日本政策金融公庫の新創業融資制度は無担保・無保証で借りられるということもあり、創業期の起業家にとっては利用しやすく、最初の金融機関借入として一押しの融資制度です。
しかし最初の借入だからこそ、どのような準備をすれば良いのか、これって一体どうなのかなど、ホームページを見ただけではわからないことが多いですよね。
本記事では、日本政策金融公庫の担当者に直接取材した内容を踏まえ、審査通過のコツをわかりやすく解説していきます。
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そもそも日本政策金融公庫の新創業融資制度は、それ単体では利用できません。
主となる貸付制度と組み合わせてオプション的に利用する融資制度になります。
「普通貸付」と語尾が「~資金」となっているものが主となる貸付制度で、このうちのどれかとの組み合わせで、創業融資を利用することになります。
どの貸付制度を選べばよいのか、担当者に確認したところ、
とのことでしたので、貸付制度のごとの要件を確認し、自社が利用できるもので一番金利条件が有利なものを選べばよいでしょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度の基本情報を確認したい方は、以下の記事を参考にしてください。
金利表をみると、「○○~○○」%と幅があります。
担当者に確認したところ、
とのことでした。
「10年」というのは目安で、正確に何年までが最低金利適用になるかは月ごとに改定されるそうですので、実際に利用する際は一度問い合わせて方がよいでしょう。
ちなみに取材時点では12年までが最低金利適用とのことでした。
日本政策金融公庫のホームページを見ると、主となる貸付制度はたくさんの種類があります。
創業融資では、基本的に「新企業育成貸付」の中から選んで「新創業融資制度」と組合せることで無担保・無保証で借入れ可能になります。
新創業融資制度と組み合わされる最も一般的な制度が「新規開業資金」です。
「女性、若者/シニア起業家支援資金」や「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」の要件をクリアできる場合は、一番目に紹介した「新規開業資金」金利の利率より有利になります。
「中小企業経営力強化資金」は「新創業融資制度」とは異なりますが、こちらも無担保・無保証で借入れできる貸付制度です。
融資限度額は最大2,000万までと新創業融資制度を利用した時よりも1,000万円少なくなりますが、金利は「新規開業資金+新創業融資制度」よりも低くなるので、 調達金額が2,000万円以下の場合はオススメです。
ただし、認定経営革新等支援機関(税理士、商工会議所、金融機関等)の指導や助言を受けて創業計画を作成する必要があります。
この制度を利用して借入を検討する場合は、顧問税理士を選ぶ段階で認定経営革新等支援機関の認定を受けている事務所かどうか確認しておいた方がよいでしょう。
創業計画書では、以下に挙げる箇所が特にチェックされているので、要注意です。
何よりも重視されるのは事業計画の実現可能性です。
創業期に初めて事業計画を作成すると、売上がたくさん上がらないとすごいを思ってもらえないのでは?と思い、こうなったらいいなという‟夢プラン”を作成しがちです。
しかし、これは全く逆で、金融機関の審査では楽観的な計画より地味でも堅実なプランを立てることが大切です。
創業期は売上がなかなか立たず、その間も経費がかかるので赤字になるのは珍しいことではありません。
それよりも、創業1~3年を目処にビジネスフローを定着させ、着実に売上を積み上げられるモデルを構築することが大切です。
そして、それを創業の段階できちんと計画できているか(なんとなくではなく根拠に基づいて作成されているか)を創業計画書では見られています。
ここでは競合他社の分析、自社の弱点の把握とその対応策が練られているかを見られています。
すごく特殊な場合を除き、商品やサービスにはそれぞれに応じた市場規模が決まっており、競合他社とその市場シェアの獲得競争をして売上を伸ばしていかなければなりません。
創業期はその市場に乗り込んでいくわけですから、認知度がない中、多くない資本でどのような戦略を立てる予定なのか、他社に比べ自社にどんな優位性があるのかをアピールしましょう。
また、良いことだけではなく、自社の弱点も把握していることも重要です。
「自社には○○の部分で競合他社より劣るが、●●の部分に優位性があり△△の層をターゲットにすることで▲▲のシェアが獲得できる見込みである。」
など、弱点に対してどう対応するかも具体的に書かれていると良いでしょう。
