年功序列と成果主義のどっちがいいのか?これは永遠に答えの出ない難しい問題ですよね。
「絶対に年功序列がいい!成果主義は日本企業には合わない!」
「日本社会も成果主義にシフトすべき!古臭い年功序列は反対!」
と意見が分かれているのが現状です。1990年代から成果主義を導入する企業が一気に増えましたが、新たな問題点が出て人事評価制度の見直しが迫られています。
そこで今回は、年功序列と成果主義の意味や違い、それぞれのメリット・デメリット、向いている人の特徴をわかりやすく解説します。
後半では、今後の人事評価制度について考えてみます。
このページの目次
年功序列と成果主義の1番の違いは評価基準です。勤続年数で賃金が決まる年功序列に対して、成果主義は結果重視です。
人事評価制度の違いで社員の意識が大きく変わり、人件費や人事の負担など経営にも影響を及ぼします。
年功序列と成果主義のどちらにもメリット・デメリットがあるので、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
年功序列とは、勤続年数の長さに比例して給料が上がる賃金制度。わかりやすく言うと、入社時が最も給料が低く、徐々にアップしていき年長者になると給料が高くなるのが特徴です。
年功序列が取り入れられたのは高度経済成長期です。日本経済が右肩上がりで成長していた時代と年功序列は非常に相性が良く、デメリットよりもメリットが圧倒的に多かったため日本企業はこぞって年功序列制度を用いました。
年功序列の最大のメリットは社員が安心感を持って働き続けられること。将来が約束されていると思えば、仕事で多少イヤなことがあっても我慢できます。
若年層の早期離職は日本社会の深刻な問題です。
画像出展元:厚生労働省ホームページ
最も離職率の高い中卒者では就職後3年以内に仕事を辞める割合が60%以上、大卒者でも30%を超えています。年功序列で安心して働ける環境を提供すれば、社員の定着率が上がるはず。
年功序列は安定志向の若者から絶大の支持を得ているので、人材の囲い込み効果も期待できます。
年功序列で定着率が良い企業は社員の会社への帰属意識が高まります。長年一緒に働いているメンバーに囲まれていれば、チームの一員だという自覚が強まるからです。
それに、定年まで今の会社で働く予定を立てていると「この会社の業績を伸ばすために貢献したい!」と思えて、愛社精神や忠誠心が高まります。
また、年功序列は年長者を敬う日本文化にマッチしているのでトラブルが起こりにくいです。年下上司からの指示だと「年下のくせに生意気!」と不機嫌になる社員が多いです。
業務以外のところで社員が不満を持つと、どんな対策をしても仕事が上手くいきません。「年上だから優遇されて当然」といった価値観を持つ社員が多い企業は、年功序列にしたほうがチームワークが良くなるでしょう。
年功序列のメリットは、人事評価にかかる人的・時間的コスト削減ができること。年功序列は評価基準が年齢や勤続年数なので、成果物を比較する手間がかかりません。迷うことなく社員に評価をつけられれば人事や管理職の負担が軽減します。
そして、年功序列は長く働くことを想定しているので、計画的に社員教育できるのもメリット。キャリアラダーで段階的に研修を行えば、必要な技術を兼ね備える理想的な従業員を作り出せます。
価値観が違ったりスキルの種類がバラバラの社員をまとめるのは大変ですが、自社好みの人材なら評価も管理もしやすいです。
「高い費用をかけて好みの人材を見つけるより自分でイチから社員を育てたい!」という考えの企業は年功序列が向いています、
年功序列は成果が給料に反映されないので、モチベーションを上げにくいのがデメリットです。「頑張ってもお給料は一緒だからやる気でない…」と社員に思われる可能性があります。
それに、年功序列だと新しいことにチャレンジする意欲が湧きません。「挑戦が成功しても給料が増えないのに、大きなミスをすれば給料が減るリスクがある…だったら言われたことだけやってればいいや」という方向性になるからです。
事業規模をコンスタントに伸ばし新卒採用の数も増やし続ければ、年功序列は上手くいきます。しかし、若年層は少なく年長者が増えると人件費が占める割合が高くなります。
人件費が高騰する問題が発生すると早期退職を促したり、最悪の場合にはリストラしなくてはいけません。
他の人よりも仕事ができる有能な社員は年功序列の同一賃金に不満を抱くでしょう。自分の能力を正当に評価してくれる会社を見つけたら、将来有望な社員が離職してしまいます。
仕事ができる社員ほど年功序列を嫌うため、最終的に残ったのは質の悪い社員ばかり…そんな結果になるかもしれません。
将来への不安を感じずに安定した人生を送りたい人は年功序列が最適です。年功序列なら見通しを立てやすいので、長期の住宅ローンが安心して組めます。
ただし、年功序列でも業績が振るわなかったリ不景気の煽りを受けると予定通りには昇給しないので注意しましょう。
年功序列を取り入れている会社はみんなで団結して仕事がしたい人に向いています。チームの中で給料差が出にくく全員に平等な評価がつくので、和気あいあいとした雰囲気で仕事できるはず。
会社の雰囲気や職種にもよりますが、成果主義よりは穏やかなムードで「みんなで一緒にがんばろう!」というノリで働けます。
年功序列だと1つの会社に長く在籍するので、じっくりとスキルアップしたい人にも合っています。社外では通用しない類の技術もありますが、社内で重宝されれば将来は安泰です。
他の業界には興味がなく特定分野に絞って専門的な技術を身に付けたいなら、年功序列制度を取り入れていて研修制度も整っている会社を探しましょう。
