オープンイノベーションとは?メリット・事例・失敗する理由を解説

オープンイノベーションとは?メリット・事例・失敗する理由を解説

記事更新日: 2019/09/24

執筆: 編集部

自社リソースだけでは補いきれないアイデアや発想、開発スピードの補完。さらには、多様化する顧客ニーズにスピーディに応えるための手段として、今注目を集めているオープンイノベーション。

米国では活発に行われているオープンイノベーションも、日本では政府の後押しもあり、大企業をはじめ徐々に産官学に導入されつつあります。

しかし、オープンイノベーションを導入しても、それを上手く活用できていない事例も見受けられます。

この記事ではまず、オープンイノベーションとは何かについて学び、オープンイノベーションの目的の明確化の重要性について解説します。

また、導入のメリット・デメリットやオープンイノベーション導入における課題や、実際にオープンイノベーションを導入している企業事例を紹介します。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは

オープンイノベーション(Open-Innovation)とは、新製品・サービスに関するアイデアや技術の研究開発において、自社組織の枠組みを超えて外部から広く知識や技術を募集、あるいは集結・集約して革新的なビジネスモデルを開発することです。

たとえば、企業間での連携による事業推進、産官学連携による新技術などの開発プロジェクト、自由参加型の共同研究・共同事業などがあります。

クローズドイノベーションとの違い

オープンイノベーションの対義語としてよく登場するのが、クローズドイノベーション(Closed-Innovation)です。

オープンイノベーションが外部の力を活用するのに対し、クローズドイノベーションでは自社内リソースだけを活用します。

こちらは、多くの国内企業で採用されている経営戦略です。

自社で開発した技術やアイデアを独占・秘匿することで、技術や研究内容が外部に漏れるリスクを軽減できます。

これは、競合他社より優位に立つための差別化を図るための対策だともいえます。

反面、研究開発から市場提供までに莫大な時間とコストが必要です。

これが迅速性の消失要因にもなっています。

オープンイノベーションと対極にあるクローズドイノベーションは、社内でいくつものステップを踏まなければならないという課題があります。

そのため、現代社会における市場ニーズの急速な変化スピードに追いつくことが難しく、クローズドイノベーションから脱却を図る企業が増えているのです。

オープンイノベーションの役割


オープンイノベーションの役割を体系立てて表すと、上図のようになります。

「戦略的提携型」は

・「インバウンド型」

・「アウトバウンド型」

に分けられます。

外部から社内に知識や技術を取り込んで活用するインバウンド型と、社内技術や知識を外部へ提供するアウトバウンド型では、活用されるもののベクトルが異なるからです。

さらに、インバウンド型では、外部の技術や知識をどのように活用するかによって、

・「技術探索型」

・「手段探索型」

・「How to do型」

に分けることができます。

インバウンド型の一例として、スタートアップ企業が持つ最先端のIT技術を活用して、さらなる革新的なプロダクトを共同で開発するというものがあります。

また、How to do型では前段に「What to do型」のオープンイノベーションを必要とすることもあります。

What to do型は、コンセプトやビジネスモデルづくりのためのオープンイノベーションです。

たとえば、目的を達成するために何をすべきか、アイデアや技術そのものを発想するのに必要なモデルは何か。

これらを他企業から取り入れることと考えるとわかりやすいでしょう。

What to do型で見出した革新的なアイデアや技術を、次にプロダクト化するために最適化したり、事業へ融合させたりするのがHow to do型です。

アウトバウンド型は自社から外部へ技術やアイデアを提供することで得るイノベーションです。

たとえば、ベンチャー企業に対して提供した技術によって新たな革新的技術を生み出す、あるいは新製品の開発に繋げ、他にはない新しいプロダクトを作り出すための手段と考えると想像しやすいのではないでしょうか。

最後に、自由参加型コンソーシアムは、自由に外部企業が参加して、自社の持つアイデア(もしくは技術)を募集先企業のアイデアや技術、事業にマッチングさせて生み出すイノベーションです。

