人材戦略に関係する言葉として「タレントマネジメント」という言葉があります。
タレントマネジメントの意味や導入方法について把握している方は多くはないでしょう。
この記事ではタレントマネジメントの定義、導入時のポイントや注意点などを紹介します。人材不足が深刻化する中、自社に必要な人材を育成を育成する上で注目される「タレントマネジメント」について解説します。
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タレントというと芸能人をイメージしますが、本来の英語のタレントは「才能」という意味です。
企業におけるタレントマネジメントとは、従業員それぞれのタレントつまり才能や資質を最大限に活かすために、採用・育成・配置などを最適化することを意味します。
従来の日本の働き方では、滅私奉公という言葉に表現されているように、従業員が会社のために自分を犠牲にして会社の方針に自分を適合させるということが当たり前とされてきました。
しかし、個性を重視する傾向や、ワークライフバランスを重視した生活スタイルの浸透、人材不足問題、グローバル化、ビジネス形態の変化などの理由により、古い考え方は時代にそぐわなくなりました。
そうした流れを受けて、企業は人材を獲得する努力に加えて、自社が抱えている人材をいかに育成しどのように適切に活用するかを考える必要が出てきました。
その課題を解決する手段がタレントマネジメントというわけです。
タレントマネジメント導入と運用をサポートしてくれるのが、タレントマネジメントシステムです。
タレントマネジメントシステムで、企業の従業員それぞれの持つ才能や経験を把握し、そうした情報をデータ化して一元管理することができます。
また各従業員の情報を参考にしてふさわしい人材配置を考えたり、チームメンバーを編成したりすることも可能です。
タレントマネジメントシステムは、自社サーバーにソフトウェアをインストールして運用するオンプレミス型と、クラウド型の2種類に大きく分けることができます。
企業がタレントマネジメントシステムを導入すれば、人材の最適な配置、人材の育成、人材の維持確保などの課題を解決できます。具体的にどんなメリットを獲得できるのかを次に紹介します。
タレントマネジメントを導入すれば、それぞれの従業員の才能やスキル、これまでの経験などをデータとして集約し蓄積して可視化します。
それにより従業員それぞれの能力の可視化、さらに従業員の集合体であるグループや部署、組織のパフォーマンスの可視化が実現できます。
従業員各人のタレント(才能)が可視化されているので、たとえば、新規プロジェクトを立ち上げるときに、ふさわしいメンバーをすぐに選抜することができます。
そのため新規プロジェクトのスピーディーな展開に結びつくでしょう。
これまでの人事戦略では不透明な理由で配置転換される、自分のこれまでの経験やスキルとは関係のない分野に配置されるといった人事異動がしばしば起こりました。
しかしタレントマネジメントを導入すれば、そうした不適切な人事異動から来る業務の停滞や従業員のストレスが軽減できます。
自分の持っているスキルや能力を活かせるポジションに配置されれば、従業員は仕事に対するモチベーションを維持しやすくなります。これらは離職防止につながります。
さらに、従業員すべての能力を可視化することで、埋もれていた貴重な人材を見つけることも可能です。
タレントマネジメントにより個人の能力が可視化されるので、その中から自社にとって大切と思われる人材を選抜し育成することが可能です。
さらに、個人個人の適性に応じた個別の教育プランや研修プランなどを作成する助けにもなります。
自社の従業員のタレントを見極めることで、自社の業務の推進にはどんな能力やスキルを持った人材が適切なのか判断できるようになります。
これらは新しい人材を採用するときの採用基準の明確化に役立てることができます。
タレントマネジメントシステム導入はたくさんのメリットを生み出しますが、反対に理解しておかなければならないデメリットもあります。次にそうしたデメリットのいくつかを取り上げます。
タレントマネジメントシステムの導入のデメリットのひとつはコスト面です。オンプレミス型ならば数十万円から数百万円のコストが必要とされています。
しかし、クラウド型のシステムを導入すれば、従業員数に応じた料金プランのサービスなどがあるので比較的コストを抑えて導入することも可能です。
せっかく高い費用をかけても人事担当者が使いこなせないという可能性もあります。
こうした問題を回避するために自社でタレントマネジメントを導入するにはどんな機能が必要か、などを事前に洗い出しすることも必要になります。
また使いやすいユーザーインターフェイス(UI)を搭載したシステムを選ぶなどの工夫も必要です。
システムには従業員自らが情報を入力しなければならない部分もあります。
もし従業員すべてにタレントマネジメント活用の意図が浸透していなければ積極的に協力してくれないかもしれません。
こうなるとせっかくのシステムも運用できなくなります。
システム導入前に従業員すべてにタレントマネジメント導入の意図やどんなメリットがあるかをきちんと説明する必要もあります。
タレントマネジメントシステムを導入しその運用を成功させるためにはいくつかのポイントを踏まえておかなければなりません。次にそのポイントや注意点を紹介いたします。
