DX(デジタルトランスフォーメーション)が、ビジネスの将来や企業の競争優位性を左右するキーワードとして話題になっています。
経済界だけでなく国もDXの重要性に注目して「企業は2025年までにDXを推進しないとデジタル競争の敗者になる」と警鐘を鳴らしています。
この記事ではDXとは何かを、事例をあげて基本から分かりやすく解説しています。
このページの目次
トランスフォーメーション(transformation)とは、生物学では蛹(さなぎ)が蝶になるような「変態」のことを指します。映画や玩具の世界では、ロボットが車になるなどの「変身」のことです。
このように、一見すると同じものとは思えないような劇的な変化をすることをトランスフォーメーションと言います。
デジタルトランフォーメーションとは、情報のデジタル化によって起きる世の中(ビジネス)の劇的な変化のことです。
例えば、最近は写真や設計図などを運ぶバイク便がビジネス街からすっかり姿を消しました。
これは、写真も設計図もデジタル化されて光ファイバーで瞬時に届けることができるようになったからです。
情報資材を足を使って運ぶ必要がなくなると、会社に行かなくても仕事はできるという状況も生じます。
在宅ワークが進むと通勤ラッシュがなくなり、大きなオフィスも必要なくなるかもしれません。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単にデジタルテクノロジーの進化ではなく、それによって生じる世の中(とくにビジネス界)の「大きな変化=変革(イノベーション)」を指しています。
いまDXが話題になっているのは、現に起きつつあることへの関心だけでなく、将来何が起こるか分らないという期待や不安、危機感も含まれています。
情報のデジタル化とそれを利用するシステムづくりによって、どんな新しい製品・サービス、ビジネスモデルが登場してくるか分らないし、既存のビジネスが消滅してしまうこともあるからです。
【MEMO】
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語がDTではなくてDXなのは、transをXと略記する英語圏の習慣によるものです。
デジタルトランスフォーメーションと似た言葉に、デジタイデ―ション、デジタライゼーションがあります。
デジタイゼーションとは、アナログ情報をデジタル化することです⇒紙に書かれた設計図をデジタル情報に置き換えるなど
デジタライゼーションとは、デジタル化された情報をビジネスに利用する仕組み作りのことです⇒デジタル情報を光通信で送るなど
DXとは、デジタライゼーションによって生じるビジネス界の大きな変化、社会的な影響のことです⇒バイク便という職業がなくなる、会社に通勤する必要がなくなるなど
一般消費者に身近な近年のDXの例としては次のようなものがあります。
経済産業省は2018年5月に、有識者による「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、同年9月に研究会の報告書「DXレポート」を発表、12月には「DXを推進するためのガイドライン」をまとめました。
お役所仕事とは思えないこの精力的な活動には、「DXで諸外国に後れを取ると日本経済は深刻なダメージを受ける」という強い危機感があります。
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起ころうとしています。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められています。
※「DXを推進するためのガイドライン」は2022年9月に「デジタルガバナンス・コード2.0」に統合されています。
経済産業省の危機感はDXレポートのサブタイトル『ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開』によく現れています。
2025年の崖とは、いわばDX推進という滑走路の端にある断崖絶壁です。
2025年というタイムリミットの設定に明確な根拠はありませんが、この頃までに企業がDXへの助走を終えて浮揚しておかないと、会社(航空機)は崖から落ちてクラッシュしてしまうだろうというのです。
爆発的に増加するデータを活用しきれずに DX を実現できず、 デジタル競争の敗者となる恐れがある。
IT システムの運用・保守の担い手が不在に なり、多くの技術的負債を抱えるとともに、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる。
サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスク も高まることが予想される。