たとえば、IT企業が自社開発したIoT技術に対して、ベンチャー企業が自社の技術力やアイデアで新しいビジネスモデルをつくりだすというものが当てはまります。

いずれにしてもオープンイノベーションは、多種多様な企業が自社の未来に向けた舵取りに、いまや欠かせない経営手段、戦略の一つとなっているのです。

オープンイノベーションが注目される3つの理由

1. 市場投入への迅速性

IT技術の成長と発展は著しく、いち企業の技術力や開発力、アイデアだけでは追いつけないほど、プロダクトのライフサイクルが短くなっています。

この対策には、研究開発からプロダクト化までの期間をいかに短くして、迅速に市場投入できるかが肝となります。

従来のクローズドイノベーションで対応できないニーズの急速な変化に応えていくには、オープンイノベーションによる協業や共同開発が必要です。

2. 自社リソースの限界突破

迅速な研究開発はもちろんのこと、革新的なプロダクトを生み出すには、自社リソースを超えた技術やアイデア力が必要になってきていることも注目理由の一つです。

以前であれば、資金力のある大手企業がリードして研究開発できていた分野で、ベンチャー企業から生まれた新しい技術や商品、サービスが登場するようになっています。

この背景には、ベンチャーキャピタルなどからによる資金調達が、金融政策が緩和される以前よりもずっと容易になっていることが挙げられます。

また、スタートアップ界隈に優秀な人材が集結していることも、大企業をはじめとした既存企業のリソース不足に拍車をかける要因になっています。

さらに大企業では、研究開発だけでなくマクロ的な業務でさえ、いくつもの段階を踏むことになりがちです。

そのため、一つのプロダクトを作り出す時間的・人的コストが大きいことも、市場競争力に影響を及ぼしていると考えることができます。

若いベンチャー企業は、スタートアップだからこそのフラットな社風やスムーズなトップダウンにより、業務プロセスが少なく、そしてスピーディという強みがあります。

大企業で同様のスピード感を持つことは難しくとも、革新的な技術やアイデアとなるタネを持つ組織・団体と手を取り合い、開発スピードの加速化が望めるようになります。

逆にベンチャー企業側からは、大きな組織・団体が持つリソースが使えることで、開発力を高め、研究が深く広く行えるというメリットがあります。

オープンイノベーションによって互いに自社の限界を突破できるという点においても、多種多様な業種・団体組織から注目を集める理由です。

3. 多様化する顧客ニーズと価値観へ対応力強化

IT技術の進化を最も実感できるのは、携帯電話と自動車産業です。

たとえば、携帯電話はこの30年で、さまざまな機能が付加されています。

通話機能しかなかったのが、今では当たり前にインターネットができ、快適にスマホゲームができるほどのスペックを持つようになりました。

機能が多様化された背景には、顧客ニーズや価値観への対応力を高めてきたからだといえます。

ところが、いまでは顧客ニーズや価値観が多様化し、さらには技術開発が複雑化してきています。

いち企業が自社内のリソースだけで、顧客満足度の高いプロダクトを開発するのが難しくなってきているのが現状です。

それを打破するには、自社内で生み出されるアイデアや技術に、積極的に有益な外部の技術やアイデアを取り込む必要があります。

また、社内で見落とされた顧客ニーズを、異なる観点から拾い上げることによって、そこに価値を付与できるのもオープンイノベーションによる外部の知恵があるからです。

オープンイノベーションのメリット・デメリット


オープンイノベーションのメリット

  • 事業推進の迅速性アップ
  • 多様化する要望や需要への対応力アップ
  • 自社にはない新たな知識や技術などの資源獲得
  • シナジー効果の構築
  • 競合他社に対する優位性の構築
  • 短期間で低コストの開発が可能

