近年、大企業だけではなく、中小企業でもRPAの導入が注目されています。
しかし「RPAは大企業が使うもの」「自社でRPAを導入するメリットはあるのだろうか」と考えている中小企業の担当者も少なくないことでしょう。
この記事では、中小企業がRPAを導入すべき3つの理由、得られる効果、参考事例について詳しく解説します。
RPAの導入を検討している企業の担当者はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略語で、PC上でおこなう事務作業を自動化できる「ソフトウェアロボット」のことです。
多くのオフィスでは人間の手によって、日々さまざまな事務作業がおこなわれています。
RPAはデータの登録や転記、発注・受注などといった、定型的で反復性の高い業務を自動化してくれるため、業務改善につながるとして大きな注目を浴びています。
RPAについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
中小企業がRPAを導入すべき理由として、以下の3つが挙げられます。
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
少子高齢化の流れが止まらない日本では、生産年齢人口、つまり労働人口の減少という深刻な問題を抱えています。
これは業種や会社規模を問わない問題ではありますが、とりわけ人材育成に資金と時間を割く余裕のない多くの中小企業にとっては死活問題です。
RPAを導入した場合、単純作業や繰り返し作業を自動化できるため、明確な即戦力につながります。
機械でできる作業はロボットに任せることで、慢性的な人手不足の解消に大きく貢献することでしょう。
日本企業の中には、長時間労働が当たり前になっている中小企業が少なくありません。
残業が増えると、労働生産性が低下するだけではなく、従業員の離職にもつながりやすくなります。
RPAツールを導入すれば単純作業から解放されるため、業務時間の削減に期待ができ、従業員のストレス軽減や健康向上にも役立ちます。
中小企業は大企業と比べて人材が少なく、特定の業務を担当者ひとりだけで行うことが珍しくありません。
そのため、ほかの従業員に知識やノウハウが共有されず、業務が属人化されやすい傾向にあります。
RPAを導入すればシステムに手順が記録されますので、誰がやっても同じ結果を得られる仕組みづくりを構築できます。
つまり、RPAがあれば担当者が変わるたびに業務が停滞するといった心配がありません。
導入すべき理由がわかったところで、企業におけるRPAの導入率はどのくらいなのかをみてみましょう。
ICT市場調査コンサルティングのMM総研が国内企業2,000社(年商50億円以上958社、年商50億未満1,042社)を対象に行なったアンケート「RPA国内利用動向調査2021」によると、2021年1月時点の国内企業のRPA導入率は以下のとおりです。
【RPA導入率】
企業規模 | 導入済み | 検討中 | 未検討 |
年商50億円以上 | 37% | 28% | 35% |
年商50億円未満 | 10% | 25% | 64% |
このように、年商50億円未満の中小企業におけるRPA導入率は10%となっており、50億円以上の企業とは大きな差が見られます。
しかし調査結果をもとに予測した2022年度末時点での導入率は、年商50億円未満では28%にまで上昇すると見込まれており、今後は中小企業においてもRPAの導入が加速すると想定されています。
中小企業がRPAを導入することで得られるメリットは、主に以下の3つです。
それぞれの効果について解説します。
RPAは人間に代わってロボットが単純作業をおこなうITツールです。
RPAが業務を代行することで、その分だけ人件費を削減することができます。
人間を雇用する場合、採用から育成までにかかる費用は侮れません。
その点RPAはメンテナンスは必要ですが、実行させたあとは休みなく稼働するため、人を雇う場合に比べてコストを削減することができます。
