人事考課とは?人事評価との違いやメリット、運用手順を紹介

人事考課とは?人事評価との違いやメリット、運用手順を紹介

記事更新日: 2020/05/12

執筆: 編集部

人事考課とは、企業が社員の労働意欲や能力、業務成績などを測るための仕組みです。

企業の成長や社員のモチベーション維持には欠かせないといわれますが、実際にはどのようなものなのでしょうか。

人事考課の目的や人事評価との違い、運用のポイントや手法などを紹介します。また、人事考課の有効性を高めるには、フィードバックが欠かせないともいわれます。

人事考課のフィードバックについても、詳しくみてみましょう。

人事考課とは

「成果主義」を掲げる現代の企業にとって、人事考課をどのように行っていくかは重要なポイントです。

人事考課の有益性を考える前に、そもそも人事考課とはどのような意味や目的があるのかを理解しておきましょう。人事考課の概要について紹介します。

1. 人事考課の意味

人事考課とは、社員を公正に評価する仕組みです。

「考課」という言葉自体は古いもので、語源は奈良時代の人事評価制度に遡ります。

奈良時代は、唐より持ち込んだ「律令」が法令として使われていた時代。当時の人事評価は、勤務の評価や任用試験である「考課令」を元に行われていました。

これが現在まで人事評価制度を指す言葉として残り、「人事考課」なる言葉となったのでは?と、考えられます。

2. 人事考課の目的

  • 会社の理念や評価基準を明確にし、社員としてどのような行動や勤務態度が望まれるか示す
  • 社員の能力や企業への貢献度を適切に評価し、さらなる成長を促す
  • 評価に基づく賃金や待遇を与え、社員のモチベーションアップを図る
  • 社員の能力を正しく把握し、適切な配置を実施する

基本的に、人事考課の目的は、個々の社員の価値を高めることです。

人事考課の実施により社員それぞれを適性に評価できれば、人材育成を徹底したり適材適所を実施したりなどできます。

これにより、企業は組織全体のパフォーマンス向上と目的達成を期待できるのです。

以下のような事例は、人事考課の結果を考慮して行われます。

・社員の賃金の決定

・社員の昇進

・社員の転勤や配置転換

・社員教育のカリキュラムやスケジュール策定など

公正かつ適切な結果を残すため、人事考課は定期的に実施されることがほとんど。多くの場合、年に一度のペースで実施されます。

3. 人事評価との違い

人事考課と同様のものとして「人事評価」があります。どちらも社員の能力や適性、貢献度などを測る仕組みですが、どのような違いがあるのでしょうか。

人事考課 賃金・待遇・昇進など、インセンティブの根拠となる
人事評価 報酬やインセンティブに反映されるとは限らない

まず、人事考課というときは、評価を賃金や給与、昇進などを含むインセンティブが意識されます。人事考課の結果次第で、社員の待遇や境遇が変わる可能性があるのです。

一方、人事評価目的はインセンティブではありません。評価を社員の育成などに役立てるのが目的で、組織全体のパフォーマンス向上が重視されます。

ただし、近年は人事考課と人事評価が同義として使われることも少なくありません。

企業によっては人事評価でインセンティブを決定するところも多く、「人事考課=人事評価」と考えても、差し支えはないでしょう。

人事考課の運用方法

人事考課は、どのような流れで行われるのでしょうか。運用の手順や対象項目について紹介します。

1. 人事考課運用の手順

人事考課を適切に行うには、ポイントを押さえた制度作りと運用が肝要です。評価する側・される側の基準を明確にし、後で振り返ったり改善点を指摘したりしやすいようにしておかねばなりません。

