RPAは、多くの企業が導入し始めているITツールです。
システムと連携して取引先へ請求書を送付したり、会計ソフトと連携して入金処理や消込処理をしたりと、簡単なデータ入力以外の業務も自動化できます。
自社の企業力を高めるためにも、ルーチンワークの見直しや改善が欠かせません。
日々のルーチンワークを効率化できれば、「生産性の向上」や「人手不足の解消」なども期待できるでしょう。
そこで、今回はRPAの導入で自動化できる業務とできない業務について、わかりやすく解説していきます。
さらに活用するポイントや費用相場についても解説しますので、業務効率化を目指す企業担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
RPA(Robotic Process Automation)はロボット技術を活用して、パソコン上で行う定型業務を自動化するソフトウェアのことです。
データ入力や請求書作成など、日常的に発生するルーチンワークをロボットに任せることで業務を効率化することができ、生産性向上にもつながると注目されています。
RPAには大きく分けて3つの種類があり、それぞれで特徴が異なります。
各種の導入コストやランニングコストの相場をまとめると、以下の通りです。
RPAの種類 | 導入コスト | ランニングコスト/月 | 特徴 |
クラウド型RPA | 30~50万円 | 10万円~ | 導入が手軽で、利用者の増減があっても管理が簡単。 |
デスクトップ型RPA | 0~50万円 | 5万円~ | PCにインストールするタイプで、比較的安価。 |
サーバー型RPA | 100~数千万円 | 30万~ | 自社専用にRPAを開発し、自由にカスタマイズできる。 |
RPAを導入するとライセンス料や開発費用である導入コスト、オプション費用を含めた月額料金が発生します。
導入する製品によっては導入コストが安価でも、ランニングコストが膨らんでしまうものもあるため、どのように運用するか事前に検討しておくことが重要です。
なかには無料で利用できる製品もありますが、限られた機能であることが多く、自社の対象業務に合わないことも。
さらに、社外サポートを利用する場合はサポート費用や、保守・運用費用が発生するケースもあります。
予算を確保する際はどんな機能が必要か、どこまでサポートを受けるかも考慮しておきましょう。
ここからはRPAで自動化できる主なルーチンワークを6つご紹介します。
自社で自動化できるルーチンワークがあるか、確認してみましょう。
RPAが得意な業務の代表として、データ入力が挙げられます。
手作業で行っていたデータ入力業務をルール化し、RPAに設定することであらゆるデータの登録や更新、修正の自動化が可能です。
アナログ文書を読み取るOCR機能と組み合わせれば、自動でシステム入力や転記も実現します。
自社製品の価格調査や競合製品の販売動向など、Web上からの情報収集もRPAの得意分野です。
集めた情報はメールやチャットなどを活用して共有できるため、リアルタイムの情報を社外にいる営業担当に知らせることも可能です。
AIを搭載したRPAであれば、収集した情報を元に分析することも可能なので、営業支援ツールとしても役立つでしょう。
会計ソフトとRPAを連携すると、取引先への請求書の作成・送付までを任せることができます。
はじめに、RPAでエクセルや営業システムに登録されている売上データを読み込み、会計ソフトへ取り込んで請求書を作成。
その後、取引データを元にメール添付・送信するといった流れです。
RPAは設定された通りに動くITツールのため、宛先間違いや添付間違いなどを起こすリスクもなく、スケジュールを設定しておけば送信漏れすることもありません。
売掛金や消込処理、仕分け入力や買掛金処理など、経理部門のルーチンワークもRPAが自動化できる業務の1つです。
入金確認後のメール一斉送信や、複数の支払い処理もRPAに任せれば、より重要性の高い経理業務に専念できます。
RPAとチャットボットを連携させれば、営業日報や業務報告レポートなど定型レポートも自動作成と提出が可能です。
必要な項目をチャットで回答するよう設定しておくと、わざわざ職場に戻らずともスマホから日報の作成が完了します。
また、作成した日報はクラウド上にアップロードされるため、提出も楽になるでしょう。
複数のシステムやツールと連携できるRPAは、受発注管理業務に関わる転記作業も自動化できます。
顧客からの注文書や注文メールから受注情報をデータベースに登録し、関連部署への在庫確認や納期確認もRPAに任せられます。
また、発注書を作成後に自動で取引先にメール送信もできるため、営業担当は確認作業に手間取ることなく営業活動に専念できるでしょう。
ルーチンワークを自動化できるRPAは、導入することで多くのメリットが得られます。
ここからはRPAの導入で得られるメリットについて5つご紹介します。
属人化とは、業務の詳細を特定の社員しか把握できていない状態を指します。
業務の進め方が担当者独自のやり方になってしまうため、無駄な手順があっても気づかない、担当者が不在時にほかの社員が代行できない、といった問題が発生しがちです。
これを防ぐには、現在の業務プロセスを洗い出し、必要な業務とそうでない業務を選別して整理する必要があります。
RPAを導入する際にもこの工程は必須であるため、導入に当たって業務プロセスをマニュアル化することで、再び属人化するのを防ぐことができるのです。
業務効率化が進むと社員は残業や休日出勤する必要がなくなり、人件費の削減につながります。
RPAにも運用コストはかかりますが、人件費よりも低コストかつ定額なため、予算も組みやすくなるでしょう。
