稟議とは物品購入や契約締結などの際に必要となる手続き。部下が出した提案に上層部の許可をもらうことが目的です。
「稟議を上げるってどういう意味?」
「なぜ私の稟議書は通らないんだろう?」
「稟議って時間の無駄じゃない?」
社会人になると、こんな悩みを一度は持つもの。でも、スムーズに承認を得る方法を知れば、あなたのストレスが軽くなるはずです。
今回は稟議の意味や使い方、決裁との違い、メリットとデメリット、稟議書の書き方、稟議を通すためのポイント、ワークフローシステムについて説明します。
最短・最速でOKが出る稟議書の書き方を身に付けましょう。それに加えて、ワークフローシステムを導入すれば、稟議にかかる手間を大幅に削減できますよ。
このページの目次
稟議の読み方は「りんぎ」です。「ひんぎ」が正確な読み方ですが、「稟=りん」と読めるため「りんぎ」と呼ぶ人が増えました。
誤用とはいえ、現在では「稟議=りんぎ」と読むのが一般的です。正しい読み方である「稟議=ひんぎ」と呼ぶ人は滅多にいません。
稟議の意味
(所定の重要事項について)主管者が案を作って関係者にまわし、文書で決裁・承認を得ること。
引用:Oxford Languages
・稟=申し上げる
・議=相談、提案、意見
「稟+議」は「意見を申し上げる」「立場が上の人に相談・提案する」という意味。
ビジネスの場での稟議とは、他社との契約や物品購入などに関する説明内容を文書化し、上層部の承認を得ることを意味します。
通常、重大事項を決める際には、会議を開いて関係者が提案内容に目を通し、上層部のGOサインが出たら採用が決まります。
しかし、会議を開くほどではない案件は稟議にかけるのが日本企業の慣習です。稟議書を数人~十数人の責任者に回覧し、承認されれば提案が通ります。
稟議の際に用いられる書類が「稟議書」です。稟議書は官庁では「起案書」と言われることが多く、一般企業では「稟議書」以外に「起案書」「事案書」「立案書」とも呼ばれています。
稟議が必要になる場面は会社によって異なりますが、よくあるのは以下のような時です。
■資金調達のための銀行との取引
■外部企業との契約締結
■接待や歓送迎会等の費用申請
■事務用品などの物品購入
■社員の採用
■設備修理の依頼
■出張等のスケジュール調整
稟議書のフォーマットが契約用、物品購入用…と種類ごとに用意されている企業もあります。
稟議の使い方は、「稟議を通す」「稟議が下りる」「稟議に上げる」「稟議にかける」「稟議にまわす」など。シーンごとに使い分けましょう。
【例文】新たな社員を採用すためには稟議を通す必要がある
【例文】10万円以上のものを購入するから稟議にかけた
稟議と似た意味を持つ言葉に「決裁」があります。
稟議は部下が権限者の承認を得るための手続きですが、決裁とは決定権を持つ責任者が部下から提案された事案の採用可否を決めること。主体(主語)となる人物が違います。
稟議を行うのは部下で、決裁を行うのは上司(権限を持つ責任者)です。部下が稟議書をまわし、上司が提案された内容に関しての決裁をします。これが稟議と決済の1つ目の違いです。
2つ目の違いは、承認する人の数です。稟議は複数人の責任者から承認を得ることを意味するのに対し、決裁は1人の責任者が承認することを意味します。
また、実際のビジネスシーンでは、直属の上司を飛ばしてダイレクトに最終責任者の承認を得る行為を決裁と言うこともあります。
会話の中で稟議や決裁が登場した時には、話し相手がどんな意図で稟議や決済を使っているのかを間違えないようにしましょう。
稟議は日本特有の文化で「稟議はおかしい!無駄だ!」という意見も聞かれます。そこで、稟議のメリットとデメリットについて改めて考えてみました。
稟議は会議開催にかかる時間や手間を減らせるのがメリットです。会議を開くと、たくさんの人のスケジュール調整や会議場所の確保が必要です。
稟議書をまわせば、それらの手間がかかりません。会議を開催する人だけでなく出席する責任者にとっても、会議の数を減らせるのは利点だと言えます。
稟議のメリットは、上司が部下の相談内容を短時間で把握できること。口頭で長々と説明されるよりも、情報が整理された稟議書のほうが分かりやすいからです。
重要ポイントがくまなく書かれている稟議書を見れば、申請目的が一目瞭然。検討作業が円滑に進み、無駄な時間をかけずに答えが出せます。
現場では、部下の提案にOKしたことを上司が忘れてしまった…そんな場面がたびたびあります。責任者の承認記録が残っている稟議なら、事実確認が簡単に行えます。
複数の部署に稟議書をまわすことで情報共有できるのが稟議の良さですが、たくさんの人が関わると些細なトラブルが起きやすいです。
稟議が通った後にハプニングが起きた時には、承認を得るまでの過程が記録されている稟議書が役立ちます。
稟議はひとつの提案に対して何人もの責任者が関わるので、悪い結果が起きた時に誰が責任をとるかがはっきりしません。
