経営者必読!M&Aにおけるバリュエーション(企業価値)の付け方

経営者必読!M&Aにおけるバリュエーション(企業価値)の付け方

記事更新日: 2018/10/01

監修: 前川英麿

M&Aを検討する経営者がバリュエーション(企業価値)の付け方を知らないのは、商品を売るときにその値付け方法が分かっていないのと同じです。

M&Aアドバイザー(FA)も手伝ってはくれますが、頼りきりではいけません。 M&A時には株式発行による資金調達時よりバリュエーションが下がる理由など、経営者が把握しておくべき内容をまとめました。

バリュエーションは2つの意味合いを持つ

英語の ”valuation” は「見積もり価格」「値付け」といった意味ですが、一口に「バリュエーション」といっても違う使われ方をする場合があることに注意しましょう。

バリュエーションは主に2種類に分類可能です。

株式投資に使うバリュエーション

一つは、「株価バリュエーション」などとも呼ばれるもの。これは主に株式投資のときに用いるもので、実際の企業価値と比較して現在の株価が割高か割安かをはかる指標です。

具体的には、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などが挙げられます。

資金調達やM&Aに使うバリュエーション

もう一つは、「企業価値評価」という意味でのバリュエーション。企業の業績などをもとに、本質的価値を定量的に評価することです。

簡単にいってしまえば企業の値付けです。実際には、ついた値段のことをバリュエーションと呼ぶことが多いです。

「あの会社のバリュエーションが●●億円というのは高すぎる」みたいな感じで使います。

バリュエーションはVCなどからの資金調達(エクイティ・ファイナンス)のときの株価や、M&Aのときの売却額を決めるときの重要な判断要素になります。

本記事では後者のバリュエーション、つまり資金調達やM&Aのときに使うバリュエーションについて、解説します。

資金調達の時よりバリュエーションが下がる?

ついさっき「資金調達やM&Aのときに使うバリュエーション」と説明したばかりですが、実は株式発行による資金調達(エクイティファイナンス)の時とM&Aの時でバリュエーションは変わります。けっこう変わります。

これがM&Aのときのトラブルの原因になったりするので、まずは「エクイティファイナンスとM&Aでバリュエーションは変わる」というのは覚えておきましょう。

資金調達時のバリュエーションのつけ方

経営者の方であればすでに経験済みの方も多いかと思いますが、株式発行による資金調達の時のバリュエーションは基本的にどんぶり勘定です。

特に創業初期(シード、アーリーフェーズ)の段階では、参考になる実績が出てない場合がほとんどなので、将来のだいたいの成長見積もりや市場の相場感でバリュエーションをつけることがほとんどです。

エクイティファイナンスでお金の出し手となるVCなどは、将来株を売ることを見込んで出資しています。そのため現時点でどのくらい企業価値があるかより、将来どのくらいの価値になりそうかを重視しているのです。

M&A時のバリュエーションのつけ方

一方、M&Aのときにはバリュエーションを現時点での業績を踏まえて見積もります。買い手側にとっては今現在どのくらいの価値があるのかが最重要です。買収の失敗は大きなリスクです。買収にかかった費用を回収できるか真剣に考えるため、実績にもとづいた定量評価を求めます。

バリュエーションはなんで変わるのか

このように、エクイティファイナンスの時には将来の業績が重視され、M&A時には現時点での業績が重視されます。

会社は右肩上がりの成長が見込まれることが多いので、現在の業績より将来業績見込みをもとにバリュエーションを計算したほうが高くなります。こういったわけで、M&A時よりエクイティファイナンス時のバリュエーションが高いという現象が生じているわけです。

取得する株式比率の違いも原因

またエクイティファイナンスとM&Aの違いとしては、取得する株式比率の違いもあげられます。M&Aでは100%株式を取得する場合も多いですが、それに対して資金調達時は出資者の株式比率は高くても33%以下に抑えるのが一般的です。

株式比率を抑えるためには当然出資額を抑える必要がありますが、一方で会社としてはこのくらいは出資してもらわないと困る!といった状況であることも多々あります。

そのため資金調達時には、株式比率はおさえつつ会社に十分な資金を出資するために、バリュエーションを大きく見積もろうという力が働くという側面もあります。

バリュエーションの計算方法3つ

企業の評価をはかるバリュエーションの方法にはさまざまなものがありますが、主に3種類に分類することが可能です。

1. 将来収益から計算

これは将来得られる収益の合計が企業の価値だという考え方です。DCF法(Discounted Cash Flow法)というのが代表的な計算方法です。

収益が得られるのが将来になればなるほど、その価値は下がります。100年後に100万円もらえるより今すぐ100万円もらえた方が嬉しいですよね。このように感覚的に捉えることもできますが、より具体的に考えてみましょう。

