補助金・助成金・協賛金|勘定科目や仕訳、税金の取扱いについて解説

補助金・助成金・協賛金|勘定科目や仕訳、税金の取扱いについて解説

記事更新日: 2020/07/17

執筆: 奥谷佳子

事業の大きな助けとなる補助金や助成金は、どちらも国や地方自治体などから支給される返済義務のないお金ですが、給付を受けるためには手続き方法や担当省庁が違います。

また、企業にとっては同じ「貰えるお金」に協賛金というものがありますが、それぞれの違いについてご存じでしょうか?

認識を誤っていたり、不適切な会計処理をしていると、助けとなるはずのお金が支給されなかったり、納税額が多くなったりします。

本記事ではそれぞれの違いはもちろん、どのような勘定科目を使用して会計処理を行うのか?税金の取り扱いからよく使われる補助金の種類まで詳しく解説していきます。

補助金とは?協賛金や助成金との違い

補助金

補助金とは、国や地方自治体などから支給される返済義務のないお金であり、経済産業省が担当しています。

読んで字の如く「不足しているところを補い助ける」事業であり、目的は企業を発展させ、公共の利益となる事業の展開を目指すための支援です。

その為、補助金の給付を受けるためには目的(要件)に該当することが必要であり、必要な書類(事業計画書)を提出し、審査が行われて通過すると支給されます。

協賛金

協賛金とは、企業などからイベントや催し物に対する協力・賛成を受け、援助してもらう(お金を貰う)ことです。

金銭的な援助が主ですが、人材の貸し出しや商品提供などを受ける場合もあります。

また、逆に自社がイベント等に協賛する(お金を払う)場合もあるでしょう。

貰う方と払う方では当然ながら会計上の処理も変わります。

助成金

助成金とは、国や地方自治体などから支給される返済義務のないお金であり、厚生労働省が担当しています。

補助金と違うのは、審査を受ける必要がなく要件を満たせばほぼ支給されます。

補助金は助成金と比べて種類が豊富で支給額も大きく、適用となる経費の範囲が広いというメリットがあります。

しかし、補助金には公募期間があり、時間をかけて書類を準備して申請しても審査の結果、支給されない場合もあります。

また、支給されるまで時間がかかるものもありますので資金繰りには注意が必要です。

補助金の法人税は課税、消費税は非課税

税法上、補助金は収入とみなされていますので、法人税の課税対象です。

前述したとおり補助金の多くは後払いですので、うっかり納税資金の準備に補助金の分の税金を組み込むのを忘れていた…ということがないよう、補助金が課税対象であることを頭に入れておきましょう。

一方、消費税は課税対処の条件「対価を得て行う取引」でないことから課税対象外です。

また、協賛金については企業が協賛を受けた(お金を貰った)場合は「収益」、協賛した(お金を払った)場合は「費用」となり、取引内容に応じて消費税の取り扱いも変わります(後述します)

補助金や協賛金の具体的な会計処理方法については、次項で詳しく解説していきましょう。

具体的な会計処理方法

補助金の仕訳

補助金・助成金の勘定科目は「雑収入」などを使用します。

【例示】補助金50万円の申請から受給、使用まで
(申請時)

仕訳なし

(確定時)

未収入金 50万円/雑収入 50万円

(受給時)

預金 50万円/未収入金 50万円

(未収入金を計上しなかった時)

預金 50万円/雑収入 50万円

補助金は確定してから支給されるまで数ヶ月を要することがあります。

その間に決算が到来した場合、未収入金と雑収入を計上しなければなりません。

未収入金 50万円/雑収入 50万円

補助金が入金となる前に納税が発生します。

協賛金の仕訳

協賛金は前述のとおり、趣旨により収益・費用の勘定科目や税金の取り扱いが変わります。

仕訳と税金の取り扱いについては下記のとおりです。

協賛された(お金を受け取った)場合

【例示】イベントの協賛金50万円を貰った
(仕訳)

現金50万円/雑収入50万円

収益に対価性があれば課税取引、対価性がなければ課税対象外となります。

協賛した(お金を支払った)場合

【例示】イベントの協賛金50万円を支払った
(広告宣伝費にした場合)

広告宣伝費 50万円/現金 50万円

(交際費にした場合)

交際費 50万円/現金 50万円

(寄付金にした場合)

寄付金 50万円/現金 50万円

 

税金の取り扱い

  広告宣伝費 交際費 寄付金
法人税 全額損金 800万円まで損金算入(※1) 限度額まで損金算入
所得税 全額必要経費 必要経費(※2) 全額事業主勘定(※3)
消費税 課税仕入 課税対象外 課税対象外

※1資本金1億円以下で一定要件を満たす法人
※2事業割合に応じて自己否認する必要あり
※3確定申告書で控除できる場合あり

圧縮記帳

圧縮記帳とは、補助金をもらって機械設備などの「固定資産」を購入した時、補助金収入に対する税金がかからないようにする処理です。

しかし、税金が免除されるのではなく、あくまで「課税が翌年度以降に繰り延べられる制度」です。

圧縮記帳の処理ができるものは補助金のほか工事負担金や保険差益もありますが、ここでは割愛します。

具体的な処理方法としては「直接控除方式」と「積立金方式」があり、どちらで処理するか選択することができます。

【例示】

取得価格1,000万円の機械を購入し、補助金500万円を受け取った

 

1. 圧縮記帳をしなかった場合

(仕訳)

