企業の目標を自分ごととして捉え、活躍してくれる従業員を育てるカギとなるのが「ミッション」「ビジョン」「バリュー」といった企業理念です。
ただ、言葉の定義や解釈は企業によって様々であり、正解がないぶん説明するのは難しいともいえます。
ここではミッション・ビジョン・バリューについて理解を深めたい方や、これから企業理念を作る方に向けて、有名企業の事例を交えながら解説していきます!
このページの目次
まずはじめにお伝えしたいのが、ミッション・ビジョン・バリューとは、時間軸での行動指針を表しているということです。
簡単に説明すると、ミッション=不変的な使命、ビジョン=中長期的な理想の姿、バリュー=定期的な価値となり、それぞれの時間軸が異なるのです。
ここからはそれぞれの言葉の定義を実際の企業の事例と合わせて詳しく見ていきましょう。
ミッションとは、企業が果たす不変的な「使命」あるいは「役割」のことを指します。
「なぜ、その会社が存在するのか?」「どのような世界を目指しているのか?」の答えこそがミッションです。ミッションは未来を基準にして考えるものであり、企業の根幹を支える価値観のようなものだといえます。
例えば飲料事業で有名なキリンホールディングスの場合は以下をミッションとしています。
キリンホールディングスの例でいうと、
①なぜ、その会社が存在するのか?
→自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げため
②どのような世界を目指しているのか?
→こころ豊かな社会の実現に貢献するため
と、このように当てはめることができます。「使命」と聞くとなんだか大げさで難しいように感じますが、①②に当てはめると分かりやすいと思います。
ビジョンとは、企業が目指す中長期的な「理想の姿」や「未来像」のことを指します。
ミッションを叶えるためにどうすればよいのか、段階的にどう追及すべきかを考えると、ビジョンが見えてきます。
先ほどのキリンホールディングスのビジョンも見てみましょう。
ここで注目してほしいのが「2027年までに」と書かれているところです。
ビジョンは、未来永劫に目指す目標ではなく、中長期的な目標を指します。
ひとつのビジョンを達成したら次のビジョンを立てる。そうして「理想の姿」を追及し、顧客のニーズに応える企業であり続けましょう。
ビジョンを策定したあとは、事業の展開や時代の変化に合わせて見直すべきだといえます。
バリューとは、会社や組織が「社会に対して提供する価値」のことを指します。
また、「社員が大切にする共通の価値観」という意味でバリューを作る会社もあります。
これらに共通するのは定期的に見直す必要があるということです。
インターネットで「バリュー」と検索すると「企業が社会に提供する価値」と「社員が大切にする共通の価値観」という意味が混在しているので、この違いに困惑するひともいるでしょう。
いずれにせよ、バリューはミッションとビジョンを遂行〜達成するために必要な価値基準ということになります。
ここでもキリンホールディングスのバリューを参考にしてみましょう。
キリンホールディングスは後者の意味でバリューを策定しているようですね。
従業員が実際に行動に落とし込めないと意味をなさないので、端的で明確なバリューはミッション・ビジョンへの近道となることでしょう。
何度も言いますが、こうしたバリューは、従業員が実際に行動に落とし込めないと意味がありません。
策定後は、浸透しているかどうかや、ビジョンの変更に伴ってバリューに矛盾が生じていないかなど、定期的に見直すようにしましょう。
また、インターネット事業でおなじみのDeNAは「社会に提供する価値」と 「社員が大切にする共通の価値観」と分けて考えられているので、バリューづくりの参考になりますよ。
有名企業の事例は、次の章でさらに詳しくまとめてあるので、興味のある方は目を通してみてください。
ここでは、有名企業におけるミッション・ビジョン・バリューの事例を挙げています。これから各項目を考える方は参考にしてみてください。
DeNAのビジョンには、AIの活用が明記されているのが面白いです。また「永久ベンチャー」という表現から、DeNAの姿勢が分かりやすく感じ取れます。
世界に喜びと驚きを
インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして、世の中にデライトを届ける
引用元:DeNA
日立グループは全体的に風格を感じるミッション・ビジョン・バリューです。
優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する
日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします
和・誠・開拓者精神
引用元:日立グループ
世界を代表するIT企業のGoogleは「ミッション・ビジョン・バリュー」といった形にとらわれない理念を掲げています。
1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
2. 1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
3. 遅いより速いほうがいい。
4. ウェブ上の民主主義は機能する。
5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
7. 世の中にはまだまだ情報があふれている。
8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10. 「すばらしい」では足りない。
引用元:Google
ここまで読んで「まだよく分からない…」という方のために、昔話の桃太郎に例えて説明しましょう。(すでに理解した方は読みとばして大丈夫です)
桃太郎とは、悪さをしている鬼を退治しに行く少年の話です。
そもそも、なぜ桃太郎は鬼退治へ行くことにしたのでしょうか?
