IPO(新規株式公開)ならぬ「SPO」という概念が、世界的に注目され始めています。
「SPO」とはサスティナブルな上場という意味で、上場時に「サスティナビリティ」に配慮した企業であることを証明するためのフレームワークです。
持続可能な社会の実現が目指される今、「ESG」という評価基準も生まれ、企業の取り組みにも変化が出てきています。
このサスティナブルな上場「SPO」と「ESG」の意味を詳しく説明していきます!
このページの目次
今、「SPO」という新しい概念が話題を呼んでいます。
このSPOという概念が注目されるようになった背景には、あるアメリカのユニコーン企業が関係しています。
2021年8月31日、スニーカーなどを手掛けるサステナブルブランド、「Allbirds」が上場申請をし、注目を浴びました。
Allbirdsは、プラスチックの代わりにサトウキビなどの持続可な素材を利用し、シューズを作る過程でのCO2排出量を公表するなど、徹底的な環境への配慮が売りの会社です。
Allbirdsは2015年に法人化し、2019年にユニコーン企業入り。圧倒的な成長で、創業6年にしてスピード上場です。
上場の際、AllbirdsはIPO(新規株式公開)に加えて「SPO」と表現している点に注目されました。
これは、世界初の「SPO」とされます。
そもそもSPOとはどういった意味でしょうか。
正式名称は「Sustainable Public Equity Offering」、日本語に直すと「持続可能な株式公開」という意味になります。
また、定義としては「ESG基準を満たしている企業に投資をする上での新たなフレームワーク」とされています。(ESGについては後述します。)
つまり、未上場企業が上場する際に、「僕たちはESGに配慮した会社です」ということを第三者的に証明するためのもの、ということです。
「持続可能な社会」が掲げられる近年で、多くの投資家がこれまでの財務情報だけでなく、ESG格付けを投資判断に生かしています。
そのため、上場企業は単に財務だけでなく、環境や社会への配慮を経営に反映する必要があるのです。
未上場の企業が上場時にSPOと認められるには、「19の基準」を満たさねばなりません。
「SPO認定に必要な19の基準」
項目ごとに報告する時期などが異なりますが、中には毎年報告すべき項目もあります。
そのため、上場時にコミットメントするのはもちろん、毎年の報告が必要となると、やはり日頃からESGに配慮した会社である必要があります。
ただ単に上場時にコミットするだけでは意味がなく、長期的な取り組みを評価するということです。
そのような点でも、真にESGに配慮した会社である、ということを証明するために有効だと思われます。
さて、SPOが、「ESG」に考慮した会社だと証明するためのフレームワークということはわかりました。
では、「ESG」とは何でしょうか?
「ESG」とは、「Environment(環境)」、「Social(社会)、「Governance(ガバナンス)」の略で、収益性に加えて企業の持続的な成長のための重要な指標となっています。
ESGは、主に「ESG投資」と、投資基準で語られる場合が多いです。
「ESG投資」とは、「ESGに考慮した企業に投資をすること」です。
「環境に良さそうなこと?よく見るSDGsとは違うの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
まずひとつ違いとしては、SDGsは、「個人も含めた全ての人が取り組む課題」であり、ESGは「企業が取り組む課題」ということです。
SDGsは、日頃からマイバックを持ち歩いたり、私たちひとりひとり、個人が意識して取り組むことができます。
ESGは、企業が社会に対して提供できる価値のひとつです。
そしてもうひとつ、ESGは「手段」、SDGsは「目的」という違いがあります。
社会全体として持続可能な世の中を目指すために、企業はESGに考慮すべきである、というわけです。
例えば企業がプラスチック製のストローを廃止して紙製のストローにするなどESGを重視した活動を行うことで、SDGsの13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献すると言えます。
SDGsについての参考記事↓
このように、社会では徐々にESGに意識した動きが増えているのに加えて、投資家もESG投資に価値を見出しています。
そのため、ESGに考慮した会社であるということを証明するSPOというフレームワークが確立されました。
実際、財務情報と違って、ESG情報は現時点では開示基準も乱立しており、評価が難しいという側面もあります。
けれども、こうした動きはもう無視できないものになっています。
「ESG投資」にコミットする機関投資家が急増、コミットした投資家たちの運用総額は100兆ドル(約1京円)に達しているからです。
この莫大な資金額から、世界の投資家がESGにいかに大きな投資価値を見出しているか、ということがわかります。
とはいえ「ESG」は、日本ではまだまだ馴染みのない言葉ではないでしょうか。
実は日本はこのESGの分野で、ざっくり10年は世界から遅れているといわれています。
日本ではESGに関する情報があまり広く知られていないという点がひとつと、特に欧州と比べると、企業も投資家も、社会的リターンよりも経済的リターンに繋がるか否かという点に焦点が当てられやすく、ESGの重要性や将来性があまり深く理解されていないという点があります。
しかし、日本で一早くESGをキャッチアップしていた企業もあります。
ユニクロで有名なファーストリテイリングは日本のESG界隈でもトップクラスと言えます。
2015年という早い段階からESG投資に踏み切ったGPIFが行うESG投資比が45.8%と、日本企業の中で最も高い数値です。
医薬品の研究・製造を行うエーザイもESG経営を誇ります。ESGを前面に出すことで、市場価値は純資産の約4倍。
財務諸表だけでは企業価値は見出せないと、まさに表したのがこのエーザイでした。
世界的に見たら日本でのESGはまだまだ発展途上ですが、今後さらに拡大していくことは間違いありません。
海外のスタートアップ界隈ではサステナビリティに関するアクセラレータープラグラムもかなり増えています。
Y CombinatorやGoogleなども率先してESGを取り上げており、アクセラレーターでもESGを評価基準としていることは興味深いです。
同時に企業に対して、いかにESGが期待されているかが伺えます。
ただ、企業側としてはESG情報を開示する対応に追われたり、評価基準がバラバラだったり、そもそもまだESGに関心が薄かったりと、様々な課題もあります。
サスティナビリティを意識している、と口だけで言うことは簡単です。
ですが、SPOという第三者的な目線で、ESG基準を満たしているということが証明できれば、その企業に対しての信頼も高まる、ということです。
多くの投資家がESGに投資価値を見い出し、それを後押しする形でESGの評価基準の基盤も整えられれば、ESGを前面に押し出したSPOも今後かなり増えることでしょう。
SPOとESGには密接な関係があることがお分かりいただけたでしょうか。
世の中が変わるということは、社会に求められることも変わってきます。
ESGが注目され徐々に普及する世の中で、SPOという新しい上場フレームワークができたということもまた、社会の価値基準が増えた、ということだと思います。
「ESG投資」は投資家が投資を通して行える社会の課題解決であり、企業もまた「ESG経営」をすることは社会の課題解決に繋がります。
そして私たちも、ESGに考慮した企業の商品やサービスを使うことで、SDGsの達成に繋がるということです。
日本ではまだまだ伸び代があり、今後の動向に注目です。
日本で一番最初にSPO上場を達成する企業は、どのような企業なのでしょうか。
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