エドテック(EdTech)とは?注目理由や気になる日本教育の今後

エドテック(EdTech)とは?注目理由や気になる日本教育の今後

記事更新日: 2022/07/14

執筆: 川崎かおり

エドテック(EdTech)とは、教育領域のデジタル化によって生み出されるサービス・仕組み等の総称です。

「エドテックって何?」「エドテックでどんなメリットがあるの?」と疑問に感じたら、エドテックの概要やメリット・デメリットについて理解を深めましょう。

本記事では、エドテックが注目される理由やメリット・デメリット、さらには具体例や導入事例を紹介します。

EdTechとは

エドテックとはEducationとTechnologyを合わせた造語で、教育事業のデジタル化によって生み出される、あらゆるサービス・製品・ビジネスを指すのが一般的です。

例えば、以下のようなツールやシステムはエドテックと考えられるでしょう。

  • クラウド型学習管理システム
  • 子ども向けプログラミング・STEAM教材
  • オンラインドリル
  • 動画学習プログラム
  • オンライン評価システム など


近年は産業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでおり、IT技術の導入で新しい仕組みが次々と登場しています。

「フィンテック:FinTech(金融×テクノロジー)」「リーガルテック:Legal Tech(法律×テクノロジー)」などもエドテックと同様の成り立ちを持つ言葉です。

EdTechが注目される4つの理由

エドテックが注目されるようになった理由は、エドテックの導入が教育現場が抱える問題・課題の解決につながると考えられるためです。

どのようなことなのか、具体的に見ていきましょう。

1. 社会のデジタル化・グローバル化に必要な広い視野

デジタル技術による革新が起きている今の時代、IT技術を適切に使いこなしイノベーションを起こせる人材が求められます。

小さな頃からデジタル環境に慣れ親しむことは、これからの時代を担う子どもたちにとって非常に重要です。

またインターネットの普及に伴い、市場のグローバル化も加速しています。

企業が求めるのは組織の中に埋もれる人ではなく、広い視野を持ち組織に新しい視点を与えてくれる人です。

あらゆる国・場所の人とやり取りできるエドテックの活用は、子どもが国際的な視野や多様性を身に着けていく上で有益と考えられています。

2. 広がる教育格差をサポートする

家庭の経済状態により、塾に行く子ども・行けない子どもの学力の差は大きく開き、教育格差が顕著です。

デジタルツールの活用は、塾に行けない子どもの学びをサポートできるとして期待されています。

また受けられる教育のレベルは、居住地によっても異なっているのです。

地方の子どもは都心部の子どもよりも教育の選択肢が少ない上、教育の質も低くなる傾向にあります。

どこからでもアクセスできるオンラインツールを利用すれば、教育の機会が居住地によって制限されにくくなるはずです。

3. 一斉授業の限界を超えて次のスタイルへ

古くから続く「一斉授業」のスタイルは限界を迎えており、個々の子どものニーズを適切にカバーするのが難しくなっています。

多様な価値観が求められるこれからの時代、画一的な授業ではなく個々の理解度や習熟度に合わせたきめ細かい指導が必要です。

エドテックは「一斉授業スタイルの次」の授業形式として注目を集めています。

4. 現場の教員の負担軽減への期待

現場の教員は、子どもの学習面のサポート以外の負担が増大しています。

採点・出欠の取りまとめ・保護者との連携などと求められる業務は多く、残業や休日出勤を行う教員は少なくないでしょう。

エドテックには、教育に関する事務・雑務を自動化・簡略化するツールも含まれているのが一般的です。

教育現場に導入することで、教員の負担軽減も期待されています。

EdTechで日本の教育はどう変わる⁉

エドテックは、日本政府が提唱する「GIGAスクール構想」に不可欠といわれています。

エドテックの導入は日本の教育にどのような変化をもたらすのでしょうか?

GIGAスクール構想が実現可能となる

GIGAスクール構想とは、社会のデジタル化・グローバル化に合わせて教育のあり方も変えていこうという日本政府の施策です。

文部科学省は、GIGAスクール構想について以下のように示しています。

  • 1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育 環境を実現する
  • これまでの我が国の教育実践と最先端の のベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す


エドテックの導入によりGIGAスクール構想が実現されれば、子どもの学習活動はより一層充実します。

一斉授業では実現し得なかった、主体的・個別的な学習が可能となるでしょう。

GIGA スクール構想の実現へ|文部科学省

ICTとの組み合わせでニーズ増加

実際のところ、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の導入だけでは子どもに十分な教育を与えられません。

大切なのはICTによって提供されるコンテンツ、すなわちエドテックによるサービスです。

どのようなエドテックサービスを選択し子どもに与えるかが、GIGAスクール構想実現の大きなカギとなるでしょう。

経済産業省は教育機関がICT を活用した教育サービスを導入しやすいよう、「エドテック導入補助金」を設置しました。

これは、教育現場にエドテックを提供する事業者に対し、国が費用の一部を負担するという補助金です。

学校教育機関と連携した事業者が補助金を受けることで、教育現場へのエドテックの導入がスムーズに行われます。

教育現場のハード面・ソフト面の充実が求められる昨今、エドテックの市場規模は確実に拡大しているのです。

エドテック導入補助金2022|一般社団法人 ICT CONNECT 21

EdTechとeラーニングの違い

エドテックが「教育のデジタル化」であることから、しばしば「eラーニング」や「MOOC」と混同されます。

実際のところ、三者にはどのような違いがあるのでしょうか?

