メドテック(MedTech)とは?将来性や注目企業を解説!

メドテック(MedTech)とは?将来性や注目企業を解説!

記事更新日: 2022/09/28

執筆: 桜木恵理子

様々な業界にITや最先端技術が取り入れられる昨今、医療業界でもメドテック(MedTech)と呼ばれる同様の取り組みに注目が集まっています

では、メドテックは具体的にどの分野でどんな風に取り入れられているのでしょうか?

国内外の注目企業や今後の見通し、将来性などとあわせて、詳しく解説します。

メドテックとは?

まずは、メドテックという言葉が何を表すのかを理解しましょう。

MedicalとTechnologyを合わせた造語

メドテック(MedTech)という言葉は、Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。

医療分野にITや最先端技術を活用する取り組み、あるいはそれによって起こるイノベーションを表します。

高齢化による患者数の増加や生産性の低さといった日本の医療分野における課題を解決する取り組みとして期待されています。

ヘルステックとは異なる

メドテックとよく似た言葉として、ヘルステック(HealthTech)が挙げられます。

両者には共通する部分もあるものの、正確には異なる概念です。

ヘルステックは病気の予防や日頃の健康管理に関わる領域で、企業で働く従業員の体調管理、運動補助のアプリなどが当てはまります。

対してメドテックは、医療機器のIoT化、医療ロボット、画像認識による診断など、より施術や治療に関わる分野での取り組みを指します。

 