鬼を倒すことは、桃太郎が望んでいる世界を実現する手段の一つです。それは鬼を倒して、人々が鬼に怯えることなく平和に暮らせる村にすること。
つまり桃太郎が目指しているのは「村の平和を守ること」であり、これが桃太郎のミッションとなります。
桃太郎にとってのビジョンは「鬼を退治すること」です。しかし、鬼を退治したところで、村の平和が約束されるかというとそうではありません。
なぜなら、新たな敵が出てくる可能性があるからです。
新たな敵が現れれば、桃太郎はミッションを叶えるために再び戦いに行くでしょう。新たな敵を倒すことは、桃太郎の次なるビジョンとなるのです。
ミッションは「村の平和を守る」、ビジョンは「鬼を退治する」でしたね。
これを実現するには、桃太郎一人の力だけでは難しいため、桃太郎は道中で犬や猿、キジを仲間にしていきます。
この2匹と1羽が最高のパフォーマンスを発揮することがビジョンの達成に繋がると考えれば、桃太郎のバリューは「チームワークを大切にすること」といえます。
そもそも、なぜ、ミッション・ビジョン・バリューは必要なのでしょうか?
ミッション・ビジョン・バリューは事業の羅針盤ともいえます。
これらがなくとも事業に勢いがある時は、それなりに良い結果を出すことができるかもしれません。
しかし、事業が大きな壁にぶつかった時、頼るべき指針がない企業はあっという間に空中分解してしまいます。
株式会社ミクシィ元取締役の小泉氏(現在はメルカリの経営陣)は、ミクシィ時代の振り返りとしてミッション・ビジョン・バリューの重要性を語っています。
「mixi」のような強力プロダクトがある会社のカルチャーはプロダクトに引っ張られてうまく作られて行きます。
しかし、プロダクトの力が弱まってきた時、つまり最も経営の手腕が問われる時には進むべき方向性を見失ってしまいます。
本当に必要となる時は今ではないかもしれませんが、ミッション・ビジョン・バリューは必ず必要になります。
参考リンク:「ミクシィ時代の反省があった」メルカリ小泉氏が過去の悔いから辿り着いた組織作りメソッド
ミッション・ビジョン・バリューの理解を深められたら、次は具体的な決め方をみていきましょう。
まずはミッション・ビジョン・バリューそれぞれの言葉の定義を共有しましょう。
少しでも意識にズレがあると、意味のないディスカッションになってしまいます。
次に、自分たちが考えるミッション・ビジョン・バリューについて思いつくことをどんどんアウトプットしていきます。
この時、誰かが発した意見であっても否定・批判をしないことが大切です。
建設的なディスカッションに批評は必要ありません。アウトプットされたアイデアから、さらにディスカッションを重ねて重要な価値観を見つけましょう。
大人数では話がまとまらない場合は班を作るのがおすすめです。
ミッション・ビジョン・バリューに込めたい価値観が決まったら、わかりやすい言葉で表現しましょう。
ピッチやHPで公表することもあるので、語呂やカッコよさも大切になります。
弊社プロトスターでバリューを決める際に行った方法を紹介します。
1. ポストイットにアイデアを書き出す
2. アイデアをグルーピングして重要な価値観を見出す
3. 価値観を共有し議論する
4. ワーディングする
アイデア出しは全員が参加し、様々な立場・観点から意見を出し合いました。最終的に共有してみると似たような価値観へ集約されていきます。
その際「絶対に譲れない価値観」があれば主張しましょう。
とにかく、意見を擦り合わせてディスカッションを活性化することが大切です。
ベストなタイミングは起業時です。
起業後に決めることも可能ですが、最初から目指すべき方向性が明確になっていれば、問題が起きても改善しやすいという利点があります。
スタートアップでは事業戦略をピボットすることが多いです。ピボットする際に譲れない方向性を持っていることは重要です。
すでに起業をしていて、まだ決めていないというのであれば、できるだけ早い段階で決めることをおすすめします。
ミッション・ビジョンは、経営方針に直結する事柄になりますが、バリューは社員全員の行動指針となるものです。そのため、社員がある程度揃ってからがおすすめです。
個人事業主ならば自分自身で決めればよいのですが、あなた以外にも経営に関わる人物がいる場合は、あなた個人だけで決めてしまうのは得策ではありません。
なぜなら、後々意見が分かれ、企業運営に支障をきたす恐れがあるからです。
ミッション・ビジョン・バリューは、決定後速やかに社内全員に浸透させるべきものです。全員で決めれば浸透させる際もスムーズになります。
また、起業に慣れていないのであれば、先輩起業家やコンサルティングに意見を求めるのもいいでしょう。
様々な知識や観点から、あなたの会社に合ったアドバイスが受けられます。
起業家が自社のミッション・ビジョン・バリューを決めるとき、大切なのは独りよがりにならないことです。
なぜならミッション・ビジョン・バリューは会社のメンバーに浸透させてこそ、意味をもつものだからです。
そのためには、メンバーもミッション・ビジョン・バリューに参加して、全員が納得感を持てるようにするのが理想です。
ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる方法としては、オフィスのデザインを会社の考え方を反映したものにするのが一つの手段です。
最近のベンチャーで個性的なデザインのオフィスが多いのも、オフィスを通して会社の価値観を伝えていく狙いがあります。
以下の記事では、これまで起業ログで実際に取材した個性的なオフィスを一覧で紹介しています。組織マネジメントのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
画像出典:ペイレスイメージズ, Unsplash
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