煩雑で時間のかかる事務処理業務を複数のRPAで効率化させたことで、年間8,000時間の事務処理作業を削減した事例もあります。
(参考:総務省|情報通信統計データベース|RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上))
人は長時間作業していると集中力が低下し、普段はしないミスが発生するケースも少なくありません。
しかし、RPAであれば決められたルール通りに業務を実行するため、ヒューマンエラーの発生を防止できます。
業務の品質を一定化させることはもちろん、これまでヒューマンエラー回避のためにダブルチェックを行っていた企業であれば、チェック作業が不要になります。
人手不足によりチェックが滞りがちな企業にとって、RPAは強い味方になってくれるでしょう。
RPAに日々のルーチンワークを任せれば、社員は単純作業ではなくコアな業務に集中できます。
ルーチンワークにかかっていた労働力や時間が、重要度の高いコア業務に割り当てられることで従来よりも生産性を高めることができるでしょう。
それによって社員のモチベーションが上がれば、人材の定着率アップにもつながります。
RPAは非常に優れたツールですが、業務上のすべてのタスクを遂行できるというわけではありません。ここでは、RPAを導入してもできないことを3つご紹介します。
RPAは人が設定した通りにしか業務を進められず、自ら考えて業務を行うことはできません。
RPAを導入する際は、社員が業務へのアプローチ方法を考え、必要な情報の取捨選択や条件分岐方法を設定してあげましょう。
イレギュラーが発生した場合の判断もRPAはできないため、条件分岐を設定する際は細かく設定する必要があります。
RPAは自ら考えたり、判断したりできないため、手順が複雑な処理ができません。
たとえば業務自体は一緒であっても、システムのバージョンアップによりボタンの位置が変更になったり、情報収集先の仕様が変わったりすると、業務が止まってしまいます。
近年では、AIを活用した学習機能が搭載されているRPAツールが増えてきました。
学習機能を活用して一部の非定型業務は対応できるようになりましたが、まだすべての業務を完全に自動化するのは難しいでしょう。
RPAは決まったルーチンワークを自動化できますが、ただ導入しただけではメリットは得られません。
最後にRPAを導入する際の手順と導入前後の活用ポイントをご紹介します。
RPAを導入する手順は、基本的には以下の流れです。
RPAを導入する際は、対象業務を棚卸しして、自動化できる業務・できない業務を整理します。
自動化できそうな業務が決まったら、RPAツールの選定や運用フローについて決めていきましょう。
RPAツールを選ぶ際は、無料トライアルなどを活用し、自社の課題が解消できるような機能があるか、誰でも利用できる操作性かを見極めることが重要です。
導入後もトライ&エラーを繰り返し、定期的な効果測定を行いながら、徐々に社内にRPAを拡大させていきます。
まずは、RPAを導入する前に確認しておきたいポイントを紹介します。
上記の手順でいうところの1〜3の部分がこれに当たります。
RPAを導入する際は、自社が抱えているどんな課題を解消したいのか、なにを実現させたいのか目的やゴールを決めましょう。
「ルーチンワークを自動化して残業時間を削減したい」「ヒューマンエラーを防止したい」など、具体的に決めておく必要があります。
RPAを導入しても、導入目的が明確化されていなければ成果がでているのかがわかりにくく、思ったような費用対効果が得られません。
導入の目的や自動化する業務を決めるのと同時に、RPAを維持・管理する予算の組み込みも大切なポイントです。
RPAは導入した後も定期的なメンテナンスや改善が必要であり、追加で管理コストがかかるケースも。
RPAの拡張機能を活用したり、自社業務に合わせてカスタマイズしたり、どの程度運用コストがかかるのか事前に確認しておきましょう。
最後は、RPAを導入した後に確認しておきたいポイントです。
上記の手順でいうところの4の部分がこれに当たります。
本格的にRPAを運用する際は、導入した部署だけでなく全社的にツールを活用するように勉強会や説明会を実施しましょう。
トラブルによって業務が停止しないよう、RPAの取り扱いに長けた人材の育成も重要なポイントです。
RPAを導入する際はチーム単位、または1つの部署から運用を始め、自動化して不具合がでないか、さらに自動化できる業務はないかなどを確認していきましょう。
簡単なデータ入力や転記作業など、支障の出にくい小さな業務から始めると、トラブルが起きたときも対処しやすいです。
運用してみて問題がなければ、別の業務にもRPAを導入し、徐々に自動化する範囲を拡大していきましょう。
RPAによる自動化の効果を高めるためには、定期的な改善やメンテナンスも欠かせません。
自動化が進められそうな業務があればRPAに組み込み、効果測定を行いながらPDCAを回していきましょう。
社内のルーチンワークを自動化すると、業務の属人化の解消や生産性の向上などさまざまなメリットが得られます。
RPAを導入しルーチンワークを自動化すれば、人手不足や人件費の削減といった悩みも解決できるでしょう。
しかし、明確な目的なくRPAを導入しただけでは無駄な投資になりかねません。
RPAを導入する際は、導入後も目的が達成できているか効果測定をしながら改善していく必要もあります。
ぜひ、RPAを導入して業務効率化を目指してみてください。
画像出典元:写真AC
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