成果主義とは結果に重点を置く賃金制度。年功序列の反対語としてよく使われるのが成果主義です。途中過程や勤務時間などではなく最終的に出した成果で評価が決まります。
欧米諸国では成果主義が一般的で、年齢や勤続年数に関係なく仕事ができれば高給取り、落ちこぼれれば給料が下がるかクビです。
バブル崩壊後は年功序列を続けるのが厳しくなってきたので、成果主義を導入する企業が増えています。
成果主義のメリットは実力に見合った給料がもらえること。努力が給料に直結するので自然とモチベーションが上がります。
頑張る→実力がつく→評価が上がる→さらに頑張る…と良い循環ができれば、加速度的に社員の能力がアップします。
仕事ができない社員への給料を減らせるので、無駄な人件費を減らせるのが成果主義のメリットです。
年齢に関係なく能力がある人には相応の給料を支払い、適切なところに資金配分できれば業績アップにつながります。
成果主義は結果がすべてなので途中経過を省くことも可能です。それに、より良い成果を出すためには、必然的に無駄を排除して効率を上げる必要が出てきます。
社員1人1人が効率化を意識した働き方を目指せば、組織全体の生産性が大幅に上がるでしょう。
年功序列に比べると成果主義は非常に評価しづらいです。年齢や勤続年数という分かりやすい評価項目がないので、何を基準にして出来具合を判断したら良いか分かりません。
売上など数字が見えていれば順位をつけやすくなりますが、数値化できない部分での判断基準が曖昧になると「特定の社員だけ贔屓してるのではないか?」「どうして私のほうが評価が低いのか納得できない!」といった不満につながります。
高評価を得られた場合はやる気アップにつながる一方で、自己評価よりも能力が低いと判断された場合には一気にモチベーションが下がるのが成果主義のデメリットです。
成果主義の難しさは社員同士がライバル視して人間関係が難しくなること。完全に敵だと思えると、有益な情報を他の社員に隠す人が出てくるかもしれません。
ギスギスした雰囲気になってチームワークが悪くなれば、業務に悪影響を与えます。また、短期的な視点で給料を上げることだけに注力する社員が増えると、目先の利益ばかりを追い求めて長続きしない企業になってしまいます。
成果主義を取り入れると、定着率が悪くなり有能な人材を他社と奪い合う状態になる可能性があります。せっかく優秀な社員を引き抜いて来ても、他社に奪われそうになったら予定よりも高いサラリーを支払わないといけません。
成果主義が浸透すると実力のある人の立場が強くなるので、企業は人材確保に多額の資金が必要になるでしょう。
チームよりも個人の力で勝負したい人は、成果主義の厳しさを糧にして実力を発揮できます。自分自身の能力に自信があり、1人でも孤独感を感じずに働ける人は成果主義が最適です。
従来の日本社会では入った会社の色に染まってサラリーマン人生を送るのが一般的でした。しかし、「社の色に染まるのではなく、自分のカラーに合った企業で働きたい!」と考える人が増えています。
成果主義で勝ち抜ける実力があれば、ひとつの会社に固執することなくその時々の自分に合った会社への転職を繰り返して働けます。
10年後の自分の姿が見えていたほうが安心できる人がいる一方で、「行きつく先が見えるとやる気が出ない…」「あんな50歳を迎えるのはイヤだ!」など将来像が見えていないほうが良いタイプの人もいます。
「将来どうなるか分からなくても不安はない。むしろ予定がわからないほうがワクワクして仕事を楽しめる!」と思うなら成果主義がぴったりです。
今の日本社会は成果主義の導入に手こずっているのが現状です。でも、新型コロナウイルスの影響でテレワークが増加しているため、必要に迫られて成果主義を導入する企業が増えるかもしれません。
顔を合わせる機会が減り、勤務態度ややる気を確認しづらい労働環境だと評価基準が成果物に偏るからです。在宅勤務で好きな時間に働いて、求められる成果を出せばお給料がもらえる仕組みにしたほうが企業・社員の双方にとってメリットが大きいです。
しかし、成果主義だと将来への不安がつきまとうのも事実。不況下で育ったせいか、仕事で成功するよりも安定した生活を重視する若者が目立ちます。特にコロナ禍で経済が大ダメージを受けた今は安定志向が強まっています。
安定志向の人を囲い込むためには成果主義よりも年功序列が最適です。それに、年功序列は人材流出を防ぐ効果も期待できます。今後は、減り続けていた年功序列の良さが見直される可能性もあります。
日本社会は年功序列の価値観が当たり前になっているなど独自の文化があるため、成果主義を取り入れつつも年功序列制度の良いところも残した人事評価制度が求められています。
職種、社員の価値観、土地柄、社のビジョンなど様々な要素を加味して、企業ごとに独自の人事評価制度を策定することが大切です。
100%完璧な評価制度はないので、適宜改善を繰り返してその時々に最適な方法を模索するしかありません。社員と経営者で意見を出し合って「新しい人事評価制度」を考えてみましょう。
人が人を判断する人事評価制度には不平不満がつきもの。でも、実力を正しく評価してくれる企業で働けば、不満を最小限にできます。
社員として働く会社を選ぶ時には、自分に合った評価基準を取り入れている企業を選びましょう。
経営者側からの視点で考えると、働き方が大きく変わったコロナ禍の今だからこそ、人事評価制度を変える良いチャンスとも言えます。
年功序列と成果主義のいいとこ取りをして、より多くの人が満足できる評価基準を導き出してくださいね。
画像出典元:O-DAN
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