会社清算の準備と手順を解説!経営者が知るべき費用・税務・注意点は?

会社清算の準備と手順を解説!経営者が知るべき費用・税務・注意点は?

記事更新日: 2020/11/19

執筆: TAK

会社清算とは、会社の業績が悪化してこれ以上事業を継続出来ない場合に考える法人格を消滅させる手続きのことです。

実際に会社を清算しようと思っても、具体的な手続き、清算に要する期間、相談先や費用など専門的でわからないことに頭を悩ませている経営者の方も多いかと思います。

この記事では、会社清算の概要や全体像に加えて、専門家に依頼した場合の費用や知っておくべき点などをわかりやすく紹介していきます。

会社を清算するとは?

会社の清算と解散の違い

「清算」の意味を、よく混同される「解散」との違いに着目しながら確認していきます。

言葉だけを見るとどちらも似ている印象を受けますが、目的が異なります。

清算と解散の違いを簡単にまとめると以下のようになります。

解散 事業(営業)を停止することが目的
清算 必要手続き(残余財産の分配等)を経て法人格を消滅させることが目的


会社を清算する必要がある事情は様々ですが、一般的な理由としては、業績悪化等により会社を存続させることが出来ず、結果として会社という法人格を残しておく価値がないと判断したためです。

法人は設立手続き時に法務局や税務局など関連当局への届出や登記手続きをしているため「清算するから放置しておけばいい」というわけにはいきません。

法人の会社清算する場合、設立とは逆の「清算」手続きが必要となり、登記抹消等の必要手続きを経ることで法人格を消滅させる必要があるのです。

会社は何かしらの事業(営業)をしているため、いきなり清算をすることは出来ません。

会社清算する場合は、株主総会で「解散」手続きの同意を得た上で「清算」手続きに入ることとなっています。

つまり、会社清算は「解散」と「清算」がセットです

会社清算の種類について

会社の解散と清算がセットになっていることを踏まえた上で、会社清算の種類についても紹介しておきます。

株式会社を前提とした場合、法律に従って手続きを進めなければならない「法定清算」を経る必要があるのです。

法定清算は「通常清算」と「特別清算」の2種類に分類することが出来ます。

通常清算 「資産 > 負債」で清算するケース(債務超過でない場合)
特別清算 「資産 < 負債」で清算するケース(債務超過に陥っている場合)


このように、清算時に会社が十分な資産を保有していて、債務の返済が可能であれば「通常清算」の手続きを経ることになります。

対して、会社が債務を全額返済出来るだけの資産を保有していない場合、つまり債務超過に陥っている可能性がある場合には「特別清算」の手続きを経ることになります。

今回の記事は「通常清算」を前提として話を進めていきます。

会社清算の準備と手順

会社清算手続きの全体像

それでは実際に、会社の清算手続きをする場合の具体的なプロセスを見ていきます。

1つ1つの細かい内容は専門的でイメージしづらいので、まずは全体の流れを抑えた上で、各々どのような論点があるのか確認するようにしてみてください。

会社清算手続きの全体像を「3ステップ」でとらえるとわかりやすいかと思います。

「従業員への説明」「解散手続き」「清算手続き」の順に、図内赤字部分を中心にポイントを解説していきます。

ステップ1:従業員への説明

まず最初に、会社の解散・清算手続きに入る前にしておくべきこととして、「従業員への説明」が挙げられます。

経営陣にとっては、業績の悪化等により会社の清算を決定していたとしても、実際に現場で働いている従業員にとってはまさに寝耳に水です。

従業員に清算することになった経緯や背景をしっかりと説明し、納得の上退職してもらうようにしましょう。

納得してもらえない場合は、整理解雇をしていくことになります。

整理解雇は、会社側の都合で従業員を解雇することとなるため、適切な手順を踏み、訴訟トラブルに発展しないように気を付けながら進めることが重要なポイントとなります。

ステップ2:解散手続き

続いては、株主総会の特別決議を経て「解散手続き」を進めるステップとなります。

解散手続きで一般的にすべきことは以下のようになります。

  • 解散について株主総会の承認を得る
  • 清算手続きを行う人である「清算人」を選定する
  • 取締役を廃止し、清算人が就任することにつき「定款の変更」を行う
  • 会社が解散した日から2ヶ月以内に、解散の登記をする
  • 会社の財産状態を示す「財産目録」や「貸借対照表」を作成し、承認を経る
  • 債権者に対して、公告や催告(個別通知)を実施する