機械 1,000万円/現金 1,000万円

現金 500万円/補助金 500万円

減価償却費 333万円/機械 333万円

(計算式)

1,000万円×0.333(※1)=333万円

補助金500万円(収益)−333万円(費用)=167万円(差引利益)

167万円×30%(※2)=約50万円(税金)

※1取得した機械の減価償却費(定率法0.333)
※2実効税率を30%とした場合

上記計算結果、圧縮記帳をしなかった場合には500万円の補助金に対して約50万円が課税されます。

2. 圧縮会計をした場合

【直接控除方式】

直接控除方式は補助金の分だけ固定資産を「圧縮」し、補助金と同額の「圧縮損」を計上して収益を0円にします。

(仕訳)

機械 1,000万円/現金 500万円

現金 500万円/補助金 500万円

固定資産圧縮損 500万円/機械 500万円

減価償却費 166万円/機械 166万円

(計算式)

(1,000万円−500万円(補助金と相殺))×0.333=166万円(費用)

補助金500万円−500万円(機械と相殺)=0円(収益)

補助金0円(収益)−166万円(費用)=▲166万円(差引利益)

上記計算結果、圧縮記帳(直接控除方式)をした場合は利益がマイナスとなり課税されません。

直接控除方式では上記図のように、本来あるべきはずの固定資産が決算書上は小さく見えてしまいます。

また、会計的な観点からいえば、固定資産圧縮損は架空の費用であるため、適切な期間損益の計算が損なわれることになります。

そこで、決算書上の表示として多く採用されているのが積立方式です。

【積立方式】

積立方式は固定資産を圧縮せず、決算時に「資本の部」のなかで補助金を圧縮積立金に振替え、法人税の計算(別表4)にて圧縮積立金を減算(損金算入)します。

補助金500万円に対する課税額は0円となり、結果的には直接控除方式と同じになります。

(仕訳)

機械 1,000万円/現金 500万円

現金 500万円/補助金 500万円

減価償却費 333万円/機械 333万円

(決算修正)

繰越利益金 500万円/圧縮積立金 500万円

(計算式)

1,000万円×0.333=333万円(費用)

 翌期からは積立金を取り崩して繰越利益金にあげていきます。

(仕訳)

減価償却費 222万円/機械 222万円

(決算修正)

圧縮積立金 111万円/繰越利益金 111万円

(計算式)

1,000万円―333万円=667万円

667万円×0.333=222万円

 

よく使われる補助金制度と注意点

よく使われている補助金制度

前述したとおり、補助金制度の種類は豊富にありますが中小企業、小規模事業者等でよく使われている補助金や支援事業をいくつか列挙しておきます。

物づくり・商業・サービス補助

対象:中小企業・小規模事業者等

補助上限:原則1,000万円

詳細・問合せ:
ものづくり補助事業公式HP
http://portal.monodukuri-hojo.jp/


小規模事業者持続化補助(一般型)

対象:小規模事業者等

補助上限:50万円

詳細・問合せ:
全国商工会会連合会
https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/

日本商工会議所
https://r1.jizokukahojokin.info/


小規模事業者持続化補助(コロナ特別対応型)

対象:小規模事業者等

補助上限:100万円

詳細・問合せ:
全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/jizokuka_t/

日本商工会議所
https://r2.jizokukahojokin.info/corona/


IT導入補助

対象:中小企業・小規模事業者等

補助上限:30〜450万円

詳細・問合せ:
一般社団法人サービスデザイン推進協議会
IT補助金2020
https://www.it-hojo.jp/


 事業承継補助金

対象:中小企業・小規模事業者等

補助上限:650万円(上乗せ制度あり)

詳細・問合せ:
事業継承補助金事務局
https://www.shokei-hojo.jp/

 JAPANブランド育成支援等事業

地域産品・サービスの魅力創出・発信活動・新市場の開拓を支援するものであり「事業者支援型」と「支援事業型」があります。

事業者支援型/補助上限:500万円

中小企業・小規模事業者が市場ニーズに合致した商品・サービスを開発し、新市場への販路開拓を目指す取組の費用を補助。

支援事業型/補助上限:2,000万円

民間支援事業者や地域の支援期間とうが、地域産品を活用した新商品の開発・商品のブランド化等に取り組む中小企業・小規模事業者に対して、市場調査や商品のプロモーション活動等の支援を行う際の費用を補助。

問合せ:
中小企業庁創業・新事業促進課
03−3501−1767

注意点

補助金の財源は法人税なので、未納や滞納のある事業者は申請できません。

また、すでに事業化されているものは対象外です。

企業は公的な資金を使って儲けることはできず、実際に支給された補助金の用途の証明や報告書の提出を求められる場合もあります。

なお、不正受給が発覚したした場合は刑事告訴、取引会社や銀行からの信用失墜、給付金の一括返済となる可能性がある他、省庁や各都道府県庁のWEBサイト等で公表されますので、受給者(経営者)は補助金の目的とすべきところを十分に理解し、事業を行いましょう。

まとめ

補助金や助成金は、業種や内容により種類が多岐にわたり、申請・審査に係る情報収集や書類の作成が必要です。

また、最近では新型コロナウイルスの影響により、新設・改正されたものも多く、分かりにくい部分もあるかと思います。

しかし、補助金は自社の事業にとって大きな助けとなりますので、日頃からアンテナをはり事前に準備を行なっておくのが良いでしょう。

画像出典元 o-dan

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