領収書の書き方について、迷ったことはありませんか?
特に「宛名」や「但し書き」などは、曖昧になりがちで悩んでしまうこともあるでしょう。
領収書の書き方に法律で定められた厳密な様式はありませんが、取引の証拠としての効力を持たせるためには、必要事項を漏らさず書き、適切な方法で発行することが必要です。
本記事では、証拠力のある領収書の書き方や基本ルール・作成上での注意点を紹介します。そのまま応用できる見本も付いているので、領収書発行に不安のある人はぜひチェックしてみてください。
このページの目次
領収書とは、商取引において、代金の授受が適切に行われたことを証明するための書類です。
サービスや商品を提供した側がその代金を受け取ったとき、購入者側に発行します。
領収書の役割は、主に次の3つです。
領収書の発行があったということは、その取引が終了したということです。
万が一相手から代金支払の再要求があっても、領収書を示すことで二重払いを防げます。
また領収書は、社員の経費を証明する書類となります。
領収書の提出を義務付けておけば、社員による金額の書き換えや使途不明金が出るリスクはグッと低くなるはずです。
このほか、領収書は確定申告での経費の根拠となります。
万が一税務調査が入った場合、領収書が金銭の流れを証明する証拠の一つとなるでしょう。
領収書の発行では、覚えておきたい基本的なルールがあります。
主な4つのルールをそれぞれ詳しく解説していきます。
領収書の自発的な発行は法律の定めにありません。
ただし、相手が求めてきた場合は法律に基づく発行義務が生じます。
民法486条:弁済をする者は、弁済と引き換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
すなわち代金を支払った側は、支払と引き換えに領収書の発行を請求できるということです。
代金を受け取った側には、求めに応じずに「発行しない」という選択肢はありません。
領収書は、額面が一定額以上になると納税義務が発生します。
領収書はいわゆる「課税文書」に該当するため、収入印紙の貼付が必要なのです。
収入印紙代は、領収書を発行した側が支払うのが一般的です。
売上代金の領収書を発行する場合、以下の税額の収入印紙を貼付してください。
記載金額 | 税額 |
5万円未満のもの | 非課税 |
5万円以上100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 600円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 2,000円 |
出典元:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁
収入印紙を貼付したら、印紙と台紙をまたぐように印を押しましょう。
これは「消印」と呼ばれるもので、収入印紙の再発行を防止するためのものです。
消印を忘れても領収書の効力がなくなるわけではありません。
ただし法律に抵触するため、違法行為として作成者がペナルティを受ける恐れがあります。
領収書には、発行者の名称にかぶせるように押印するのが一般的です。
印鑑についての決まりはありませんが、社名の入った「角印」を押すケースが多いでしょう。
実際のところ、領収書への押印は法律によって義務付けられたものではありません。
万が一押印を忘れてしまっても、領収書としての体裁さえそろっていれば法的効力は十分に担保できます。
領収書に押印するのは、日本のビジネス習慣上のマナーです。
必ずしも必要というわけではありませんが、押印した領収書の方が相手からの信頼を得やすくなります。
受け取った領収書は、確定申告時の経費の証拠となる「証憑書類」です。
勝手な廃棄は許されず、法律に定められた期間を守って保管しなければなりません。
法人税法によると、領収書をはじめとする取引に必要な書類や帳簿類については、「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存」が必要です。
ここからは、領収書の実際の書き方を紹介します。
見本と比べながらチェックしてみましょう。
【領収書の書き方8つのポイント!】
①通し番号を入れる
②宛名を記入する
③年月日を入れる
④金額を記載する
⑤但し書きを入れる
⑥発行者を記入する
⑦額面によっては収入印紙が必要
⑧内訳を記載する
それぞれ詳しくみていきます。
領収書を発行する際は、通し番号を入れて管理するのが一般的です。
問合せがあったとき、通し番号が入っていれば領収書をすぐに探し出せます。
また通し番号を付けて管理している企業は、文書の管理が行き届いている印象です。
税務調査が入ったときもよい印象を与えやすいでしょう。
宛名には、領収書を発行する相手の名称を記入します。
このとき、「(株)」などと省略せず、「株式会社」と正しく記載のうえ、誤字・脱字にも注意してください。
前株か後株かにも配慮し、ミスのないよう記載することが大切です。
なお個人の領収書でよく見る「上様」は、不特定多数の顧客に対して使う敬称。基本的に、企業間取引では使用しません。
「相手が特定できない」という理由から無効とされるケースがあるため、必ず正しい名称を記載しましょう。
年月日に入れるのは、「代金を受け取った日」です。
書類作成日ではないので注意してください。
「年」については、西暦でも和暦でもよいとされています。
ただし令和4年を「R4」などと省略するのは避けましょう。
年月日を空白にすると、「この日に代金を受け取った」という証明ができなくなります。
相手に日付を改ざんされる恐れもあるため、確実に代金を受け取った日を記載してください。
