【不正会計の事例5選】有名企業で起きた事件と防止策を解説

【不正会計の事例5選】有名企業で起きた事件と防止策を解説

記事更新日: 2022/11/10

執筆: 桜木恵理子

不正会計と聞いても、具体的にどんな行為が不適切なのかピンとこない方も多いのではないでしょうか。

「そもそもどうして不正会計は起きてしまうのか」と疑問に感じる方もいるでしょう。

自分には関係ないと思っていても、もしかしたら知らず知らずのうちに不正会計をしているかもしれません。

この記事では、不正会計とはどういうものなのかを詳しく解説し、さらに有名企業で起きた不正会計の事例5つも紹介していきます

不正会計とは

こちらでは、不正会計とは一体どういうものなのかということや、どんな種類があるのかを解説します。

不正会計とは「財務諸表の改ざんや情報を隠すこと」

不正会計とは、わざと財務諸表(会社関係者に財務状況を知らせるための書類)を改ざんしたり、本来開示すべき情報を故意的に隠したりすることです。

例えば、架空の売上を立てたり、かかった経費を隠したりして、企業の財務状況を偽る行為を指します。

また、会社の資産を私的に利用する行為も不正会計の一部です。

不正会計の種類2つ

不正会計には主に、「財務諸表を改ざんする行為」と「資産を私的流用する行為」の2種類があります。

それぞれ解説していきます。

財務諸表を改ざんする行為

財務諸表の良悪に関わらず、「意図的」に虚偽の報告をすることで、会計状況を不正に処理する行為等のこと

例として、「売上の水増し」や、「経費の先送り」などの行為があげられます。

その他、取引先と結託して架空の商品売買で利益を計上する「循環取引」という不正行為もあります。

資産を私的流用する行為

会社の備品や財産等を、私的に使用する行為のこと

例として、「会社の資産を窃盗」したり、「売上金の一部を着服」したりする行為があげられます。

従業員により会社の資産を私的に使われるほとんどの場合は少額の被害ですが、経営者が不正をした場合には大きな被害が出ることも珍しくありません。

「不適切会計」「粉飾決算」との違い

不正会計と似た意味の言葉として、「不適切会計」と「粉飾決算」があります。

それぞれとの違いをみていきましょう。

不適切会計

「不適切会計」とは、故意的かどうかに関わらず、財務諸表を誤って改ざんしてしまう行為です。

例えば、知識不足によって経理担当者が会計のミスをしてしまった場合は、不適切会計とみなされます。

意図的に不正を行ったかどうかで、「不正会計」と「不適切会計」のどちらが使われるか変わるということです。

粉飾決算

「粉飾決算」とは、財務状況をよく見せるために、財務諸表を故意的に改ざんしたり、財務報告に必要な情報を開示しない行為です。

つまり、赤字決算を黒字決算だと偽る行為になります。

あえて企業の経営状況をよく見せることで、金融機関からの融資を受けやすくするなどの理由から、粉飾決算へと手を染めてしまうのです。

財務諸表を偽り、会社の経営状況を良く見せた場合は、「粉飾決算」と「不正会計」のどちらにも当てはまります。

不正会計が発生する4つの原因

こちらでは、何が原因で不正会計が発生するのかを解説していきます。

経営が上手くいっていない

経営状況の悪化を関係者に知られるという不安から、不正会計を発生させてしまうことがあります。

業績の悪化が金融機関に伝わってしまうと、会社の信用が無くなり、融資を受けられなくなることも考えられるでしょう。

そのため、利害関係者に業績を良く見せ、信用を保ちたいという考えが強くなることで、不正会計が発生してしまうのです。

不正が容認されやすい状況になっている

不正会計に対する監視体制が甘いと、不正が容認されやすい状況が作られてしまいます。

監査部署の調査が緩ければ、「隠れて不正会計を行ってもバレない」と考えてしまうのです。

例えば、監査部署に調査に関する制約があり、社内の隅々まで調べることができない環境だと、不正会計が起こりやすいといえるでしょう。

また、金融機関によっては、「倒産するよりも不正会計で長く存続してくれた方が利益になる」という考えで不正を甘く見てしまうケースもあります。

