「これから独立開業をしたい」と思っても、なかなか踏み出せない人は多いです。その理由の多くが「資金」。独立開業をすると最初は資金が必要です。自己資金で全てをまかなえたらいいのですが、なかなかそうはいきません。
事業を始める方におすすめできる、最もポピュラーな融資が日本政策金融公庫の融資です。
本記事では創業時の融資などに金融機関に提出する「創業計画書」の書き方についてご紹介します。
このページの目次
創業計画書とは、その名の通り創業の計画書です。簡単に言ってしまえば「こういう理由で創業して将来このくらいの売上を見込んでいます」ということを文章にしている書類です。
基本的に、日本政策金融公庫の融資審査で必要となるものです。
フォーマットは日本政策金融公庫の公式ホームページからダウンロードできます。
審査を通るために押さえておきたい、創業計画書作成の3つのポイントを紹介します。
融資について金融機関の立場から考えてみます。
金融機関は融資をすることによって、利息収入を得ることができます。逆に融資をしないと利息収入はありません。
つまり、「金融機関は融資をしたくない」わけではなく、「融資をしたい」ことになります。
融資担当の人はあなたと初対面です。初対面の人に大事なお金を簡単に貸すことはできません。
あなたが融資担当になった気持ちになって「この人になら融資しても大丈夫」と感じるように、1つ1つ丁寧に不安や疑問を解消していきましょう。
創業計画書は未来の話で、あなたの情熱や熱意を詰め込んだ計画書です。
とってつけたような言葉や内容ではなく、あなた自身の想いや言葉を伝えることが大事になります。
実際に日本政策金融公庫のホームページでは「創業計画書って何ですか?」に対して「どんな商売を、どのように実現していくかを記載する夢の設計図」と表現しています。
融資を受けたいがために、創業計画書の作成でウソや実現不可能なことを書くことはやめましょう。相手は融資のプロなのですぐに見破られます。
創業計画書にウソをつくことは、融資担当だけでなく自分にもウソをつくことになります。そんな気持ちで創業したくはないですよね。
先ほどの日本政策金融公庫からダウンロードできる創業計画書では8つの項目を記入します。創業計画書には「お手数ですが、可能な範囲でご記入いただき、借入申込書に添えてご提出ください。」と書かれていますが、できる限り全部記入しましょう。
ここからは融資担当者の方に伺った具体的なアドバイスも紹介していきます!
創業の動機は重要ポイントになり、言い換えれば「なぜ創業するのか?」という簡単な質問になります。しかし、簡単であるがゆえに難しくもあります。
まずは、次の質問事項を参考に創業の動機の要素を考えてみましょう。
(1) なぜこの事業をやりたいのですか?
(2) 数ある事業の中でその事業を選択した理由は何ですか?
(3) この事業をする目的は何ですか?
(4) この事業をするために何をしてきましたか?
(5) この事業で自分にしかできないことは何ですか?
(6) 勤務している会社では実現できないことですか?
上記の質問に答えることで、自分の中での創業に対する考えが徐々にまとまってきます。ある程度まとまってきたら次は具体的に文章にしていきましょう。
融資担当者
この項目では具体的に表現することが大事ですね。
例えば、なぜ創業するのか?という問いに対して「店を持つのが夢だったから」では弱すぎます。 店と一言でいっても飲食店・八百屋など沢山ありますよね?
さらに飲食店でも、店内飲食、テイクアウト専門店など、よりに具体的にできまと思います。
創業の動機は重要ポイントとなるので、創業計画書作成において最も時間をかけて作成してもいいくらいです。
編集部
なるほど!
でも、普段書きなれていないので、自分には難しいと思う読者もいそうです…
融資担当者
そうですね。最初は難しいと思う気持ちはわかります。
ですが、考えてもなかなか考えつかない方は「なぜ?」と何回も自分に問い出すことで、本質にたどり着くことができまると思いますよ。
大切なパートなのでじっくり考えてみてくださいね。
経営者の略歴等は職務経歴書をイメージすると作成しやすいです。
経営者の略歴等では「略歴」「過去の事業経験」「取得資格」「知的財産権等」を記入します。
融資担当者
ポイントは数字を用いて具体的な内容にすることです。
編集部
‟数字を用いる”とはどういうことですか?
融資担当者
例えば、飲食業のシェフを経験している場合「〇〇年◯月〜〇〇年◯月 〇〇レストランのシェフ」と記入しがちですよね?
編集部
そうですね。でも略歴なので、それだけではダメなんですか?
融資担当者
ダメ…というわけではありませんが、それだけと一言でシェフといってもその人がどれくらいの能力があるのかかからないですよね?