運用のフェーズを4段階に分けてみてみましょう。

1. 目標を立てる

2. 目標達成までの姿勢をチェック

3. 評価

4. フィードバック

まず目標を立てる際は、取り組みやすく公平なものとなるよう注意が必要です。組織ごとに連動した目標を立てるようにすると、後々評価しやすくなります。

次のフェーズでは、社員それぞれに目を行き届かせ、弱みや強みを把握しなければなりません。日常の勤務態度にもきちんと目を配り、評価フェーズに生かします。

一定期間がきたら、チェックした項目を元に個々の社員を評価します。評価する者・される者が納得できる評価の実施が必要です。

評価が終われば、最後に結果を個々にフィードバックします。面談をして、所見や今後の課題等伝えましょう。

人事考課は評価される側ばかりが注目されますが、実際のところ「評価する側」のスキルが重要です。

適切な評価やフィードバックが成されなければ、人事考課の意味がありません。社員が評価に不満を抱くようになれば、むしろ逆効果といえるでしょう。

人事考課は、評価する側・される側が意義を明確に理解し、共通のベクトルを向いていることが大前提です。

2. 人事考課の対象

人事考課には、次の3種類があります。それぞれを総合的に判断し、最終結果を出すのです。

・業績

・能力

・情意(行動)

ただし、このうちのどれに比重を置いて評価するかは、ケースバイケースです。

例えば、勤続年数の長いベテランなら「業績」が重視されます。一方、年数の浅い若手の場合は「業績」では不利ですから、「能力」「情意(行動)」を重くみるでしょう。

それぞれについて、詳しく紹介します。

1. 業績考課

まず、業績考課は、目標の達成度や売上などに対する評価です。会社への貢献度や売上は比較的数値化しやすいものですから、公平な評価を下しやすいと考えられます。

ただし、あくまでも結果を重視するため、そのプロセスは評価されません。「能力はあるのにやむを得ない事情で目標達成できなかった」など、個々のケースに対する柔軟性は低いといえます。

2. 能力考課

能力考課は、個々が持つスキルや資格、知識などへの評価です。業種に合わせて基準を定めている場合が多く、業務に有益なスキルや資格を持つほど高く評価されます。

また、大切なのは能力ですから、結果はさほど重視されません。結果が出ていなくても難易度の高い仕事に取り組んだ人、裏で周囲をサポートした人なども、高評価を受ける可能性があります。

3. 情意(行動)

情意(行動)考課は、社員の業務態度や勤務時間などへの評価です。業務への意欲やモチベーションが高いほど高く評価されます。

ただし、個々のやる気や態度は、数値化することができません。どうしても評価が主観に偏りやすく、公正な判断が困難となることがあります。

バランスよく公正な評価を目指すなら、同僚・部下・上司など、その人の周囲にいるさまざまな人から評価を集める必要があるでしょう。

人事考課のメリット

人事考課を適切に行うことにより、個々の成果が見えやすくなったり、組織全体で達成感を共有できたりするようになります。

人事考課導入の具体的なメリットをみてみましょう。

1. 社内コミュニケーション・信頼関係の促進

人事考課が正しく実施されれば、評価者たる上司と評価対象である社員の相互理解が深まります。何かあったときも意見や疑問を口にしやすくなり、風通しのよい職場となるでしょう。

また、人事考課により社員が「適切に評価された」と感じれば、会社や上司への信頼も高まります。これが社内によい雰囲気を生み出し、働きやすい職場を作るのです。

2. 生産性のアップ

人事考課の結果を適切に給与や処遇に反映すれば、社員に向けて「確実にリターンがある」と周知できます。社員は労働意欲が向上し、目的意識を持って働けるようになるでしょう。

