これから新規事業を始める経営者や企業担当者の方にとって重要となるのは、「いかに新規事業を成功させるか」という点です。
そのためにも、常に新規事業の行く末を多方面から考える必要がありますが、いざ事業を始めようとすると「何をどのように分析していいかわからない」という方も少なくないかと思います。
今回は「思考の軸」ともなるオススメのフレームワークを10個紹介していきます。
目的に応じた適切なフレームワークを使うことで、新規事業を成功に導く可能性が高まるので、積極的に活用するようにしてみてください。
このページの目次
最初に紹介するフレームワークは、ビジネスモデルキャンパスです。
Business Model Canvasの頭文字をとって「BMC」とも言われます。
ビジネスモデルキャンパスは、ビジネスで必要となる要素を9つに分解し、事業のビジネスモデルを整理することを目的としたフレームワークです。
具体的には、上図にあるような9つの項目に照らして、自社の事業を整理していく流れとなります。
①:どのような人たちと協業していくか
②:コーヒーショップでは具体的にどのような商品作りをしていくか
③:経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)はどのように配分するか
④:ターゲットとする顧客層はどうするか
⑤:顧客とはどのように関係性を築き上げていきたいか
⑥:顧客に価値を提供する方法やアプローチまでの流れはどうするか
⑦:自社にとってコアとなる価値はなにか
⑧:コスト構造や原価率はどのような想定になっているか
⑨:売上のスキームやシミュレーションはどうするか
①から⑨などを突き詰めて考えていくこととなります。
ちなみに、ビジネスモデルキャンバスと似た概念として、「リーンキャンバス」というフレームワークも存在しますが、両者はスタートアップ事業か否かで区別されます。
スタートアップでは、イノベーションとの関連性が強いため、事業そのものの不確実性や顧客ニーズの有無などが重要な検討ポイントとなります。
そのため、リーンキャンバスではビジネスモデルキャンバスと似たような9つの図を用いるものの、項目内に「顧客の課題」や「ソリューション」など、事業そのものの価値を検討するような作りになっています。
ビジネスモデルキャンバス:既に顧客ニーズのある事業に対して適用
リーンキャンバス:比較的新しい事業に対して適用
2つ目に紹介するフレームワークは「SWOT分析」です。
SWOT分析は、「内部環境(強み/弱み)」と「外部環境(機会/脅威)」にわけて、企業の状況を整理するためのフレームワークです。
具体的には、上図のように4つの象限にわけて、自社の状況を整理していきます。
例えば、産地直送の新鮮な食材を使って、地元の顧客層向けに飲食店を経営している企業のケースを考えてみます。
SO領域 :健康ブームの波に乗って、新鮮な食材を使った商品をアピール出来る
WO領域 :地元密着型の経営のため、都会を中心とした若者にアプローチしづらい
ST領域 :コロナ禍の影響でオンライン化が進み、新鮮な食材へのニーズが高まる
WT領域 :コロナ禍の影響で地元の顧客が店舗に来る機会が激減しつつある
一例ではありますが、外部環境のプラス(健康ブーム)やマイナス(コロナ禍)が発生した時に、自社が持つ強み(産地直送/新鮮な食材)や弱み(顧客セグメントの偏り)をどのように活かすべきかを整理することが出来ます。