なので、 「ピザの新商品を開発し売上No.1の目玉商品となった」 「廃棄していた材料を活用して商品を開発した結果、原価率が2%改善された」 など、具体的な実績が数字を用いて書かれていると、「シェフの経験だけでなくコスト管理、マーケティング力もある方なんだな」とその方の能力を判断する材料になります。
取扱商品・サービスでは「取扱商品・サービスの内容」「セールスポイント」「販売ターゲット・販売戦略」「競合・市場など企業を取り巻く状況」について記入します。
融資担当者
ここでポイントとなるのは、「他店と比べてどうか?」「消費者に求められているか?」です。
他と比べて魅力な点、違いがあれば、それがセールスポイント、販売ターゲットなどに繋がりますからね。
編集部
なるほど。
でも自分一人で考えると客観的に判断するのが難しそうですね。
融資担当者
そうですね。
なので、一人で考えるよりも一緒に事業をする人と考えると考えやすいです。
そのほかにも、家族や親友など、事業と関係ない人に商品やサービスを説明することで、思いがけない発見になることもありますよ。
取引先・取引関係等では「販売先」「仕入先」「外注先」「人件費の支払」と区分されてあり、誰から仕入や外注を頼んで、誰に販売するかを記入します。
業種によっては販売ルート、仕入ルートを確保しておかないと事業が成り立ちません。販売先が消費者全般である場合は「一般個人」と記入しましょう。
従業員を雇用する予定がある場合は記入しましょう。
住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどの借入がある場合は記入しましょう。
融資担当者
ここで見落としがちなのが、携帯電話の割賦払いです。 これも借入に含みますので、忘れずに記入してくださいね。
編集部
確かに!
携帯電話代と一緒に払っていると‟借入”というイメージかないので、気を付けないといけないですね。
必要な資金と調達方法は重要ポイントになります。
数字に慣れていない方は少し大変かもしれませんが重要なポイントとなるのでしっかりと記入しましょう。具体的には「必要な資金」「調達の方法」について記入をします。
必要な資金は「設備資金」「運転資金」です。設備資金は、店舗の購入費用、内装費用、パソコンなどの備品などが考えられます。
設備資金は高額になりやすいので事前に見積もりをとっておきましょう。さらに見積もりは1社ではなく複数の見積もりを比較しましょう。
運転資金は人件費、社会保険料、家賃、仕入、外注、リース料などの費用です。事業が軌道にのるまでは時間がかかります。最初から黒字になることは難しいため運転資金としては6ヶ月分は必要になるでしょう。
融資担当者
人件費、家賃、リース料、水道光熱費などは売上に関係なく発生する固定費です。
最低でも固定費分は支払える資金を確保しましょう。 運転資金6ヶ月分の融資は難しいので、3ヶ月分は融資、残りの3ヶ月分は自己資金でまかなうイメージです。
編集部
全額融資ではダメなのですか?
融資担当者
絶対というわけではないですが、自己資金ゼロだと、「この人は本当に覚悟をもって事業をやる気があるのかな?」という印象にはなりますね。
調達の方法は、設備資金・運転資金をどうやって調達するかです。「自己資金」「親・知人など」「日本政策金融公庫」「他の金融機関」の調達先ごとに金額を記入します。
日本政策金融公庫、他の金融機関から資金調達する予定の場合は、「返済回数」「返済元金」「利率」などを記入します。
必要な資金と調達の方法の合計額がそれぞれ一致するようになります。
事業の見通しは「創業当初」「1年後又は軌道に乗った後」の各々の売上高、売上原価などの簡易な損益計算書を作成します。ここで大事なことは毎月の元本返済が利益よりも大きくなっていないかです。
借入の返済は資金の支払いになりますが、経費にはならないため、損益計算書には反映されません。利益から元本の返済することになりますが、利益よりも元本返済が大きい場合、毎月きちんと返済ができない計画になってしまいます。
元本返済がきちんとされない計画に金融機関が融資をすると思いますか?
計画の段階で元本返済ができない計画であれば、売上、経費をもう一度見直しましょう。
融資担当者
よくいらっしゃるのですが…到底実現不可能な計画はもちろんダメですよ笑
編集部
素人目線だと、少しでもよく見せるためにとちょっと大げさに書いたほうがいいのかな?と思ってしまうのですが…
融資担当者
それは逆効果です。むしろ、事業なので計画が破綻しないように堅実な見積もりができている方が高評価です。
たとえば、経費の中で、売上原価の占める割合は大きいです。 業種によって原価は違いますが、同業種であれば原価率を参考にしてみてください。
同業種と比べて大きく乖離していれば、計画をもう一度見直しする必要があります。
業種別の売上原価率については日本政策金融公庫公式HPで公表されているのがあるので参考にしてみて下さいね。
「1ー売上総利益率=売上原価率」になります。
編集部
借入金の返済が経費にならない、原価率…会計の話がでてくるといきなり難しくなる印象ですね…
融資担当者
そうですね。
そういう社長さんや個人事業主さんも多く、割り切って税理士さんにお任せという方も多いですよ。計画を書くための経理の勉強に時間が取られすぎて事業の準備が進まないと本末転倒ですからね。
創業計画書は融資を受ける際に重要な資料になります。しかし、創業計画書があれば確実に融資を受けられるわけではありません。
創業1年目は過去の実績もないため、融資を受けるのはハードルが高くなります。自信のない場合や時間を割けない場合は上手く税理士などの専門家も利用して資金調達を成功させましょう。
画像出典元:写真AC、O-DAN
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