職場にすれば、離職率を下げたり安定した人材確保ができる効果も期待できます。

テレワーク導入前に準備しておくこと

テレワークを導入する際には、必ず事前準備をしましょう。働く場所が変わると当たり前にできていた業務が行えない恐れがあるからです。

ここからは、どの企業でも必要になる基本的な準備について解説します。

1. 業務内容のデジタル化を進める

テレワークをするためには、業務内容をできる限りデジタル化しておく必要があります。

テレワークの基本はICT(情報通信技術)を活用すること。紙の書類に印鑑をもらう業務があったら在宅勤務はできません。

必要なツールやシステムを導入して、社員の自宅でも滞りなく業務が行えるようにしましょう。

2. 社員がコミュニケーションをとるための仕組みを作る

テレワークは、従業員がコミュニケーションをとりづらいことが課題です。

コミュニケーション不足によるトラブルを予防し、社員の孤独感が解消できる環境を作らないといけません。

チャットツール、グループウェア、社内SNS、ファイル共有システム等の中から自社に合ったものを選んで導入しましょう。

他には、月に1回は全社員が出社する日を作ったり、親睦会を開くのも効果的です。

3. テレワーク用のルールを策定する

会社以外の場所で働くと勤務状況を把握するのが難しいので、勤怠管理の仕方や進捗具合の報告方法など、テレワーク用のルールを決めましょう。

注意点は、全社員が在宅勤務に移行できない場合は、出社する社員と在宅勤務の社員が平等になるルールにすること。

その上で、従業員全員にテレワークを導入する理由をしっかりと説明しないといけません。

4. セキュリティ対策の強化

テレワークを開始する前には、必ずセキュリティ対策を強化してください。外部から自社データにアクセスすると、情報漏洩のリスクが高くなるからです。

セキュリティ対策ソフトを使ったり、パスワードを厳格化してリスクをできる限り少なくします。

同時に、PCの紛失やのぞき見等を予防する社員自身によるセキュリティ対策の教育も必要です。

総務省の『テレワークにおけるセキュリティ確保』を参考にして取り組みましょう。

参考:総務省|テレワークにおけるセキュリティ確保

5. 社員宅のネットワーク環境を整える

テレワークを行う社員の自宅にWiFiがない場合は、ネットワーク環境を整えないと業務が行えません。

WiFiルーターを設置する、ポケットWiFiを貸し出す、会社支給の携帯電話でテザリングを利用する等の準備をしましょう。

まとめ

テレワークはできる職種とできない職種があるので、社員の不満を最小限に抑えるための取り組みをしないといけません。

在宅勤務を導入したことでトラブルが発生したら本末転倒です。

働く場所が違ってもチームワークが乱れないよう対策を練りましょう

多様な働き方ができる企業の需要は今後ますます高まっていくと予想されるので、テレワーク導入は避けては通れない問題です。

ツールを活用したり業務内容を見直して、会社以外の場所でも働ける準備を進めましょう。

画像出典元:O-DAN

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