OEMの生産形態とは?メリット、ODM・PBとの違い、事例を紹介

OEMの生産形態とは?メリット、ODM・PBとの違い、事例を紹介

記事更新日: 2020/05/15

執筆: 編集部

最近様々な場所でOEMという言葉を耳にします。特に製造業の方であれば耳にする機会も多いのではないでしょうか。

よく耳にするようになった言葉ではありますが、結局OEMの生産形態はどういったものであるのか理解できていない人もいることでしょう。

今回はそのような皆さんに向けて、OEMの基本知識やメリットとデメリット、実際の導入事例などを紹介します。

OEMとは?最初に理解するべき基礎知識

OEMとはどのようなものものなのでしょうか。ここを理解しなければスタートしません。基礎知識についてまずはご説明します。

OEMとは

OEMとは「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の頭文字を取った略語です。

直訳すると分かりにくい表現ですが、簡単に意訳すると「製造会社が自社製品以外の製品を製造すること」を意味します

OEMには大きく分けて2種類のパターンがありそれぞれ以下のとおりです。

1.相手のブランド名称を借りて製品も代わりに製造する

2.企業が生産活動を製造会社に委託する

前者は製造会社から大きなブランドを持つ企業へとアプローチするものです。自社の能力だけでは商品の販売や流通が難しい場合に利用されます。商品は自社で作り、それをブランド名を借りて販売させてほしいと依頼するものです。

後者はブランドを保有する側が製造会社に作業を依頼するものです。いわゆる委託作業であり、ブランドを保有する側は企画や販売などを行い製造会社は商品の製造に特化して対応します。

ODMやPBとの違いはあるか

OEMと混在されやすい生産形態として「ODM」や「PB」があげられます。これらはOEMとは異なった意味を持ちますので、その点についても解説をします。

ODMとは「Original Design Manufacturing」を省略した語です。基本的にはOEMと同じようなものですが、ODMの場合は商品の企画なども製造会社に任せます。本来は商品企画に必要な人材を用意しなければなりませんが、このような人材も含めて全て外部委託するものです。

PBとは「Private Brand」を省略した語です。小売店などが自社のブランドで商品を企画し、製造会社に代理で商品を製造してもらうものです。自社で商品を開発するものの、設備などは自前で用意せず製造は外注するのです。

プライベートブランドですので自社だけが販売する商品となります。商品がヒットすれば自社の知名度アップや好感度アップにも繋がります。ただ、そもそも自社に知名度がなければ販売流通が難しいというデメリットもあります。

OEMを利用する目的

OEMを利用する目的は大きく分けると以下の3つです。

・自社製造ができないタイミングに製造を依頼しスタートダッシュするため

・自社製造が追いつかないタイミングで商機を逃さないため

・自社製造を終了し低コストで製品の提供を続けるため

タイミングによってOEMを利用する目的は異なります。常にOEMを利用すれば良いというわけではなく、タイミングと状況を踏まえることが重要です。

OEMを利用する3個のメリット

販売に注力した戦略を立てられる

OEMを利用することで、販売に注力した戦略を立てられることがメリットです。

本来であれば生産と販売の両方を踏まえた戦略を立てなければなりません。生産能力を踏まえて、それに見合った販売戦略を立てなければならないのです。生産できない商品を販売するような戦略では意味がありません。そのために販売戦略は生産能力に左右されてしまう問題点があります。

しかし、OEMを利用すれば生産は外部の製造会社に依頼ができます。生産に特化した会社に依頼できますので、高い能力で必要な数を効率よく生産してもらえます。結果、OEMを依頼した側は製品の販売を中心に戦略を立てられるようになります。

近年は商品開発だけではなくマーケティングも重要視されています。しっかりとした販売戦略がなければ生き残れない時代なのです。OEMを利用することでここに注力しやすくなることはメリットです。

オリジナルブランドを立ち上げやすい

会社の規模に関わらずオリジナルブランドを立ち上げやすいメリットもあります。中小企業でもOEMを利用すればオリジナルブランドを立ち上げられます

本来オリジナルブランドを立ち上げるとなると、企画や開発だけではなく製造ラインへも投資しなければなりません。商品を製造するために様々な備品の購入が必要です。大規模投資となりやすく中小企業には難しいものです。

