昆虫ベンチャーが地球を救う!?世界の昆虫食はどこまで進化する?

昆虫ベンチャーが地球を救う!?世界の昆虫食はどこまで進化する?

記事更新日: 2022/06/27

執筆: 太田繙

環境問題への課題から、世界的にも昆虫食への関心が高まりつつあります。

肉や魚などに比べて大量収穫がしやすく、環境へのダメージが少ないことが主な理由です。

昆虫食を開発するベンチャー企業によって、昆虫食はいまや、プロテインやスムージー、昆虫パウダーを利用したパンやカレーにまで進化しています。

姿形のある元祖昆虫食から、未来食としての昆虫食、今後の昆虫ベンチャーの動向を探りました。

昆虫食とは?どんな需要がある?

FAO(国際連合食糧農業機関)によれば、全世界において食されている昆虫類は1,990種類を超えています。

消費量は、甲虫類(31%)、ケムシ(18%)、ミツバチなどのハチ及びアリ(14%)、イナゴなど(13%)です。

昆虫類は、タンパク質や良質の脂肪を多く含んでおり、鉄分及び亜鉛、カルシウムの量も豊富といわれています。

鉄分含有量においては、牛肉で乾燥重量100gあたり6mgに対し、イナゴ類の乾燥重量では100gあたり8~20mgです。

世界の昆虫食

アジア、アフリカ、ラテンアメリカの一部で昆虫は主食であり、アフリカの一部地域ではイモムシが貴重な食料源です。

東南アジアの一部ではアリの卵がご馳走としてふるまわれます。

日本でも大学、ベンチャー企業での研究・開発がきっかけで、昆虫の栄養価などに注目が集まり、ネットショップや自動販売機などで昆虫食の販売が少しずつ浸透しはじめているのです。

人口増加に伴い国連が昆虫食を推奨

国連は、2021年で約79億人の世界人口が、2050年までには98億人に増加すると予想しているのです。

このような社会的背景から、国連は食用昆虫の飼育を増やすよう呼びかけています。

昆虫食は、食糧危機の問題の解決に役立つと期待されているのです。

FAO(国際連合食糧農業機関)によれば、世界ではすでに約20億人が日常的に昆虫を食べています。

昆虫食は高タンパク・低脂質・低炭水化物

昆虫食の栄養価はとても高く、栄養バランスに優れています。

特にコオロギは、動物性タンパク質に加えて、食物繊維・ビタミン・オメガ3系脂肪酸・亜鉛・鉄分が豊富です。

タンパク質は牛肉の2倍以上、ビタミンB12は20倍以上といわれています。

低脂質、低炭水化物なので、健康志向が高まっている現代における天然のスーパーフードとしての可能性を秘めているのです。

日本で販売されている昆虫食品3選

昆虫食は、ネットショップや昆虫食の自動販売機などでも購入できるようになってきました。

ここでは日本で販売されている昆虫食を紹介します。

1.【Ellie】SILKFOOD(シルクフード)

SILKFOOD チップス・SILKFOODかいこプロテインスムージー(かいこプロテイン配合)
画像出典元:Ellie公式HP

エリー株式会社は、「オランダせんべい」で知られる山形県の酒田米菓と食用蚕パウダー入りSILKFOODチップスを開発。

酒田米菓が70年間培った薄焼き技術により、蚕の風味を香ばしく「パリっ」とした食感に焼き上げています。

大正製薬株式会社との共同研究で生まれたのは、SILKFOODかいこプロテインスムージー(グリーン・フルーツ)です。

かいこプロテインを配合したオリジナルスムージーで、グリーンではたんぱく質5gと1食分の野菜、フルーツでは1日分のフルーツが摂取できます。

<大正製薬コメント>

「サステナブルな食の未来を実現する」という思いに共感し、蚕の健康素材としての可能性を感じ、協業するに至りました。大正製薬とエリー株式会社様は、持続可能な社会の実現と、生活者の皆さまの健康でより豊かな暮らしの実現を図るために、今後も共同研究を継続して進めてまいります。

