自己破産の必要書類とは?手続きの流れと注意点

自己破産の必要書類とは?手続きの流れと注意点

記事更新日: 2021/04/02

執筆: 編集部

自己破産は人生で何度も経験するものではありません。経験談を話す人もほとんどいません。

どうしようもない状況になって、いざ自己破産をしようと思ったときに必要書類は何か、どのような流れで手続きをしたらいいのかなど分からないことが多く、専門知識も必要です。

ここでは、必要書類や手続きの流れについて紹介するとともに、自己破産にともなうリスクについてもまとめてみました。

このページの目次

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自己破産の必要書類

自己破産の申請に必要な書類について、入手場所と内容をまとめました。

1. 自己破産申立書

債務者の名前・住所など(個人情報)、借金総額、自己破産申請する理由を記載します。
申し立てする本人、もしくは弁護士・司法書士が作成します。

<入手場所>

申し立てする裁判所

【注意!】「自己破産申立書」の書類は裁判所によりひな形が若干異なりますので、申立てする裁判所でもらいましょう。

2. 家計簿

1か月の家計の収支表

<入手場所>

自宅

※家族に知られずに入手する方法を後述しています!

3. 陳述書

自己破産をする理由と反省文、今後はどのようにしてやり直すのかを記載します。
申し立てする本人、もしくは弁護士・司法書士が作成します。

<入手場所>

申立てする裁判所

4. 債権者一覧表

貸金業者や個人の氏名、借りた金額、債務時期、返済金額などを記入します。

債権者を漏れなく記載しましょう。

5. 住民票

世帯全員分が記載されているもので、3か月以内に発行されたものを用意します。

<入手場所>

居住地の市町村役場

6. 給料明細

2~3か月分

<入手場所>

会社(会社から発行されたものをとっておく)

7. 貯金通帳のコピー

申し立てする本人名義の、すべての貯金通帳のコピー1~2年分

8. 源泉徴収票

紛失して勤務先の会社に再発行を申請するのが難しい場合には課税(非課税)証明書でも大丈夫です。

<入手場所>

・源泉徴収票は、勤務先の会社
・課税(非課税)証明書は、市区町村役場

※職場に知られずに入手する方法を後述しています!

9. 離職票

無職の場合は必要となります。会社に勤めている場合は不要です。

<入手場所>

最後に勤めていた会社

「離職票」は、退職してから10日前後で退職した会社から届くものです。もらっていない場合は、退職した会社に離職証明書の交付を求めましょう。

10. 退職金の証明書

退職金見込み証明書。退職している場合は、受け取ったことがわかる書面が必要です。

<入手場所>

会社(勤務先)

※職場に知られずに入手する方法を後述しています!

11. 不動産を所有している場合(不動産登記簿謄本・不動産査定書)

(1)不動産登記簿謄本
 債務者名義の不動産がある場合や、申立て前の過去2年間に所有していた場合に必要となります。

<入手場所>
法務局

(2)不動産査定書
不動産の資産価値が分かるもの

<入手場所>
不動産鑑定士や不動産会社に査定を依頼

12. 居住証明書

住民票に記載されている住所と同じ場所に住んでいる場合は、住民票を提出します。

ただし、住民票の住所と異なる場合には、次の書類が必要となります。

賃貸の場合は賃貸契約書のコピーを提出。実家住まいの場合は、不動産登記簿謄本と居住証明書を提出する。

賃貸契約者もしくは実家の所有者が住民票において同一世帯であれば、居住証明書は必要ありません。この条件に当てはまらない場合は、居住証明書が必要です。

居住証明書は、光熱費などの公共料金の領収書を提出します。

<入手場所>

・住民票は居住地の市区町村役場。
・賃貸契約書は、賃貸契約時に受領したもの(手元になければ賃貸契約を交わした不動産会社に発行を依頼する)。
・不動産登記簿謄本は、法務局。

13. 自動車、自動二輪車を所有している場合(車検証・登録事項証明書)

(1)車検証・登録事項証明書
申し立てする本人が自動車や自動二輪車を所有している場合は、車検証のコピーと登録事項証明書が必要です。

車検証を紛失してしまった場合は、再発行手続きを行います。再発行の方法は、ディーラーや代行業者に依頼する方法があります。

<入手場所>

・車検証は、車検をしたディーラー、工場など
・登録事項証明書は、運輸支局または自動車検査登録事務所

(2)自動車査定書
現在の車の資産価値が分かる書面

<入手場所>
ディーラーや買取業者

14. 生命保険の保険証券コピー

加入している生命保険の保険証券のコピー

<入手場所>

生命保険に加入したときに保険会社より受け取るものですが、紛失した場合は保険会社に再発行の依頼を行います。

15. 保険解約払戻金の証明書

解約したときに払戻金が発生する保険に加入していた場合は、保険解約払戻金の証明書が必要となります。

<入手場所>
保険を解約したときに保険会社より送付されるものですが、紛失した場合は保険会社に再発行の依頼を行います。

16. 所有しているクレジットカード

所有しているクレジットカードがあれば、すべて提出します。

17. 公共料金の領収書

水道光熱費・NHK受信料などの領収書を申立て前の2か月分。引き落としの場合は不要です。

18. 税金を滞納している場合(納付書など)