メリットには、オープンイノベーションが注目される理由に通ずるところがあります。

社外の技術力や知識が利用できるようになるため、事業推進力が増して展開スピードも早くなります。

さらには協業したり、共同で研究開発したりすることで互いの持つ力が作用し合い、相乗効果を生み出せるのも大きなメリットです。

これにより、社会や顧客が求めるニーズに対応できる範囲が、これまで以上に広がります。

自社だけで研究開発するよりも、短期間かつ少ないコスト負担で深く広く研究開発が可能となります。

その結果、競合他社との差別化、優位性の構築までもが可能です。

オープンイノベーションのデメリット

  • アイデアや技術などの情報漏洩リスク
  • 自社開発力の低下・衰退のリスク
  • コミュニケーションコストの増大
  • バリューチェーンの複雑化
  • 利益率の低下
  • 利益分配トラブルのリスク
  • 費用負担トラブルのリスク

他社と協業、あるいは共同で事業を行えば、必然的に互いのアイデアや技術を共有することになります。

本来であれば秘匿にしておきたい部分を、事業の内容によっては協力相手に公開する必要性が出てくるからです。

それが、第三者への流出リスクに繋がっています。

協業や共同での研究開発では、シナジー効果が期待できる反面、自社の開発力そのものが低下、あるいは衰退してしまう恐れがあります。

防止策としては、オープンイノベーションだけ頼りきらず、自社内での開発力を推進させる仕組みを作ることが大切です。

コミュニケーションにかかる労力の点では、外部組織と繋がれば関係者も増えるため、避けられないコストといえるかもしれません。

自社と外部組織では、コミュニケーション手段が異なることもあります。

そのため、社内のやり方が通用しないことも多々あるでしょう。

この労力を抑えるためには、

・「情報量」

・「解釈力」

・「価値観」

にポイントを置いたコミュニケーションを日ごろから行うように務めることが、コスト低下を図るポイントです。

たとえば、コミュニケーションしやすいツールを積極的に利用することや、ポジションによって情報格差が生まれないようにグループチャットを活用するなどが挙げられます。

解釈に差異が生まれないように、お互いの仕事に透明性を出すのも一つの方法です。

お互いがどのように仕事をしているのか、その流れが見えていれば、意識の違いをすり合わせやすくなるのではないでしょうか。

それには、簡単に報連相できる仕組みを作り、共有することも必要です。

価値観に至っては、“ビジョンの共有”に集約されます。

・「どのような方向性でいくのか」

・「どうなっていきたいのか」

このあたりの価値観にズレが生じていると、同じ方向を向いていたつもりでも、気づけば違う道を走っていたということにもなりかねません。

バリューチェーンの複雑化に関しては、他社が参画することにより、自社からでは見えないバリューが増えてしまうことが要因です。

複雑化を解消するには、互いに事業活動について棚卸しをし、共有できる部分や課題を洗い出して共に対処することが望ましいです。

利益やコスト負担といった金銭的な部分については、最もトラブルの火種となりやすいポイントです。

オープンイノベーションを成功に導くのであれば、双方が納得できる着地点を探る努力を怠らないようにします。

オープンイノベーション導入事例

1. 富士通 × 株式会社アジラ

株式会社アジラは、ディープラーニングを活用した高い画像認識技術を提供しているスタートアップのベンチャー企業です。

富士通と株式会社アジラがタッグを組むことになったのは、両者ともに高齢者の社会問題を解決したいという同じビジョンがあったからです。

富士通は、認知症を患う高齢者が外出をしたものの、自宅に帰れない帰宅困難を問題視しており、それを解決したい考えていました。

そこに共感した株式会社アジラが、自社のAI技術を使って帰宅困難者を見守るという共同プロジェクトの発足に至ったのです。

このプロジェクトは、東京都町田市で実証実験が行われ、成果を挙げています。

今後増えると予想される、高齢認知症患者の帰宅困難問題を解消する一助になることでしょう。

2. レゴ × 一般人

