社内ヘルプデスクとは、IT分野に関する問い合わせ対応を行う部門です。企業によってはシステムの開発や運用を行う社内SEがヘルプデスク業務も兼任しています。
今やIT機器はどんな企業においてもなくてはならない存在。スムーズな業務遂行を実現させるために、社内ヘルプデスクが重要な役割を担います。
しかし、対応分野が広くなりすぎるのがヘルプデスクの課題です。効率的に問い合わせ対応ができる仕組みを作りましょう。
当記事では、社内ヘルプデスクの業務内容や給与事情、向いている人、求められるスキルについて解説します。課題を解決する方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
社内ヘルプデスクとは、自社の従業員からの問い合わせに対応する部署です。それだけでなく、社内のネットワーク環境を管理する役割も担います。
業務内容は、PCの操作方法に関する問い合わせ対応、社内ネットワークシステムのトラブル発生時の対応、サーバーの構築や運用など。
ITに関する総合サポートを行うので、業務内容が非常に幅広いのが特徴です。
ヘルプデスクと同じような仕事をするのが「社内SE」です。
まずは両者の違いを明確にしてから、業務内容について詳しく説明します。
大企業など人材に余裕がある企業は社内ヘルプデスクと社内SEの業務を区別している傾向があり、以下のように役割を分けています。
社内ヘルプデスクの業務 | 社内SEの業務 |
|
|
しかし、中小企業等の規模の小さな会社では社内SEがヘルプデスクを兼務していることが多いです。
企業によって業務内容が大きく変わってきますが、ここでは両方の仕事内容を紹介します。
社内ヘルプデスクは、ITに関する総合相談窓口です。パソコンの操作方法や社内システムの使い方など、ありとあらゆる問い合わせに対応します。
社内すべての部署からの問い合わせがあるので、専門的な知識はもちろんのこと、ITリテラシーが低い人に分かりやすく説明するスキルも求められます。
また、システムやIT機器の使い方に関するマニュアル作成や従業員への指導をヘルプデスクが行っている企業もあります。
社内ヘルプデスクへの問い合わせの一部は、トラブルが起きて困っている社員からです。使用中のパソコンの調子が悪いと業務が行えないので、迅速に処理しないといけません。
時には、システム上の大きな問題が発生することもあるでしょう。そんな時も、社内ヘルプデスクの出番です。
大小を問わず様々なハプニングに対応して、社内の業務が円滑に行えるようサポートします。
色々な部署と接点を持つので、社内ヘルプデスクのメンバーは他部署の業務内容についての知識も必要です。
トラブルが起きた時は、問題点の調査をするのも社内ヘルプデスクの仕事です。原因を追究したら、再発を防ぐために改善策を講じます。
トラブル発生時の対応だけでなく、システムの管理まで任されているので責任重大です。
社内ヘルプデスクの業務には、システムやサーバーの構築も含まれます。専門性が高い分野なので、IT分野に精通してる人が担うポジションです。
そして、システム設置後の運用調整や日々のメンテナンスも業務の一環。従業員がスムーズに働けるよう、常に最善の状態に整えておくことが大切です。
加えて、外部からの攻撃への対策も行います。
社内ヘルプデスクに向いているのは、他者とコミュニケーションを取るのが好きでIT分野に詳しい人です。どんな人材が最適か詳しく説明します。
社内ヘルプディスに向いているのは、他者の悩みを解決することに喜びを感じる人です。
基本的に社員のサポートをする仕事なので、自分の業務に集中したい人だと続けられません。
社内ヘルプデスクは”縁の下の力持ち”として活躍するので、表舞台に立ちたい人には不向き。
目立つことよりも感謝されることに価値を感じる人なら、社内ヘルプデスクの仕事を楽しめるでしょう。
社内ヘルプデスクには高いコミュニケーション能力が求められます。
一般的な問い合わせに答えるだけでなく、トラブルが起きて動揺したり不機嫌になっている社員への対応もあるからです。
社内ヘルプデスクが的確な対応をしないと業務が長時間中断されたり、社員のストレスの元になります。そのため、相手の希望を正確に読み取るスキルが必要です。
難しい場面を任されるので、優れたコミュニケーション能力を持つ人材でないと務まらないでしょう。