引用元 :経済産業省「DXレポート」26ページ
※箇条書き分けとマーカーによる強調は引用者
経済産業省のDXレポートは、企業の既存のシステム(レガシーシステム)がDX推進の大きな足かせになっていることを指摘しています。
ただし、レガシーシステムといっても、「デジタル化(IT化)されていないシステム」という意味ではありません。
現在では製造管理や営業管理がある程度IT化されていない企業はないといっても良いでしょう。しかし、必要に応じてIT化されてきた現存システムがDX推進にはむしろ障害になることがあります。
いわば、建て増し、建て増しで〇部門のIT化や△部門のIT化を進めてきたことで、それを統合しようとしたときに、いたるところに迷路や袋小路が生じていたというような状況です。
しかし、更地にして一から立て直すわけにもいかず社内の反対もある、という足かせでためらっているうちに2025年の崖が迫ってくる、というのがDXレポートが危惧する最悪のシナリオです。
参照 :経済産業省「DXレポート」
※マーカーによる強調は引用者
経済産業省は、上記のような問題意識で、DXを次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用元 :経済産業省 デジタルガバナンス・コード
※マーカーによる強調は引用者
DXを推し進めるカギとなるデジタルテクノロジーにはどのようなものがあるか解説します。
現在、プロの囲碁棋士は、対局中はスマホを事務局に預けなければなりません。これはAI(人工知能)の棋力(囲碁の腕前)が、プロ棋士と同等あるいはそれ以上になったからです。
医療分野では、CTスキャンなどの画像をAIに読み取らせ解析させることで、がんの早期発見などに役立てる医療画像診断支援が進んでいます。
AI(人工知能)はDX推進の中核的なデジタルテクノロジーで、AIの進化とともに新しいDX(デジタルトランスフォーメーション)の地平が広がります。
ビッグデータとは、これまで使い道がないとして無視されていた膨大な些末(さまつ)情報のことです。
例えば、スーパーマーケットの店内カメラを、防犯に使うだけでなく、A商品をかごに入れた人は次にどこの売り場に行きどんな商品をかごに入れるか、などの情報をビジネスに結びつけるのが「ビッグデータの活用」です。
ビッグデータは、コンピュータの情報処理機能の飛躍的な発展、AIの進化によって活用が可能になり、さまざまな分野でイノベーションを起こす可能性を秘めています。しかし、個人情報の使途の是非など解決すべき問題も多くあります。
IoTは「Internet of Things」の略で「モノのインターネット」と訳されています。
IoTとは、センサーと通信機能を備えたモノが、インターネットを通じて情報をやりとりして自動制御する(仕事をする)システムです。
代表的な例としては、自動車の自動運転装置、家の外からコントロールできるスマート家電、物流倉庫の仕分けロボットなどがあります。
IoTの情報交換を可能にするのがクラウド(クラウドコンピューティング)です。
クラウドとは、字義的には雲(cloud)のことですが、コンピュータ用語としては、データやアプリが個々のパソコンにあるのではなく、それをつなぐネットワーク上にあるシステムです。
A銀行の預金をB銀行のATMから引き出せるのは、どちらの銀行も同じ「クラウド」とデータのやり取りをしているからです。
先ほど紹介した医療画像診断支援もクラウドに乗せることによって、解析ソフトを所有しない世界中の医療機関で利用可能になります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、誰も押しとどめることができない大きな流れで、産業界や社会生活のあり方を大きく変容させることが予想されています。
経済産業省が警鐘を鳴らすように2025年がDX落伍者の崖っぷちになるかどうかはともかく、すべての企業がDXに向けてレガシーシステム(既存のITシステム)の見直しを迫られていることは間違いありません。
画像出典元:pixabay
業務自動化とは?RPA含む自動化ツールの導入方法や注意点を解説!
RPAとは何か?メリットや導入事例を簡単にわかりやすく解説
電子契約の費用・相場は?費用対効果と合わせて解説
RPAとマクロ(VBA)の違いは?特徴と適した業務を徹底比較!
RPAでできることは?どんな業務をどこまで自動化できるか解説
フィールドセールスとは?成約率を上げるインサイドとの連携術も紹介
自動化できるルーチンワークは?RPAで業務効率化!活用のポイントも
事務作業を自動化する方法3選!RPA活用例・事務職の将来も解説
RPA無料トライアルありおすすめツール10選!選び方や注意点も解説
eKYCとは?オンラインで本人確認するメリットや成功した導入事例