期間限定で販売されたシルクバーガー・シルクスープ・シルクケーキ・シルクスナック
画像出典元:Ellie公式HP

2020年には、期間限定で次世代の高栄養価サステナブルフードとして「シルクバーガー」なども販売されました。

シルクフードが目指すのは、「徹底的な美味しさ」と「従来の昆虫食とは一線を画す完成度」です。

食品に最適化した蚕の創出を目指して、京都大学大学院農学研究科や 東京大学大学院と連携し、蚕に含まれる「機能性」成分や蚕の食品価値の研究を進めています。

2.【無印良品】コオロギせんべい・コオロギチョコ

コオロギせんべい
画像出典元:無印良品公式HP

無印良品からは、徳島大学との連携による、コオロギパウダー入りせんべいです。

えびせんべいのような香ばしい風味が特長で、塩気は少し強いけれど、子どもも比較的食べやすいとの口コミもあります。

昆虫食を口にする機会のなかった世代には抵抗がある昆虫食も、小さい頃からおやつとしてなじんでいれば、将来は昆虫食が当たり前の世の中になるのかもしれません。

コオロギチョコ
画像出典元:無印良品公式HP

高タンパクに仕上げられた無印良品のコオロギチョコです。

少し粉っぽさが気になるという感想もありますが、クランチチョコとしてリピートするユーザーも。

歯応え十分の大豆パフにオレンジの風味、あっさりとしたチョコが特徴です。

お菓子としてのチョコバーというよりは、高タンパク低糖質の栄養バーとして、栄養補給や糖質制限、トレーニングなどで重宝しそうとの声も出ています。

3.【はまる食品】昆虫食自動販売機商品

画像出典元:はまる食品公式HP

これぞ、ザ昆虫食ともいえる、昆虫食に姿形を求めるならばこちらを。

昆虫食自動販売機商品の豊富なラインアップを紹介します。

素揚げコオロギ(フタホシ)

素揚げコオロギ(フタホシ大)

乾燥 コオロギ(ヨーロッパイエ)

素揚げオケラ

素揚げタケムシ

素揚げカイコのサナギ

素揚げゲンゴロウ

素揚げバッタ(イナゴ)

素揚げバッタ(アカアシトビバッタ)

素揚げバッタ(ノドバッタ)

乾燥 オオスズメバチ成虫

素揚げセミ

■昆虫スイーツ

コオロギクッキー(姿なし)

コオロギクッキー(姿あり)

カイコクッキー(姿なし)

カイコクッキー(姿あり)

バッタクッキー(姿なし)

バッタクッキー(姿あり)

引用元:はまる食品公式HP「商品リスト」

ネットショップでは、そのほか「冷凍昆虫食材」「すぐ食べられる昆虫スナック」なども販売されています。

昆虫食の開発や研究は企業だけではない

昆虫食の未来に注目しているのは、企業だけではありません。

大学や高校などでも研究・開発が行われています。

東京農業大学スマート植物工場

画像出典元:東京農業大学プレスリリース

東京農業大学バイオロボティクス研究室の佐々木豊教授と、法政大学国際高等学校の落合厳希教諭による高大連携教育プロジェクトです。

高校生がスマート植物工場で学び、昆虫食品の開発・販売を手がけます。

ITテクノロジーによって農業改革が進むなか、昆虫食の開発・販売にもさまざまな最新技術が導入されているのです。

最新テクノロジーによる「AIを活用した最適な環境づくり」、IoTによる「リアルタイムの記録・分析」、ビッグデータによる「飼育技術の最適化」などが研究されています。

