2006年の会社法改正により新たに誕生した会社形態である「合同会社」。
合同会社という会社形態には様々な特徴がありますが、特に株式会社との違いという観点からいえば、大きく異なるのは「社員」の立ち位置や役割でしょう。
今回は「合同会社」について「社員」という切り口から概要や特徴について説明するとともに、合同会社における「社員」の役割や責任について解説していきます。
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合同会社とは、2006年の会社法改正により新たに登場した会社形態です。
2006年以前にあった「有限会社」という会社形態の代わりに設けられたものであり、
・設立時の資本金が1円以上
・社員数が50名以下
・取締役の任期に期限がない
・決算の公告義務がない
などの4つの特徴があります。
さらに合同会社は、「社員」の立ち位置や役割が株式会社のそれと大きく異なっています。
それゆえに、一般的には家族経営や個人事業などを行うことを目的として設立・運営されることが多いです。
合同会社における「社員」の立ち位置について、株式会社との違いを比較しながら解説していきましょう。
まず株式会社の場合、経営者と出資者(株主)が分離しています。
これは、経営者と出資者とを分ける(「所有と経営の分離」という)ことで、経営者がよりフラットな視点から経営を行えるようにするための仕組みです。
一方でこの仕組みには、出資者の立場から見たら、所有する会社の経営に深くコミットメントできないという側面もあります。
合同会社の場合、会社へ出資した人のことを「社員」と呼びます。
すなわち、合同会社の場合は社員(出資者)=経営者という形になっており、株式会社とは対照的に、社員(出資者)の立場にいながら経営に深くコミットメントできることが特徴だといえるのです。
株式会社の場合、会社の経営方針を決めるためには、まず株主総会を開催する必要がありました。
株主総会によって出資者の意思決定がされてはじめて、実働部隊である経営陣による会社経営が行われる、というイメージです。
しかし、合同会社の場合は先述のとおり社員(出資者)=経営者という形になっていますから、社員(出資者)の意思決定により会社経営を進めることができます。
そういった違いから、株式会社よりも合同会社の方が会社経営のスピード感と柔軟性において利があるとされているのです。
ここまでのご説明において、合同会社における社員とは出資者であり、すなわち経営者であるというお話をしてきました。
この点について、もう少し詳しく掘り下げていきましょう。
合同会社における「社員」の特徴は、社員1人につき1票の議決権があることです。
株式会社の場合、議決権の割合は株式の保有割合(出資の割合)によって決まります。
もし100%の株式を保有している株主がいる場合には、この株主の意思次第で会社の経営方針が決まる、というわけです。
しかし、合同会社の場合には出資の割合に関わらず、議決権は1人1票と決まっています。
すなわち出資金額の大小に関わらず、すべての社員が会社の運営に平等に関与できる、というわけです。
一方で、出資金額の大小に関わらず議決権が1人1票に決まっているのは不公平だ、という考え方もあります。
そういった点から、先述のとおり合同会社は家族経営や個人事業などを行うことを目的として設立・運営されるのが通常だといえるのです。
合同会社の場合、社員(出資者)が会社経営の意思決定を行うということは、実務的には社員が集まって会議を開催し意思決定を行う必要がある、ということを意味します。
これが合同会社における社員の重要な役割です。
しかし、実際には社員が全員集まって会議を開催するのは大変だ、ということもあるでしょう。
そこで、合同会社では、以下のような役割を持つ社員を選定することが可能となっています。
・業務執行社員
・代表社員
業務執行社員を選定する場合、会社の意思決定権(業務執行権)はこの業務執行社員のみが持つことになります。
ちょうど株式会社における「取締役」のようなイメージです。
業務執行社員を選任すると、それ以外の社員は意思決定権を無くすことになります。
これにより、会社としての意思決定の仕組みをスリム化することにつながるのです。
ただし、社員はすべての権限を無くすわけではなく、会社の業務遂行や会社財産に問題が生じていないかを調査・監視する権限を有します。
さらに、合同会社では株式会社の「代表取締役」に相当する「代表社員」を選定することもできます。
代表社員を選定しないと、実務上はどうあれすべての社員が「会社を代表する存在」として見なされてしまいます。
すると当然、他社との取引や行政官庁での諸手続などの場面で不具合や問題が生じる可能性があります。
そこで、合同会社の最終責任者である「代表社員」を1名選定することが、合同会社では一般的な形になっているのです。
合同会社の社員は、出資する会社に対して「有限責任」を負うことになります。
通常、出資者の責任範囲は、会社倒産などの際に出資額に関わらず負債総額の全額を支払う「無限責任」と、自分が出資した金額を限度として支払う「有限責任」があります。
例えば個人事業主の場合は「無限責任」となっているのですが、合同会社の社員の場合は「有限責任」となります。
このことが合同会社を設立することの大きなメリットであり、近年多くの合同会社が設立されている理由ともなっています。
今回は、2006年の会社法改正により新たに誕生した会社形態である「合同会社」について、「社員」という切り口から概要や特徴について説明するとともに、合同会社における「社員」の役割や責任について解説してきました。
合同会社は、一般的には家族経営や個人事業などを行うことを目的として設立・運営されるものです。
そのため株式会社とは違い、会社の社員自身が会社経営における意思決定を行えるという仕組みになっています。
しかし、社員が複数いる場合には意思決定などにおける混乱が生じる可能性があるので、株式会社のように会社を代表する役割を設置することも可能ともなっているのです。
画像出典元:Unsplash、Pexels、O-DAN
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