従業員のタレントを活用する前に、「何のために」それを活用するのかを明確にしなければなりません。つまり企業の経営戦略を明確化し、それに沿った人事戦略を立てなければならないということです。
経営戦略が明確化されていて初めて人事戦略、つまりタレントマネジメントが活かされるようになります。
各従業員のタレントの把握は、顔写真や経歴、個人の目標や自己評価、これまでに参加した自社のプロジェクトやその評価などが含まれます。
それらは蓄積されデータ化されて可視化できるようになります。
その後、それらを人事異動や昇進、プロジェクトのメンバー選抜などの材料として使います。
ですからタレントマネジメントを成功させるためには、担当者がそれらの情報を扱えるように常に最新の情報をアップデートし、関係する部署間で情報共有できる体制を構築しておくことも必要です。
各従業員の能力を把握できたなら、事業を遂行するために必要な人材や能力が揃っているかどうかを確認できるでしょう。
もし事業を遂行するために必要な能力や人材が不足していると感じるなら、新しくそうした能力を持った人材を採用する、自社でそうした才能を持った人材を育成するなどの施策を実行できます。
各従業員の能力を把握することにより、人材が足らないと判断した場合は、新しい人材を採用したり、内部で人材を育成することができるようになりました。これにより人材を適材適所に配置する準備が整ったわけです。
それぞれの能力に適すると思われるポジションや仕事が割り当てられたなら、次は現場の責任者とタレントマネジメントシステムの管理者がその後の進捗状況を監督することになります。
たとえば、従業員が想定された能力をきちんと発揮できているか、モチベーションは維持できているかなどを定期的にチェックします。
こうした情報はさらにタレントマネジメントシステムに情報データとして蓄積され、今後にさらに活かされていくでしょう。
人材育成のための教育プログラムや新しいプロジェクトの立ち上げとメンバーの選定などを行った後には、その結果をモニタリングすることや関係者にヒアリングすることが大切です。
改善点が浮き彫りになれば、必要に応じて修正や調整を加えることができるでしょう。
タレントマネジメントを導入すると年功序列で評価されるのではなく、仕事に対する姿勢や結果で評価されることになります。
どのような基準で仕事を評価し、それを給与や人事異動・昇進などに反映させるのか適切な評価システムを構築しなければなりません。
納得できる評価システムがあれば、従業員の仕事へのモチベーションの維持・向上に繋がります。
最後におすすめのタレントマネジメントシステムを4つ紹介します。
自社のニーズに適合したサービスがあればこの機会に導入を検討してください。
画像出典元:「HRBrain」公式HP
個人目標シートの記入から評価オペレーションまでをクラウド上に一元管理し、見える化することで、評価基準が統一され、公平な評価が可能になります。
また使いやすいシンプルなデザインも特徴の一つです。PC操作のレベルによって設定を変えられるため、職場に即した使い方が叶います。
画像出典元:「あしたのクラウド」公式HP
あらゆる評価シートに対応しており、評価フローの全てを管理できるため工数を劇的に削減できます。
目標設定から面談・評価・査定までを全て一元管理できるため様々なツールに手をだす必要がなくなります。
また管理職人材の育成もシステムでサポートします。被評価者を数値化し、課題をあぶり出すことで管理職育成につなげます。
画像出典元:「MINAGINE」公式HP
ベンチャー企業や中小企業に対して実施したコンサルティングのノウハウを活かして開発された人事システムです。
評価リスト作成時も、丁寧なヒアリングとコンサルティングをもとに数ある項目から各企業に最適な評価リストを提供します。
さらに、システム導入後も評価項目は何度でも変更可能なので、異動や組織の変更にも柔軟に対応することができます。
画像出典元:「sai*reco」公式HP
サイレコは「人材に対する投資の質を高めたい」「ルーティンワークに追われてしまう」という方にはうってつけのシステムです。
社内のロールモデルとなる人材の情報を抽出・分析することができ、その人材がどのような経歴を歩んできたのかを知ることで、採用基準や育成指標を明確化します。
また人材の適材適所の配置を叶えるための、人事異動のシミュレーション機能や、各部署の行動特性・職務適性と人材ごとの特性を照らし合わせ、マッチングを実現させます。
この記事ではタレントマネジメントの定義や導入のメリット・デメリットを紹介しました。
働き方改革の推進、人手不足問題という課題を解決する方法のひとつとしてタレントめマネジメントは注目されています。従業員それぞれの才能つまりタレントを把握し、それを活かした人材配置、教育、採用などの人事戦略に活かすタレントマネジメントは、優秀な人材の育成と確保、離職防止などの効果を生み出します。
タレントマネジメントを可能にするツールがタレントマネジメントシステムです。従業員数や利用したい機能を選んで料金プランが変更できるクラウド型のサービスも増えています。いくつかのサービスを比較することで自社のニーズや予算に適したタレントマネジメントシステムが見つかるでしょう。
今回紹介した以外のタレントマネジメントシステムについても知りたい方はこちらの記事を参考にしてください
画像出典元:pixabay