メドテックが活躍する分野

メドテックは、医療のさまざまな分野で活躍する可能性を持っています。

代表的なものとしては以下が挙げられます。

1. オンライン診療

メドテックの事例としてもっともポピュラーで、すでに一般にも受け入れられているのがオンライン診療です。

Zoomやビデオ通話を使って、自宅にいながら医師の診察を受けられるサービスで、すでにいくつもの医療機関、企業が提供を始めています。

2. 医療・介護用ロボット

医療分野との相性が良く、大きな可能性を秘めているのがロボット技術です。

人間を超える力や高精度の動作を活かして、施術、治療の幅を広げる可能性があります。

精密な動きで手術に活かせるロボットアームや、介護用ロボット、身体と連携して運動機能を補助する義手、義足などがすでに一部で実用化されています。

3. 機器のIoT化

あらゆるモノをインターネットに接続し、情報を共有するIoT(モノのネットワーク)もメドテックの一種です。

例えば、治療で使われるベッドや血圧計などをネットワークに接続可能な製品に置き換えることで、患者のデータをリアルタイムで収集・分析できるようになります。

治療に役立つだけでなく、担当者の負担軽減や効率化にもつながる取り組みです。

4. 画像認識による病気の発見

AIによる画像認識技術を活かせば、レントゲンやCTスキャンの画像から自動的に病気を発見する自動診療も可能です。

すでに脳動脈瘤の発見においては医師が目視で確認するよりも高い精度に達しており、今後はがんをはじめさまざまな病気の診察への活用が期待されています。

メドテックに活用できる技術

すでに普及しつつあるメドテックですが、これからさらに多くの最新技術が活用される可能性があります。

1. AI

AIには機械学習と呼ばれる仕組みが備わっており、たくさんのサンプルを学習し、長く活用することで判断の精度が向上していくのが特徴です。

すでに普及しつつある画像認識による病理組織の発見をはじめ、AIドクターと呼ばれる自動診療の実現が期待されます。

また、診察以外にも、手術や調剤、窓口業務など、さまざまなシーンで人間による判断をサポート、自動化する可能性も秘めています。

2. ロボット

医療用ロボットは比較的古くから研究・開発が進んでいる分野で、内視鏡手術ロボット「ダビンチ」をはじめ、すでにいくつか実用化されています

最近ではGoogleの親会社であるアルファベットがジョンソン・エンド・ジョンソンと共同で開発を進めており、さらなる技術革新も予想されています。

3. IoT

IoTもすでに幅広く実用化されている技術です。

介護用カメラや血圧計、ウェアラブルデバイスなどによるリアルタイムでの健康管理に役立てられています。

一方で、多くの医療現場ではインターネットに接続できないレガシー機器が残っており、普及の余地はまだまだ広い分野でもあります。

4. 5G

5Gをはじめとした通信速度の高速化は、遠隔での診察や治療を変える可能性があります。

4Kや8Kなど高画質のデータを送受信できるようになることで、リモートでも対面に近い精度で視診が可能になります。

また、タイムラグもなくなるため、遠隔操作が可能な医療機器を用いて、診察を行いながらリアルタイムでの治療も行えるようになるかもしれません。

メドテックが必要な理由

医療を進歩させる可能性を秘めたメドテックですが、なぜこれほど注目を集め、必要とされているのでしょうか。

1. 高齢化による医療市場拡大

日本の高齢化はますます進んでおり、それにともなって医療のニーズは増え続け、市場も拡大しています

業界全体で生産性を保ち、収益を増やしていくためには、より良い治療の提供や効率化のための仕組みが欠かせません。

メドテックは高齢者治療や介護の必要性の高まりと共に、その役割を担うことになるでしょう。

2. 現場の人手不足

地方をはじめ、国内の多くの医療現場では、慢性的な人手不足が問題になっています。

AIによる自動診療や窓口業務の簡略化などが進めば、少ない人手でたくさんの患者に対応できるようになり、労働環境や待遇の改善にもつながります。

3. これまで治せなかった病気の治療に役立つ

単純に、技術の発展にはこれまで治せなかった病気を治せるようになる可能性を秘めているという側面もあります。

ロボットアームは人間以上の精度で手術を行えるほか、AIは機械学習を繰り返せば人間では見つけられない小さな症状も見つけられるようになります。

また、新薬の開発や未知の病気の発見にも最新技術は欠かせません。

4. 遠隔医療の実現に役立つ

コロナで医療従事者に大きな感染リスクが及び、遠隔医療の重要性が明らかになりました。

5GやIoT、ロボットなどの技術を活用すれば、離れた場所からも治療が行えるようになる可能性があり、感染リスクの低下に役立ちます。

コロナだけでなく、これから出現するかもしれない新たな感染症への対策という観点でも重要です。

5. 新たな産業の創出

国内の医療市場は数十兆円規模と巨大ですが、それにともなってメドテックが普及すれば、新たに大規模産業が生まれることになります。

多くの雇用が創出され、競争力のある企業が出現することで、日本経済全体にとっても良い影響がもたらされます。

メドテック市場の今後

ここまでメドテックの概要について解説してきましたが、実際のところ、日本におけるメドテック市場は今後どうなっていくのでしょうか。

世界のメドテック市場と比較しながらみていきましょう。

日本と世界の比較

売上高における研究費率をみると、国内のメドテック企業は他業種と比べてグローバル企業とのギャップが小さいことがわかっています。

すなわち、研究開発に十分なコストを使っているということです。

例えば、2017年にMaKinsey&Companyがまとめた資料によると、製薬会社とメドテック企業の日本と世界の研究費率は、以下のようになっています。

  製薬会社 メドテック企業
世界企業 売上高の20% 売上高の6~7%
日本企業 売上高の10% 売上高の4~5%

参考資料: MaKinsey&Company「MedTechがもたらす日本企業の成長機会

製薬会社による研究費率は国内企業とグローバル企業のギャップが10%以上あるのに対して、メドテック企業は2~3%とそれほど差がありません

このまま研究・開発に十分なコストを投下することができれば、グローバル企業との技術競争に負けない有力企業が生まれる可能性は大いにあるといえるでしょう。

市場規模は拡大

2020年時点で国内のメドテック市場は約14億円でしたが、その規模は今後大きく拡大し、2026年時点では160億円になるという予想もあるようです。

実際に大手企業の参入や有力スタートアップの台頭も目立っており、国内のメドテック市場は今後さらに発展していくと見て良いでしょう。

次章では、すでにメドテック市場で頭角を表している大手企業やスタートアップ企業をご紹介していきます。

日本のメドテック企業5選

1. トヨタ

画像出典元:トヨタ自動車公式HP

トヨタでは、高い製造能力を活かして下肢麻痺患者向けのリハビリ支援ロボット「ウェルウォーク」を開発・提供しています。

症状に合わせたアシスト機能やリアルタイムでの検知システムを備えているのが特徴です。

すでに100台近くが実用されており、今後はさらなる改良や新たなロボットの開発が期待されます。

2. ニコン

画像出典元:ニコン公式HP

ニコンは、網膜画像診断の技術を持つOptos、Verilyら企業の買収および提携によって、2016年頃からメドテック市場に本格的に参入しました。

また、治療用細胞メーカーのLonzaとの提携によって再生医療分野にも力を入れるなど、複数の領域で技術基盤を固める動きを見せています。

3. CYBERDYNE

画像出典元:CYBERDYNE公式HP

CYBERDYNEは、筑波大初のスタートアップ企業で、装着型サイボーグ「HAL」の開発を行っています。

脳から送られる微弱な電気信号をキャッチして動作に結びつける機能を備え、下肢麻痺をはじめ腰や単関節など様々な症状、ユースケース向けの製品を提供しています。

2014年には上場し、今では世界20カ国以上で製品が利用されているメドテック市場のリーディングカンパニーです。

4. Lily MedTech

画像出典元:Lily MedTech公式HP

Lily MedTechは2016年に設立された東大発のスタートアップ企業で、乳がんの早期発見を目的とした画像診断装置「COCOLY」の開発を行っています。

従来のマンモグラフィー検査よりも高精度な超音波検査を患者の負担なく実施できる装置で、女性の9人に1人が患う乳がんの早期発見への寄与が期待されています。

5. AIメディカルサービス

画像出典元:AIメディカルサービス公式HP

AIメディカルサービスは、内視鏡検査における画像診断AIを開発している企業です。

医療機関との提携によって開発された高精度のAIは、医師によっては2割程度の見落としが発生する癌検査の課題を解決する可能性を秘めています。

また、医師によって創業され、30本以上の論文を発表した実績を持つなど、世界トップクラスの専門知識を持つ企業でもあります。

まとめ

メドテックは、医療におけるさまざまな分野での活用が可能で、幅広い課題を解決する可能性を秘めた取り組みです。

経済的なポテンシャルも大きく、将来的には数百億円規模の市場へと成長し、日本経済全体にもプラスの影響をもたらしそうです。

ユニークな取り組みで注目される企業も数多く登場しており、いまもっとも注目すべき業界のひとつと言えるでしょう。

画像出典元:Unsplash、Pixabay

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