承認者の責任感が薄れると、いい加減な気持ちでOKを出す恐れがあります。いざという時に備えて、責任の所在を明確にしておくことが大切です。
最終責任者の承認を得るまでに時間がかかることが稟議のデメリット。決断スピードの遅さが原因でビジネスチャンスを逃したら本末転倒です。
順調にOKが出てさほど時間がかからないケースもありますが、その都度説明を加えないと承認されないケースもあります。
承認を得るまでの過程が円滑に進まないと、予想以上に長い時間がかかるかもしれません。
「稟議はおかしい!」といった反対意見が多いのは、無駄な時間や手間がかかるからです。最短時間で稟議を通すために、承認されやすい稟議書を作成しましょう。
ここからは、稟議書の書き方や稟議を通すためのポイントについて解説します。
稟議書の最初に記載するのが、何が書かれているかを表す「件名」です。一目見て申請内容が分かるよう、簡潔かつ具体的に記載しましょう。
次に提案する目的や理由、必要性を書きます。なぜ申請するのかを明確にすることは非常に重要です。「この提案を実行する必要がない」と判断されたら検討さえしてもらえません。
上層部の承認を得るためには、目的の明示だけでなく「お金をかける価値がある提案だ」と思ってもらう必要があります。十分なリターンが得られることをアピールしましょう。
使用金額はできる限り正確な値を示すことが大切です。稟議にかける段階だと金額を確定させるのが難しいかもしれませんが、承認を得やすくするために具体的な予算額を記載してくださいね。
良いイメージの稟議書にしたい!と思うと、リスクを隠したくなりますよね。でも、必ずデメリットについても明記しましょう。
どんな物事でも良い面と悪い面の両方があるので、良いことばかりが羅列されていると不自然な印象を与えるからです。
デメリットも正直に書いたほうが説得力が高まります。「多角的な視点で熟考された提案内容だ」と思ってもらえれば、スムーズに稟議が通るでしょう。
稟議書の事例として、契約に関する稟議書、購買に関する稟議書、人事に関する稟議書を紹介します。
稟議を通すコツは、承認する側の立場になって考えることです。これから紹介する重要ポイントを意識して作成してくださいね。
要点がまとまっておらず、何が言いたいのか分からない稟議書はNGです。
ポイントは結論(最も言いたいこと)を分かりやすくまとめること。先に結論を述べて、その後に理由を説明してください。
また、目的の説明不足で許可が下りないケースが多いです。詳しい事情を分かっているのは直属の上司だけ…そんな場合には、申請に至った背景も説明して、必要性の理解を促しましょう。
稟議書は論理的な内容にすることが求められるので、客観的なデータを提示して説得力を高めましょう。添付資料にも工夫を凝らせば、上司が納得する稟議書が出来上がります。
さらに、直接的な効果だけでなく、間接的な効果も明記するとより充実した内容になります。複数のメリットがあることを強調して、通りやすい稟議書を作成しましょう。
責任ある立場の人は社の損失につながることを最も恐れています。そのため、見落としているリスクはないか?という視点で稟議書をチェックします。
だからこそ、予測されるリスクは必ず明記すべきです。稟議書にデメリットの補い方法まで記載してあれば承認を得やすいです。
予測されるリスクとリスク回避方法をセットにして記載しましょう。
稟議にかける前には各部署への根回しが必須です。何の前触れもなくいきなり稟議書がまわってきたら警戒されるからです。
特に大金が絡んだり、判断に迷う内容の際には根回しをしておかないと、まず上手くいきません。事前に関係者への簡単な説明をして手応えを確かめましょう。
上司や他部署の社員に説明することで、賛同できない理由や疑問視される部分がはっきりします。その反省点を盛り込めば、より完成度の高い稟議書に仕上がります。
アイデアが良くてもコスパの悪い内容だと承認されない可能性が高いです。
費用対効果の高さを証明するためには具体的な数値の表示が欠かせません。見積もりをとるなどして、稟議書を作成する前に十分な情報を集めておきましょう。
また、事前に予算を確保できていればベストです。その場合には稟議書に予算編成済みである旨を必ず明言してくださいね。
数字でコストパフォーマンスの高さを明示できれば、説得力のある稟議書になりますよ。
ここまで稟議を通すポイントを説明してきましたが、最近はワークフローシステムを導入し、煩雑な稟議書作成の手間や承認までの時間の削減を実現している企業も多いです。
ワークフローシステムとは、これまで紙とハンコで行っていた稟議・決済、申請・承認などの業務を、自社のフローに従って電子化し、より効率よく業務を行うためのシステムです。
例えば、稟議フォームの作成、Web稟議申請、承認フローの設定など稟議回りの様々なタスクがすべて電子化されます。
ワークフローシステムについては、以下に記事と資料もございますので、ご参照ください。
この章では、まず最初に検討していただきたい、編集部おすすめのワークフローシステムを紹介します!
