会社・法人の廃業手続きの流れ | 必要となる費用も細かく解説

会社・法人の廃業手続きの流れ | 必要となる費用も細かく解説

記事更新日: 2024/02/28

執筆: 編集部

「会社・法人の廃業」というのは非常に重要な決断であり、一生涯に一度あるかどうかのきわめて重要な場面です。

これ以上の損失が出ないようにするために行う苦渋の決断ですが、廃業は1度しか出来ません。

そして、その手続きや費用について考えると、更に頭を抱えることばかり。

そこで今回は、会社・法人の廃業手続きで迷わないように廃業の具体的なやり方や必要となる費用について詳しく解説していきます。

今まさに悩みを抱えている方は是非参考にしてください。

廃業とは

廃業とは簡単に説明すると自主的に会社経営者が事業を辞めることであり、債権回収や資産整理を行って会社そのものを消滅させる行為のことを意味しています。

具体的な手続き上は「法務局の法人登記を抹消すること」が廃業に該当します。

同じような使われ方として倒産や破産や経営破綻といった用語がありますが、意味が大きく異なります。

廃業はあくまでも自分の意志で会社をたたむことであるのに対し、それ以外は再建の支払いが滞ってしまったり、事業が立ち居か無くなってしまった状態に陥ってしまってやむを得ず会社をたたんでしまう状態にあるのです。

倒産や破綻より廃業の方が多い

テレビニュースでは頻繁に廃業や倒産した企業が多くなっているといった情報が取りざたされているように、最近では廃業や解散をしてしまった企業が増加傾向にあります。

事業継承がうまくいっていないことなのが、原因として挙げられます。

休廃業・倒産件数の推移
(出典元:中小企業庁)

これらの廃業というのは先ほど説明したように、あくまでも自分の意志で会社をたたむという行為であり、赤字なのか黒字なのかは関係ありません。

むしろ廃業している企業の半数近くは黒字経営状態にあり、世界からも注目を集めている中小企業も消滅している状態にあります。

今では「黒字廃業」という言葉がトレンドになってしまう勢いです。

東京都の墨田区にある「痛くない注射針」で有名になった岡野工業も、お子さんには受け継がせずに廃業するとして話題になってしまっているのです。

このように後継者がいないため、引き継げる人がいないために廃業している企業は増え続けています。

廃業手続きにかかる費用

それでは実際に廃業をする場合にどれだけの費用が必要になってくるのかを計算していきましょう。

諸手続にかかる費用や設備の処分費用などいろんな費用がかかってしまいますので、一つ一つ別々に紹介していきます。

登記や法手続きの費用

廃業をするための主な手続き方法の一つが解散の登記や清算結了の登記です。個人事業主の廃業届提出に該当します。

また廃業時の手続きとして、官報で解散公告を出すことも義務付けられており、それにも費用がかかります。

これらのにかかる費用は以下のとおりです。

登記などの手続き費用

  • 解散登記の費用:3万円
  • 清算人の選任登記の費用:9,000円
  • 清算結了の登記の費用:2,000円
  • 官報公告の費用:3.3万円

→ 合計7.4万円


最低でも合計7.4万円
がかかるということです。

もちろん、これらの費用は自分自身で活動した場合にかかる費用なので、これを税理士や行政書士といった専門家の方々に代行してもらった場合はさらに高くなります。

最低限必要な費用に加えて、専門家への報酬として5~10万円はかかると考えておきましょう。

設備の処分費用

廃業する場合は不要になった設備をどうにかして処分する必要があります。

中古品として売ることが出来ないようなぼろぼろな状態にある物や自前で用意した特殊な設備がある場合はそれを廃棄しなければいけないので、当然廃棄費用がかかります。

中小企業総合事業団の調査によると、登記や法手続きの費用に次いでかかる費用が、この設備の処分費用です。

これはどの程度の設備を抱えているのかで大きく変わりますし、会社の規模によっても大きく変わってくる部分でもありますので、必要になる廃棄処分費用も会社によってかなり異なると考えましょう。

一切費用がかからないケースもあれば、1,000万円以上かかるケースもあります

在庫の原価割れ販売

何らかの商品を扱っている場合は在庫品が必ず存在していますが、廃業する場合はそれらの商品もすべて売ってしまう必要があります。いわゆる「閉店セール」を実行しなければいけません。

しかし、多くの商品を一気に販売しなければいけない状況になると通常価格ではなかなか在庫がなくならないので、それこそ閉店セール品としての原価割れ価格販売となってしまうでしょう。

