【簡単に解説】オープンイノベーションとは?定義・必要性・事例まで

【簡単に解説】オープンイノベーションとは?定義・必要性・事例まで

記事更新日: 2023/08/21

執筆: Ryo.Yama

技術進歩やグローバル化が加速するいま、企業による価値創出の手法として「オープンイノベーション」が注目されています。

では、オープンイノベーションとはいったいどんなもので、どのように行われるのでしょうか?

この記事では、オープンイノベーションの定義から、種類、メリット、成功事例まで、簡単にわかりやすく解説します。

オープンイノベーションとは?

オープンイノベーションの意味・定義

「オープンイノベーション(Open Innovation)」とは、企業が外部の人や機関と協力してイノベーションを進める取り組みのこと。

その名前のとおり、open(開かれた)な体制でinnovation(革新、変革)を実現するという意味を持ちます。

ハーバード大学の教授だったヘンリー・チェスブロウ氏によって提唱された概念で、正確には以下のように定義されます。

組織内部のイノベーションを促進するために、 意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、 その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと

引用元:JOIC オープンイノベーション白書 第二版 

技術進歩の加速やグローバル化によって必要性が高まり、最近では企業が競争優位性を維持するために必要不可欠な手法のひとつになりつつあります。

「クローズドイノベーション」との違い

オープンイノベーションの対義語として「クローズドイノベーション」という言葉があります。

クローズドイノベーションは、企業内部での閉じた研究開発によって新しいアイデアや製品を生み出す手法。

開かれた体制で行われるオープンイノベーションとは正反対のやり方です。

情報漏洩リスクの低さや管理のしやすさといったメリットがある一方で、目新しいアイディアは生まれにくく、コストがかさみやすいというデメリットがあります。

最近では、より柔軟な手法であるオープンイノベーションが注目されており、多くの企業が採用するようになっています。

オープンイノベーションにはどんな種類がある?

オープンイノベーションについて、より具体的に見ていきましょう。

ひと口にオープンイノベーションと言っても、その手法は複数あり、それぞれ進め方や特徴が異なります。

① インバウンド型

協業他社の技術やアイディア、人材を社内に取り入れてイノベーションを進める手法。

企業内部の研究開発リソースが不足していたり、停滞している場合に、外部のリソースを活用してその不足を補うことでイノベーションを実現します。

例としては、他社の持つ特許や知的財産に対するライセンス・イン、研究開発サービスの利用などが挙げられます。

② アウトバウンド型

既存の内部資源を外部に共有して、さらなる技術開発や市場化につなげる手法。

企業が持っている技術や開発ノウハウを他企業や機関に提供して利益を得たり、外部のノウハウを利用してさらに発展させることができます。

知的財産のライセンス・アウトスピンオフなどが当てはまります。

③ 連携型

インバウンド型とアウトバウンド型両方の要素をあわせ持った手法

社外からノウハウを取り込むと同時に、自社の持っているリソースも提供することで、相乗効果によるイノベーションを狙います。

ハッカソンやアイデアソンの開催、ジョイントベンチャーの設立などが当てはまります。

オープンイノベーションの取り組みを効果的なものにするためには、自社のニーズや課題に合わせてこうした手法から適切なものを選択する必要があります。

なぜオープンイノベーションが注目されるのか?