整理するだけでは新しい行動に繋がらないので、もう一歩踏み込んで、脅威(コロナ禍)を利用して弱み(顧客セグメントの偏り)を克服出来ないかを考えることも重要です。
上記の例で言えば、コロナ禍によるオンライン化を利用して、配送サービスへの参入やふるさと納税を活用することで、都会の若者にアプローチしてみる、などが考えられます。
3つ目に紹介するフレームワークは「VRIO分析」です。
VRIO分析は、「4つの問い」に答えることで、自社の競争優位性を確認するフレームワークです。
以下の4つの項目の頭文字を取り、VRIOと呼ばれています。
1. Value(経済価値) ・・・ 自社の経営資源は経済的な価値を有しているか?
2. Rarity(希少性) ・・・ 自社の経営資源は希少といえるか?
3. Inimitability(模倣困難性) ・・・ 他社から模倣できない経営資源はあるか?
4. Organization(組織) ・・・ 保有している経営資源を活用できる組織体制か?
実際にVRIO分析する際には、以下のような表を用意して1つずつ質問に答えることで、事業が競争優位性を得ているかを確認していくことが一般的です。
一般的な質問の投げかけ方としては、以下のようになります。
質問項目に対してすべて「YES」であれば、持続的な競争優位性を得ていると判断することが可能になります。
ただし、YES/NOの判断は主観的になるため、本当に競争優位性を獲得しているかを客観的に判断することは難しいとも言える以上、目安として利用した方が良いでしょう。
4つ目に紹介するフレームワークは「MVV」です。
MVVは、会社のMission、Vision、Valueを明確にするために使われるフレームワークです。
ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)の頭文字を取ってMVVと言われ、それぞれ以下のような意味合いを持ちます。
5つ目に紹介するフレームワークは「3C分析」です。
3C分析は、市場を「自社(Company)、ライバル(Competition)、顧客(Customer)」の3つの軸でわけて考えるフレームワークのことです。
すべての頭文字を取って「3C分析」と言われています。
3C分析は、以下の図を用いて分析されることが一般的です。
上記の「A」「B」は一例ですが、それぞれの重なりを意識して自社の状況を整理していくことが重要になります。
例えば、飲食店一つ取っても、来店型の店舗経営だけではレッドオーシャン(上記B)になりがちですが、そこに何かしらの工夫(例:デリバリー事業への参入、全国への配送網、顧客の目を惹くIT導入など)があれば、ブルーオーシャン(上記A)を目指せる可能性があります。
実務で使う場合は、より細かな重なりを分析する必要がありますが、ここでは基本的な考え方だけでも知っておくようにしてください。
6つ目に紹介するフレームワークは「TOWS戦略」です。
TOWS戦略は、クロスSWOT分析とも言われる手法で、先ほど紹介したSWOT分析を項目ごとにかけあわせて詳細に分析する方法のことです。
具体的には「強み」「弱み」「機会」「脅威」にわけた後で、各項目ごとに掛け合わせて戦略を考えることになります。
ただ、先ほど紹介したSWOT分析時に、既に項目ごとに掛け合わせた利用方法を紹介しているので、そちらを参照して理解してもらえれば十分です。
コンサル実務でも、TOWS戦略をSWOT分析とわけて使うことはほぼありません。
7つ目に紹介するフレームワークは「ポジショニングマップ」です。
ポジショニングマップは、自社のポジショニングを2軸マトリックスを用いて分析する方法です。
何を軸に取って分析するかは企業ごとに異なりますが、SWOT分析でも例に出した「産地直送の新鮮な食材を使って、地元の顧客層向けに飲食店を経営している企業のケース」を考えてみたいと思います。
軸の取り方は自由ですが、基本的に相関関係にない要素を軸として取るようにしましょう。
上記例でポジショニングマップを描いたものが以下となります。
これは一例ですが、自社が今後目指す方針によっては、どのような企業がライバルになり得るのか、またチャンスがありそうな「ポジション」はどこかを明確にすることが可能となります。
8つ目に紹介するフレームワークは「PEST分析」です。
PEST分析は、企業が直面しているマクロの外部環境を分析する際に使えるフレームワークです。
以下の4つの項目の頭文字を取り、PESTと呼ばれています。
1. Politics(政治面):政府や法律、関連規制の影響を受けているか?
2. Economics(経済面):マーケットの状況や為替、金利の影響は?
3. Socio-Cultural(社会/文化面:社会のトレンドや社会課題などの影響は?
4. Technology(技術面):新しいテクノロジーが及ぼす影響はどの程度か?
この各4つの項目について、自社が直面している状況を書き出していくことで、マクロ要因の把握や分析をすることが可能になります。
会社の事業によって影響を受ける項目や重視すべき項目は異なりますが、都心への進出を目指す企業であれば、最近のオンライン化の流れや、地方創生・地方回帰の流れは非常に重要な外部要因と言えるでしょう。
9つ目に紹介するフレームワークは「ペルソナ分析」です。
これは簡単に言ってしまえば、自社の商品・サービスのターゲット層を明確にするために使う手法のことを言います。
事業を展開する上では、誰にどんな価値を提供するかを考えることが重要なので、意識せずとも使っている方が多いフレームワークとも言えます。
これから新規に展開していく事業が若者向けである場合、商品認知のためにはオウンドメディアによるSEO検索に力を入れるよりも、TwitterやInstagramなどのSNSを積極的に活用していった方が良いケースもあります。
購買層を明確に定義することで、企業が取るべき行動も変わるため、しっかりとターゲット層は意識するようにしてみましょう。
最後に紹介するフレームワークは「PDCA」です。
「PDCA」は成功につながる行動の質を継続的に改善するためのアプローチ方法です。
具体的には「Plan(計画)→Do(実行)→Check(チェック)→Action(改善)」のプロセスを経て、行動の質をあげていくことになります。
SNSを活用して多くのユーザーやファンを獲得したい場合を例にあげると、下記のような流れになります。
基本的なフレームワークですが、高い効果を得られる手法でもあるので、高速でPDCAを回せるように意識してみてください。
画像出典元:「Jumful College (人援隊)」公式HP
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Jumful Collegeのフェーズ1は、コンサルティング費用や研修プログラムの設計料などがパッケージングされたわかりやすい料金プランです。
最小催行人数が8人以上のため、一度の実践プログラムにつき最低でも480万円かかります。
さらに商品/サービス開発やマーケティングなど、別のプログラムを設計する場合は別途問い合わせが必要です。
基本プラン | |
参加費用 (税別) |
600,000円/人 (最小催行人数:8人) |
含まれるもの |
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含まれないもの |
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別途実費が必要なもの |
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今回は、新規事業の時に使えるフレームワークを10個紹介してきました。
場面によって活用すべきフレームワークは異なるので、今直面している課題に応じて選択・活用するようにしてみてください。
画像出典元:Shutterstock
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TAK
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