製造業を中心に、これまでおもに目視で行われていた外観検査を自動化する「AI外観検査」に取り組む企業が増えています。
自社にあったAI外観検査サービスを導入すれば、品質管理の効率化や生産性アップにつながります。
この記事では、そもそもAI外観検査がどんなものなのかを解説し、さらに導入のメリットやおすすめのAI外観検査サービスも紹介します。
このページの目次
AI外観検査とは、人工知能技術(AI)を活用して、製品・部品の外観検査を自動化する方法です。
画像による学習を行ったAIモデルが、製造ライン上の製品・部品のキズや汚れ、付着物などをリアルタイムで検知する仕組みです。
製造業を中心に導入されており、従来の目視での検査や画像センサーによる検査を代替する存在として期待されています。
うまく活用すれば、省人化や検査精度の向上、そして生産性アップなどの効果が期待できる取り組みです。
AI外観検査の導入により得られる、主なメリット2つを解説します。、
AIを利用すれば、人間の目でしか検出できなかったような細かいキズや汚れ、付着物も自動で検出できるようになります。
これにより、従来行っていた目視での検査が不要になるため、コスト削減や省人化、リソースの最適化につながります。
また、全ての検査を自動化しなくても、一部をAIで代替して目視やセンサーによる検査と組み合わせるような使い方も可能です。
検査機器の品質にもよりますが、AIによる外観検査は、目視や画像センサと比べて検査の精度も向上します。
人の目と同等以上の精度でエラーを検出できるだけでなく、人による検査につきものの見落としや判断のブレがなくなります。
誤判定や見逃しが減れば、ロスの低減、品質向上が実現でき、最終的な顧客満足度向上にも効果が期待できるでしょう。
AIモデルや検査システムを企業が自前で開発するのは難易度が高いため、パッケージ化されたサービスが「AI外観検査サービス」として販売されています。
サービスによって違いはあるものの、AIモデルの提供、モデルの学習や精度検証の代行、検査環境構築の支援などが含まれるのが一般的。
ノウハウのない企業がAI外観検査に取り組む場合は、基本的にこうしたサービスの利用が前提となるでしょう。
AI外観検査サービスを利用する場合、以下のような方法で導入を進めていきます。
まずは、導入するラインや製品、範囲を決め、さらに検査機器の設置場所やPLC(制御装置)との連携方法などを設計します。
それをもとに、AIの性能、検出精度、支援の内容などを基準にAI外観検査サービスを選定します。
具体的にはこの後紹介するおすすめサービスや比較ポイントを参考にしましょう。
検査を行うためのAIモデルの構築を行います。
品質に問題ない製品と不良品それぞれの画像をインプットしてその特徴を学習させたり、良品と不良品の判定ルールを設定する作業が必要になります。
サービスによってこの作業を代行する場合もあれば、自社で行わなければならない場合もあります。
実際に外観検査を行うための環境整備として、製造ラインへのカメラの設置やPLC連携などを行います。
ワンストップ型のサービスであれば、商品やラインの特徴に合わせてハードウェアの提案まで行っているため、必要に応じて利用しましょう。
セッティングしたAIとハードウェアで実際にデモ検査を行い、正常にエラーを判断できているかを確認します。
判定の精度が足りない場合は、さらに画像をインプットしてチューニングしたり、判定ルールの見直しを行います。
画像出典元:「InspectAI」公式HP
「InspectAI」は、食品の検品を中心に、幅広い業界で利用可能なAI外観検査サービスです。
食品に混入した毛髪レベルまで検出できる高精度のAIを備えており、学習に必要な異常画像が少なくて済むのもポイント。
AIモデルの学習は画像の準備のみ自社で行う必要がありますが、実際の学習作業や精度検証は代行しています。
また、ライン組み込みに必要なハードウェアに関しては、パートナー企業と連携して支援しています。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「WisSight」公式HP
「WisSight」は、パナソニックが開発、提供するAI外観検査サービス。
AIはピクセルレベルでの検出が可能な高性能で、検出精度向上につながる擬似画像生成機能も備えています。
撮影機器の整備やPLC連携も含めて支援しているため、素早い実装が可能です。
一方で、AIモデルの学習や精度検証については、「AIモデル作成ソフトウェア」を利用して自社で行う必要があります。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「スカイディスクAI外観検査機」公式HP
「スカイディスクAI外観検査機」は、AI外観検査用のソフトウェアと検査機がセットになったワンパッケージのサービスです。
検査機の精度が高く、他の安価な検査機では検出できないエラーも見逃さないのがポイントで、緻密な検査が必要な企業に適しています。
検査に必要なソフトとハードがセットアップ済みで使えるため、運用開始までのスピードが早く、ノウハウのない企業でも失敗リスクが抑えられます。
▶外観検査機費用:400万円〜
▶︎AI開発費用:150万円〜
▶月額利用料:要問い合わせ
(税表記なし)
画像出典元:「マクニカAI外観検査」公式HP
「マクニカAI外観検査」は、AIモデルの開発から、学習と検査精度検証、検査環境の整備まで、導入に必要なプロセスをワンストップで任せられるサービス。
機能面で独自の特長があるわけではないものの、幅広い業界やニーズに対応し、サポートオプションも充実しているのが魅力です。
はじめてのAI外観検査導入に適したバランスの良いサービスと言えるでしょう。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「Robot Solution」公式HP
「Robot Solution」は、産業・社会インフラ関連で豊富な実績を持つ株式会社イクシスが提供する、ロボットを活用した点検ソリューションです。