金額を記載するときのポイントは以下の三つです。
金額にコンマを入れるのは、視認性を高めるため・ミスを防ぐためです。
桁が不自然なら、金額の間違いにすぐに気付くでしょう。
また金額の前後に記号を入れるのは、改ざんを防ぐためです。
どちらの記号がよい・悪いということはないので、好きな方で金額を確定してください。
但し書きは、「何の対価として代金を受け取ったか」を明確化するために必要です。
できるだけ具体的な内容を記載しましょう。
但し書きを入れるときのポイントは「として」を付けることです。
末尾を言い切ることで、想定外の改ざんや追記を防げます。
なお一般的な領収書では「お品代として」などと記載されることがありますが、曖昧すぎて好ましくありません。
取引の証拠として弱い・税務署の印象が悪いなどのデメリットがあるので、必ず詳細を記載しましょう。
発行者欄には、自社の情報を記載します。以下の情報は必ず入れておきましょう。
一般的な領収書では、会社の角印を発行者名にかぶせて押印するのが好ましいとされています。
領収書の額面が5万円を超えた場合は、収入印紙が必要です。
前項で提示した表を確認し、額面に合う収入印紙を貼付してください。
万が一収入印紙を貼り忘れてしまった場合は、印紙税法により「過怠税」が課せられます。
この場合、納付するのは本来納付すべきだった額の3倍(納付しなかった印紙税額とその2倍に相当する金額との合計額)です。
また消印を忘れた場合もペナルティがあります。
消されていない印紙の額面金額に相当する金額が徴収されるので、注意しましょう。
※参考:印紙を貼り付けなかった場合の過怠税|国税庁
受け取った金額について「税別金額」「消費税額」を分けて記載しましょう。
領収書を発行する際気を付けたいのは、「インボイス制による書き方の変更」「再発行の方法」「電子データへの対応」です。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2023年10月1日からインボイス制が施行されます。
インボイス制とは、取引の際の消費税率と消費税額を正しく把握できるよう導入される法律です。
現在、消費税率は8%と10%が混在しています。
そのため、8%の軽減税率が適用されている企業は、8%と10%の金額について分けて計算・記載しなければなりません。
異なる税率のものを扱っていない企業は、これまで通りでOKです。
領収書を書き損じてしまった場合は、「書き直し」が鉄則です。
二重線で消して印鑑を押す、という訂正方法もありますが、受け取った相手からの心証が悪くなります。
汚れた領収書で信頼を落とすのは避け、潔くまっさらな領収書に書き直してください。
書き直すときは、新しく通し番号を振り出さないようにしましょう。空白の番号ができ、整合性がとれません。
「○-1」「○-2」などと枝番を振り、書き損じた領収書と一緒に保管してください。
もしも取引先が「領収書を電子データでください」と言った場合は、紙ではなくデータで領主書を発行しなければなりません。
これは2021年9月に施行された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号)」により、民法486条に、以下の新たな項が追加されたためです。
弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
※参考:民法第486条【受取証書の交付請求】 改正の概要|国税庁
領収書の書き方が分かっているつもりでも、「これはどうすべきなのだろう」と分からなくなることもあるものです。
領収書にまつわる疑問について、「あるある」なものをまとめました。
書き方に迷ってしまったときは、こちらをチェックしてみてください。
「代金支払の事実を証明する」という意味では、レシートも領収書と同じです。
上記の情報が記載されているレシートなら、税法上の「証憑」として認められます。
相手がクレジットカードで支払った場合は、領収書を発行する必要はありません。
領収書の発行には「同時履行の原則」が適用されます。
代金支払にタイムラグのあるクレジットカードは、要件を満たしていません。
たとえ領収書を発行しても、税務署からは証憑として認められないでしょう。
クレジットカードで代金支払を行った場合は、クレジットカードの「利用控え」が領収書代わりです。
相手にレシートと領収書を渡してしまった場合は、「二重発行」となります。
法律に抵触するようなミスではありませんが、相手がその金額を帳簿に二重計上してしまうかもしれません。
速やかに相手に連絡し、どちらか片方を破棄してもらうことをおすすめします。
領収書の封筒については、特に決まりはありません。
企業では長形3号(120mm × 235mm)を使うことが多いようですが、横書きの封筒でもよいでしょう。
封書で領収書を送付する際の注意点は、表面に「領収書在中」と記載することです。
赤インクは「赤字」を連想させてしまうので、黒または青インクを使ってください。
領収書は、金銭取引の証拠となるものです。
誰が見ても一目で「誰と」「何の取引をしたのか」が分かるような書き方を心掛けてください。
特に気を付けたいのは、宛名・発行年月日・発行者の名称等を抜け漏れなく正しく記載することです。
万が一書き損じた場合は新しく書き直し、きれいな領収書を渡すようにしましょう。
正しい領収書の書き方を知り、適切な会計処理を行いましょう。
画像出典元:photoAC、unsplash、Pixabay
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