RPAを導入する大きな効果として、生産性の向上を実現できる点が挙げられます。
RPAは人間よりもはるかに早い処理速度を備えており、人間が手作業でやるよりも圧倒的に早くかつ正確に処理することが可能です。
人間の不注意によるミスを防ぎ、業務の無駄を排除することで、業務品質の安定と生産性の向上に貢献します。
中小企業では多忙な業務対応に追われ、社員が本来やるべき業務(コア業務)に集中できないという問題が発生しています。
コア業務に労働力を割くことは利益を生み、企業を存続させることにつながる重要な要素ともいえるでしょう。
RPAが得意としているのは定型業務です。
RPAに定型業務を代行させることができれば、社員が企業の利益を直接生み出す「コア業務」に集中できるようになり、業績を向上させることに期待が持てます。
RPAを導入するデメリットには、以下の3つが挙げられます。
それぞれのリスクについてみていきましょう。
RPAにはAIのような判断能力がないため、指示されていない予定外の業務は得意ではありません。
あくまでも定型業務に関して威力を発揮するものであり、事前に指示しているものにのみ対応可能です。
イレギュラーなケースが多い業務や、都度の判断が必要な業務の場合、RPAが効果を発揮することが難しくなります。
RPAは教えられた手順どおりに作業を続けるロボットであると理解しておくのがよいでしょう。
サーバーやPCなどのシステムに障害が起きてしまったり、設定ミスによる誤動作の可能性がある点もRPA導入のデメリットといえます。
障害や誤動作が発生してしまうと自動化ツールは動くことができず、業務停止に陥る可能性があります。
業務停止している時間が長ければ長いほど、業務への影響は甚大なものとなってしまうでしょう。
対策としては、既存システムをベースとした対応フローを策定しておき、障害が発生したときに即時に対応できるルールを定めておくことが重要です。
RPAは実行端末の中にあらかじめIDとパスワードが組み込まれています。
もしID・パスワードが外部に漏えいすれば、第三者が実行端末にログインし、プログラムの改ざんや情報を盗み出す恐れがあるのです。
セキュリティ対策として、機密情報は暗号化して保存するようにし、権限を厳格に管理したうえで重要なデータへアクセスできる環境を作らないようにしましょう。
今回、編集部でも実際にRPAを使って簡単な自動化を行ってみました。
今回使用したのは、2005年にルーマニアで設立されたUiPath社が開発・提供する業務自動化プラットフォーム(RPAツール)UiPath(ユーアイパス)です。
世界で5,000社以上、日本国内でも1,000社以上の企業に導入されています。
特に、Windows上のアプリケーション認識に優れており、デスクトップ上で行う事務作業、Webブラウザからのデータ取得などの定型業務や大量のデータを扱う業務などの自動化を得意としています。
RPA作成経験ありの編集責任者 + ITバックグラウンドなし・RPA利用経験なしライターの2名
具体的に、自動化する業務は、「CSVデータをExcelの表に書き込み、そのExcelをメール添付して送信する」という2段階の工程を自動化しました。
エンドユーザーにも使いやすい「UiPath Studio X」を使って作業しました。
画面中央のデザインパネルに、「指定したExcelファイルにCSVデータを書き込む」指示を作成します。
1の指示の下に、「1で書き込まれたExcelをGmailに添付して送信する」指示を作成します。
実行をクリックすると、すごいスピードでUiPathが処理を開始します。
空のExcelの表にCSVデータを取り込み、そのExcelを添付しGmailに下書き作成するまで、通常手動で行えば5分程度の作業が、10秒程度で完了しました!
今回は、送信はせず下書きに保存にしましたが、内容確認せずに送信してよければ、そのままメール送信もしてくれます。
こんな業務がある中小企業におすすめ!