しかし、OEMを利用すれば生産は外部の製造会社に依頼できます。自社では生産能力がない商品でも、依頼して生産してもらえるわけです。つまり、自社では商品の企画や開発だけを進めます

中小企業では高額な設備投資が様々な足枷となるものです。この点が原因となりオリジナルブランドを立ち上げられないこともあります。

しかし、OEMを利用すれば投資は最低限に抑えられます。結果、オリジナルブランドを立ち上げやすくなるメリットを受けられるのです。

在庫数を減らしやすくなる

抱える在庫数を減らしやすくなることもメリットです。完全に不良在庫が出なくなるわけではありませんが、最小限に抑えられる仕組みです。

OEMの委託先は、小ロットでの生産に対応していることが大半です。計画的に少しずつ生産することも可能ですし、緊急で少しだけ生産することも可能です。あまりにも急な依頼は限界があるものの、必要な数だけ生産できるなど生産数は融通が利きやすいのです。

少しずつ生産ができるということは、在庫が少なくなることを意味します。大量に作って多くの在庫を抱えるのではなく、必要な数を生産して在庫を減らせるようになるわけです。

企業は多くの在庫を抱えると多くの税金を支払わなければならなくなってしまいます。また、在庫として長期間保管してしまうと品質が下がる可能性もあります。このような問題でもOEMを利用すれば解決できることがメリットです。

OEMを利用する2個のデメリット

生産に関するノウハウが蓄積されない

生産に関するノウハウが蓄積されないことはデメリットです。基本的には生産のすべてを外注しますので、全くノウハウは蓄積されないと考えてよいでしょう。

OEMを利用するということは、生産よりも販売に力を入れたいことを意味します。そのためのノウハウが蓄積されなくとも大きな問題にはならないケースも多いでしょう。

ただ、専門的な分野の商品などは何かしらのノウハウを蓄積したい場合もあるはずです。しかし、そのようなケースでもOEMではなんらノウハウを蓄積できないことがデメリットです。

生産活動での収益が見込めなくなる

商品を販売している企業は生産活動での収益を見込んでいることもあるでしょう。しかし、OEMを利用する場合は自社で設備投資・生産などはしません。結果、この部分の収益を見込めなくなるのです。

これも販売に特化することの対極に存在するデメリットです。設備投資なく商品開発などができるようになりますが、手元に設備がないということがデメリットになる可能性もあるのです。

OEMの導入事例2選

実際にOEMを導入して生産を効率化した事例をご紹介します。

自動車業界

自動車業界ではOEMが幅広く取り入れられています。様々な自動車が販売されていますが、その中でも軽自動車ではOEMの事例が多数見受けられます

軽自動車では異なったメーカーが販売しているものの、外観や内装がほとんど同じものが存在しています。例えばスズキのワゴンRとマツダのフレアは外観こそ違うものの同じような軽自動車です。これはOEMで作られている軽自動車であることが理由となっています。

OEMの軽自動車を販売することで、製品の開発などにかかる時間を短縮できます。特に軽自動車は求められている最低限の機能が明確になっているものです。OEMを利用した自動車を製造してもらい、販売に注力した方がメリットは大きいのです。

アパレル業界

アパレル業界でもOEMが広く利用されています。アパレル業界はデザインだけを取り扱う企業も多々あります。自社では衣服の生産ができず、デザインや企画だけを採用している企業があるのです。

そのような企業は自社で生産ができませんので、いくら良いデザインを生み出してもアパレル業界で商売はできません。そこでOEMを活用し外部のベンダーに製造を依頼して、デザインだけではなく実際の商品を生み出しているのです。

また、自社で生産能力を有している場合でも、生産数が不足しているときにOEMを利用することもあります。OEMは小ロットで製造できることが特徴でもあります。必要に応じてOEMを活用しているのがアパレル業界なのです。

まとめ

OEMは生産の一部を外部の製造業者に委託する形態です。自社で製造能力を有していない場合や製造能力が不足している場合に利用するものです。

OEMを利用することで製造コストを抑えられるなどのメリットがあります。その反面で製造のノウハウが蓄積されないなどのデメリットもあります。メリットとデメリットをよく理解しておくことが重要です。

とはいえ、製造業においてコストカットするためにOEMの利用はよく検討するべきものです。うまく導入できるかを考え、積極的に取り入れてみると良いでしょう。

画像出典元:Burst

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