 

いずれも重要な手続きになりますが、最低限知っておくべき点は2つです。

1、会社自治が清算人に委ねられること

清算人というのは、清算手続きを行う人のことを指します。

一般的には代表取締役や委託先の弁護士などが清算人に選定されるケースが多いです。

従来の取締役による会社自治から、清算人による会社自治へと移行するため、定款変更などの登記手続きが必要となります。

2、債権者に対して清算開始を広く知らせる必要があること

従業員以外に会社が清算を始めることで驚くのが債権者です。

債権者は(清算予定の会社に対して)お金を回収する権利である「債権」を保有しています。

債権者が債権を回収出来ず損失を被らないように、事前に公告や催告といった方法で通知することになっています。

公告 政府が発行する「官報」を通じて知らせる方法
催告 個別の債権者に対して文書で内容を知らせる方法

 

ステップ3:清算手続き

解散手続きを経た後に進める最後のステップが「清算手続き」となります。

清算手続きで一般的にすべきことは以下のようになります。

  • 取引先と締結している契約について解除する
  • 取引先に対して保有している「債権」を回収する
  • 債権者に対して保有している「債務」を返済する
  • 債務弁済後に残った「残余財産」について株主に分配する
  • 残余財産の分配完了後、「決算報告書」を作成し、株主総会の承認を得る
  • 清算が終了したとして、清算結了の登記をする


清算手続きも解散手続き同様、いずれも重要な手続きになりますが、最低限知っておくべき点は2つです。

1、債権回収手続きと債務返済手続きが必要なこと

債権回収は、取引先からお金を回収して、会社財産を増やす行為を意味します。

2、会社に残った残余財産を株主に分配すること

債権返済は、債権者にお金を返済して、会社財産を減らす行為を意味します。

その結果、会社に残った財産のことを「残余財産」と言います。

この残余財産は、会社の所有者である「株主」に対して分配されることになります。

会社清算における返済順位の優劣とは

清算手続きとあわせて知っておくと良い点としては、「返済順位の優劣」についてです。

債権者と株主に関する性質の違いとも言えますが、債権者は株主より優先的に会社財産の返済を受ける立場にあるということです。

株主は債権者への返済をした後である「残余財産」を対象に、分配を受けるという構図になっています。

会社清算の相談先は?

「実際に会社の清算手続きを始めよう」と思っても、誰にも相談せず進めるのは至難の業です。

そこで、会社の清算手続きを進めるにあたっての「相談先」を紹介しておきます。

管轄機関に相談する

まずは、会社清算に関連する管轄機関に相談する方法です。

管轄機関というのは、法務局や税務局など、企業情報を管理している場所を指します。

管轄地区や担当官により対応は異なりますが、基本的に無料で窓口や電話相談が出来る点がメリットです。

一方で、専門性の高い清算業務の全体像を理解した上で、適切な質問を考えなければならない点がデメリットと言えます。

管轄機関への相談デメリットの例
  • 専門性が求められる書類を作成し、提出しなければならない
  • 管轄機関が複数あり、地域差や担当者の回答内容にも差がある
  • 質問した内容以外のことは詳しく教えてくれない


各会社の事情に合わせた対応ではなく、一般的な清算の知識と手順の相談先と考えましょう。

外部の専門家に相談する

もう一つの会社清算の方法は、外部の専門家に相談する方法です。

実務的にも、外部の専門家への依頼を想定している方が多いかと思います。

該当する専門家としては、弁護士・行政書士・税理士などが挙げられますが「清算」に精通している実務経験がある専門家を選んだ方が良いでしょう。

個人的には、税務知識を(専門的でなくても)持っている弁護士がオススメです。

清算業務は法務をベースとしつつも、一定のタイミングで税務申告書の提出など、税務関連の論点も絡んでくるためです。

実務経験がある専門家であれば、例えば清算の税務分野に強い税理士の紹介など、士業ネットワークを使ってサポートしてくれるはずなので、その観点からも実務経験がある方に相談されると良いでしょう。

会社の清算は自身でも出来る?