正直RPA初体験のライターからすると、スクリプトを自分で作成するタイプのRPAだったため「指示作成」が結構難易度高めでした。
事前にUiPath MVPの方のチュートリアル動画をかなりの本数視聴したものの、実際に動かしてみるとエラーが出てしまうこと多数。
また、編集部では通常Googleスプレッドシートを使用しているので、本来はスプレッドシートにまとめたかったのですが、RPA経験者の編集責任者と一緒でも何度指示を作成してもうまく動作せず、結局、互換性の高いExcelに切り替えたところ上手く動きました。
実際に使ってみて、少ない人数でRPAを運用せざるを得ない中小企業の場合、必ず事前にいくつかのRPAの無料トライアルを試した方が良いと感じました。
中小企業によるRPA導入事例を紹介します。
あるコールセンターでは架電や入電の件数、問い合わせ内容などコールセンターに届く情報はすべて専用の管理システムに集められます。
このデータを集計フォルダへ転記する作業を、毎日30分ほど管理マネージャーが行なっていました。
転記作業は以下のとおりです。
RPA導入後はこれらの作業時間がゼロになり、1日30分、年間120時間もの時間短縮が可能となりました。
RPAはEC運営の業務効率化にも効果的です。
リユース商品の買取・販売を行うある企業では、ECモール間における中古本5万点分の商品転記を検討していました。
転記作業に人を雇った場合の時間とコストを計算すると、約662日と300万円ほどかかることが判明し、比較検討の上でRPAの導入を実施しました。
ECモールに商品を登録した後は、商品名や価格などの情報を旧ECモールの一覧CSVをもとにRPAロボットが自動で入力。
作業が終わったら担当者は目視で確認するだけで済むため、RPAを導入したことで大幅な効率化につなげることができただけではなく、今後の商品登録の自動化にも役立ちます。
建設業界では事務系の職種と同じように膨大な量のバックオフィス業務があります。
ある建設会社においては、それらの定型業務を現場監督が手作業で行なっており、残業時間の増加や入力ミス、リソース不足が課題となっていました。
転記作業は以下になります。
RPAを導入することによって、顧客情報の入力作業や見積書・発注書の自動化、および月間40時間〜60時間の作業時間削減に成功。
効率的にバックオフィス業務を行うことにより現場監督にかかる負担を減らし、本来やるべきコア業務に集中することができました。
RPAツールの選び方として、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。
それぞれの内容について、ひとつずつ解説していきます。
RPA導入後は、本格的に活用できるまでエラーを含めたさまざまなトラブルに直面するため、手厚いサポートを受けられるサービスがおすすめです。
現在のRPAツールのサポート内容として一般的なものは、メールやチャットボットでの問い合わせ、FAQやユーザーコミュニティの提供などといったサポートです。
さらに適切かつスピーディーな対応を求めるのであれば、専属の担当者によるサポートやヘルプデスクによるサポート体制、エラー画面をカスタマーサポートと共有できる機能を備えたサービスなどを選ぶと安心でしょう。
RPAツールのロボット作成にはプログラミングの知識を必要としますが、実際にツールを活用して運営していくのは主に非エンジニアの現場社員です。
もし社内にプログラミングに長けた人材がいたとしても、その人しかロボット開発できないようであれば気軽にRPAツールを導入できる状況とはいえません。
そのためプログラミング不要のRPAツールを選んだり、プログラミングの専門知識がなくても簡単に使いこなせるものを導入するとよいでしょう。
RPAツールには中小規模向けの安価なツールもあれば、大規模運営向けの高額なものまでさまざまなツールがあります。
せっかく高額なツールを購入したとしても、必要以上に高性能で使いこなせず、コストだけが膨らみ損をしてしまう可能性も否めません。
導入したいRPAツールが予算に見合った価格であるかは重要なポイントですので、自動化したい業務をあらかじめ洗い出しておき、必要な機能が十分に揃ったツールを選ぶとよいでしょう。
RPAツールのさらに詳しい選び方はこちらの記事をご覧ください!
導入したRPAを最大限に活用するためのポイントについて解説します。
RPAツールは導入して終わりではなく、自動化によって実際に削減できた時間などを計算し、課題把握についての検証をおこなうことが重要です。
定期的にデータを採取して検証することで、自動化ツールのコスパが費用に見合ったものであるかを明らかにできるだけではなく、将来的に業務が増えたときのことを想定しての運用が可能となります。
RPAを運用していくにあたって注意すべきなのは、野良ロボットの発生です。
野良ロボットとは、担当者の退職などによる事情で、管理者が不在となったロボットのことです。
野良ロボットを放置し続けると、不要な動作をおこなってシステムに負担をかけたり、誤ったアウトプットをしてしまうなどさまざまな問題を引き起こします。
野良ロボットの発生を防ぐためには、RPAロボットの運用に関するルールを制定しておき、責任者を決めたうえで会社側が管理することが重要です。
この記事では、中小企業がRPAを導入すべき3つの理由、導入するメリット・デメリット、参考事例について解説しました。
RPAを導入することで人手不足を解消したり、生産性の向上に期待が持てるなど、さまざまな恩恵を受けることができます。
RPAツールの導入を検討する際には、ツールが予算に見合った価格であるか、簡単に使いこなせるかどうかといったポイントを押さえたうえで選ぶとよいでしょう。
画像出典元:イラストAC
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