厚生年金保険の特徴は、国民年金よりも手厚い保障が受けられること。たくさんのメリットがあるので、対象となる従業員の加入手続きを必ず行いましょう。
また、適用対象が拡大されて、短時間労働者でも加入手続きが必要な人もいます。加入漏れが発覚すると、最大2年分の保険料を遡及徴収されるので注意が必要です。
今回は、厚生年金の加入条件やメリット、受け取れる年金の種類、保険料の決め方、国民年金・国民年金基金・企業年金との違いを解説します。
複雑なルールがあり管理に手間がかかるのが年金制度の難しさです。事務手続きなどの業務を効率化したい場合は、最後に紹介する労務管理システムがおすすめです。
このページの目次
厚生年金保険がどんな位置付けにあるのかを知るために、まずは日本の年金制度の全体像を見てみましょう。
年金の話で「1階建て」「2階建て」と表現されるのは、1階2階3階の3層で成り立っているからです。
1階 | 全員が加入する国民年金 |
2階 | 上乗せ給付となる国民年金基金や厚生年金保険 |
3階 | さらなる上乗せ給付を行う国民年金基金や企業年金等 |
1階建ての人が最も年金額が少なく、2階建て3階建て…と階が上がるごとに受け取れる年金が増えます。
そして、個人事業主、自営業者、フリーター、学生などは第1号被保険者、会社員などは第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者になります。
第1号被保険者:厚生年金保険に加入していない人(第3号被保険者を除く)
第2号被保険者:厚生年金保険に加入している人
第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
このように被保険者の種類が分かれているのは、厚生年金保険に加入できる人が限られているからです。
次は、加入条件など厚生年金保険の基礎知識、他の年金制度との違いについて説明します。
厚生年金保険の加入対象は、これらの人々です。
◇会社等の役員・従業員など
◇常用的使用関係にあるパートやアルバイトなど
◇公務員など
厚生年金保険の特徴は、会社等の事業所単位で適用されること。
対象となる事業所は以下の通りです。強制適用事業所は厚生年金保険に加入する義務があります。
”適用事業所に常時使用される70歳未満の人”は、国籍や性別、年金受給の有無に関わらず厚生年金保険の被保険者となります。
例えば、株式会社で正社員として働いている人は厚生年金保険の加入対象です。
注意点は、社員個人ではなく会社を通じて加入手続きを行うこと。
適用事業所は新たに厚生年金保険に加入すべき従業員が生じた場合には、5日以内に年金事務所に届出を出さねばなりません。
”適用事業所に常時使用される70歳未満の人”には、パートタイマーやアルバイトの人も含まれます。
被保険者になる条件は、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上あることです。
1週間の所定労働時間が4分の3未満、または1ヶ月の所定労働日数が4分の3未満、またはその両方の場合でも、以下の5要件をすべて満たしていれば加入対象になります。
ただし、5要件を満たしていても派遣社員は例外です。派遣社員は派遣先企業ではなく派遣元の会社の厚生年金保険に加入します。
公務員や私立学校の教職員は共済年金に加入していましたが、2015年10月からは公務員等も厚生年金保険に加入することになりました。
現在は、公務員として働いている人も厚生年金保険の被保険者です。
厚生年金保険は老後だけではなく現役世代の人に向けた保障もあります。受け取れる年金は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類です。
厚生年金保険の加入者は国民年金+厚生年金保険の2階建てなので、国民年金加入者への”基礎年金”と、厚生年金保険加入者への”厚生年金”の両方が受け取れます。
厚生年金保険料は、標準報酬月額(月給)と標準賞与額(ボーナス)に保険料率(18.3%)をかけた額で、保険料は勤めている企業と被保険者で折半して納めます。
収入が少なければ保険料も少なく、収入が多い人ほど保険料が高くなる仕組みです。
200,000円×18.3%=36,600円
厚生年金保険料は36,600円
これを企業と被保険者で折半して納める
36,600円÷2=18,300円
企業負担:月額18,300円
本人負担:月額18,300円
国民年金と厚生年金保険の1つ目の違いは加入対象となる人です。
