株式のすべてを社長または社長の親族が所有している中小企業では、株主総会を開催せず、したがって議事録も作成していない会社が多くあります。
しかし、会社法で作成と保存が義務づけられている株主総会議事録を作成しないと、思わぬトラブルを招くことがあります。
この記事では、なぜ株主総会の議事録が必要か、どう作ればよいのかを分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
このページの目次
会社法には株主総会の議事録についてどのような規定があるのでしょうか。また、そのような規定が設けられている理由・趣旨は何なのででしょうか。
株主総会議事録は、会社法第72条で作成が義務づけられています。株主総会を開催したら必ず作成をしなければなりません。
議事録は書面以外に電磁的記録(PDFにしてパソコンに保管するなど)も認められています。
作成した議事録は、株主総会の日から10年間は本店に、5年間はその写しを支店に備え置かなければなりません(会社法318条、会社法施行規則72条)。
これは、株主や債権者から閲覧・謄写請求があったときに応えるためです。
株主総会議事録の作成・備置義務に違反すると、100万円以下の過料に処せられることがあります。
会社法は会社の組織、運営について定めた法律ですが、その主な趣旨は株主や債権者の保護にあります。
株主総会の開催、その議事録の作成と備置が義務づけられているのは、会社経営者が会社の所有者である株主の利益に反する行為をするのを防ぐためです。
したがって、株主=経営者の場合は、株主総会を開いて議事録を作る必要性が感じられないのはもっとものなのですが、後述するようにそこにはいくつかのリスクがあります。
株主総会議事録に記載しなければならないのは次の項目です。
1. 開催日時と場所
2. 議事の経過要領とその結果
3. 株主総会での株主の意見または発言の内容の概要
4. 出席した取締役、会計参与、監査役の氏名
5. 株主総会の議長の氏名
6. 議事録を作成した取締役の氏名
文中の固有名詞は架空のものです。
株主総会議事録には、会社法及び同施行規則のいずれにも署名や押印を必要とするとは書かれていません。
しかし、定款に株主総会議事録作成者を定めている場合は、議事録作成者が署名・押印する必要が生じます。
株主が社長1名とか、親族2~3名などの場合は、実際に株主総会を開催するのは効率的ではないので、議案についての同意書をもらうことで、株主総会の決議があったものとみなすことができます。(会社法319条)
この場合は、その同意書が議事録の代わりになります。
同意書の書式などは、弁護士 赤塚 洋信 公式サイトの記事「書面決議による株主総会の実施(書式例付き)」が参考になります。
株主総会での決定内容は、会社の契約など対外的な活動の有効性の根拠にもなるので、議事録を正確に作成しておくことは、後のトラブル防止に役立ちます。
本店移転の登記には、株主総会または取締役会での議決が必要です。
取締役会を設置していない非上場会社では、株主総会の議事録が唯一の証拠になるので、議事録を作っていないと、法務局で登記書換えの申請を行うことができません。
先述したように、株主総会の議事録は株主や債権者から閲覧要求があったらすぐに見せなければなりません。
もし、閲覧の要求に応えられないと裁判所に通知されて、100万円以下の過料を科せられる可能性があります。
また、登記の際に株主総会議事録が無いことが登記官に知られたときも、裁判所に通期される可能性がないとは言えません。
過料の裁判は、代表取締役が裁判所に呼び出されることもなく、またその言い分や弁解を聴かれることもなく、一方的に裁判所によって出されるのが通常です。
因みに、登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、遅滞なく管轄地方裁判所に通知しなければならず(商業登記規則第118条)、その通報を受けた裁判所は、相当であると認めるときは、当事者の弁解等陳述を聴かないで直ちに過料の裁判をすることができることになっています(非訟事件手続法第164条)。
ある日突然、裁判所から、「被審人を過料金○○万円に処する。本件手続費用は被審人の負担とする。」等と書かれた裁判書が送られてくる、という事態もあり得るので、注意が必要です。
引用元:小林裕彦法律事務所コラム
取締役の解任や会社の譲渡などで株主である親族同士がもめたときに、株主総会議事録が存在しないと、決議が正当に行なわれた証拠が存在しないことになり、裁判で不利になることがあります。
株主総会自体を開催しないことのリスクについては次の記事に詳しく書かれています。
非上場会社においても、株主総会を開かなかったり、株主総会議事録を作らないのは、さまざまなリスクがあります。
株主総会議事録は、記入すべき項目さえ知っておけば作成は難しくありません。
めんどうがらずに毎年きちんと作っておけば、思わぬところで経営の足元をすくわれるような心配はありません。
画像出典元:pixabay、O-DAN
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