仕事の報告の中でも、緊急性があるのがエスカレーションです。
エスカレーションすべきことを日報に書いて「明日上司が読むだろう」という処理をしてしまうと、大目玉を食らうのはもちろん、会社をクビになるかもしれません。
いや、その前に会社そのものがなくなってしまう可能性すらあるのが「エスカレーションの遅れ」です。
この記事では、どんなときにエスカレーションが必要で、エスカレーションの遅れが生じないようにするにはどんな体制が必要かを分かりやすく解説しています。
このページの目次
ビジネス用語のエスカレーションとは、自分では対処できないトラブルが生じたときに、上司に報告し、対応を一任することです。
エスカレーションを怠ったり、遅らせると、企業の存続に関わるような、あるいは人命に関わるような重大な事態に発展することがあります。
エスカレーションという言葉がひんぱんに使用されるのはコールセンターです。
オペレーターでは対応が困難な場合に上位の管理者に交代して対応してもらうことを、コールセンターでは「エスカレ」と言っています。
コールセンターを含めた情報セキュリティが業務の根幹に関わる事業では、システム障害に素早く対応するためのエスカレーションが重要で、その手順(エスカレーションフロー)が整えられています。
会社では毎日のように業務の経過や結果を上司に「報告」しますが、通常の報告なら「部長は来客中だから、後にしよう」ということもあります。
それができない「緊急報告」がエスカレーションで、場合によっては夜中でも電話で上司をたたき起こして報告しなければならないことがあります。
また、エスカレーションの特徴は、報告後はその事態の解決の責任が上司に移ることです。
エスカレーションしても上司が「お前たちで何とかしろ」と言うかもしれませんが、それは「責任はオレが取るから何とかしれくれ」という意味です。
もし何ともできなくて重大な結果を招いても、報告した担当者の責任は問われません。しかし、エスカレーションせずに重大事故になったら、責任は担当者にあります。
エスカレーションが必要なのはインシデントが発生したときです。
英語のインシデント ( incident) は「できごと」という意味ですが、ビジネス用語としては「事故などの危難が発生するおそれのある事態」を指します。
ISO規格では、情報セキュリティに関するエスカレーションを次のように定義しています。
望まない単独若しくは一連の情報セキュリティ事象,又は予期しない単独若しくは一連の情報セキュリティ事象であって,事業運営を危うくする確率及び情報セキュリティを脅かす確率が高いもの。(ISO 27000)
注意したいのは、インシデントとはぼっ発してしまった事件や事故のことではなく、「放置するとヤバイ事態」のことです。
「社長、A社から契約を破棄されました!」というのはエスカレーション(インシデントの報告)ではありません。
その前に「A社の社長が〇〇の件でカンカンに怒っています」と報告するのがエスカレーションです。
エスカレーションが遅れると重大な事故につながります。しかし、エスカレーションはややもすると遅れがちになります。それはなぜでしょうか。
自分の担当業務で発生したトラブルは自分でなんとかするのが有能な社員だ、という意識は誰もが持っています。いちいち上司の指示を仰ぐのは半人前だと思うのです。
自分や自チームの業務のトラブルの原因を、上からつつかれたくないという意識も働きます。
しかし、この「自分で何とかしよう」がエスカレーションの遅れを招き、事態を悪化させることがあります。
自分でできると思う気持ちの裏には、上司にイイ格好をしたい、トラブルを報告したときの上司のしかめっ面を見たくない、という気持ちがあります。
マイナスの報告ばかりあげていると出世の妨げになる、というような意識でトラブルをこそこそと取り繕っていると、いつかドカンと破裂して出世どころではなくなります。
最悪のケースは、自分のミスで生じた事態を隠して放置することです。
隠したいと思うと、「これくらい、たいしたことないよ」とミスを過小評価する心理的なバイアスがかかります。
自分がつけてしまった小さな傷をなかったことにしてしまうと、インシデントの傷口が広がって重大事故になる可能性があります。
このような遅れが生じる、報告しようかどうか迷うのは、(1)なにがインシデントか、(2)インシデントが起きたときはどうするかを、会社がきちんと決めておかないからです。
エスカレーションの迷いや遅れを防ぐには、起こりうるインシデントを想定して、そのときどうするかをあらかじめ決めておく必要があります。
インシデントが生じたときに、誰に、何を、どのようにエスカレーションするかを定めたルールを「エスカレーションフロー」と言います。
エスカレーションフローには次のような要件があります。
(1)エスカレーションが必要なインシデントを想定して、明文化する
(2)インシデントを緊急性、重大性によってレベル分けする
(3)内容・レベルによって誰に報告するかを決めておく
(4)連絡手段、連絡がつかない場合の対応を決めておく
エスカレーションフローを決めるにあたっては、「誤報でも報告した人を叱責しない」というルールも付け加えることが大切です。
勘違いでインシデントとは言えないことをエスカレーションしてしまった人をきつく叱ったりすると、次からエスカレーションするのを躊躇するようになるからです。
また、上司は「オオカミが来た!」と何回報告されても、「またか」などと言わずに真剣に対処する姿勢が求められます。
インシデントには「予期しなかった」「想定外の」という性質もあるので、最初から完璧なエスカレーションフローを作ることはできません。
新しいタイプのインシデントが起きたらフローに追加していく必要があります。
もちろん、エスカレーションフローは作るだけでなく、全社員に周知させ、知識を共有することが肝心です。
仕事にトラブルはつきものなので、重要なのはトラブルを起こさないことより、トラブルが起きた時にどうするかです。
エスカレーションはトラブル(インシデント)が起きた時の上司への報告です。
会社はエスカレーションの遅れが生じないようにエスカレーションフローを決めて、社員に周知徹底させる必要があります。
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