例えば年利5%とすると、現在の100万円は1年後には105万円になっています。このことを考えると、現在の100万円は1年後の100万円より価値があるといえます。そういうわけで、将来得られる収益はそれなりに価値を減らして、全部足し合わせたらどのくらいの価値になるかを計算するのがDCF法です。

将来得られる収益の合計が企業の価値、という考え方は非常に納得感がありますし、実際によく使われます。ただ問題点として、

  • そもそも将来の収益の予想が難しい
  • 現在価値に直すときにどのくらい価値を割り引いて計算するか難しい
  • 将来のどの時点までの収益を含めるかで結果が変わる

といった点が挙げられます。

実際に使うときには、成長率を○%と仮定して、みたいにしてざっくり計算します。

2. 純資産から計算

企業が実際にもっている純資産から企業価値を計算する方法です。

この計算方法のポイントはあくまで現時点の資産価値しか評価していない点。つまり、将来の収益などは想定していないのです。

企業の存続を前提としていない計算方法であるため、企業の清算時に用いられることが多いです。M&A時にも、買収額の最低ラインとして参考にしたりします。

3. 類似企業から計算

あの企業が時価総額○億ならうちもそのくらいあるでしょ、という考え方です。有名なのはマルチプル法で、これは頻繁に使われます。この考え方は日常でも使いますよね。職場であの上司があんなに給料もらってんだから、俺も同じくらいもらえたっていいじゃないかと思ったり。

この問題点は、比較対象の評価がそもそも間違っている可能性があること。そもそも上司が実際の価値に対して給料をもらいすぎてる可能性があるということです。

実際のM&Aにおけるバリュエーション

このように少し紹介しただけでも、バリュエーションのつけ方がさまざまなのは分かるかと思います。それも結局は、誰にも企業の本当の価値なんて分からないから。要は、相手を納得させることさえできればいいのです。

実際にバリュエーションを求めてみると分かることですが、どの計算方法を使っても、バリュエーションが一つの数字にバシッと決まることはありません。計算の過程で不確実な部分は推定値を入れていくため、「だいたいこのくらいからこのくらい」といったレンジでバリュエーションが導出されます。

複数の計算方法でバリュエーションをレンジで求め、それらが重なる部分がおそらく適正な企業価値だろうとするのが、現場で行われていることです。

さまざまなファクトや数値から、説得力のあるバリュエーションを導くのはM&Aアドバイザー(FA)の仕事です。経営者が自らそこのロジックを組む必要はありません。

しかし、どういったロジックで導かれたバリュエーションなのかを理解できるようにしておく必要があります。

 

経営者が把握すべきことは?

最終的なバリュエーションを決めていく部分をやってくれるのはM&Aアドバイザーとはいえ、任せきりでは自分が損することになります。

M&Aアドバイザーも自分の利益のために仕事をしています。売却が成功しないと成功報酬が得られないため、価格で妥協してでも売却させようとする可能性は十分にあります。

そういったときに、自分の会社の価値(バリュエーション)が適正に評価されているかを経営者自身が判断できるようにしておく必要があります。

記事で紹介したように、バリュエーションを評価するときのアプローチは3種類あることをまず覚えておきましょう。そして、実際に自分の会社のバリュエーションをそれぞれのアプローチで計算した時、だいたいどのくらいになるのかぐらいは計算できるようにしましょう。

バリュエーションの計算方法が分からないときは、知り合いの経営者などに聞くのがベストです。周りに聞けるような人がいない場合は、StarBurstなどの起業家コミュニティに参加するのも一つの手です。

とはいえ、M&Aを難しく捉える必要はありません。基本的にはM&Aアドバイザーが助けてくれますし、買い手候補となる企業からの提示額でだいたいの自分の企業価値は自ずとしれてくるものです。

そういった観点でも、はじめから焦って買い手候補を絞りすぎず、視野を広く持ってM&Aを検討するようにしましょう。

監修者プロフィール

前川英麿

プロトスター株式会社代表取締役CEO。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、ベンチャーキャピタルのエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ(現大和企業投資)に入社。その後、常駐の経営再建支援に特化したフロンティア・ターンアラウンドに入社。15年2月よりスローガン株式会社に参画し投資事業責任者として、Slogan COENT LLPを設立。16年11月に起業家支援インフラを創るべく当社を設立。その他、経済産業省 先進的IoTプロジェクト選考会議 審査委員・支援機関代表等。

画像出典元:Pexels

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