徳島大学発フードテックベンチャー

株式会社グリラスは、徳島大学のコオロギ研究を生かし、2019年に設立されたフードテックベンチャーです。

本社:徳島県鳴門市

代表取締役:渡邉 崇人

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO」

2021年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」第1回公募での採択

最大助成額:7,000万円


この採択を機に、グリラスは徳島県美馬市の廃校(旧美馬市立切久保小学校)を整備し、世界初、コオロギ品種改良のための研究施設を立ち上げます。

画像出典元:株式会社グリラスオンライン

グリラスでは「ヒトに地球に嬉しい新たな未来食」として、サーキュラーフードがコンセプトのオリジナルブランド「C. TRIA」が展開されています。

サーキュラーフードとは、食品ロスをコオロギの餌として利用し、飼育したコオロギを人の食料としていく新たな循環型の食品のことです。

身近なパンやカレーとしても食べることができます。

グリラスオンライン昆虫食

  • 惣菜パンや菓子パンが楽しめる「C. TRIAブレッド全6種詰め合わせ」
  • コオロギ特有の旨味と香ばしさを際立たせた「C. TRIAカレー(トマト・グリーン・イカスミ)」
  • しっとりとサクサク2つの食感「C. TRIA クッキー ココア/ハーブ&ガーリック」
  • 甘さ控えめのザクザク感とコオロギの香ばしさが心地いいチョコクランチ「C. TRIA クランチ」

 

別府大学✖️立命館アジア太平洋大学

コオロギパウダーを練り込んだ麺「モリノエビラーメン」

画像出典元:立命館アジア太平洋大学「APU学生ブログ」

昆虫食に抵抗を感じる人のハードルを下げるため、エビに似た風味のコオロギを「森のエビ」と称して、1日限定で販売されました。

ジビエ料理(狩猟で捕獲した野生動物の肉)を研究する、別府大学食物栄養科学部の加藤礼識(ひろさと)講師と、大分のラーメン店「ヌードルファクトリーライフ」(別府市元町)の山本智裕オーナーの協力で、コオロギラーメンを開発。

コオロギパウダーを練り込んだ麺はそばのような色で、太さやパウダーの配合で試行錯誤が繰り返されました。

スープはジビエを使用し、あっさりとした味わいに仕上げたのだそう。

世界の伝統的な3つの昆虫食!

世界の多くの地域で、昆虫は珍味とされています。

ウガンダでは、バッタはヤギ肉よりも高価で取引されているのです。

ここでは、世界に元々ある伝統的な昆虫食を紹介します。

1. 日本「イナゴの佃煮」

イナゴの佃煮は、日本料理の代表的な昆虫食です。

イナゴを醤油と砂糖で煮る「佃煮」スタイルで調理されるのが特長。

長野県や福島県などでは、かつては重要な栄養補助食品として利用されていました。

2. アフリカ「食用イモムシカレー」

アフリカでは、食用イモムシを使ったカレーやシチューなどが親しまれています。

イモムシを乾燥させることで美味となり、風味が出るのだそうです。

鰹節に似た香りがする乾燥イモムシと野菜などを煮込んでいます。

3. タイ「カイジアオカイモデーン」

タイでは赤アリと卵、野菜などを混ぜた料理は、カイジアオカイモデーンと呼ばれ、外国人旅行客でもレストランなどで注文できます。

赤アリを食材とした料理はプチプチした食感があり、栄養価も高いため、現地では高級食材です。

タイでは、赤アリの他にもさまざまな昆虫食が生活に根付いていて、地元の食品スーパーで購入できます。

世界の昆虫食ベンチャー企業7社

昆虫は体温が低く、ほかの家畜と比較して代謝効率に優れ、省スペースでの飼育が可能です。

ここでは、世界的に注目されている昆虫ベンチャー企業を7社紹介します。

1. ENTO

ENTOは、ロンドンを拠点とする昆虫ベンチャー企業です。

昆虫を粉末にすることで消費者の不快感をなくし、欧米の昆虫食を推進しています。

開発された昆虫食は、コオロギ粉末コロッケ、乾燥コオロギメンチなどです。

2. WORLD ENTOMOPHAGY

WORLD ENTOMOPHAGYは、2010年にジョージア大学(アメリカ)の学生によって設立され、農薬を使わない、安全な昆虫食の提供を目指しています。

有機栽培や無農薬の餌で育てられた昆虫は、重みがありおいしいと評判です。

部屋のクローゼットで昆虫を飼育できるキットなども研究開発しています。

3. HOTLIX

HOTLIXは、アメリカで25年以上にわたり昆虫食を販売しています。

とくに昆虫やクモ類を入れたお菓子やキャンディが人気商品です。

サソリやミミズなど、消費者に敬遠されがちな昆虫食の開発・販売にも取り組んでいます。

4. Mighty Cricket

Mighty Cricket(アメリカ)は、細かく砕いたコオロギを、プロテインパウダー、オートミール、パン、ケーキ、ワッフル、チョコレートバーなどに使っています。