創業計画書内に書ききれない部分は補足資料を別途用意し、創業計画書に添えて提出するようにしましょう。
ここで大切なのは自己資本と運転資金です。
申込の要件上では、「融資申込金額の10分の1以上」となっておりますが、実際は3割程度以上は用意した方がよいでしょう。
あまりに自己資本が少ないと、「初めから借入を頼るつもりで創業している、失敗しても返さなくて良いからと気軽に起業しているのでは?」という印象を与えてしまいます。
正確な運転資金が把握できている=会社の必要経費、キャッシュフローを把握できている、ということです。
会社運営に必要な経費は、仕入れのほかに、人件費、家賃、水道・光熱費や備品代など意外と細々とした支出がかさむものです。また源泉税の支払いなど、払う月が決まっているものもあります。
どんぶり勘定ではなく、それらの支出の金額とタイミングをきちんと把握しているかを見ることで、経営者の人となりと、計画実行力も見られています。
なぜなら、会社経営で大切なことは大きな売上を上げることよりも、資金繰りを回すことだからです。
どんなに売上が上がっていても、資金がショートしてしまえば、会社は倒産してしまいます。
多くの経営者が頭を悩ます創業計画書の書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
創業計画書は記入欄が小さいです。
創業計画書にはサマリーを書いて、書ききれないが伝えたいことは必ず補足資料を用意しましょう。
審査担当者は一人で何件もの案件を抱えるので、口頭のみで伝えられてもすべてを覚えれいられません。
補足資料を作成するときは、面談後、審査担当者が内容を振り返りやすいような構成や内容を盛り込むようにしましょう。
創業期は実績がないため、審査担当者は最終的に人となりで経営者としての資質を判断をします。
嘘をつく必要はありませんが(というか嘘をついてはいけませんが)、以下の点を見られていることを意識しながら面談に臨みましょう。
日本政策金融公庫の面談については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
意外と盲点となるのが代表者や株主、そして顧問税理士の信用情報です。
法人でお金を借りるのだから関係ないと思いがちですが、金融機関は法人と取引をする際は、代表者、株主、そして顧問税理士の信用情報までしっかりチェックしています。
起業時は怪しいところからの出資を受けない、信用できる税理士を顧問にするなど、自社以外のところで足元をすくわれないように気を付けましょう。
一般的に金融機関の融資審査では、担当者がヒアリング内容や提出書類の内容を社内決裁用に稟議書にまとめ、それを見た上司が是非を判断します。
そのため、会社側は、担当者が融資OKを貰えるような稟議書を書きやすいような情報を提供できるかがポイントになってきます。
「A社は○○業の会社で、代表者の経歴●●はで業界に精通している」
「市場規模は○○で競合は●●だが、△△で強みがあり、シェア獲得の見込みがある」
「○○の部分は懸念されるが、対応策として●●であり、問題ないと言える」
など、担当者がどういうプレゼンを上司にしたら稟議が通りそうかを考えることが大切です。
また、ここで勘違いされがちなのが、自社の弱みを言ったら審査が通らないのでは?と思ってしまうことです。
どんな会社にも弱みはあります。創業期の体制の整っていない時期なら尚更でしょう。
担当者には、本当のことは包み隠さず伝え、弱みがあっても「でも大丈夫なんです!」と味方になってもらうようにしましょう。
窓口は予約不要なこと、他の業務も並行しておこなっていることから相談時間を十分に確保できない場合が多いです。
事前予約制のビジネスサポートプラザの活用がオススメです。
予約枠は1時間で中小企業診断士などの専門の相談員の方が創業計画書の書き方などの相談にのってくれます。
全国6ヵ所(札幌、仙台、東京(新宿)、名古屋、大阪、福岡)に設置されており、土日もやっているので、利用できる場合はぜひ活用しましょう。
担当者に直接取材した内容を踏まえ、日本政策金融公庫の創業融資制度の審査通過のコツを解説してきました。
初めての融資はわからないことも多く申請までに時間がかかるものです。
本記事で紹介した各項目のポイントを参考に、ビジネスサポートプラザや支店の融資単担当者をフル活用して融資を勝ち取りましょう!
新創業融資制度の手続きの流れ・必要書類を確認したい方は以下の記事を参考にしてください。
制度融資と比較してどちらを選ぶべきかなど、創業融資全般について確認したい方はこちらの記事を参考にしてください。
画像出典元:Pexels、日本政策金融公庫
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