税金を滞納している場合は、税金の種類や金額、滞納期間がわかる税金の納付書などが必要となります。

19. 年金受給証明書

年金を受け取っている場合は受給証明書のコピー

<入手場所>
年金受給開始時に日本年金機構から発行される年金証書が受給証明書となります。
紛失した場合は、年金事務所や市区町村役場の年金課で再発行できます。

20. 公的助成金

生活保護を受けている場合は金額が分かる書類

 

簡単に取得できる書類もあれば、記述する書類や事前に準備しておかなければならないようなものもあります

裁判所へ提出する日から逆算し、余裕を持って準備しましょう。

家族・職場に知られずに書類を入手する方法

家族や職場に、借金で自己破産しようとしていることを知られたくない場合はどうすればいいのでしょうか?

どうしても家庭や職場でしか取得できない書類もあります。ここでは知られないようにして入手する方法について紹介します。

家庭や職場で入手する必要がある書類は以下の3点です。

1. 家計簿

日ごろからノートに家計簿をつけている家庭であれば、こっそりとコピーをする方法があります。

最近では家計簿アプリで管理する人も多いと思いますが、その場合にはアプリを共有してもらうことで過去の家計簿も全て見ることができます。

2. 源泉徴収票

過去1年分のものが必要になります。紛失してしまった場合には会社に言えば再度もらうことができますが、知られないようにするために課税(非課税)証明書を代わりに提出することもできます。

3. 退職金の証明書

通常、退職金に関する証明書の発行は会社でしてもらえますが、少しでも会社の人に疑われたくはありません。

そのような場合には、就業規則を利用して自分で計算をするという方法があります。

しかし、裁判所によっては証明書を取ってくるように指示されることもあります。どうして取得が難しいのかの説明など、裁判所との調整が難しい点となってきます。

自己破産手続きの流れ

自己破産は書類を準備して裁判所に提出するだけはなく、いくつかの手順があります。さらに自己破産の手続きがすべて終了するのは半年~1年と、すぐに自己破産ができるわけではありません。

ここでは申立手続きから順番に流れを紹介していきます。

1. 書類の提出

一番最初に必要な書類を準備して裁判所に提出します。

書類を提出してからが自己破産手続きのスタートです。

2. 破産に対する審尋

申立が始まると、破産審尋が行われます。審尋は、裁判官からどうして自己破産をするのかや借金を返せなくなった理由などを質問されます。用意した書類などに事前に目を通して、明確に答えられるようにしましょう。

※審尋:裁判所で口頭弁論の形式によらず、当事者その他の者に個々的に、書面または口頭で陳述させること(参照:コトバンク)

 

3. 破産手続き開始・免責の決定

申立をしてからしばらくすると破産手続き開始決定通知が届きます。このときに破産手続き方法として同時廃止と管財事件に分かれます。

・同時廃止:債務者に分配する財産がないため、自己破産手続きが直ぐに終了

・管財事件:裁判所によって選ばれた破産管財人が自己破産を申し立てた人の財産を管理、処分。また、裁判所に納める予納金の発生。管財事件になった場合は手続きが終わるまでに半年~1年ほどかかる。

また、最悪の場合は免責が認められないこともあります。

4. 免責審尋

自己破産手続きを開始してから約2か月で免責審尋が行われます。免責審尋は、債務者に対しての最終確認のようなもので、これを受けない限り自己破産をすることはできません。

5. 免責可否決定

免責審尋後に免責の可否が行われます。可否が行われてから、さらに1か月後に確定となります。

自己破産手続きをするときの注意点

これまでに自己破産の必要な書類や流れなどについて紹介してきましたが、申立ての申請をする前に必ず確認することをまとめました。

 1. 自己破産の申請前に確認しておくべきこと

自己破産の申請をするためには多くの書類が必要となってきます。

しかし、これから紹介することを確認してから書類の準備・申請をしないと、債務者に借金を支払う能力があると判断されてしまいます。

そうすると自己破産開始決定が下りずに、自己破産が出来なくなってしまうので注意が必要です。

1. 保証人や連帯保証人がついた契約

保証人などがいる場合は、自己破産をする本人は返済が無くなりますが、貸金業者は保証人に借金の請求をしてくるので、自己破産をするときには保証人に相談するようにしましょう。

2. ショッピング機能の付いたカードの使用

カードでの買い物も借金となるので、申立ての書類作成のときに申請しなければなりません。申告漏れがあった場合はその借金を支払うことになるので、申立て前は常に現金で支払うようにしましょう。