画像出典元:「ジョブカンワークフロー」公式HP
社内のあらゆる申請書をクラウド管理することができるジョブカンワークフローは、1万社を超える導入実績があるので厚い信頼性があります。
スマホアプリにも対応しているので、いつでもどこでも申請・承認が可能な体制を築くことができます。
また、従業員数10名以下の小さな会社から1,000名を超える大きな会社まで人数にとらわれずに導入可能なのが魅力的です。
月額料金 | 初期費用・サポート費用 | |
ジョブカンワークフロー | 300円/1ユーザー | 0円 |
ジョブカン経費精算 | 400円/1ユーザー | 0円 |
ジョブカンワークフローは月額300円 / 1ユーザーで利用できます。
初期導入費用、毎月のサポート料金、月額固定費が0円です。これは業界最安水準です。
また、最低利用期間のしばりもないので気軽に導入できるでしょう。
600円/1ユーザーで、ジョブカン経費精算と合わせて利用することもできます。
毎月の利用ユーザー数に応じて費用が発生するという分かりやすい料金体系です。
ジョブカンだと直感的に設定ができるので、専門的な知識やスキルのない方でも簡単に申請書が作れると思います。その他、スマホ対応もしていることで、導入前よりもメリットを感じる点が多く、導入後の運用がスムーズに定着する点もおすすめできるポイントです。
参照元:「ジョブカンワークフロー」公式HP
コラボフロー最大の特徴は、普段使っているExcelから申請書を作ることができる点です。
ExcelファイルをそのままWebフォームに変換して申請書を作ることができるため、Web環境とExcelさえあれば専門的な知識がなくても簡単に使用することが可能です。
30日間の無料お試しが用意されています。
クラウド版は最低5ユーザーから、月額500円 / 1ユーザーで利用できます。
なお初期費用は0円です。
またパッケージ版も用意されています。
選定時、特に重視していたのが「使いやすさ」です。 実際にワークフローを使う従業員にとって、難しい操作が無く、わかりやすく、使いやすいかどうか、という点を重視していました。 現場が使い易い製品なら、システム管理の自分は大変でも構わないと覚悟していましたが、コラボフローは操作も簡単で使い易く、最初に触ってみた時点で直観的に「いいな」と思いました。
コラボフロー導入後は全て社内でメンテナンスできています。運用開始後のトラブルもないですし、修正も非常に簡単です。組織変更があっても承認する役職は変わらないので、マスタだけ修正すればいいのもメンテナンスが楽でいいですね。
参照元:「Collaboflow」公式HP
画像出典元:「rakumoワークフロー」公式HP
rakumoワークフローは見やすいデザインで業務フローを可視化できるのが特徴。ただ単に承認や却下などのアクションができるだけではなく、コメントを添えることができるので、そのアクションに至った経緯などを把握することができます。
導入する際に、G Suiteの導入が必要だったり、12か月単位での契約となるので注意が必要です。
・基本プラン:年額/3,600円/ユーザー
(別途G Suite利用料 年額/6,000円/ユーザー、もしくはG Suite Business 年額/14,400円/ユーザーがかかります。)
rakumo ワークフローを導入することで、請求書の担当者の承認を得て、総務へ回して送付を指示、送付状の番号をフローへ入力しておけば配送後の追跡まで行えます。業種的に入金まで長い期間がかかる案件もあるのですが、入金時期の見込みまで一元的に管理できる。使い始めて間もないですが、ミスや混乱もほとんど発生しないので、とても効率的になりました。
rakumoワークフローは主に経費やイベントの手配といった申請業務で活用しています。弊社の特長として組織変更が頻繁にあるのですが、G Suite ™のメーリングリストを変更すればrakumoに組織として反映されるのでメンテナンスでは特に助かっています。
参照元:「rakumoワークフロー」公式HP
「稟議決裁さくらさん」は、社内のワークフローに合わせてカスタマイズできる稟議決裁システムです。
稟議決裁さくらさんを導入することで、ペーパーレスの促進による業務効率化や印紙代のコストカット等に期待ができるでしょう。
決裁者はオンラインで承認することができるため、稟議書を回覧する必要がなくなり、社内の意思決定をスピーディーにすることができます。
ペーパーレス促進や意思決定・承認スピードを早めたい企業におすすめのサービスです。
料金については問い合わせが必要になります。
初期費用+月額費用の料金体系のサービスが多いため、予算を確認しておくと良いでしょう。
企業や官庁に就職した人にとって稟議は避けて通れない存在です。
「稟議は無駄!おかしい!」という意見はあるものの、しばらくは稟議書を使って上層部の承認を得る仕組みが続くと予測されます。
説得力のある稟議書を作成してスピーディーに上司の承認をもらい、ワークフローシステムで業務を自動化すれば最短・最速で稟議が通ります。
稟議のデメリットを補うためには工夫が必要です。上司が納得する文書作成と業務の効率化に力を入れて、稟議に関するストレスをなくしましょう。
画像出典元:O-DAN
画面が見やすく、直感的に操作できるので、運用開始当日の問合せや反発は想定よりも遥かに少なかったです。当社のような2,960名規模の企業へのシステム導入は大きな労力がかかりますが、問題なくスムーズに運用できていることから、システム切り替えの成功を感じています。