結果、労働へのモチベーションを保ちやすくなり、企業全体の生産性がアップします。

3. 人材投資利益の向上

社員の能力や意欲、業績を適切に把握することで、適材適所の実施が容易となります。

それぞれの能力に応じた業務や担当を割り当てられれば、今ある人材を最大限に活用できるようになるでしょう。

また、スキルや知識が不足している社員には、弱点を補う研修や学習の機会を与えられるのもポイントです。人事考課の結果を人材育成や成長サポートにも応用できます。

4. 組織の方針・理念の浸透・共有

人事考課の評価基準を明確にすることで、組織の方針や理念を社内全体に浸透・共有できます。

評価が高くなるのはどのような社員か、どのような能力やスキルが優遇されるのかが分かれば、社員はそのような社員になろうと努力するものです。

不足する能力やスキルがあると知れば、積極的に獲得しようと努めるでしょう。

人事考課を運用する際のポイント・注意点

人事考課を運用するときは、客観性が担保されねばなりません。また、誰もが納得できる手法を選択する必要もあり、実施には慎重を期す必要があります。

人事考課を運用する際のポイントや注意点をみてみましょう。

1. 評価の客観性を固持する  

主観に偏った人事考課では、望まれる効果を得ることができません。社員を評価する際は客観性を維持し、誰もが納得出来る仕組みを作ることが重要でしょう。

まず大切なのが、職位や職務別にふさわしい考課項目を設定することです。

そもそも、求められるスキルや知識は、職位や職務によって異なります。このときの分類が大雑把だと、適切な考課を行うのは不可能です。

「社員」「主任」「係長」「課長」…など、職位ごとに必要な評価項目を設定してください。

また、個人の目標を設定する際は、それぞれの職位や職務の平均値を基準にします。

「この人は能力が高いからこれくらい」「あの人は低いから目標も低めに」などしてしまうと、公平性に欠ける上、評価が主観的になるおそれがあります。

職位や職務ごとに裏付けのあるデータを用意し、それを個々のケースに適用するのがおすすめです。

2. 手法を選ぶ

人事考課を実施するときは、どのような手法を選ぶか選択せねばなりません。種類はさまざまありますが、一般的に使われるのは次のような手法です。

1. 360度評価

「多面評価」ともよばれる手法。評価者は一人ではなく、複数あるのが特徴です。部門内の上司・同僚・部下、関連部門の社員など、さまざまな人が評価に関わるため、高い客観性が期待できます。

「一人の主観的評価ではない」という点は評価される側も納得しやすく、不満が生じにくいのがメリットです。

ただし、評価結果にバラつきが出やすい、人間関係が悪化しやすいなどのデメリットも散見されます。

この手法を選択する際は、匿名性を高める、評価結果を給与や処遇面には反映させない、等の対策が必要です。

2. 目標管理評価

社員自らが目標を設定し、管理・評価する手法です。

この手法では、実現可能な範囲で目標を定めること、達成までのプロセスや過程を細かく設定しておくことなどポイントとなります。

人事考課の過程を管理するのは社員自身のため、はじめから終わりまでモチベーションを保ちやすいのがメリットです。

3. コンピテンシー評価

コンピテンシーとは、「行動特性」を意味する言葉です。

コンピテンシー評価では、仕事ができる人の行動特性(コンピテンシー)をモデル化し、それを基準として社員評価を行います。

具体的なモデルを設定すれば、実際の現場に沿った評価基準の設定が容易です。基準が明確なため評価の客観性が保たれる上、評価される側の納得や理解を得やすいというメリットがあります。

3. 評価者が気をつけたいポイント

人事考課を正しく行うには、評価者の公正性が保たれねばなりません。とはいえ、評価者も人間ですから、感情的に評価してしまうケースも見られます。

評価者が注意したいのは、次のような状態に陥ることです。

・ハロー効果

・寛大化傾向

・中心化傾向

ハロー(halo)とは、「後光」や「光輪」を指す言葉。心理現象として使われるときは、「一つの目立った特徴に目が行くと、対象全体を歪めてみてしまう」ことをいいます。

人事考課では、個人に飛び抜けてよい項目または悪い項目があった場合、この「ハロー効果」が起こりえます。

突出した「良」または「悪」に引っ張られ、残りの項目も「よい」または「悪い」とバイアスをかけてしまいがちになるのです。

次の「寛大化傾向」は、評価者の私情で評価が甘くなることをいいます。

例えば、「かわいがっている部下への評価が甘くなる」「自分の評価に自身が持てないときは、つい甘い評価を着けてしまう」などが該当します。

また、「中心化傾向」は、すべての評価を無難にまとめてしまう傾向です。社員から反発されたくない、極端な評価をつけたくない、などの心理が原因となっています。

人事考課後のフィードバックは必須

人事考課で出された評価は、社員にフィードバックすることが大切です。そもそも、人材育成は、人事考課の重要な目的の一つ。

人事考課の結果については社員自身が知り、求められる課題や改善点を理解する必要があります。

評価のフィードバック方法は企業によりさまざまですが、最も有益なのは面談形式のフィードバックです。

人事考課後のフィードバック面談について、詳しくみてみましょう。

1. フィードバック面談の目的

・人事考課で出された評価への納得・理解を深める

・長所や改善点を理解してもらう

・労働意欲を向上させる

フィードバック面談の目的は、まず、社員に評価を納得してもらうことです。

評価の結果をペーパーなどで知らせることは容易ですが、それでは納得できない社員も出てきます。

評価の基準や決め手、さらには企業の意図など詳しく説明することで、社員も与えられた評価に納得しやすくなるのです。

このとき、総合評価だけに触れるのではなく、項目ごとの評価についてもきちんと説明します。社員が納得できるかできないかで、企業との信頼関係が変わると肝に銘じてください。