オープンイノベーションがこれほどまでに注目されるようになったのには、どんな理由があるのでしょうか。

1. 技術革新の加速

技術革新がますます加速し、最先端の技術や知見を短期間で取り入れて新しい製品やサービスを生み出すことが、単独企業の力では困難になってきています。

オープンイノベーションによって外部の技術やアイデアを取り入れなければ、業界内で競争優位性を保つことができない時代になりつつあるのです。

なかでも、ITや工業系の企業においては、もはやオープンイノベーションは必須になりつつあります。

2. 企業を取り巻く環境の変化

グローバル化による競争激化やビジネスサイクルの短期化、多角経営の必要、研究開発費の高騰など、企業を取り巻く環境も大きく変化しています。

こうした環境で生き残るには、他社よりもスピーディーに新しい価値を創出しながら、かつコストを抑える必要があります。

従来のクローズドイノベーションの手法ではそういった条件が満たせないことも、オープンイノベーションが必要とされる理由のひとつです。

3. 消費者ニーズの複雑化

現代の消費者は、より多様で個性的なニーズを持っているため、企業もそれに合わせてより複雑な製品やサービスを提供しなければなりません。

そのため、外部のアイデアや幅広い視点を取り入れて、消費者のニーズに合わせた製品開発を行うことが重要になっています。

なかでも、個人や消費者からのアイディアを取り入れるような手法が必要とされています。

オープンイノベーションのメリット

注目度の高まりつつあるオープンイノベーションですが、実際に取り組むといったいどんなメリットがあるのでしょうか。

  • 研究開発能力を向上できる
  • 生産性アップ、コスト削減を実現できる
  • 新たなビジネスチャンスを創出できる

研究開発能力の向上

オープンイノベーションに取り組む最大のメリットは、やはり研究開発能力の向上です。

学術機関や技術力に優れたベンチャー企業と連携することで、企業内部だけでなく、外部の専門家の知識や技術を研究開発に取り入れることができます。

それによって自社の研究開発能力が向上したり、新たなアイディアが生まれ、より高度な製品やサービスを開発することができるのです。

開発コスト削減、生産性アップ

クローズドな研究開発と比べて、生産性の向上が見込めるのもオープンイノベーションのメリットです。

外部の企業や研究機関のリソースを活用することで、人件費や設備投資などのコストを削減することができます。

また、外部の専門家のアイディアや技術を活用することで、開発のスピードや効率のアップも期待できます。

新たなビジネスチャンスの創出

オープンイノベーションは、技術やノウハウの発展だけでなく、顧客ニーズや市場自体の発見にもつながります。

外部パートナーのネットワークを活用したり、個人や消費者のアイディアを取り込むことで、これまで気づけなかった隠れたニーズを発見できることがあります。

そうした新たな市場に対して、外部連携によっていち早く製品やサービスを届けられれば、大きな利益をもたらすことが期待できるでしょう。

オープンイノベーションのデメリット

メリットの多いオープンイノベーションですが、実は注意すべき点もいくつか挙げられます。

  • 情報漏洩のリスクがある
  • 社内開発力が低下するリスクがある
  • 外部評価を損なうリスクがある

情報漏洩のリスクがある

クローズドイノベーションと比べて、外部との情報交換が増えることによる情報漏洩リスクが高いのはオープンイノベーションのデメリットです。

特に顧客情報やシステム情報、製品に関する情報は漏洩すれば深刻な損害を産む可能性があるため、事前に組織体制や情報管理ルールを整備しておく必要があります。

社内開発力が低下するリスクがある

外部のリソースを活用することは、開発力を向上するというメリットがある一方で、社内のノウハウ低下につながるリスクもはらんでいます。

連携の過程で外部の開発能力に依存し、社内の人件費や投資額を削減しすぎると、長期的には内部の研究開発が停滞する可能性があります。

外部評価を損なうリスクがある

ビジョンのない連携やミスコミュニケーションの発生によってプロジェクトが失敗に終わると、当該企業からの信頼性、さらには外部評価を損なうリスクもあります。

プロジェクトの目的とミッション、組織体制を事前に設計したうえで連携を進めることで、こうしたリスクを回避することが重要です。

オープンイノベーションの成功事例3選

オープンイノベーションに取り組むうえでの参考として、すでに成果を挙げている企業の事例も紹介します。

1. NTTドコモ

NTTドコモでは、2014年から社外パートナー企業との新規事業創出プログラム「39Works」を実施しています。

これまでに1,200件以上のビジネスアイディアを生み出し、そこから40件以上のプロジェクトが事業化されました。

パートナー企業の柔軟なアイディアを活かして、従来の事業とはひと味異なる新たな事業を創出しています。

39Worksから生まれた事業の例

  • 電子チケットサービス「teket」
  • スマートパーキングシステム「Peasy」
  • ファッション相談アプリ「coordimate」

2. サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、2016年に「AI Lab」を発足し、大阪大学との産学連携を結んでAI分野の研究開発を進めています。

AIを活用した対話エージェントの開発はすでに商業施設での実証実験まで進んでおり、来店者の質問に7割程度正確に回答できたという結果も出ているそう。

2024年にはサービスとしてのリリースも検討しており、実用化が近づいています。

3. エーザイ

エーザイでは、オンライン診療サービス「curon」を運営するMICINと連携して、顕在化していない不眠症患者に対するアプローチを進めています。

2社の連携によって、不眠症の簡単なテストから「curon」へとシームレスにつながるWebサイトを開設し、未受診患者へのアプローチを可能にしました。

それぞれが持つ「技術」と「知名度/顧客基盤」という長所を掛け合わせた、大企業とスタートアップによる価値創出の好例と言える事例です。

日本におけるオープンイノベーションの現状と課題

最後に、日本におけるオープンイノベーションが現在どんな状況なのか、普及にはどんな課題があるのかを解説します。

海外企業と比較するとオープンイノベーションの実施率は低い

国内企業でも少しずつ広まりつつあるオープンイノベーションですが、欧米企業と比べると、まだまだその実施率は低いのが実情です。

日本企業と海外企業、それぞれのオープンイノベーションに関する取り組みの実施率を調査した資料によると、その差は約30%。

日本企業 海外企業
約47% 約78%

参考:JOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)の調査より

実際に事例を見ても、アメリカやヨーロッパでは日本よりも多くの取り組みが行われており、成果が出ている企業も数多くあります。

日本においては、オープンイノベーションは普及しているとまでは言えない状況です。

日本におけるオープンイノベーションの課題

まだまだオープンイノベーションの実施率が低い日本ですが、背景には企業を取り巻く環境や文化的な課題があります。

  • リスク回避思考
  • 閉鎖的な企業風土
  • 既存の商習慣
  • スタートアップ企業の少なさ
  • 人材、資金の不足

スタートアップ企業の数や人材、資金の問題については状況が変わりつつありますが、企業風土や習慣、思考についてはまだまだ根強いものがあります。

日本政府も推進には力を入れていますが、オープンイノベーションが欧米並みに普及するにはまだまだ時間がかかるかもしれません。

まとめ

オープンイノベーションは、企業が外部の組織や個人などと連携して新たな価値を創出する手法。

技術進歩の加速や企業を取り巻く環境の変化によって、日本でも必要性が高まっています

まだまだ国内企業の実施率が低く、普及には時間がかかることが予想されますが、少しずつ成功事例も出てきています。

この記事で定義やメリット、デメリットをしっかり理解したうえで、自社での取り組みについて検討してみてはいかがでしょうか。

画像出典元:Unsplash、Pixabay

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