国民年金は日本在住の20歳以上60歳未満の人が全員加入する制度なのに対し、厚生年金保険に加入できる人は企業で働く人や公務員などに限られています。
2つ目の違いが保険料で、国民年金の1ヶ月あたりの保険料は一律で16,540円(令和2年度)です。
厚生年金の保険料は被保険者の収入によって変わります。それに、保険料を勤め先と折半する厚生年金と違い、国民保険は被保険者が全額負担します。
3つ目の違いは保険料を支払う期間です。国民年金は原則20歳以上60歳未満ですが、厚生年金保険は開始年齢の縛りがありません。
18歳で正社員就職した場合は、10代でも厚生年金保険の加入対象です。
厚生年金保険の終了時期は70歳未満と定められているので、定年退職後に再雇用されて働き続けた場合は70歳になるまで厚生年金保険料を納めます。
なお、老齢年金の受給開始年齢は同じで、どちらも原則として65歳からです。
4つ目の違いは、支給される年金額です。2階建ての厚生年金保険加入者のほうが、1階建ての国民年金加入者よりも年金額が多いです。
日本年金機構が公表したモデルケースで比較してみましょう。
画像出典元:日本年金機構HP
令和2年度の国民年金は満額で月額65,141円(1人分)。2人共が国民年金のみに加入している夫婦だと、2人分を合わせた支給額は月額130,282円です。
それに対して、厚生年金保険に加入している人(平均的な年収で40年間勤務した場合)の支給額は月額220,724円(夫婦2人分)と、かなり差があります。
この差を埋めるために設立されたのが、次に紹介する「国民年金基金」です。
厚生年金保険と国民年金基金の1つ目の違いは対象となる人です。国民年金基金が設立された理由は、第1号被保険者と第2号被保険者の年金額が大きく違うからです。
そのため、国民年金基金に加入できるのは、第1号被保険者のみ。厚生年金保険に加入している第2号被保険者や、第2号被験者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)は加入できません。
2つ目の違いは年金の種類です。年金の種類は公的年金と私的年金の2種類。厚生年金保険は国が運用している公的年金ですが、国民年金基金は私的年金です。
公的年金:国民年金、厚生年金保険
私的年金:国民年金基金、企業年金
次は、もうひとつの”私的年金”である「企業年金」の特徴について説明します。
企業年金は、厚生年金に上乗せする形で給付されます。主な企業年金は以下の3種類です。
※平成26年4月以降、厚生年金基金を解散するか、確定給付企業年金へ移行することが促されています
企業年金に加入できるのは厚生年金に加入している第2号被保険者のみですが、個人単位で利用するものではなく企業年金制度がある会社で働く人しか加入できません。
企業年金に加入している人は、国民年金+厚生年金+企業年金の3階建てになり支給される年金額がさらに増えます。
しかし、企業年金は基金や企業等が年金資産を管理・運用する私的年金なので、母体企業の倒産や経営悪化による解散が起こる可能性があります。
基金の解散が相次いだのが厚生年金基金です。代行部分の積み立て不足が問題視された厚生年金基金は新規設立が認められておらず、ほとんどが確定給付企業年金に移行しました。
次は、厚生年金保険に加入するメリットについて詳しく見ていきましょう。
厚生年金保険に加入したほうが国民年金だけよりも老齢年金の受給額が増えます。退職後の経済的不安を減らせるのは大きなメリットです。
そして、障害年金と遺族年金も厚生年金のほうが保障内容が手厚いです。
障害(遺族)基礎年金に障害(遺族)厚生年金が上乗せされる形で支給されるので、受給金額が高い、受給期間が長い、受給範囲が広いなどの違いがあります。
厚生年金保険料は企業と従業員が半分ずつ納めます。
国民年金は被保険者が100%負担なのに対し、厚生年金保険は被保険者が50%負担(残り50%は会社負担)なので従業員の金銭的負担が軽くなるのがメリットです。
企業は会社負担金が発生するとはいえ、従業員が安心して働ける環境を提供できるのがメリットだと言えるでしょう。
離職率の低下や人材採用の活性化に役立ちます。加えて、厚生年金保険料は経費として計上できるので節税効果もあります。
厚生年金保険加入者の配偶者は年収130万円未満などの条件を満たせば、国民年金の保険料を払う必要がありません。
例えば、サラリーマンの夫と年収100万円の妻の夫婦だと、夫が厚生年金に加入すれば妻は保険料を支払わなくても国民年金に加入できます。