「専門家に依頼すると費用がかかるから、出来るだけ自分でやりたい」と考える方も中にはいるでしょう。そこで、会社清算業務を自分自身で出来るかについて考えてみます。

結論から言えば、以下に該当する方を除き、自分で会社の清算手続きをするのはほぼ無理です。

  • 弁護士や行政書士の方(または同等の知識を有している方)
  • 清算業務の実務に携わった経験のある方


理由は言わずともわかるかと思いますが、専門性が高く手間を要するためです。

また、自分で会社清算手続きをする場合、自分自身が清算人となりますが、適切に清算を完了させなかった場合には「損害賠償積責任」を負う可能性もあります。

(清算人の第三者に対する損害賠償責任)

清算人がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該清算人は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う

会社法653条より引用)


つまり、会社清算手続きの中で不備があった場合には、債権者などの第三者に対して清算人自身が賠償責任を負う可能性があるということです。

この観点からも、本当に自分で会社の清算手続きを出来るのか、リスクなどを勘案した上で決めるようにしてみてください。

会社清算の費用と税務

会社清算で必要となる費用

では実際に会社を清算する場合、どの程度の費用がかかるか確認しておきましょう。

発生する費用は、「登録免許税」「官報広告費用」「専門家報酬」「その他費用」の4つに分類しておくとわかりやすいかと思います。

各費用の金額は、一般的に以下のようになります。

登録免許税

解散の登記 30,000 円
清算人の選任 9,000円
清算の結了 2,000円


参考:国税庁(No.7191 登録免許税の税額表)

官報公告費用

官報の掲載費用 約37,000円


参考:全国官報販売協同組合

専門家報酬

弁護士費用の場合 約50万円前後


その他にも郵送費、手数料などの費用が都度発生します。

金額的重要性が高いのは、やはり弁護士報酬などの専門家への委託費です。

具体的な業務内容やサポート範囲を確認した上で、信頼出来る専門家に委託するようにしましょう。

会社清算に関する税務上の留意点

これまで会社清算の「法務面」に着目して解説してきましたが、同じくらい重要になるのが「税務面」です。

ただ、細かい内容を理解するというよりかは、どのような論点があるのか、最低限知っておいた方がいい留意点は何かに着目して解説していきます。

会社清算に関連して生じる税務上の一般的な論点は以下の通りです。

(税務上の留意点)

1. 税務申告書の提出必要性

2. 消費税の申告・納税の可能性

3. みなし配当

4. 債務免除時の取り扱い


中でも知っておくべき点としては、「1の税務申告書の提出」についてです。

会社清算期間中でも必要なタイミングで確定申告書を作成・申告をしないと罰則が発生します。

通常は、一事業年度が終了してから2ヶ月以内に確定申告書を作成・申告することになりますが、清算手続きに入ると「解散事業年度」「清算事業年度」「残余財産確定事業年度」という区分に応じて、確定申告書を作成・申告することになります。

このように、清算期間中でも確定申告書を作成・申告しなければならないため、場合によっては税理士に依頼する必要性も出てきます。

実際の税務申告書の作成は、通常税理士が担当することになるので、申告の結果や追加納付の有無など、都度確認するようにしてみてください。

会計士から見た会社清算の注意点

最後に、会社清算に関するその他注意点をいくつか紹介しておきます。

1、会社清算のスケジューリングは難しい

まずは、会社清算に関するスケジューリングは難しいということです。

もっと簡単な表現をするならば「会社清算を始めてから完了するまで、具体的にどの程度の期間を要するかはわからない」という意味です。

早ければ約3ヶ月程度で終わることもありますが、会社の状況によってはそれより長くなるケースも十分考えられます。

会社の清算完了時期を気にしないのであれば特段問題ありませんが、役員会で都度進捗報告をする必要がある場合や、残余財産の分配金を元手に別事業へ投資を考えているような場合には、清算期間を長めに想定するなど、柔軟な対応をする必要があります。

2、アジア展開をしている会社清算は注意が必要

アジアを中心にグローバル展開しており、海外子会社を有している企業の場合も、清算時には注意が必要です。

例えば、中国の現地法人を清算する場合には、設立地区や特殊免許の有無などに応じて、1年以上の清算期間を要するケースもあります。

加えて、現地当局から追加対応(代表者の現地出頭や追加出資など)を求められる場面もあるため、各国の制度や実務に詳しい専門家に相談しながら進めるようにしてみてください。

まとめ

今回は、会社の清算について幅広く紹介してきました。

会社清算を完了させるためには時間を要することになりますが、不備なく適切に完了させるためにも、どの専門家に依頼するかしっかりと検討するようにしてみてください。

また、従業員や債権者といったステークホルダーに対して、誠実かつ紳士な対応を心掛けることが大切です。

これから清算手続きを開始する経営者の参考になれば幸いです。

画像出典元:Shutterstock

この記事を書いた人

TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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