自己破産は法律で認められた借金苦からの救済手段ですが、その手続きはどうしたらよいのでしょうか。また、自己破産が決定するまでにどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
この記事では、難しい法律用語を噛みくだいて説明しながら、自己破産の手続きとそれに要する期間について分かりやすく解説しています。
免責が決まるまでの期間をできるだけ短くするポイントについても説明しているので、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
負債を抱える苦しみの大きな要素に借金の取り立てがあります。自己破産が確定する前でもとりあえず返済の催促が止まれば、心にゆとりができて落ち着いた生活が送れます。
自己破産の手続きの中で返済の催促がなくなるのは、依頼した弁護士が債権者に受任通知を送った時点です。
自己破産の手続きはタテマエでは自分でもできることになっていますが、実際には弁護士(または司法書士)の助けを借りないと困難です。
自己破産を検討しているなら、まず弁護士に相談する必要があります。自治体が仲介している弁護士無料相談などを利用するのも良いでしょう。
弁護士に相談すると、自己破産の手続きの概要の説明と、負債の額や種類、所有する財産などについて聞かれます。
その場で弁護士が手続きの代行を受任することもありますが、多くの場合は負債や財産の状態が分る書類を用意してもう一度相談し、そこで正式受任となります。
弁護士は案件を受任すると、ローン会社やカード会社などの債権者に「受任通知」を発送します。
受任通知が送られた後は、返済義務が一時停止して返済の催促や取り立てもストップします。また、通知以降は借金の利息や遅延損害金も発生しません。
弁護士に自己破産を依頼すると20万円ほどの着手金を支払う必要がありますが、多くの場合、借金の返済がストップしている期間を利用して分割払いで弁護士費用を支払うことになります。
弁護士への最初の相談から受任通知の発送までは、通常2週間~3週間ですが、依頼者の書類の準備などに時間がかかるとその分遅れることになります。
自己破産の裁判所への申立てには、債権者一覧表や家計の状況を記入する陳述書など多くの書類が必要なので、受任通知の発送から早くて2~3ヶ月かかるのが通常です。
自己破産は負債をゼロにする法律手続きなので、それを決定するには次のような多くの書類が必要です。
1. 破産手続開始・免責許可申立書
2. 破産申立添付資料一覧表
3. 添付資料一式
・陳述書
・滞納公租公課(税金)一覧表
・財産目録
・住民票
・職業や収入に関する資料
(参照:裁判所公式ページ 申立て等で使う書式例)
書類は弁護士が書いてくれますが、そのために必要な資料や情報は依頼者が提供しなければなりません。
自己破産には「管財事件」と「同時廃止」の2種類があります。
管財事件になるのは、自己破産する人に処分して換金できる財産がある場合で、地域の弁護士から選任された破産管財人が財産の調査や債権者への分配を行ないます。
同時廃止になるのは、債権者に分配する財産がないのが明らかで管財人に報酬を支払うお金もない場合で、破産手続が開始すると同時に手続が廃止されて負債の返済が免責されます。
個人の場合は自己破産の7割は同時廃止で、残りの3割も普通管財より手続きが簡単で費用が安い少額管財になります。
弁護士は、同時廃止になる可能性が高い場合は、同時廃止見込みの申立てをするので、その場合は申立てまでにかかる期間も短くて済むことが多くなります。
同時廃止見込みの場合で受任から申し立てまでに2~3ヶ月月、少額管財の場合で3~4ヶ月が通常です。
自己破産の申立てから免責の決定までの期間は、同時廃止では2週間ほどですが、管財事件では早くても2ヶ月、場合によっては1年くらいかかります。
同時廃止の申立てをして認められた場合は、申立て書の提出から1~2週間で破産手続き開始(いわゆる破産宣告)が決定され、開始と同時に手続か廃止されます。(期間は裁判所によって多少の違いがあります)
この後に免責審尋(しんじん)という手続きがあり、破産者は他の破産者といっしょに法廷に立って、裁判官から一人ひとり尋問があります。
といっても氏名と住所の確認くらいで2~3分で終了します。審問内容ではなく、自己破産したからには一度は法廷立ってもらうという意味でしょう。
免責が決定されたら2週間後に官報に掲載され、官報掲載から2週間以内に債権者から即時抗告がなければ最終決定となり、免責の効力が発生します。