3. 家賃光熱費などをカード引き落としにしている

毎月の家賃光熱費の支払いをカードでしていると、申立て書類作成中にも引き落とされて、なかなか借金額が決まらなくて手続きが進みません。

引き落とし先を現金振り込みや通帳引き落としに変更しておきましょう。

4. 銀行からの借り入れがある

銀行から借り入れをしていると、自己破産後は銀行口座からお金を引き出せなくなります。例えば、その借り入れしている銀行がお給料の振込先である場合には事前に口座を変更することで、お給料が引き出せない事態をなくすことができます。

5. 一度も返済をしていない貸金業者がある

お金を借りたにもかかわらず一度も返済していない業者があると、裁判所は始めから返済するつもりがないものと判断をして、返済免除をしてくれない場合があります。

どうしても返済が出来ないのであれば弁護士に相談してみましょう。

2. 専門家に相談するなら弁護士と司法書士どちらがいい?

自己破産で専門家に頼るなら、弁護士か司法書士のどちらかかに相談することになります。

しかし、弁護士と司法書士では業務として出来る範囲が異なるので注意が必要です。

・弁護士:個別の債務額が140万円超えの法律相談、交渉、訴訟の対応可能

・司法書士(認定司法書士のみ):個別の債務額が140万円以下の法律相談、交渉、訴訟の対応可能


司法書士(認定司法書士)は140万円以上の相談にも対応してくれますが、過払い金の和解金額が少なくなることがあります。さらに裁判所へは自分で行くなど、司法書士とのあいだでトラブルが生じることもあります。

自己破産の申立ては法律も絡んだ複雑な手続きですので、個別債務額のことを考えずに弁護士に依頼するほうが総合的なサポートをしてもらえます。

3. 弁護士に相談するメリット

弁護士に相談してもらうことで以下のメリットがあります。

1. 個別債務額に関係なく相談できる

2. 過払い金の返還が早い

3. 貸金業者からの取り立てをストップできる

4. 免責許可が取りやすい

5. 一部の裁判所では即日面接制度で手続きが早く終わる


弁護士に依頼をすると申立手続きのための書類作成を手伝ってくれるところからサポートしてくれます。また裁判では、貸金業者の方も弁護士をたてるので、弁護士費用をかけないように早めに和解に応じてくれるというメリットもあります。

専門家に依頼するとなるとどうしても報酬が発生するのがデメリットですが、申立から裁判の代理まで全てを任せることができるので心強いサポーターになってくれるはずです。

自己破産後の生活

 1. 借り入れ等はほぼすべて不可能になる

自己破産後には借り入れが一定期間不可能となります。

新たな借金はもちろんのこと、携帯電話端末の購入など、分割して支払うものも借り入れになるので分割購入はできません。また、奨学金の借り入れにも影響がおよぶこともあります。

 2. 税金・養育費などの支払い義務は残る

自己破産をしたとしても全ての債務が免除されるわけではありません。免除されないものとしては以下のものがあります。

1. 税金

2. 罰金、過料、追徴金、刑事訴訟費用

3. 不法行為に基づく損害賠償請求権

4. 婚姻費用、離婚時の養育費

5. 従業員の給料など労働債権の請求権

 

 3. 家族への影響はある

連帯保証人でなければ別生計の家族に何かしらの影響はありません。

しかし債務者名義の車や自宅、テレビなどの高額家電などは換価処分されます。

家族名義のものを換価処分されることはありませんが、日常生活で使用するものも換価処分されるので同居している家族には多少の影響があります。

4. 自己破産した後、信用情報などが回復するまでの期間

自己破産後は最短でも5年間はブラックリストに登録されます。

そのため借り入れはもとより、クレジットカードの作成や各種ローンを組む、分割払いをすることもできません。

信用情報が傷つくと、自分が思う以上に社会生活に支障をきたします。

仮にパートナーのいる独身の人であれば、結婚式を挙げることも、車の購入も難しくなります。家族がいる人であれば、子どものための教育ローンを組むことも不可能です。

5. 職業の制限を受ける期間

自己破産の申立てから免責決定されるまでの期間は、一定の職業に就くことができません。

具体的な職業をあげると、

1. 弁護士、司法書士、行政書士などの仕業

2. 質屋、古物商

3. 生命保険外交員

4. 宅地建物取引主任者

5. 警備員


また、会社の役員は資格を失うことになります。

上記以外の職業についてはほとんど制限を受けないので気にしなくても大丈夫ですが、念のために弁護士などの専門家に聞いてみたほうが良いでしょう。

まとめ

自己破産をするときには、多くの必要書類や、専門的知識を必要とすることが分かったと思います。自分で手続きすることも可能ですが、あまりにも複雑で時間と労力が必要となってくるので専門家に相談する方法をおススメします。

また、かなり緊張することではありますが、家族と険悪な関係にならないように事前に自己破産しようとしていることを打ち明けると、家族にも書類集めや破産後の生活面などにおいて協力してもらえるかもしれません。

自己破産は債務が免除されるのと引き換えに、大きなリスクを抱えることを理解しておこないましょう。


画像出典元:o-dan

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