中間法人を解説!廃止された中間法人法と一般社団法人へ移行とは?

中間法人を解説!廃止された中間法人法と一般社団法人へ移行とは?

記事更新日: 2021/03/30

執筆: 編集部

この記事では、すでに廃止されている中間法人と中間法人について解説しています。

町内会や同窓会に代表される非営利かつ非公益目的の団体に、法人格を取得させるための制度として、従来「中間法人法」という法律が存在していました。

現在では「一般社団法人」に移行しています。

従来存在していた中間法人の背景や制度趣旨を理解することは、一般社団法人の基本を理解することにもつながります。

町内会や同窓会などの任意団体に法人格を取得させようと考えている方や、従来存在した中間法人の概要を理解したい方は参考にしてみてください。

廃止された中間法人とは

中間法人の意義

最初に、「そもそも中間法人とは何だったのか」について確認していきます。

中間法人とは、この後紹介する「中間法人法」にもとづいて設立された法人を言います。

より具体的には、営利法人にも公益法人にも属さない中間的な位置づけにある法人のことを意味します。

営利法人と公益法人の違いや意味を簡単にまとめると以下のようになります。

営利法人とは 営利目的を持って設立された法人のことで、企業活動で得た利益を株主といった構成員に分配することが認められている法人(例:株式会社)
公益法人とは 公益法人認定法によって「公益性」に関する認定を受けた一般社団法人や一般財団法人


営利性というのは、会社が得た利益を構成員に分配することを目的している場合を意味し、公益性というのはNPO法人のように不特定多数の人の利益を目的としている場合を意味します。

そして、営利性と公益性のいずれにも属さない法人のことを「中間法人」と言っていました。

代表的な中間法人の例としては、町内会・同窓会・サークルなどの任意団体に「法人格」を取得させたものが挙げられます。

NPO法人 「不特定多数」を相手にしている「非営利」
任意団体 「特定の人」を相手にしている「非営利」

NPO法人が「不特定多数」を相手にしている「非営利」であるのに対して、任意団体が「特定の人」を相手にしている「非営利」である点で両者は異なります。

法人格の意味と、町内会やサークルなどに法人格を持たせる必要性についてはこの後解説していきます。

町内会やサークルなどに「法人格」を持たせた法人が中間法人とお伝えしましたが、ここでは「法人格の意味」「法人格を取得させる必要性(中間法人の必要性)」について紹介します。

法人格の意味

法人格というのは、法律によって権利義務の帰属性が認められた主体や人格のことを言います。

会社という組織は(本来であれば)人間のように意思決定することが出来ませんが、「法人格」を付与することで人と同じように意思決定できることが法律によって認められています。

そして、法人格が付与されることで、法人名義で銀行口座の開設や不動産登記をすることが可能となります。

中間法人が必要だった理由

この点を踏まえて、中間法人の必要性について確認してみましょう。

従来、町内会や同窓会、マンション管理組合などは、営利性と公益性のどちらも目的としていない存在のため、法人格を取得することが認められず「任意団体」として存在するしかない状態でした。

任意団体として何かしらの資産(銀行口座や土地、建物など)を保有していたとしても、代表者名義で保有するしかなく、相続などの実務面で様々な問題が生じていました。

この問題を解決するために2002年に施行されたのが「中間法人法」です。

中間法人法が定められたことにより、町内会や同窓会といった任意団体でも「法人格」を取得することが可能となりました。

結果として法人名義で銀行口座や不動産登記などをすることが出来るようになりました。

つまり、町内会や同窓会などが法人名義で資産を保有するようなニーズがあったため、中間法人が必要とされていたということです。

中間法人の種類

続いて、中間法人の種類について見ていきます。

中間法人には大きく分けて「有限責任中間法人」と「無限責任中間法人」の2種類が存在していました。

具体的な共通点や相違点は後ほど紹介しますが、基本的な意味は以下のようになります。

有限責任中間法人 設立時に一定の出資金が必要となり、出資者は法人の債務について対外的な責任を負わない
無限責任中間法人 設立時に一定の出資金といった制限はない代わりに、出資者は法人の債務について対外的な責任を負う


