フレームワークは、さまざま要因が影響をおよぼすビジネスの方向を見定めるための思考整理のツールです。
この記事では、経営戦略を立案するためのフレームワークにはどのような種類があり、それぞれぞれがどのような特徴を持っているかを分かりやすく解説します。
また、選択したフレームワークを活かす使い方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
フレームワークとは、経営戦略を立てるために必要な「現状分析」の方法を示すガイドラインです。
「いま会社は何をすべきなのか」を考える(=経営戦略を立てる)ためには、まず会社の現状がどうなのかを分析しなければなりません。
しかし、一口に「現状」と言っても、会社は生き物であり、会社を取りまく環境も変化し続ける生き物です。
分析すべきファクターは無限にあり、何が重要なのか、どこから手を付ければ良いか分らないのが実情でしょう。
そこで役に立つのがフレームワークです。フレームワークには多くの種類がありますが、どのフレームワークも独自のキーワードを持っています。
あるフレームワークでは、会社の「強み」と「弱み」というキーワードで思考や分析の対象と方向性を示しています。
また、別のフレームワークでは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)というキーワードを経営戦略の枠組みとして提唱しています。
このようなフレームワークを使うことで、会社の現状分析とそれに基づく経営戦略の立案に一定の方向性が与えられます。
おもにアメリカの経営学者によって提唱されてきた経営戦略のフレームワークには非常にたくさんの種類があります。
フレームワークとはどのようなものかを知るために、その中から代表的なものを5つをピックアップして、その概要を説明します。
SWOT(スワット)分析は、会社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を分析の軸として経営戦略を立案するフレームワークです。
「強み」と「弱み」は会社の内部環境に、「機会」と「脅威」は外部環境に存在します。
SWOT分析はもっとも有名でスタンダードなフレームワークで、業種を問わずに多くの企業で用いられています。
SWOT分析による経営戦略の立案は、具体的には次のように行ないます。
1. タイムスケジュールの決定: 分析に1ヶ月、立案に1ヶ月かけ、2ヶ月で戦略を策定し発表する、など。
2. 外部環境の「機会」と「脅威」を経営者、幹部社員、営業マン、外部専門家などで分析する。
3. 内部環境の「強み」と「弱み」を現場のワークショップなどを通じて洗い出して分析する。
4. 2と3の分析に基づいて経営戦略を立案する。戦略の内容には、立てた戦略の実施策やスケジュールも含まれます。
このようにして立案された戦略が成功するかどうかは、分析段階での正確さと数値化できないものへの洞察・評価にかかっています。
また、現状分析から論理的(自動的)に経営戦略が導き出されるわけではなく、実際には不確定な要因に対する取捨選択の決断が必要になります。(これは、以下に紹介するフレームワークのどれにも言えることです)
5Forces(ファイブフォーカス)分析は、既存事業の撤退、新規事業への参入、新商品の投入などの戦略を立てるときに使われる、特定業界の動向分析のためのフレームワークです。
勝負しようとしている業界にどんな魅力や将来性があるかを分析するフレームワーク、と言い換えてもよいでしょう。
5Forcesとは、その業界内で収益に影響を与える「5つの力」です。
これらの力・脅威を分析して、それに対抗するためのニッチ戦略、差別化戦略などを立てるために使われのが5Forces分析です。
製造業、サービス業を問わず、競争が厳しく、新規参入の多い業種でよく使われるフレームワークです。
3C(サンシー)分析は、自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つのCを軸に経営戦略を立てるフレームワークです。
おもに外部環境を分析してマーケティング戦略を立てるツールとして使われます。
この3つの視点から現状を分析して、課題と目標を導きだし、その施策を立案するのが3C分析です。
自社、顧客、競合というキーワードは居酒屋から自動車産業まですべての商売、企業に当てはまるので、業種を問わずに利用されています。
VRIO(ブリオ)分析は、企業の内部環境を分析して「自社が持っている値打ち」を探るフレームワークです。
その値打ちは、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織(Organization)という4つの観点から計量されます。
企業の経営資源にこの4つが多いほど競争で優位なポジションを確保して、顧客満足度を高めて、シェアを拡大することができます。
V・R・I・Oのそれぞれのどこに強みと弱みがあるかを明確にすることで、弱みを補い、強みをさらに伸ばす経営戦略を立てようとするのがVRIO分析です。
おもに製造業で用いられるフレームワークですが、サービス業でも応用できます。
サービス・プロフィット・チェーンは「従業員満足⇒顧客満足⇒企業利益」という輪(チェーン)の好循環を目指すフレームワークです。
会社が従業員を大切にすることで、サービスの質が上がりリピーターが増える。
それが会社に利益をもたらし、その利益を従業員に還元することでさらにサービスが向上するという考え方です。
SPCは、おもに飲食業、理美容業、観光・娯楽業などのサービス業の経営戦略の立案に用いられます。
このようなサービス業では従業員と顧客(生産と消費)が密接しているので、従業員の満足度(Employee satisfaction)が顧客満足(Customer satisfaction)を左右する重要なファクターになるからです。
従業員の満足度を上げる企業戦略には、待遇面の改善だけなく、従業員をリスペクトする企業風土の醸成が求められます。
フレームワークを上手に使うには、数あるフレームワークの中から企業の特性に合ったものを選ぶことが重要です。
そのためには、代表的なフレームワークについて一通りの知識を持っておく必要があります。
また、あるフレームワークに従って分析を進める中で、特定の部門で別のフレームワークを利用する、ということもごく普通に生じます。
例えば、SWOT分析を行なうときに、外部環境の機会(Opportunity)と脅威(Threat)の分析に3C分析の自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の概念を取り入れるなどです。
フレームワークを使って現状分析を進めるうちに、それまで意識されなかった課題が明らかになる、視界に入らなかった顧客ニーズが見えてくるなど、経営戦略の立案に役立つ情報が得られます。
しかし、フレームワークは実務家ではない経営学者が「創った」理論です。「〇〇を分析すべし」という方向性は正しくても、実際に分析するのは簡単ではありません。
フレームワークが思考の整理を助けるのではなく、思考を迷路に誘い込む悪魔の仕掛けに見えることもあるはずです。
分析によって得られたデータを生きた情報に翻訳するには、実務家としての経験が必要です。
また、その情報を行動プログラムとしての経営戦略に落とし込む際には、かならず残る不確定要素を評価・取捨選択する決断やある種の跳躍が必要になります。
経営戦略の立案に使われるフレームワークの中から代表的なものを5つご紹介しました。
どのフレームワークも、複雑なビジネスの方向を探るための思考の整理に役立つ枠組みですが、重要なのは企業のフィールドや特性にマッチしたフレームワークを選択することです。
また、フレームワークはあくまで現状分析のための道具であって、それを使えば理論的に正しい経営戦略が導きだされるというものではありません。
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