業務効率化に役立つ技術としてRPAを導入する企業が増えていますが、実はさらに進歩した技術であるIPAも注目されています。
まだ国内ではツールやサービスは登場していませんが、近い将来ビジネスシーンで欠かせない技術となることが予想されます。
では、RPAとIPAにはいったいどんな違いがあるのでしょうか?
この記事では、それぞれの特徴、活用できる部署や業務内容、よくある疑問などについて解説します。
このページの目次
IPAとRPAの違いについて、まずは基本的な内容から理解していきましょう。
どちらもビジネスプロセスを自動化する技術ですが、それぞれ目的や得意分野が異なります。
目的 | データ取得/入力 | 計算処理 | パターン化された処理 | データ分析 | 複雑なシステム処理 | プロセスの改善 | ||
IPA | 複雑な業務・判断を伴う業務の自動化 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
RPA | 繰り返し・ルーティン業務の自動化 | ○ | ○ | ○ | △ | × | × |
IPA(Intelligent Process Automation)は、AIや自然言語処理などの技術を活用して、複雑な業務を自動化する技術です。
AIがプロセスの分析と最適化、機械学習に基づいた判断を行うため、RPAよりも複雑で高度な業務を自動化することができます。
また、自然言語の処理が可能なことから、抽象的な指示でもタスクを定義して実行することもできます。
ビジネスに導入することで業務効率が飛躍的に向上するIPAですが、まだ国内では実用化の例はほとんどないようです。
RPA(Robotic Process Automation)は、ルーチンタスクや繰り返し作業など、単純な作業の自動化に特化した技術です。
与えられたタスクに対して、ロボットが事前にプログラミングされたルールに基づいて自動的に処理を行うという仕組みです。
単純作業をスピーディーに行うのが得意な一方で、判断が必要な処理やルールから外れた処理の自動化は苦手。
すでに国内外の様々な業界で実用化されており、ツール化された製品も数多く登場しています。
仕組みや得意分野が異なるIPAとRPAですが、より具体的に、どの部署のどんな業務に適しているのでしょうか。
すでに取り組みが進んでいる活用事例や、将来的な活用のアイディアを紹介します。
営業やコンサルが行っている高度なプランニングや提案書の作成は、IPAならある程度自動化することができます。
例えば、顧客の財務情報をIPAにインプットすれば、財務状況に合わせた最適な投資プランを自動的に分析して、提案資料を作成することが可能です。
もちろん、財務だけでなく、業務プロセス改善や商品提案など、幅広い分野でのプランニングに役立ちます。
IPAを使用して応答システムを構築すれば、顧客からのよくある質問や不満を担当者なしで解決できるようになります。
自然言語処理を備えたIPAシステムなら、顧客は担当者とチャットするような感覚で疑問を投げかけるだけでOK。
簡単な対応を自動対応できるようになれば、カスタマーサポート担当者はより複雑な問題に対応することができ、効率化や顧客満足度の向上につながります。
顧客データをIPAに取り込んで、マーケティング業務に活かすことも可能です。
例えば、IPAが顧客を属性ごとに分類して、それぞれに適したメッセージや文面を自動で生成し、パーソナライズした情報発信をすることができます。
そのほかにも、サイト上の顧客の行動データをIPAに取り込んで、それに基づいて商品のレコメンドやコンテンツ表示を行うといったアイディアも考えられます。
請求書をスキャンしてデータ化、データベースに入力する処理や、請求書の数値チェック、支払い処理なども、ルール化できる範囲であればRPAで自動化できます。
バックオフィス業務の大きな割合を占めるこうした作業を自動化できれば、担当者の作業負担の軽減や人件費の削減などの効果が期待できます。
勤怠システムの記録や開け締め作業、給与計算など、ルーティン化されたものが多い人事業務はRPAでの自動化に最適。
特に出退勤の登録や打刻漏れのチェック、休暇や有給などの申請、承認作業などの処理には大いに役立ちます。
手作業で行われていた勤怠管理の作業量を大幅に削減し、正確性を向上させる効果が期待できるでしょう。
営業部でネックになりがちな顧客データの入力、更新作業もRPAで代替可能です。
例えば、商談の日報や報告、問い合わせなどから特定の情報を抽出して、セールスフォースや社内システムに反映することができます。
また、見積もりに関する情報を入力するだけで、自動で書面に起こして顧客にメール送信するといった使い方も考えられます。
IPAとRPA両者の違いを理解したうえで、将来的な導入や乗り換えを視野に入れた実際的な疑問についても考えてみましょう。
IPAは、RPAにAIや自然言語処理の技術を組み合わせてより高度なタスクをこなすことを目的とした技術のため、ほとんどの作業を変換することができます。
ただし、RPAツールは単純なタスクを高速・大量に処理するのに適しているため、IPAに変換することで単純な処理性能が下がる可能性がないとは言えません。
将来的にIPAを導入するとしても、すべての作業をそのまま変換できるとは考えない方が良いでしょう。
RPAを導入している企業がIPAを導入するかどうかは、基本的にRPAによる自動化で事足りているかが判断基準になります。
以下のような場合には、将来的なIPAの導入を検討すべきかもしれません。
人工知能や自然言語処理を活用するIPAは、複雑なタスクの処理に強みがあります。
そのため、RPAだけでは自動化が困難なタスクを抱えているという場合には、IPAの導入が有効です。
IPAは、AIによる業務プロセスの分析や改善提案が可能です。
タスクを自動化するだけでなく、業務自体の効率化や生産性向上に役立てたい場合はIPAが役立つでしょう。
IPAは、海外ではいくつかの企業や組織で導入されているようですが、国内では製品レベルでの実用化はまだされておらず、活用例もありません。
IPAには高度なAIや自然言語処理技術が必要で、さらに分野によっては専門知識のインプットも必要なため、まだ技術的な要件が満たされていないようです。
ただし、「Chat GPT」をはじめAI技術は現在急速に発展しているため、近いうちに製品化される可能性があります。
実際に、ここ最近では、抽象的な指示からタスクを生成し、自動的に実行できる「Auto-GPT」のようなツールも登場しています。
IPAは、RPAにAIや自然言語処理を組み合わせて、より高度な処理を自動化することを目的にした技術です。
RPAが単純なタスクしか自動化できないのに対して、判断を伴う処理の実行やプロセス自体の改善にも役立ちます。
ビジネスで導入すれば、業務の生産性・効率の飛躍的な向上が期待できるでしょう。
まだ製品レベルではほとんど実用化されていませんが、AI技術が急速に発達していることを考えれば、もうすぐ誰もが利用できるようになるかもしれません。
画像出典元:Pixabay、Unsplash
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