創業融資の通過可否を決める自己資金を賢く増やす方法

創業融資の通過可否を決める自己資金を賢く増やす方法

記事更新日: 2018/10/24

執筆: 小石原誠

起業をする際にはお金が必要ですが、自力で創業資金を十分に用意できる起業家ばかりではありません。

創業資金を確保するために頼ることができるのが、日本政策金融公庫などの金融機関や自治体が実施している「創業融資」であり、多くの起業家は創業融資の活用を検討するものの、申請に一苦労している様子が多く見受けられます。

創業融資の通過可否は自己資金の割合に大きく左右されます。

そこで今回は、創業融資の申請において、自己資金を正しく賢く増やす方法を解説します。

創業融資の通過可否は自己資金割合に左右される

まず、創業融資は多くの金融機関や自治体が実施していますが、特に初めて起業に挑戦する場合には「日本政策金融公庫」もしくは「自治体」が実施している創業融資に頼ることになるのが実情です。

というのも、金融機関の創業融資は実績や信用がないと審査を通過することがかなり難しいからです。

そこで今回は、日本政策金融公庫及び自治体での創業融資について解説していくことにします。

創業融資の申請の際に重要なポイントとなるのが「自己資金の金額(の割合)」です。

創業に必要となる資金すべてを融資によって賄うことはできず、自己資金を一定割合以上準備することを条件としている場合がほとんどです。

この自己資金の割合を「自己資金要件」といい、創業融資の申請時にはこの要件を満たした自己資金を有していることを証明する必要があります。

自己資金要件の目安は3割

例えば、日本政策金融公庫が実施している「新創業融資制度」の場合は、まず創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要となります。

さらに、日本政策金融公庫のホームページ内でのQ&A情報で確認できる「公庫が融資先の創業企業を対象として実施した調査」によると、創業資金総額に占め自己資金の割合は平均で3割程度となっています。

この「3割」という数値が、創業融資の審査を通過するための一つの基準になると考えてよいでしょう。

次に自治体が実施する企業融資の場合ですが、これは自治体ごとに自己資金要件が設定されているので、各自治体のホームページなどで確認する必要があります。

例えば、東京都港区の場合には「創業支援融資」という創業融資を実施していますが、融資限度額に「初売上前の場合は、自己資金額の範囲内かつ1,000 万円以内」と但し書きされています。

つまり創業資金のうち50%以上を自己資金で賄う必要があるということです。

自己資金として算入できる資金・資産

創業融資の申請の際には、自分の預金通帳を提示して自己資金の金額を証明します。

自己資金には、自分の貯金はもちろんのこと、親族からの贈与や自動車などの現物資産も算入することで金額を増やすことができます。

一方で、ローンなどの借入金や親族・知人などからの借金など、返済義務のある資金・資産は自己資金に算入することができないなど、自己資金の準備には注意すべき点が多くあります。

ここで、自己資金として算入できる資金・資産と算入する際の注意点について正しく理解しておきましょう。

自分の貯金

まず、基本となるのが自分の貯金です。

創業融資の審査では必ずといっていいほど「預金通帳」を確認されることになります。預金通帳を見られる際には金額の大小だけではなく、直近数か月の記帳記録により、

「創業資金となるお金は時間をかけてしっかり蓄えられたものか」
(借金などにより準備されたものでないか)

「家賃等の月例の支払いは期日通りに行われているか」
(お金のやりとりにルーズではないか)

などの視点から本人の信用をチェックされるので、少なくとも申請の半年前からは預金口座を介してのお金のやりとりに注意してください。

また、タンス貯金などのように銀行等への預金ではなく現金として準備している資金は、資金の実在が確認できないうえに、仮にまとめて預金にしたとしてもお金の出ところが証明できない(金融機関からの借り入れではないかと疑われる)という理由で自己資金として認められづらいです。

お金を現金の形で貯め込んである場合には、創業融資を申請する数か月前から少しずつ預金にしていくか、創業資金ではなく起業後の運転資金に回すようにしましょう。

親族からの贈与

親族から贈与された資金がある場合には、これらも自己資金として算入することができます。

ただし、これ以降に説明する項目にも共通するのですが、自分の預金以外の資金・資産を自己資金として算入する場合には、必ずお金の出どころについて説明できるようにしておく必要があります

親族からの贈与の場合には、贈与を受けたことを証明する「贈与契約書」を作成し、提示するようにしましょう。贈与証明書の書き方が分からない場合には、インターネットなどで調べるか、税理士などに相談するとよいでしょう。

また親族からの贈与については、贈与金額が年110万円を超えると贈与税の支払い義務が発生することにも注意してください。110万円を超えないようにするか、もし超えるのであれば贈与税の申告を必ずしておきましょう。