このように、企業に対して監視の目が甘い場合は、不正会計が起こりやすい状況と考えられるでしょう。

不正会計を悪いと思っていない

違法性をきちんと理解できておらず、「他の会社でも多少はやっている」と経営者が考えていると、不正会計が発生してしまいます。

不正会計を悪いと思っておらず、株主や金融機関からの評価を過度に重視する場合、不正会計をしてでも業績を良く見せたいと考えることも多いです。

売上目標を達成するという使命感がある

「売上目標を達成しなければならない」という強い使命感がある社風の企業では、不正会計が発生しやすくなります。

経営者からの目標到達に対するプレッシャーが強い場合、従業員は「不正をしてでも達成しなければ!」と考えてしまうのです。

社内に「目標を達成しなければ経営者からパワハラを受ける」といった雰囲気が蔓延している場合も同様に、「多少の不正をしてでも売上を大きく見せたい」と思ってしまうでしょう。

有名企業で起きた不正会計の事例

こちらでは、有名企業で実際に起きた不正会計の事例について解説していきます。

1. オリンパス

2011年に、電子機器メーカーのオリンパス株式会社が不正会計をしていたことが発覚しました。

オリンパスは、虚偽内容が記載された有価証券報告書を提出したとして、起訴されたのです。

当時、バブル崩壊で発生した金融商品の投資などによる多額の損失を隠すために、元社長など3人が主導して不正会計をしたとされています。

隠そうとした損失は、2003年時点で1,177億円に膨らんでいたようです。

最後は内部告発によって判明しましたが、それまでの約20年間に不正会計が表に出なかったのは、監査体制がきちんと機能していなかったことが原因とされています。

2. 東芝

2015年に総合電機メーカーである株式会社東芝の不正会計問題が発覚しました。

東芝は、売上を過大に計上したり、損失の計上を先送りしたりして、7年間で累計2,248億円の利益を水増ししていたようです。

経営不振の状況があり、従業員に過大な利益目標を課していたりしたことが原因だったと言われています。

最終的には内部告発での不正発覚だったようですが、役員や監査機関が手を組んでしまえば、これほどの巨額粉飾決算もなかなか見抜けないのが現状です。

3. カネボウ

2005年、「カネボウ粉飾2,000億円」との報道がされ、かつて日用品などの事業を展開していたカネボウ株式会社の不正会計が表に出ました。

以前から、社内で経営の浄化と一新を目的に経営浄化調査委員会を設置していたため、粉飾決算が発覚し、カネボウが旧経営陣を告発したのです。

調査が進められる中で、不適切な会計処理が2,150億円にもおよぶと判明し、粉飾発覚後に事業規模を縮小せざるを得なくなり、その後2007年に解散することに。

主導していた旧経営陣に責任が追求されるだけでなく、監査を担当した監査法人も粉飾決算に関与していたことがわかり、監査を担当していた公認会計士が4人逮捕されました。

4. ライブドア

インターネット関連事業のライブドアグループは、2004年に虚偽内容が記載された有価証券報告書を提出し、粉飾決算容疑がかけられました。

本来売上計上を認められない金額を売上高へ上乗せし、業績を良く見せていたのです。

実際は経常損失が約3億円の赤字になっていたはずが、株式の売却益などを売上高に含めることで経常利益を約50億円の黒字として偽っていました。

5. グレイステクノロジー

2018年に東証一部上場した、マニュアル制作会社のグレイステクノロジー株式会社は、四半期報告書の不正が発覚し、2022年には東証一部上場廃止となりました。

不正会計が発覚し調べてみると架空の売上計上が常態化しており、2021年3月期には売上高18億円のうち9.9億円が水増しによる数字だったことがわかったのです。

背景には、元代表取締役が従業員に対して過度に売上目標達成を強いていたとされています。

有名企業の粉飾決算について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ!

 

不正会計はバレづらいといわれる理由

有名企業でも発生してしまう不正会計ですが、バレづらいといわれていることをご存知でしょうか?

