会社には執行役員という役職があります。社内で誰がその役職に就いているかを知っていても、その意味や仕事の内容について説明するのは少し難しいです。
この記事では、執行役員という役職の定義、仕事内容を紹介します。さらに社内に執行役員制度を導入するメリットについても取り上げます。
この記事を読んでいただければ、執行役員の職務を正しく理解することができるでしょう。
このページの目次
執行役員とは、取締役が決定した会社の方針や重要事項を実現化する役割を担う役職です。執行役員という役職はあくまで社内での敬称であり、会社法や商業登記法で定められた役職ではありません。
2006年に施行された新会社法では「重要な使用人」と定義されています。(会社法362条4項3号)ですから役員という肩書きが付いていても、その立場はあくまで会社の従業員ということになります。
取締役と執行役員の違いは以下のようになります。
取締役 | 会社の経営にかかわる方針や重要事項を決定する権限を持つ役職 |
執行役員 | 取締役の下した決定や重要事項に基づいて、それを実現化させるための業務を執行するポスト |
「役員」という肩書きが付きますが、経営陣の一員ではありません。執行役員は、取締役の決定を実現させるために、その指揮下のもと特定の部門の業務執行に専念するポジションのことです。
一般的に執行役員は、管理部門や各事業部などの統括者的なポジションに置かれます。ですから、あくまでそのポジションは従業員の一員という立場です。
執行役員制度は、取締役会が抱えてきた問題を解決する方法として生れたものです。
これまで多くの企業では、社員が昇進し取締役と業務執行を兼任する「取締役○○××部長」というような肩書きを持つ人がたくさん生み出されました。さらに、社内での取締役の人数自体が多くなるという傾向がありました。
こうした状態は、経営方針にかかわる意思決定に時間がかかるという問題を生み出しました。この問題を解決するために、これまでひとつにされていた取締役と業務の執行の監督という仕事を、取締役と、実際の業務の執行する執行役員という2つのポストに分割したわけです。これにより経営陣は意思決定がスピーディーに行なえるようになりました。
日本でこの執行役員制度を最初に導入したのはソニーです。1997年の導入時には,ソニーの社内には38人の取締役がいました。こうした数字を見るだけでも意思決定が難しい状況だったということがうかがえます。
執行役員の定義や導入された背景を考えると、執行役員制度導入の目的がはっきりしてきます。
1. 取締役は経営に専念できる
2. 執行役員は業務の執行とその監督に専念できる
同じ人物が担ってきた取締役と業務の執行という責任を分離させることで、このような目的が達成できます。
執行役員は会社法や商業登記法でいう「役員」に該当せず、立場的には従業員に過ぎません。では、会社法ではどの役職が「役員」に該当するのでしょうか。次にその点について取り上げます。
会社法では取締役・監査役・会計参与が役員に該当します。それぞれの権限や職務は以下の通りです。
取締役 |
会社機関の一部である取締役会の構成員
|
監査役 | 取締役の業務執行やと会計参与の業務を監査する権限を持つ |
会計参与 |
取締役と共同し計算書類などの作成を行う |
執行役員は、会社法で定められた役員には該当せず、従業員のひとりとみなされます。その役職名は社内での敬称にあたります。社長や副社長、専務や常務などの敬称として使われる役職名と同じであり、法律上の効力はありません。
会社法で定められている取締役。監査役・会計参与の職に就いている人には「役員報酬」が支払われます。しかしこれまで述べてきたように執行役員は、肩書きに役員とついていても会社の従業員のひとりとみなされるので、役員報酬は支払われません。給与を受け取る形になります。
企業が執行役員制度を導入すればどのようなメリットが生まれるのかを次に紹介します。
執行役員制度を導入すれば取締役は経営方針の決定や経営状態の監督などの重要な仕事により集中できるようになります。それにより、取締役会の働きがより活発化されるでしょう。
執行役員は、経営にあたる取締役と現場の従業員をつなぐ役割を担うことができます。現場の従業員に経営陣の目的や考えを伝えることができます。反対に現場の従業員の状況や意見を経営陣に届けることができます。取締役はそれを今後の経営戦略などの決定に反映することが可能です。
若くて優秀な人材を執行役員に任命することで、将来の取締役となるような人材を育成することができます。
執行役員制度導入にはいくつかのメリットがありました。しかし注意しなければならないデメリットも存在します。
特定の部署を統括する部長や事業部長などがいれば、執行役員とどこで仕事を分けるのかが難しくなります。執行役員制度を導入するなら、執行役員と部長や事業部長の間で、仕事をどのように分けるかをはっきりさせておきましょう。そうしないなら、現場は混乱するからです。
経営を取り仕切る取締役と、業務を執行する執行役員を別にすることで、経営にかかわる意思決定を早めるというのが、執行役員制度の目的でした。
しかし、経営陣と現場の従業員の間に執行役員が存在することで、逆に経営陣と現場との距離が遠くなるというケースもあります。こうなれば、経営陣は現場の状況や声を知ることが難しくなり、重大な決定を下すための情報が得られない、決断が下せないという事態に陥ります。
経営陣と現場の間をうまくつなげる人材を、執行役員に任命することがこの問題を克服するポイントになるでしょう。
実際に、執行役員制度が迅速な意思決定の妨げになっているという状況を受け、その制度を見直す、もしくは廃止する企業も出てきています。例えば、2016年にはLIXILグループやロート製薬、広栄化学工業、2017年には第一工業製薬、2018年にはシャルレなどの有名企業が執行役員制度の廃止を公表しています。
執行役員制度の持つ問題点が明らかになってきたことで、執行役員制度改革がいろいろな企業で行なわれることが予想されます。ですから今後の動向に注目できるでしょう。
執行役員制度導入のメリット・デメリットを取り上げました。執行役員制度の導入を検討しても、会社の規模やふさわしい人材が不足しているなどの理由で、導入が難しい場合もあります。そうした場合は、取締役と執行役員を兼任するという選択肢になるでしょう。
最後に、取締役と執行役員の兼任は可能かどうかについて触れておきます。
答えからいうと取締役と執行役員との兼任は可能です。大企業では取締役と執行役員で人物を分けているケースが多いですが、中小企業などでは取締役と執行役人が同じというケースがたくさんあります。
兼任することのメリットは、経営者と従業員の両方の目線で物事を見れるという点です。デメリットは取締役と現場の業務執行という2つの重い責任を担わなければならないという点でしょう。
執行役員とは、取締役が決定した会社の方針や重要事項を実現化する役割を担うポストです。執行役員のポストはあくまで社内での敬称であり、会社法や商業登記法で定められた役員ではありません。ですからあくまで従業員という立場です。
導入の目的は、取締役は経営にかかわる意思決定や経営状態の監督に専念し、執行役員は現場の業務の執行に専念できるようにするというものでした。
執行役員制度導入にはいくつかのメリットがあります。しかし、一部の大企業ではこの制度の見直しや廃止が行なわれています。こうした点を考えると、執行役員制度のメリット・デメリットをよく理解し、自社のニーズに適合した経営体制、実務執行体制を考えることが求められるといえるでしょう。
画像出典元:Pixabay
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