現時点では、「設立時の最低出資金の有無」「対外的な責任の範囲」の2点で異なると理解しておいてください。

中間法人の特徴

中間法人についてより理解を深めるために、これから紹介する3つの特徴もあわせて知っておきましょう。

社員の数

1つ目は、社員の数です。

中間法人の場合、必要な社員の数は2人以上とされています。

剰余金の配当が出来るか

2つ目は、剰余金の配当が出来るかどうかです。

剰余金の配当とは、株式会社における利益の配当を意味します。

この点、中間法人はそもそも営利目的で存在している法人ではなく、剰余金の分配を社員に対して行うことは想定していないため、剰余金の配当は出来ません。

法人税の取り扱い

3つ目は、法人税の取り扱いです。

この点、法人税については通常の会社と同様に課税が行われていました。

中間法人を理解する上では、基本的な概要や制度背景に加えて、中間法人の種類や特徴もあわせておさえてみてください。

中間法人法も廃止済み

中間法人の根拠法だった「中間法人法」の概要について紹介していきます。

町内会や同窓会などの任意団体が法人格を持てないという問題点を解消するために中間法人がありました。

中間法人に関する法律が、2002年に施行の「中間法人法」でした。

中間法人法は「総則」「有限責任中間法人」「無限責任中間法人」などの規則が規定されています。

中間法人法により営利性も公益性も持たない性質の任意団体が通常の会社と同様に事業活動を営むことが可能となりました。

中間法人法は2008年に廃止

ただ、その後2008年に施行された整備法(正式名称:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)により、中間法人法は廃止されています。

一般社団法人へ移行

中間法人法が廃止されたことにより、それまで存在していた中間法人は一般社団法人へ移行することとなっています。

つまり、公益性がなかったとしても非営利目的であれば一般社団法人を設立することが可能となりました。

中間法人法をもとに設立した中間法人を「一般社団法人」へ移行するときは、弁護士・行政書士・税理士に相談しましょう。

 

有限責任中間法人と無限責任中間法人

共通点:一般社団法人への移行

最後に、中間法人の種類である「有限責任中間法人」と「無限責任中間法人」の共通点と相違点について紹介していきたいと思います。

まず共通点ですが、いずれの形態も中間法人法にもとづいて設立された法人であり、すでに根拠法となっている中間法人法が廃止されています。

そして、中間法人法の代わりに新たに「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行され、ともに「一般社団法人」へと移行している点が共通しています。

相違点1:必要資本金

対して、1つ目の相違点としては「設立時に必要な資本金」です。

有限責任中間法人の場合、設立時に最低300万円以上の出資金が必要とされていました。

対して、無限責任中間法人の場合、設立時に必要な最低出資金はありません。

有限責任中間法人 設立時に最低300万円の出資金が必要
無限責任中間法人 設立時に必要な最低出資金の概念はなし


なぜこのような違いがあるかというと、それはこの後紹介する「対外的な責任」が異なっているためです。

相違点2:対外的な責任

2つ目の相違点としては「出資者の対外的な責任の範囲」です。

「有限責任」「無限責任」という言葉からもわかるように、双方の中間法人では責任が有限か無限かという大きな違いがありました。

有限責任というのは、出資者は法人の債務についてまで責任を負わないことを意味するのに対して、無限責任は法人の債務についても連帯して責任をことを意味します。

出資者が自ら出資した金額の限度で責任を負うのが「有限責任中間法人」

出資した金額を超えて法人債務についてまで責任を負うのが「無限責任中間法人」

ということが出来ます。

有限責任中間法人 出資者は法人の債務についてまで責任を負わない
無限責任中間法人 出資者は法人の債務についても連帯で責任を負う


有限責任中間法人は「株式会社」と同じ責任形態であり、無限責任中間法人は「合名会社」などの持分会社と同じ責任形態と考えるとわかりやすいかと思います。

以上が、有限責任中間法人と無限責任中間法人の共通点と相違点となります。

まとめ

今回は、中間法人の制度概要や根拠法となる中間法人法、そして中間法人の2形態を中心に解説してきました。

現在は中間法人が廃止され一般社団法人へと移行がされています。

これから町内会や同窓会などの任意団体を法人化する場面で従来存在していた「中間法人」などの用語が出てくる可能性があるので、概要だけでも理解してみてください

画像出典元:Shutterstock

この記事を書いた人

TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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