具体的に見ていきましょう。

1. eラーニングはデジタルデバイスを使った学びのこと

eラーニングとは、パソコンやタブレットといったデジタルデバイスを使って学ぶ学習スタイルのことです。

元々は企業の社内研修用に使われていましたが、徐々に語学教材・資格教材などへと裾野が広がっていきました。

「個人の勉強ツール」であるeラーニングは、エドテックの一部と考えてよいでしょう。

2. ICTとの違い

ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術です。

「IT(Information Technology:情報技術)」と区別される傾向にありますが、実際には大きな意味の違いはありません。

「ICT教育」というときは「IT技術を使った教育」を示しています。

ICTはGIGAスクール構想において、デジタル教育に必要な環境という位置付けです。

すなわちハード面を支えるのがICT・ソフト面を支えるのがエドテックといえるでしょう。

3. MOOCとの違い

「MOOC(Massive Open Online Courses):大規模公開オンライン講座」は、大学レベルの高等教育をオンラインで聴講できるプラットフォームです。

スタンフォード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)といった名門大学が参加しており、修了すれば「修了証」を受け取れます。

MOOCは大学レベルの高等教育のみが対象で、教育のデジタル化に寄与するものではありません。

エドテックの一部ではありますが、別物といえるでしょう。

EdTechのメリット・デメリット

エドテックを導入することにより、教育現場にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット1:教育の質向上

エドテックとICTの活用により、授業の幅が広がります。

例えば何かを説明するとき、画像や音声を付けた分かりやすい提示が可能です。

デバイス上に個々のレベルに合った問題を表示させたり、分からないところを何度も繰り返し呼び出したりすることもできるでしょう。

またエドテックで動画や音声をフル活用できれば、子どもも授業に飽きません。

学習意欲を維持しやすく、一斉授業よりも高い成果が期待できます。

メリット2:教員事務の効率化

エドテックのサービスを活用すれば、紙を使うシーンを減らせます。

テストやプリント類をツール上で提出してもらえば、教員はプリントをコピーしたり配ったりする必要がありません。

採点も自動化できるソフトなら、教員の負担は大幅に軽減されます

また出欠状況・生徒の個人情報管理などでも、エドテックのサービスを活用できるのです。

情報をデータで保存すれば、紙をファイルに綴じる必要はありません。

教員は授業以外の雑務に時間を取られることが少なくなるでしょう。

デメリット:教員間の差が顕著になる可能性

教員の中でも、インターネットリテラシーが高い人・なじみのない人の差があります。

エドテックを導入した場合、「オンラインサービスを最大限に使いこなせる人」「あまり使いこなせない人」の差が顕著になるかもしれません。

同じ授業を行っても、授業の質や進捗に大きな差が出るでしょう。

また業務効率アップのためにオンラインツールを導入したとしても、デジタルツールに不慣れな教員にとっては負担が増大するだけです。

エドテックを導入する際は、教員のインターネットリテラシーの底上げやデジタル化に向けての研修等が必要となるでしょう。

EdTechの具体例と導入事例

エドテックを活用した学習は、全国の学校で始まっています。

ここからは、経済産業省が提供するエドテック関連のWebサイト「未来の教室」から、エドテックの導入事例を紹介します。

1. 「DMM英会話」の中学・高校への導入(茨城高等学校・中学校)

DMM英会話は、世界100ヵ国以上約6,500人の講師が在籍するオンライン英会話講座です。

茨城高等学校・中学校では、高校3年生と中学3年生合わせて650名が活用しました。

これにより生徒は、授業中はもちろん、家庭でも自分のレベルに合った会話、文法、ニュース記事を題材にしたオリジナル教材を活用できています。

英語への苦手意識が軽減された生徒が増え、点数もアップしたそうです。

2. 「Ai GROW」で教育効果を可視化(広島県・戸田市など)

「Ai GROW」とは、IAT(潜在バイアス測定)技術を活用し、生徒の気質・成果を診断するシステムです。

自己評価・360°評価で生徒の能力・現状を正しく測り、伸ばしていく点や注意点を分かりやすく表示。

結果は「個人レポート」として生徒に提示されるため、生徒は自身の現状を客観的に把握することが可能です。

岡山大学教育学部附属中学校(岡山県)では、導入により「生徒同士がお互いを評価していく中で、生徒の相互理解や友たちを尊重する態度が向上した」という意見があがっています。

3. 著名人・アーティストの考えに触れられる「Inspire High」(長野県・福山市など)

「Inspire High」は、学校向けに作られた、著名人の動画学習プラットフォームです。

現在成功しているさまざまな大人が登場し、子どもたちに多様な価値観や考え方を伝えます。

過去には谷川俊太郎氏や、オードリー・タン氏も登場しました。

動画を視聴することで、生徒は「学ぶ意味」「目的を持つことの大切さ」を学べるのです。

生徒からは「自分の世界にはまだまだ面白い「未知」が溢れているんだなと気付くことができました。」などの声があがっています。

まとめ

エドテックは教育現場のデジタル化を推進し、効率的で質の高い学びを提供するサービスです。

デジタルツールの活用で、塾に行けない子どもたちの学びをサポートでき、一斉授業を超えて個々の習熟度に合わせたきめ細やかな指導も可能になります。

幼いうちからデジタルに慣れ親しみ多様な価値観を築くことは、今後さらにデジタル化が進む未来を生きる子どもたちにとって重要です。

エドテックの導入によりデジタル時代にふさわしい人材が育てば、日本の未来にもまだまだ期待が持てるでしょう。

画像出典元:Pixabay、Unsplash

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