社内ヘルプデスクになるためには、IT分野に関する知識が必要不可欠です。
マニュアルが用意されていれば基礎的な質問には答えられますが、システムに不具合が起きた時には仕組みを理解してないと対応できません。
社内ヘルプデスクの魅力は人助けができること。しかし、やりがいを感じる仕事である一方で辛いこともあるのが実情です。
ここからは、社内ヘルプデスクのいい点と辛い点を紹介します。
社内ヘルプデスクの仕事は、従業員から直接感謝されるのが魅力です。毎日「ありがとう」と言われるので、仕事にやりがいを感じられます。
人の役に立っている実感が持てれば、モチベーションを保ちやすいでしょう。
それに、トラブルの発生など苦境に立たされる場面が多いため、問題が解決した時に安堵感や達成感を感じられます。自分の働きが社の危機を救った瞬間の感動は格別です。
また、たくさんの人と知り合えるのも魅力のひとつ。他部署の社員とも仲良くなる機会があるので人間関係が広がります。
社内ヘルプデスクの辛さは、社員から怒りの感情をぶつけられること。
トラブルがあってイライラしている人や、説明内容に納得できない人からはキツイ一言を浴びせられます。困っている人を相手にする仕事なので精神的な負担が大きいです。
そして、社内ヘルプデスクの職員を悩ませるのは、ITに関する知識が乏しい社員からの問い合わせです。
分かりやすい表現に言い換えて一生懸命説明しても、なかなか理解してもらえません。スムーズに解決できないと、簡単な問題の処理に何時間も費やすことになります。
社内ヘルプデスクの難しさは対応範囲がかなり広いこと。社内で起こったIT系トラブルのすべてに対応するので担当者の負担が大きいです。
その問題を解決するためには、効率的に業務を行える工夫が必要です。
ここからは、社内ヘルプデスクが抱える課題と解決策について考えてみましょう。
社内ヘルプデスクが抱える課題は、対応範囲が広くなると問題解決に時間がかかること。社内で使われているIT機器の種類はかなりの数にのぼります。
熟知していない分野の問い合わせがあった場合、調べる手間がかかるので解決までに長い時間がかかってしまいます。
対応範囲が広いという問題があるなら、「パソコンの不具合はA、システムの操作方法はB・・・」と担当分野を細分化すれば効率的に業務が行えるでしょう。
担当分野についての専門性を高めれば、難しいトラブルが発生した時も迅速に対応できます。
トラブルはいつ起こるか分からないので、ヘルプデスクは業務見通しを立てるのが難しいです。
正確な業務見通しが立てられないと適切な人事マネジメントができず、人員を多く配置しすぎて余計な人件費がかかる原因になります。
その反対で人手不足の状態になると、対応が遅れて小さな事故が大きなトラブルに発展したり、担当者の急な残業や休日出勤が発生します。
その上、「今すぐに故障を直さないと納期に間に合わない」など、緊急性が高い要望が多いので、担当者に精神的なストレスがかかるのも課題だと言えるでしょう。
適切な人員配置をするためには、社員自身がトラブルを解決できる仕組み作りが役立ちます。
問い合わせの数を最小限に抑えれば、余裕を持って業務に取り組めるので必要以上に人員を増やす必要がありません。
そのためには、FAQを充実させる対策が有効です。
「インターネットの接続方法が分からない」等の簡単な問題なら、FAQを見れば社員自身で対処できるはずです。または、チャットボットを導入する方法でもヘルプデスクへの問い合わせが軽減します。
他には、分かりやすいマニュアルを作成するのも同様の効果が期待できます。
動画や図を用いて説明すれば、IT機器に慣れてない従業員でも簡単にシステムを操作できるでしょう。
社内ヘルプデスクには専門的な知識を必要とする問い合わせも寄せられます。対応できる人が限られると、ノウハウが属人化するのが問題です。
特定の人物しか対応できないと、その人が転職したり休暇中で社にいない時には誰も対応できません。業務が属人化しやすいのも社内ヘルプデスクの課題です。
業務が属人化する問題の解決策は、ナレッジを蓄積するための仕組みを整えること。
日付や質問者名、対応者名、対応内容を記録するルールを設ければ、メンバー全員で情報を共有できます。
その際には、ヘルプデスクツールを導入すると便利です。すべての情報を一元管理できるだけでなく、スピーディーに欲しい情報を見つけられるので業務が効率的に行えます。