一般的なAI外観検査サービスとはやや毛色が異なるサービスで、ライン上の製品を定点で検査するというよりは、より動的な場面での検査に適しています。
検査用ロボットの技術は非常に充実しており、ハード面では他社にない強みがありますが、ニーズとの相性は事前に確認する必要があるでしょう。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「AISIA-AD」公式HP
「AISIA-AD」は、企業ごとの条件に合わせて、AI導入の可能性検証から、独自のシステム構築、機器類の提案までを行う包括的なサービスです。
MicrosoftのAzure Machine Learningを利用し、企業ごとにニーズに応じたAIモデルの提案を行うのが特長。
また、照明やカメラ、センサーなど機器類の整備に関しても最適なプランを提案するため、はじめてのAI外観検査導入でも安心して任せられます。
簡易検証 | PoC (精度検証・実証実験) |
システム開発 | |
初期費用 | 40万円 | 400万円 | 約2,000万円 |
月額利用料 | 要問い合わせ |
(税表記なし)
画像出典元:「FHシリーズ」公式HP
「FHシリーズ」は、株式会社オムロンが提供する、外観検査用AIモデル、ハードウェア、撮影用カメラなどがセットになったワンパッケージのサービスです。
正常な製品に発生するバラつきを学習し、欠陥以外の特徴を許容する「AIファインマッチング機能」を備え、過検出を防げるのが特長。
その他にも、人の感覚を再現して、未知の傷や複雑な背景・質感の検査を可能にする機能も備わっており、精度の高い検査が可能です。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「Deeptector」公式HP
「Deeptector」は、NTTグループのNTTコムウェアが提供するAI外観検査サービスです。
外部システムとの連携が可能なAPI、インストール/クラウドと複数の導入オプション、豊富な画像判定パターンなど便利な機能が備わっているのが特長。
モデル学習、検査精度検証や機器整備の支援は行っていないため、その点には注意が必要です。
インストール版は年額のライセンス利用料が設定されており、クラウド版は初期費用および月額利用料が設定されています。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「アダコテックAI外観検査」公式HP
「アダコテックAI外観検査」は、一般的なディープラーニングのAIではなく、HLACと呼ばれる技術を活用したAIが特長のサービスです。
メッシュやカーボンシートなど、従来のAIモデルが苦手なパターン模様の表面を持つ製品の検査に強みを発揮します。
検査対象の製品の特徴によっては、第一の選択肢になるサービスと言えるでしょう。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「オキカエ for AI外観検査」公式HP
「オキカエ for AI外観検査」は、高精度なAIとハードウェアをセットで開発するオーダーメイド型のソリューションです。
独自開発のAIは、ランダム模様やグラデーション、食品・布など凹凸のある物にも強いのが特長で、さまざまな業界で活用できます。
機器もニーズに合わせて開発するため、柔軟な構成が可能で、どんな企業でも最適なAI外観検査の導入が実現できます。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「MMEye Box」公式HP
「MMEye Box」は、手軽さと機能性を両立したAI外観検査サービスです。
通常は異常が起きた製品の画像が必要なAIモデルの学習を、正常な画像のみで実施可能なのが大きな特長。
それでいて、異常検知だけでなく、特定の物体の検知や項目の分類なども得意と、性能にも優れています。
モデル学習や精度検証の代行、検査機器提供などは行っていないため注意が必要です。
詳細については、お問い合わせが必要です。
画像出典元:「WiseImaging」公式HP
「WiseImaging」は、かんたん操作とAIの対応範囲の広さが特長のAI外観検査サービス。
キズや汚れ、異物検出に加えて、方向、裏表、形状判断など、さまざまな種類の外観検査に対応しており、多種多様なワークに適用が可能です。
また、操作が簡単で、検証から環境整備、運用までサポートが充実しているのも魅力で、はじめてのAI外観検査導入にも適しています。
▶基本ライセンス(学習・検査クライアントセット):300万円
▶保守料:60万円/年
(税表記なし)
サービスやAIモデルによって検出できる項目は異なり、細かいキズや汚れに強いものもあれば、複雑な形状の製品に強いものなどもあります。
サービス選びの際には、実際に検査の対象とする製品に機能面が合致しているかをまず考えましょう。
機能のミスマッチが起こると大きな損失になりかねません。
サービスによって、モデル構築や精度検証、検査環境のセッティングなどを代行している場合があります。
はじめてのAI外観検査サービス導入なら、そうしたサポートや代行が充実したサービスを選ぶのが無難です。
反対に、社内にノウハウがある場合には、AIモデルのみを提供するサービスを選ぶのも良いでしょう。
AI外観検査の導入費用は、数十万円から1,000万円以上までと、サービスによって大きく価格が変化します。
特にオーダーメイドでAIモデル構築をする場合や、高性能な検査機器を導入する場合に高額になります。
一般的なレベルの外観検査であれば専用AIモデルや高性能な検査機器は不要な場合も多いため、自社の状況に合わせて必要十分なものを選びましょう。
AI外観検査は、主に人が行っていた外観検査を自動化することで、製造ラインの生産性アップを実現できる注目の取り組みです。
はじめて導入する場合には、専門のAI外観検査サービスを利用するのがおすすめです。
検査対象製品の特徴、サポートやセッティング代行の有無、導入コストなどを基準に、自社にあったサービスを選びましょう。
画像出典元:O-dan