また、親族からの資金提供であっても、「借金」である場合には自己資金とは見なされない点にも注意してください。

出資金

起業する会社の株式による外部からの資金調達、すなわち出資金も自己資金に算入できます。この場合には、出資金の払込証明書や資本金の計上に関する証明書などが審査の際の説明書類になります。

ただし、外部からの出資を受け入れる際には出資割合に気をつけてください。というのも、株主は出資割合に応じて会社の経営に口出しできる様々な権利を得るからです。

例えば、3分の1以上の場合には重要事項の特別決議の阻止、つまり拒否権を得ることになり、さらに2分の1以上になると取締役・監査役の株主総会での選任決議などの権利を得ることになります。

自分が経営権を確実に握っておくためには、出資の3分の2以上は自分で行うようにしてください。

現物出資

会社を設立する際には基本的には資金により出資を行うのですが、この際に事業に必要となる現物資産も出資することができます。これを現物出資といい、自己資金に算入することができます。

例えば、自動車・不動産・パソコンなどを現物出資することができますが、現物出資を行う場合には定款にその旨を記載しておく必要があります。

加えて定款に記載する際には現物資産の時価算定が必要になるのですが、これは税務に関する専門的知識がないと難しいので、現物出資を行う場合には税理士などに依頼することをオススメします。

みなし自己資金

創業融資の申請以前に使用した事業資金があれば、それも「みなし自己資金」として自己資金に算入できます。

例えば、事業所として使用する物件の敷金・礼金や、もし物件の内装を事業用に改修していれば、その改修費、あるいは事業に使用する設備・機器の購入代金などがこれに該当します。

みなし自己資金を算入する際には、契約書や領収書、請求書などが証明書類となるのできちんと保管しておきましょう。また、これらの資金が事業用のものだということをしっかり説明できるように理論武装しておくことも必要です。

株式や土地などの資産売却金

株式や土地などの資産を所有している場合は、それらを売却することで自己資金として算入することもできます。

ただし、株式や土地の売却金は高額となることが多く、例えばそのような高額の入金が口座にあったとすると、創業融資の審査をする側は「借金をしたのでは」という疑いの目を持ってしまいます。

やはり他の自己資金と同様に、株式や土地などの資産を売却して得た資金であることを説明できる売買契約書渡契約書などの書類を準備しておきましょう。

また、株式は手放したくない方もいると思いますが、株式はそのままでは自己資金として算入することはできません。株式を手放したくないのであれば自己資金としての算入は断念するか、もしくは一時的に売却してから再度購入し直すという方法もあります。

自己資金の審査を受ける際の注意点

自己資金の調達方法を説明できるようにしておく

創業融資の審査を行う側は、「資金が借金などで準備されたものでないか」「計画的にお金のやりとりを行うことができるか」といった観点から自己資金の準備状況を審査してきます。

預金口座の入出金記録については全て説明できるようにしておいてください。

また、自分でこれまで貯めてきた預金以外のお金を自己資金とする場合には、その調達方法を必ず説明できるようしておくとともに、その証拠となる書類をできるだけ準備しましょう。

虚偽の申請は絶対に行わない

自己資金の準備状況を審査される際には、自己資金の調達方法が妥当なものか否かを書類などをもって細かに検証される場合もあります。

借金をしたものを自分の貯金と言い張るなどの虚偽の申請は必ず見破られるものと心得てください。

虚偽の申請は信用の失墜を招き、創業融資の申請が通らなくなる恐れがあります。

親族や出資者などへ直接確認されることを伝えておく

親族からの贈与や出資者からの出資などを自己資金と算入する場合には、親族や出資者へ電話などにより直接確認が行われる場合もあります。

あらかじめ親族や出資者などにその旨を伝えておきましょう。

自己資金は急には増やせない!準備は計画的に

今回は、創業融資の申請と自己資金についての考え方を解説してきました。

申請を行う際に、自分の貯金だけではなく親族からの贈与や現物出資など様々な資金・資産が自己資金として算入できるということは、融資される金額をできるだけ大きくしたい場合には覚えておくとよいでしょう。

ただし、自己資金はすぐに必要だからといって急激に増やせるものではありません。いずれも時間をかけて少しずつ積み重ねていったり、あるいは所定の手続きを踏んで準備する必要があります。

いざ創業融資の申請を行うときに慌てることがないよう、自己資金として算入できる資金・資産について正確に理解した上で、時間をかけて計画的に準備していくようにしましょう。

また、もし不安な点などがある場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

なお、創業融資の手続き方法などについては、こちらの記事で解説しています。


創業融資以外の資金調達方法について検討したい方は、こちらの記事がおすすめです。

画像出典元:Photo-AC

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