ここまで説明した通り、第2号被保険者になると数々の恩恵を受けられるので、従業員にとって厚生年金保険に加入できるか否かは重要なことです。
厚生年金保険の適用企業は、対象となる従業員の加入手続きを必ず行わなければなりません。しかし、加入もれがなかなか減らないのが実情です。
厚生労働省は、2017年に行った調査で厚生年金保険の加入資格があるのに未加入のままの人が約156万人いるとの推計結果を公表しました。
また、日本年金機構が行った平成22年度の事業所調査結果では、約2割の運用事業所で届出書の「提出もれ」や「内容の誤り」が見られました。
参考:届出もれや誤りをなくしましょう。
参考:届出にあたって「もれ」や「誤り」が多い事例
年金事務所の調査で不正が見つかったら、資格取得時まで遡って保険料(最大2年分)を徴収されるので気を付けてください。
それに、届出もれが判明したら、社会的信用を失うかもしれません。
見落としがちなのは、労働時間が不規則なアルバイトやパート等ですが、すべての社員の勤務時間や賃金をリアルタイムで把握するのは相当な手間がかかります。
しかも、事実発生から5日以内に届出を出す決まりです。
手作業で行っていると様々な不都合が生じるので、効率的に従業員の年金管理が行える労務管理システムを導入しましょう。
そうすれば、無駄な時間をかけずに加入もれを予防できます。
労務管理システムとは、厚生年金保険だけでなく健康保険や雇用保険に関する手続き・書類作成、年末調整、入社・退社の手続きなど労務に関するすべての業務を効率化できるシステム。
届出もれ等のミスの予防にもなるので非常に便利です。
ここでは使い勝手の良い労務管理システムをピックアップして、おすすめポイントをまとめました。あなたの会社に合った労務管理システムを見つけましょう。
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プラン | 月額費用 | 機能 | 従業員数 |
¥0プラン | 0円 | 一部利用できない機能あり | 30名まで |
スモールプラン | お問合せ | 労務手続きや情報管理の効率化 (小規模の企業向け) |
50名以下 |
スタンダードプラン | お問合せ | 人事・労務の効率化と従業員情報の一元管理(あらゆる規模の企業に対応) | 50名以上 |
どのプランでも初期費用はかかりません。
コンサルティング
101~250人
間違いやすい部分にコメントがあるのでわかりやすい
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メーカー
51〜100人
初期設定に時間がかかった
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画像出典元:「ジョブカン労務HR」公式HP
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小売
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51〜100人
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画像出典元:「オフィスステーション 労務」公式HP
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無駄な出費を抑え、低額で利用することができるのも大きな特徴です。
※「オフィスステーション」利用実績数
オフィスステーション 労務の料金プランは1種類。
初期費用は登録料の11万円(税込)で、毎月従業員ひとりあたり440円(税込)がかかります。
名目 | 費用 |
登録料 | 110,000円(税込) |
従業員ひとりあたりの月額利用料 | 440円(税込) |
ユーザー数 | 無制限 |
商社
251~500人
管理者向けにおすすめ
色々なシステムを検討して最後にスマートHRとオフィスステーションの2択になり、価格面をみてオフィスステーションに決めました。管理者にとってはオフィスステーションの方が使いやすいと感じました。
コンサルティング
11〜30人
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画像出典元:O-DAN
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