無形固定資産とは?今さら人に聞けない概要と減価償却について解説

無形固定資産とは?今さら人に聞けない概要と減価償却について解説

記事更新日: 2019/11/01

執筆: 奥谷佳子

固定資産と聞くと、土地や建物のような不動産や、車や機械などの動産をイメージするのではないでしょうか?これらは固定資産のうちの有形固定資産に分類されます。

そして有形とは別に「無形固定資産」と呼ばれる目に見えない、形のない資産も存在します。

そもそも無形固定資産とは何なのか?どんな資産が無形固定資産に該当するのか?

今回は、無形固定資産の概要と減価償却までを簡単に解説します。

無形固定資産とは?

形のない固定資産

会社は様々な資産を取得・所有し、それを元手に収益をあげていくというサイクルを繰り返していきますが、その中でも「会社が所有する動産・不動産のうち販売目的ではないもの」で「取得価額が10万円以上のもの」を固定資産と呼びます。

例えば、自動車販売店が販売目的で所有している車は商品ですので「棚卸資産」となりますが、自社の営業用車両は使用目的で所有している動産ですので「固定資産」となります。

固定資産の区分

固定資産 有形固定資産 土地、建物、車、機械装置など
無形固定資産 ソフトウエア、商標権、特許権、電話加入権など
投資 その他 株式、出資金、長期前払費用など

固定資産のうち、「有形固定資産」が土地や建物のように「形の有る固定資産」であるのに対し、「無形固定資産」は読んで字のごとく「形の無い固定資産」です。

ソフトウエアはパソコンに入れてプログラムを動かすためのカラクリであり、形の有るものではありません。

同様に、商標権や意匠権は称号やデザインを独占的に使用する権利ですが、権利そのものを目で見ることはできません。

無形固定資産は固定資産として扱われますが、上記のように有形固定資産とは別に区分されているのです。

無形固定資産の種類

では、具体的にどのような資産が無形固定資産に該当するのか?

主なものを、もう少し詳しく解説していきます。

ソフトウエア 自社で使用する目的で取得する会計ソフトや在庫管理ソフト。製品マスターなど。
特許権、商標権、意匠権 特許庁に申請して使用する権利を得た「特許」「商標」「意匠」の取得にかかる費用。
営業権 「のれん」とも呼ばれ、M&Aなどで企業を合併した際に吸収される会社が持つ社会的地位や営業力など、目に見えない収益力を資産として評価したもの。
電話加入権 固定電話を新規開設する際に発生する費用。昔より価格は下がりましたが、現在でも施設設置負担金がかかります。
借地権 会社が土地を無償、又は通常より安い価格で賃借している場合、通常価格との差額分を資産として計上したもの。

このように、無形固定資産は形がありませんので支出した金額をうっかり全額一時の経費としてしまいがちですが、そうではありません。

ソフトウエアも商標権も「長期間に渡り使用することができる資産」であり、支出は使用期間にわたって分割して費用化(=減価償却)しなければなりません。

無形固定資産の減価償却

減価償却できるものとできないものがある!

有形・無形を問わず、固定資産には減価償却ができる資産と減価償却ができない資産があります。

なぜなら、同じ固定資産でも「時間の経過とともにその価値が減少する資産」と「時間が経過してもその価値が減少しない資産」があるからです。

減価償却ができる資産のことを「減価償却資産」、減価償却ができない資産のことを「非減価償却資産」と呼びます。

有形固定資産 減価償却資産 建物、機械装置、車両など
非減価償却資産 土地、造成費用など
無形固定資産 減価償却資産 ソフトウエア、特許権、商標権など
非減価償却資産 借地権、電話加入権など

ソフトウエアは、最新のプログラムがリリースされていけばやがて陳腐化していくものですし、特許権や商標権は、その存続期間が特許権は8年、商標権は10年と法律で定められており、更新をしなければその時点で権利は消滅します。

つまり「時間の経過とともにその価値が減少する資産」ですので「減価償却資産」となります。

一方で、借地権や電話加入権などは、一度取得すれば半永久的に存続する権利ですので「時間が経過してもその価値が減少しない資産」つまり「非減価償却資産」に分類されます。

償却方法は定額法

では、無形固定資産の減価償却はどのようにすればよいか?

減価償却のポイントである償却方法と償却期間について解説します。

無形固定資産の場合、償却方法は基本的に「定額法」で行います。

定額法とは、その資産の価値が減少する期間(耐用年数)に渡って毎年一定額を経費に落としていくという方法です。

鉱業権のように採掘した量に応じて償却を行う「生産高比例法」というのもありますが、ここでは割愛します。

定額法で無形固定資産を減価償却した際の仕訳は以下のとおりになります。

【例】10月に耐用年数5年のソフトウエアを現金100万円で購入した(3月決算)

(仕訳)

取得時
貸方 借方
ソフトウエア  100万円 現金      100万円
 
決算時

計算式

(100万円÷5年)×6ヶ月/12ヶ月=10万円

貸方 貸方
減価償却費    10万円 ソフトウエア   10万円

 

耐用年数

償却期間(耐用年数)は資産の種類によって期間が異なりますので、次の表を参考にしてください。

種類 耐用年数
漁業権 10年
ダム使用権 55年
水利権 20年
特許権 8年
実用新案権 5年
意匠権 7年
商標権 10年

ソフトウエア
複写するための原本※1
その他のもの※2

 

3年
5年

営業権 5年

参照:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表
※1 販売目的で制作した製品マスターや制作費、研究開発費。
※2 自社で利用するために購入したソフトウエア。

同じソフトウエアでも、用途により耐用年数が違ってきますので注意が必要です。

減価償却は任意償却!?

減価償却は会計上のルールと税法上のルールで少し見解が異なります。

会計上のルール(企業会計原則)では減価償却資産について期間に応じた減価償却を行わなければならないとされていますが、仮に減価償却を行わなくても罰則規定はありません。

一方、税法上のルール(法人税法、所得税法)では税法に基づいた計算方法により求めた上限額(償却限度額)まで減価償却費を損金算入することができる、とされています。

極端にいえば、償却限度額の範囲内であれば無形固定資産の減価償却は任意であるといえるでしょう。

減価償却するメリット

ではなぜ、無形固定資産の減価償却が必要なのか?

そのメリットを簡単に列挙します。

  • 減価償却費という経費を計上することで利益を圧縮することができ、税額が減る。
  • 会社の所有資産のうち、流動資産が占める割合(流動比率)を上げることができる。
  • 減価償却費を早期に計上することで、将来的に赤字決算となった場合の費用負担を軽減することができる。

償却限度額の範囲内であれば減価償却は任意、というのはあくまで法人税法上の話です。

融資を受けている銀行や、取引調査票を提出している大口の得意先などがこのような「減価償却費を計上していない決算書」を見た場合、決して良い印象を受けることはありません。

利益調整や粉飾決算といった見方をされかねませんので、企業会計原則に沿った正しい減価償却費の計上をすべきです。

まとめ

無形固定資産の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。

  • 固定資産のうちの一つであること。
  • 販売目的ではない、自社で使用する目的で所有する資産で「形の無いもの」。
  • 減価償却できるものとできないものがある。
  • 償却方法は基本的に定額法を使用し、任意償却である。
  • 減価償却することで得られるメリットがある。

資産計上を忘れ、誤って一時に全額経費として落としてしまうと、後の税務調査で指摘され過大に計上した経費に対する修正申告をしなければなりません。

そのようなミスをなくすためにも、まずは無形固定資産となるものとその償却期間(耐用年数)をしっかり把握しましょう。

画像出典元:o-dan

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