自己破産したら生命保険はどうなる!?解約を回避する方法とは

自己破産したら生命保険はどうなる!?解約を回避する方法とは

記事更新日: 2023/09/19

執筆: 小石原誠

自己破産を行うにあたって、生命保険の契約の取り扱いについて不安を抱える方は多いでしょう。厳しい話ですが、生命保険の解約金も財産と見なされるので、債権者への分配のために生命保険は解約される可能性があります。

しかし、すべての生命保険が解約されるわけではなく、また解約を回避する方法も存在します

今回は、自己破産の際の生命保険の取り扱いについて解説していきます。

自己破産したならば生命保険は解約が基本


自己破産の手続きを開始したならば、基本的には生命保険は解約しなければなりません。まずはその理由について順を追って解説していきます。

そもそも自己破産とは

自己破産というと「借金をチャラにする(債務を免除する)」手続きだというイメージを持たれがちですが、それは少し間違っています。

より厳密にいうと、自己破産とは「手元に残った財産を債権者にすべて分配する」ことと「債務を免除する」手続きを並行して行う手続きです。前者を「破産手続」、後者を「免責手続」とそれぞれ言います。

手元に残った財産を債権者にすべて分配する「免責手続き」に際しては、基本的には破産人の所有する全ての財産がその対象となります。

ここでいう「財産」とは預貯金などの現金だけではありません。高級腕時計・装飾品・自動車などの動産や自宅・別荘などの不動産も「財産」とみなされるので現金化されて債権者に分配されます。

破産人の手元に残るのを許されるのは、99万円以下の現金と、時価20万円相当未満の財産のみです。

 

生命保険の解約払戻金も「財産」とみなされる

生命保険の解約払戻金についても、後述するいくつかの場合を除き「財産」とみなされます。ですから、基本的には生命保険は解約されてしまい、さらに解約払戻金も債権者に分配されることになります。

ちなみに、自動車保険や火災保険、地震保険、あるいは子どもにかけている学資保険などについても、生命保険と同様に解約して払戻金を債権者に分配されるのが基本です。

自己破産の手続き前に解約した場合は手元に残る?

それでは「自己破産の手続き前に生命保険等を解約してしまえば、払い戻し金が手元に残るのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。これについては、まず違法ではありません。

ただし、現金化した解約払戻金を隠し持ったり、あるいは特定の債権者にのみ自己破産手続き前に渡したりする行為は許されません。当然、知人に預かってもらって後から受け取る、といったことも出来ません。

こういった場合のお金の使い道としてOKとなる可能性が高いものとしては、自己破産手続にかかる弁護士費用や裁判所への支払い、あるいは日常の生活費や病院の通院費用、税金の支払いなどがあります(「有用の資」という)。

いずれにしろ、自己破産の手続き前に生命保険を解約した場合は、そのタイミングやお金の使い道などについて説明を求められる可能性があることを覚えておきましょう。

自己破産の手続き前に名義を変えてしまえばよい?

そうなると「自己破産の手続きをする前に保険契約者を変えてしまえば、自分(破産人)の財産ではなくなるから破産手続を免れるのでは?」とも考える方も出てくるでしょう。しかし、このやり方は「詐害行為」と見なされてしまいます。

詐害行為とは、債権者への分配を減らしてしまうことを分かっていながら故意に自分の財産を減らしてしまう行為のことです。

これは自己破産の手続きにおいてはルール違反となっており認められません。契約者の変更手続きそのものがキャンセルされてしまいます(「詐害行為取消権」という)。

ちなみに、これは生命保険の解約に限らず動産・不動産などについても同様のことがいえます。例えば、自動車を知人に安価で売却して後から買い戻そう、とする行為も「詐害行為」に該当しますから、注意が必要です。

 

生命保険を解約しなくてもよい場合


自己破産の手続きを開始したならば、基本的には生命保険は解約しなければいけない、ということはご理解いただけたかと思います。しかし、生命保険を解約しなくてもよい場合もあります。

生命保険が掛け捨て型であるとき

まず1つ目が、生命保険が掛け捨て型であるときです。

掛け捨て型の生命保険はほとんどが解約払戻金がそもそもなく、解約をしても債権者に分配する財産が発生するわけではないので、あえて解約する必要がありません。

また、自己破産の手続きの最中であっても、掛け捨て型の生命保険への支払いは継続することができます。掛け捨て型の生命保険は「万が一があったときの備え」として生活に必要な経費であると認めてもらえるからです。

生命保険の解約払戻金が20万円未満であるとき

もう1つ、生命保険の解約払戻金が20万円以下であるときも、解約の必要がありません

ただし、複数の生命保険等を契約している場合、それらの配役払戻金の合計金額が20万円以上となるときには、すべての生命保険等について解約をする必要が生じます。

例えば、解約払戻金がそれぞれ10万円、6万円、5万円の生命保険に3つ加入していたとします。

一つ一つをみればいずれも20万円未満ではありますが、合計すると21万円となり20万円以上となってしまいます。そのため、3つ全ての生命保険を解約しなければなりません。

解約払戻金があっても解約しなくて済む方法


自己破産では、生活に必要な金品を除き、手元に残った財産を債権者に分配しなければいけません。ですが、せっかく加入した生命保険を解約することは、金額以外にも様々なデメリットがあるためどうしても避けたい、という場合もあるでしょう。

実は、解約払戻金があっても解約をしなくて済む方法がいくつかありますので、最後に解説していきます。

「契約者貸付制度」を利用する

生命保険の中には、解約払戻金を担保としてお金を借りることができる「契約者貸付制度」という制度を利用できるものがあります。

これを利用してお金を借りると解約払戻金の額が小さくなるので、20万円以下になるよう制度を利用すれば、債権者に分配すべき財産の対象から外すことができるのです。

ただし、全ての生命保険でこの制度が利用できるわけではないので、自分がかけている生命保険の契約内容をよく確認しましょう。

また、契約者貸付制度により借りたお金については、解約した際に手元に残るお金と同様に、日常の生活費などの「有用の資」に限られますから注意しましょう。

「介入権制度」を利用する

「介入権制度」とは、端的にいうと「破産者本人以外の人が保険の解約金に相当するお金を破産管財人に支払うことで、解約を防ぐことができる」という制度です。

保険契約者等の保護を目的として、平成22年4月から施行されたルールです。

ポイントは、破産者本人以外の人がお金を準備するということ。

自己破産の手続きに際しては、破産者本人のお金は債権者に分配すべき財産の対象になるために、自分ではコントロールできなくなります。そこで、例えば親や親戚などにお金を準備してもらう必要があるわけです。

生命保険の解約は、保険会社が破産管財人などより解約を通知されてから1か月で効力を発揮します。介入権制度の利用は、この1か月の間に行使する必要があります。お金の支払いもこの間にしなければいけないので、気をつけましょう。

まとめ

今回は、自己破産をするにあたっては生命保険の契約が解約されることを解説するとともに、解約を回避できる状況や方法はどのようなものがあるのかをご紹介してきました。

一度、生命保険を解約してしまうと、それ以降再び生命保険の契約を行いたいときに、同じような条件内容の契約ができるとは限りません。なぜなら、既往症や健康状態が変化している可能性があるからです。

自己破産を行うにあたっては、今回ご紹介した回避手段について事前に検討し、生命保険解約を極力避けられるよう手配することをオススメします。

画像出典元:写真AC、Pixabay、Pexels

最新の記事

ページトップへ