こちらでは、プロでも見抜くことが難しい2つの理由を解説します。

バレないように仕組まれているから

経営陣の主導によって組織的に仕組まれた不正会計では、監査部門が調査しても不正を見つけられない可能性が高いです。

組織内で用意周到に隠された書類を、監査の時だけ調査する担当者が見つけ出すのは困難ですよね。

不正発覚につながる書類は、社外の人間には見つけられない場所に保管されているため、プロでも見抜けないといわれています。

内部通報しにくい社風だから

従業員が不正会計に気付いたとしても内部通報に躊躇してしまう場合は、不正会計が発覚しづらくなります。

不正会計に気付いても、「内部通報先がわからない」「内部通報したときに自分が非難されるのではないか」と通報を躊躇させるような社風がある場合、従業員は不正に気付いたとしても容認してしまうことも多いでしょう。

内部通報しにくい社風が、結果として不正会計の発覚をしづらくさせているのです。

不正会計で問われる罪

不正会計で問われる罪には、「刑事責任」と「民事責任」があります。

こちらでは、それぞれどのような罪が発生するかを紹介します。

刑事責任

刑事責任の一例には下記のようなものがあります。

【違法配当罪】
粉飾決算により余剰金配当をした場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金で処罰される。

【特別背任罪】
粉飾決算による余剰金配当が、経営者や役員の利益を狙ったものの場合は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金で処罰される。

【有価証券報告書虚偽記載罪】
有価証券報告書の重要事項に虚偽の記載がされている場合は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金で処罰される。

 

民事責任

民事責任の一例には下記のようなものがあります。

【会社法第462条】
粉飾決算により違法に配当がされた場合、受け取った利益分を会社に賠償しなければならない。

【会社法第429条】
役員などが職務を行う上で悪意または重大な過失があり、第三者に対して損害を与えた場合、損害賠償の責任を負わなければならない。

【金融商品取引法第24条の4】
役員などが有価証券報告書の重要事項に虚偽の記載をし、その事実を知らない者が有価証券を取得して損害が生じた場合に、損害を受けた者に対して賠償責任を負わなければならない。

 

不正会計を防ぐためにできることは?

不正会計を防ぐためには何をしたらいいのでしょうか。

こちらでは、不正会計をさせないために重要なことを3つ紹介します。

内部通報しやすい環境をつくる

従業員が内部通報しやすい環境をつくれば、不正会計を防ぐことができるでしょう。

内部通報に躊躇しない社風なら、不正を抑制することが可能です。

内部通報をしやすくするには、内部通報用窓口の連絡先を周知させることと、通報した従業員に関する匿名性の確保が必要でしょう。

内部の監査体制を整える

内部の監査体制を整えることで、不正会計を防ぐことができます。

監査部署によって社内の経営状況がしっかりと調査されている企業では、不正会計が起こりづらいでしょう。

監査部署は、会社から独立し、制約なく社内を調査できる必要があり、役員は調査されないなどの制約があってはいけません。

このように監視の目が光る体制を整え、不正会計を防ぎましょう。

「不正会計=悪」ということを周知させる

不正会計は悪いことなのだと全従業員が知っていれば、不正会計を未然に防ぐことができます。

違法性を周知させることで、従業員が不正会計に対して否定的になり、不正の起きない社風が生まれるのです。

例えば、定期的に会計知識の勉強会を行い、どういった行為が不正会計になり得るのかを具体的に示すことも重要です。

そのうえで、全従業員が不正会計の違法性や企業への影響・罰則を理解することが、不正会計を防ぐことへと繋がるでしょう。

まとめ

今回は、不正会計とはどんなものなのかということを、有名企業の不正会計事例もあわせて紹介しました。

有名な企業でも不正会計が行われてしまうのは、損失を何とかして偽ろうとしたり、売り上げ目標を過度に重視させたりといった背景があります。

不正会計を防止するには、内部通報しやすい環境をつくることや、従業員が不正会計の違法性を正しく認識することが大切でしょう。

画像出典元:Unsplash

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