レゴが自社のファンらと共同して作品を商品化したオープンイノベーションは、成功事例のなかでも割と有名な話ではないでしょうか。

ファンがレゴを使用して制作した作品をレゴサイトに投稿し、他のファンが投票して上位入賞した作品を実際にレゴの商品として販売するというプロジェクトです。

このイノベーションが成功した要因には、自社のコアなファンと繋がりを重要視し、さらにファンの存在を実質的に大切にしたことが要因として挙げられます。

作品投稿に対してインセンティブが働く仕組みの導入、実際にファン自身のアイデアが形となって製品化されるという特別な経験、これらが結果的にファン度を押し上げたのです。

こうした仕組みは、プロダクトを提供している企業であれば真似できる一例だといえるのではないでしょうか。

3. 株式会社浜野製作所 × 産官学

東京都墨田区にある株式会社浜野製作所は、さまざまなスタートアップや地域、大学などとオープンイノベーションを行っている企業です。

浜野製作所の名前を世に知らしめることになったのは、2013年11月に行われた水深8,000mの深海への無人探査艇による3D撮影成功です。

このプロジェクトは、海洋研究開発機構と芝浦工業大学、東京海洋大学、東京東信用金庫、さらには他の中小企業と連携して行われた「江戸っ子1号プロジェクト」によるものでした。

プロジェクトを進めるうえで開発の準備や人材集めに困難はあったものの、結果的にものづくり業界にイノベーションが起こったのです。

オープンイノベーションが失敗する要因

1. 技術×技術はプロダクト化のあとが続かない

テクノロジー開発を行っている企業同士がオープンイノベーションでは、製品化までこぎつけられたとしても、そのあとが続かず結果的に失敗に終わりやすい傾向があります。

この要因には、互いに技術畑のためマネタイズに対する知見が浅いことが挙げられます。

そのため、技術屋同士がコラボレーションする場合は、売り方やニーズの把握などマーケティング能力に長けた企業とのオープンイノベーションも含め協業することが成功の秘訣だといえるでしょう。

2. 社内ステークホルダーによる前例主義

最もよくある失敗要因として、スタートアップと提携しようとしている企業側の社内ステークホルダーによる前例主義です。

大企業などのようにブランド力もあり、なおかつ実績もある企業との提携、あるいは共同プロジェクトにおいては、大企業側のGOサインがないと動き出さないことも多々あります。

こうした場合、大企業側にはオープンイノベーション担当者がおり、その人たちが社内のステークホルダーを説得する形になります。

しかし、提携相手がスタートアップなど会社として実績が乏しい企業の場合は、なかなかGOサインが出ず、結局協同する話が立ち消えになってしまうことも少なくありません。

これは、確実にオープンイノベーションが成功する確信が持てないことや、万が一失敗して自社の傷にならないかという点で判断されてしまうからです。

また、取引実績がないスタートアップが対象の場合でも、同様のことがいえます。大企業内で、信用実績がないと判断されてしまうのです。

これを打破して提携できるようにするには、大企業内の担当者による十分な根回しが必要です。

このほかでは、アクセラレーションプログラムを導入している企業との提携や、CVC設立なども有効です。

まとめ

社会問題化している少子高齢化による労働人口の減少、AIやブロックチェーンなどの技術革新、ビジネスモデルの変化など、企業を取り巻く環境は急激に変化しています。

それらに対応していくには、自社リソースだけでは不十分な場合、オープンイノベーションの積極採用が望まれます。

オープンイノベーションを成功に導くには、自発的な動機を持ち、なおかつ明確な目的を持つことが重要です。

ここで挙げた事例を参考に、自社で「なぜオープンイノベーションが必要なのか?」をしっかりと話し合い、トップダウンではなく関係者全員で「外部リソースを必要とする具体的かつ明確な理由」を共有するようにしましょう。

画像出典元:Pixabay、PEXELS、O-DAN

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