次に、評価で浮き彫りになった社員の長所や改善点を伝えることも大切です。

長所は褒めてより一層伸ばしてもらうよう励まし、改善点は具体的に何をすべきか示します。特に本人が気づいていない欠点がある場合は、適切に指摘して修正を促しましょう。

また、面談によって社員とコミュニケーションを図ることで、社員のやる気を引き出すこともできます。

忌憚のない意見を交わすことで、双方の理解や信頼関係も深まるものです。お互いが「同じ組織を担う者」という認識を持てれば、企業の利益向上ために働こうという労働意欲が向上します。

2. 面談の流れ

一般的なフィードバック面談は、次のような流れで行われます。

1. アイスブレイク

あらたまった面接の場に緊張する社員は少なくありません。まずは世間話などをして、場の雰囲気を和ませることが大切です。このとき、面談の趣旨や進め方、時間配分など説明しましょう。

2. 社員による自己評価のヒアリング

まずは、社員の自己評価や、人事考課についての所見を聞きます。評価者は意見を挟まず、社員の話を促しながら進めてください。

3. 人事考課の結果を共有

社員の自己評価説明が終わったら、このたびの人事考課の結果について知らせます。

評価の基準や根拠も示し、社員が納得しやすく話しましょう。また、社員の自己評価と人事考課に差がある場合は、なぜそのような差異が生じたのかも説明せねばなりません。

4. 意見交換

人事考課について、社員がどのような所感を持ったかを聞きます。社員が不満を抱いている様子なら、どのような点が納得できないのか、確認することが大切です。

説明が足りなかったと思われる部分には補足をし、社員との相互理解を深めます。

5. 目標設定

互いの意見がまとまったら、人事考課の結果をもとに今後の目標を設定します。ただし、あいまいな目標では意味がありませんから、なるべく具体的な目標を提示しましょう。

「いつまでに、なにを、どれだけ、どうする」と細かく具体的に設定してください。

また、難易度の高い目標では、モチベーションが保てません。取り組みやすい設定をして、初動を促すのがベターです。

6. まとめ

すべて終われば、その日の面談の内容を総括して終了です。社員の今後の意気込みを聞くのもよいですし、評価者が「期待しているよ」などと励まして締めるのもよいでしょう。

3. 面談の注意点

フィードバック面談を成功させるポイントは、まず話しやすい雰囲気を作ることです。面接者だからと高圧的な態度を取らず、打ち解けた雰囲気を作るよう心がけましょう。

また、面談の途中に感情的になったり、モチベーションの下がる言葉を使ったりするのも避けてください。社員からの信頼を損ねないよう、冷静かつ信頼される言動を心がけねばなりません。

また、普段会話もしない上司といきなり面談では、社員も本音を言いにくいものです。

普段からたくさんの社員と交流を図り、コミュニケーションを取りやすい状態にしておくことが望ましいといえます。

まとめ

人事考課を適切に行うには、評価対象の設定や手法の選定が重要です。社員の職位や職務ごとに評価項目を設定することはもちろん、個々の能力や状況なども鑑みて正しい評価を行いましょう。

また、人事考課によって得られた結果は、必ず社員にフィードバックします。きちんと面談を行って企業側と社員との意思疎通を図り、お互いの目的が同じ方向に向くようにすることが大切です。

また、人事考課では、評価者のスキルも重視されます。客観的かつ公正な評価を下せるよう、感情に流されないよう注意してください。

人事考課を適切に行えば、企業の組織力の向上と社員のモチベーションアップ、さらには人材育成の強化などの効果が期待できます。

適切な人事考課の仕組みや面談のシステムを構築し、企業全体の活性化につなげましょう。

画像出典元:Pixabay、Unsplash

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