味を犠牲にすることなく、重要なタンパク源と必要な栄養素が摂取できる食材を開発し販売している企業です。

5. Illegal Oats

Illegal Oatsは、昆虫タンパク質をグラノーラに配合するなど、昆虫食をおやつとして取り入れることを目指しているアメリカの企業です。

コオロギだけでなく、さまざまな昆虫食によるお菓子やおやつの市場に参入し、事業の拡大を図っています。

6. Jiminy’s

Jiminy'sはアメリカで、昆虫ペットフードを手がける企業です。

犬の食事に含まれる動物性タンパク質を、昆虫性タンパク質に置き換えた商品を販売しています。

同社によれば、ペットフードに使われる動物性タンパク質は、アメリカで肉の消費量の25〜30%に達しているとのことです。

これを昆虫タンパク質に置き換えることで、2億1,800万ガロン以上の水を節約し、2,050万グラムの温室効果ガスの放出を防ぐことに貢献したと説明しています。

人間と同じように、ペットにとっても昆虫食はヘルシーで環境保全に役立つ食料になり得るのです。

7. Aspire Food Group

Aspire Food Groupは、カナダで資金や人件費を軽減する「スマートファーム」技術の開発を進め、2017年に世界初の自動化されたコオロギ農場を立ち上げました。

センサー、自律型ロボット、集中分配システム、専用プログラム等を使用することで、昆虫を継続的に監視、データ追跡しながらの研究と改善ができるようになります。

アメリカ、ガーナ、メキシコでゾウムシとコオロギの農場を立ち上げ、カナダで昆虫農場を建設するために1,680万ドルを調達しました。

今後の昆虫食ビジネス市場はどうなる?

投資家は昆虫食ビジネスにどのような反応をしているのでしょうか?

先見的な一部の投資家が後押しをしている

急成長する昆虫食ビジネス、昆虫ベンチャーは、先見性のある一部の投資家から注目を集めています。

日本では、前述の食用コオロギ国内生産量No.1のグリラスが約2.9億円、カイコ由来タンパク質を用いた経口ワクチンの開発を行うKAICO(九州大学発のベンチャー企業)が2.6億円の資金調達を実現しました。

昆虫食ビジネスは社会的意義が高く、世界中から資金が集まりやすい傾向です。

クラウドファンディングを利用した資金調達も盛んになっています。

「コオロギ餃子」「昆虫食で非常食」「昆虫食カフェ」など、昆虫食を手がける個人事業、ベンチャー企業などがクラウドファンディングを活用し、資金調達に成功しました。

2025年には1,000億円規模の市場に

日本能率協会総合研究所によると、世界の昆虫食市場は、2025年度で約1,000億円となる見込みです。

昆虫食市場概況

  • 2025年度世界の昆虫食市場は約1,000億円となる見込み。
  • 昆虫食は生産時の環境負荷が少ないことから、環境意識の高い欧米を中心に注目を集める。
  • 伝統的な昆虫食に加え、昆虫の原型をとどめず消費者の抵抗感が少ない新製品の開発、販売が進む。
  • EUでは2018年に食品としての承認を受け、市場の拡大が予想される。
  • 食用昆虫の養殖に注力する企業が増加し、価格の低下、昆虫食の更なる普及が見込まれる。

引用元:株式会社 日本能率協会総合研究所プレスリリース

画像出典元:株式会社 日本能率協会総合研究所プレスリリース

まとめ

世界中でさまざまな昆虫食のベンチャー企業や研究機関が、昆虫食の開発に乗り出しています。

美味しさや見た目の美しさも追求された昆虫食は、未来食として進化を続け、少しずつ子どもたちにも受け入れられていくでしょう。

幼少期から昆虫食になじんだ世代には、食料危機や環境問題にも負けない新たな昆虫食文化が根づき、形づくられていくに違いありません。

画像出典元:Pexels

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