原価割れ販売でも売れず、廃棄処分になってしまう場合ももちろんあります。

店舗や工場の原状復帰費用

自宅などで仕事をしていた人ならば気にしなくても良いのですが、あくまでも店舗や工場を借りていた場所の場合は原状復帰費用も必要になってしまいます。

これもどの程度の規模で借りていたのかで大きく変わってきますが、小規模の飲食店でも坪あたり7~10万円ほどかかって、合計で150万円程度はかかってしまいます。

このように様々な費用がかかりますので最終的には1,000万円以上かかってしまう人もいれば、50万円未満でなんとか収まる人もいます。

先に紹介したように大きな会社になればなるほど廃棄費用が一気にかさむので、全体で必要な費用も多くなります。

廃業以外の選択肢

廃業をするにはこのように費用がかさんでしまうケースもあるので、できれば避けたい最終手段といえます。

廃業以外の選択肢と挙げられるのは、M&Aで事業や店舗を売却するというやり方です。

黒字はでているけれど後継者がいない」という場合には、買い手が見つかる場合が多いです。

M&Aによる事業承継を選択することで、経営者がお金を得られるというだけではなく、従業員の雇用が守られる、取引先との取引を続けられるなどのメリットがあります。

 

廃業手続きの流れ

廃業にかかる費用や廃業に対する日本の現状を確認したところで、具体的な廃業手続きの流れを見ていきましょう。

1. 営業終了日の決定

廃業をするためには営業を停止する必要があるので、いつ頃に完全にストップするのかを決める必要があります。

今までお仕事上で付き合いがあった方々すべてに報告する必要がありますので、営業終了日を決定したら直ぐに情報共有を行いましょう。もちろん、従業員にも報告は必須です。

ただし、廃業を決断しても即日実行できるものでもありません。早い人でも2ヶ月程度は時間を要するのである程度余裕を持った日程作りをしてください。

2. 株主総会で解散の承認をもらう

株主総会で会社廃業の承認をもらう必要があります。

中小企業の場合は株主がそこまで散らばっておらず親族のみで固まっているというケースも多いのでそこまで手間取らないでしょう。

株主が散らばっているような大きな企業ならば発行済株式総数の過半数の株主を集めた株主総会を開いて議決権の3分の2以上の賛成が必要になります。

集まることが出来ずに書面決議になった場合は全員の賛成が必要です。

また、会社を廃業するには清算人を用意して会社の財産を清算しなければいけないので、株主総会で清算人を決めることになります。

一般的には社長や取締役が就任するのでこちらもスムーズに行くことが多いのです。

3. 解散・清算人選任登記

清算人は営業終了日から2週間以内に、法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。

4. 解散の届出

解散登記が終わっても税務署関連の届け出は終わっていないのでそちらの作業も必要です。

法人住民税や法人事業税の報告は都道府県税事務所や役場に提出し、国税の法人税は税務署に届けましょう。

ちなみに、従業員の解雇が発生した場合は雇用保険や社会保険の手続きが必要になります。

5. 官報での解散公告

解散公告を官報に掲載する必要があります。期間は2ヶ月以上です。

解散公告は債権者に債権を申し出るようにするための通知として義務付けられています。

6. 清算人による清算

債務の弁済と債権回収を行いましょう。売却によって発生した資産を用いて債務の弁済を行うのです。

残余財産が発生すると株主への分配も必要になりますし、これらの生産が完了したら決議報告書を作成して株主総会の承認を受けることになります。

ここまでの作業が終わったら清算決了の登記を行ってください。清算結了登記完了で登記記録がやっと閉鎖されます。

7. 確定申告をする

登記が終わっても実は終わりではなく、確定申告をしなければ完全に終了とはなりません。

廃業してから50日以内に事業年度開始日から解散日までの清算確定申告書と確定保険料申告書を用意して提出しましょう。

まとめ

会社・法人の廃業の手続きや費用について解説してきました。

現代日本では倒産や破産によって事業がストップしてしまうパターンよりも、廃業によって事業がストップしてしまうことが当たり前の世の中になっています。

しかし、規模が大きい会社ほど廃業するためにはかなりの額が必要になってしまいますので、廃業ではなくM&Aや店舗売却という選択肢があることを頭に入れておきましょう。

M&Aをサポートする会社も増えてきているのでそれらのサポート会社を使って最良のM&Aアドバイザーを味方につけることができれば別の未来も見えてきます。

画像出典元:Photo AC

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