個人の破産では、債権者から即時抗告された例はほとんどありません。
同時廃止では、申し立てから免責決定までが約2週間、免責決定から効力発生までが約1ヶ月ということになります。
同時廃止ではなく管財人が選定される場合は、債権者会議を開く必要があるので、少額管財でも同時廃止より自己破産が確定するまでの期間が数か月長くなります。。
少額管財では、破産手続きの開始から3ヶ月後を目安に第1回の債権者会議が開かれます。
そこで債権者への配当が決まるか、配当すべき財産がないと分れば「異時廃止」となり、その後は同時廃止と同じで、免責審尋、官報への掲載、即時抗告がないことを確認して自己破産が確定します。
第1回の債権者会議が終わっても管財業務が終了していない場合はさらに数か月かかることになりますが、実際にはそういうケースは多くはありません。
したがって、少額管財では裁判所への申し立てから4ヶ月~6ヶ月で自己破産が確定するのが通常です。
同時廃止の場合は裁判所に納める裁判手数料は2万円程度ですが、少額管財になると破産管財人への手数料が加わるので23万円程度と高くなります。
また、代理人弁護士への費用も、同時廃止の場合は着手金(20万円程度)だけですが、少額管財になって自己破産が確定すると成功報酬が10万円程度加わります。
自己破産確定までの期間を短くするには、依頼した弁護士に求められる書類や情報をスムーズに提供することと、弁護士に隠し事をしたり嘘を言わないことが大切です。
自己破産の申立て書には、負債が増えていった原因やプロセス、収入と支出の状況(家計簿)、所有する財産や負債の一覧表など多くのことを書かなければなりません。
弁護士は依頼人からこれらの情報をもらわないと申立て書を書けないので、弁護士に求められる情報をできるだけ早く提供することが手続きを早めるポイントです。
借金ができた理由について嘘を言ったり、所有する財産を隠したりして、申立て後に発覚すると同時廃止が認められない場合があり、結局長い期間がかかり裁判手続にかかる費用も高くなります。
ギャンブルや浪費で作った負債が多いと自己破産できない(免責不許可事由にあたる)ことがあるからといって、依頼する弁護士に嘘を言うのは得策ではありません。また、裁判所もそれほど杓子定規ではありません。
自己破産が確定すると借金は帳消しになりますが、信用情報機関のいわゆるブラックリストに載り、5年~10年クレジットカードなどを作れなくなります。
信用情報機関には次の3つがあり、自己破産の記録が消えるまでに5年~10年かかります。
信用情報機関名 | 主な加盟会社 | 自己破産の記録が残る期間 |
CIC | クレジットカード会社 | 5年 |
JICC | 消費者金融 | 5年 |
全銀協(KSC) | 銀行 | 10年 |
したがって、自己破産が確定してから5年はクレジットカードを作れず、消費者金融からお金を借りることができません。
また、10年間は銀行からお金を借りたり住宅ローンを組むことはできなくなります。
自己破産の手続き開始から免責の確定までの期間(数か月)は次のような職業につくことができなくなります。
この制限は破産法に定められているわけではなく、それぞれの職業資格・管理する法律にその規定があるからです。
例えば警備業法では、「破産者で復権を得ないもの」は警備業を営むことはできない、とされています。
これらの職業に共通しているのは、他人のお金、それも大金を預かったり管理したりする仕事だということです。
なお、自己破産したことが会社に知られたからといって、それを理由にクビになることはありません。自己破産を理由に解雇するのは労働基準法の不当解雇にあたるからです。
自己破産を弁護士に依頼してから借金の取り立てがストップする(債権者に受任通知を発送する)までに2~3週間かかります。
受任通知の発送から裁判所への申立てまでにかかる期間は、同時廃止見込みの場合は2~3ヶ月、少額管財の場合は3~4ヶ月かかるのが通常です。
申立てから破産手続きの開始を経て自己破産が確定するまでにかかる期間は、同時廃止の場合は1か月半、少額管財の場合は3~6ヶ月ほどになります。
これらの期間を短くするポイントは、依頼する弁護士に必要な書類や情報を早く提供することと、嘘を言ったり隠し事をしたりしないことです。
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