それに、問い合わせ対応者の負担を軽減する機能が満載です。
社内ヘルプデスクとして働くためには、IT系の資格や1つ1つの経験を大切にする心がまえが必要です。
次は、優秀なヘルプデスクになるために必要なことについて説明します。
ITに関する問い合わせに対応するのが社内ヘルプデスクの仕事。
企業によっては資格取得を採用条件にしているので、関連する分野の資格を取得しておくと後々に役立ちます。社内ヘルプデスクの仕事に就きたい人におすすめの資格はこちらです。
社内ヘルプデスクとして働くためには、IT分野の知識に加えて基本的なマナーや接遇スキルも必要です。
敬語の使い方や正しい立ち居振る舞いをマスターしないと快い対応ができません。
また、要望を上手に聞き出す質問力もコミュニケーションを円滑に進めるために必要なスキル。
相手が希望を伝えやすくなる傾聴力もあると、優秀なヘルプデスクに近づけるでしょう。
社内ヘルプデスクの業務は多岐にわたるため、最初から完璧にこなすのは難しいです。
現場での経験を通して成長していく仕事なので、1つ1つの体験を無駄にしないことが大切です。
問い合わせがあったら全力をかけて対応し、そこで得たものを次に活かして少しずつできることを増やしていきましょう。
そのためには、地道な努力を続けることも忘れてはなりません。
社内ヘルプデスクはサポート役になる仕事なので、自己満足で終わってはいけません。
トラブルが改善されても、問い合わせをした社員が不快な思いをしたら意味がないからです。
必ず相手の立場に立って問題解決に取り組みましょう。相手ファーストの姿勢で業務にのぞめば、社員に満足してもらえる対応ができます。
社内ヘルプデスクは未経験から挑戦できる仕事です。ただし、IT業界で働いた実績がないと正社員として就職するのは難しいかもしれません。
その場合は、派遣社員からスタートして経験を積めば正社員として就職できる確率が上がります。
年収は業務内容によってかなり差があります。次は、ヘルプデスクの年収とキャリアパスについて詳しく解説します。
ヘルプデスクの給料事情は、dodaが行った集計では平均年収349万円、求人ボックスが行った集計では平均年収470万円となっています。
性別、年代、地域による違いは以下の通りです。
dodaの集計 | 求人ボックスの集計 | ||
男性 | 366万円 | 関東 | 462万円 |
女性 | 320万円 | 近畿 | 448万円 |
20代 | 301万円 | 中国・四国 | 437万円 |
30代 | 375万円 | 中部・北陸 | 408万円 |
40代 | 415万円 | 北海道・東北 | 390万円 |
50代~ | 549万円 | 九州・沖縄 | 375万円 |
派遣社員としてヘルプデスクの職に就いた場合は、平均時給1,697円、アルバイト・パートでは平均時給1,047円です。
求人ボックスが保有している求人だと、社内ヘルプデスクの年収は最低で318万円、最高で767万円なのでかなり幅があります。
持っているスキルや業務の内容によって年収に違いがでるのでしょう。
今後さらにIT化が進むと予測されるので、ヘルプデスクは将来性のある仕事です。
簡単な問い合わせ対応はAIに置き換わったとしても、トラブルの原因を解明して改善する仕事は残ります。
しかし、一般的な問い合わせ業務しかできないと、AIの導入で仕事を失う恐れがあり年収を増やすのも難しいです。専門知識をつけたり、英語力をつける等の対策をしましょう。
キャリアパスとしては、エンジニアやプログラマーへの転職やヘルプデスクをまとめるマネジメント層への昇格などが挙げられます。
現場で学んだ知識と経験を活かせば、様々な分野へのキャリアアップが期待できます。
社内ヘルプデスクの仕事は、IT関連の幅広い知識に加えてコミュニケーション能力も求められます。
たくさんの人と接するので苦労もありますが、やりがいを感じられるのが魅力です。社内ヘルプデスクの仕事に就きたい方は、IT分野の資格を取得するための勉強を始めましょう。
社内デスクヘルプを管理する側の方は、課題を解決することが大切です。効率的に業務が行える仕組みを整えて担当者の負担を減らしましょう。
すべての問題を簡単に解決したいならヘルプデスクツールの導入がおすすめです。
画像出典元:O-DAN、写真AC