SDGs(持続可能な開発目標)とは?17個の目標と日本の取り組みを解説!

SDGs(持続可能な開発目標)とは?17個の目標と日本の取り組みを解説!

記事更新日: 2021/09/01

執筆: 佐藤杏

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までに解決を目指している社会問題を17個にまとめた目標のことです。

SDGsへの注目は高まっていますが、17個の目標の詳細や成り立ち、日本における取り組みの現状を把握している人は少ないと思います。

この記事では、SDGsの17の目標と169のターゲット、なぜその目標達成が必要なのかを解説します。

企業がSDGsに取り組むメリットを理解して、日本企業のSDGsの取り組み事例を参考にビジネスチャンスを見つけましょう。

SDGs(持続可能な開発目標)とは

SDGsは日本語で「持続可能な開発目標」と訳され、「持続可能な開発」とは「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と国連は定義しています。

世界には、貧困・経済格差・気候変動による災害の多発・人種や性の差別などの様々な課題があります。

SGDsは、それらの課題を先進国・途上国・貧困国などの垣根をこえて世界全体で解決に取り組むために考えられた「17の目標から構成される地球規模の達成目標」です。

持続可能な開発に必要な3つの要素

SGDsの概念は、社会問題の原因は人間にあって、「自分たちさえよければいい」では経済的困難が発生し、地球の住む環境が悪化し、結果的に自分たちが困難に陥ると予想されたことが発端です。

脆弱な立場の人々に焦点をあて「地球上の誰一人取り残さない」ことを基本理念にしているのがSDGsの特徴です。

SGDsでは、世界で起こっている様々な社会問題を主に3つに集約して、持続可能な開発に必要な3つの要素を決めています。

持続可能な開発に必要な3つの要素のバランスや連動を理解しましょう。

3つの社会問題 持続可能な開発に必要な3つの要素

環境問題

地球温暖化、水問題、自然災害の増加、エネルギー問題、気候変動、絶滅や差別による生物多様性の喪失など

環境保護

住みやすい地球環境を守っていくこと

社会問題

貧困、感染症の流行、教育の不平等、差別とハラスメント、少子高齢化と人口爆発のバランス、紛争の長期化・複雑化など

社会的包摂

社会的に弱い立場の人も含め、一人ひとりの人権を尊重すること

経済問題

経済格差、失業率の高さ、社会福祉財源の不足、雇用の地域格差など

経済開発

経済活動を通じて富や価値を生み出していくこと

 

SDGs17のリスト「17個の目標と169のターゲット」

SDGs17とは、2030年までに達成を目指している17の目標と、17の目標を達成するために必要な具体策や行動を「ターゲット」と呼んでまとめた項目を指します。

SDGsのターゲットは全部で169個あり、17個の目標に対して10個前後が設定されています。

目標 ターゲット数と例

1:貧困をなくそう

あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

7個

【例】2030 年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。

2:飢餓をゼロに

飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

8個

【例】2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。

3:すべての人に健康と福祉を 

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

13個

【例】2030 年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。

4:質の高い教育をみんなに

すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する

10個

【例】2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

5:ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

9個

【例】女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。

6:安全な水とトイレを世界中に

すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

8個

【例】2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。

7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的 エネルギーへのアクセスを確保する

5個

【例】2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

8:働きがいも経済成長も

包摂的かつ持続可能な経済成⻑及びすべての人々の完 全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用 (ディーセント・ワーク)を促進する

7個

【例】2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成⻑と環境悪化の分断を図る。

9:産業と技術革新の基盤をつくろう

強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る

8個

【例】すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。

10:人や国の不平等をなくそう

国内および国家間の格差を是正する

10個

【例】2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

11:住み続けられるまちづくりを

都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする

10個

【例】2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。

12:つくる責任 つかう責任

持続可能な消費と生産のパターンを確保する

11個

【例】2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

13:気候変動に具体的な対策を

気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

5個

【例】気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。

14:海の豊かさを守ろう

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

10個

【例】2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。

15:陸の豊かさも守ろう

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

12個

【例】2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。

16:平和と公正をすべての人に

持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

11個

【例】あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。

17:パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

19個

【例】さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官⺠、市⺠社会のパートナーシップを奨励・推進する。

 

日本のSDGs取り組みの現状


SDGsは2015年に国連で採択されたものの、2017年ぐらいまでは、日本での認知度は高くありませんでした。

日本では、2016年に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」が開催され、以降も年2回のスケジュールでSDGsへの取り組みに関する議論を行っています。

さらに、2017年に経団連が「企業行動憲章」を改定してSDGsを盛り込んだことをきっかけに、日本企業が積極的に取り組むようになり注目が集まっています。

日本政府が示した8つのSDGsの優先課題

日本政府は、SDGsの17の目標のうち、8つの優先課題を示しています。8つの優先課題は、国連の「2030アジェンダ」の5つのPと連動しています。

People(人間) 1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2.健康・長寿の達成
Prosperity(繁栄) 3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4.持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
Planet(地球) 5.省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
Peace(平和) 7.平和と安全・安心社会の実現 
Partnership(パートナーシップ) 8.SDGs 実施推進の体制と手段

 

2021年の日本のSDGs17目標別の達成度

SDGsの達成度ランキング2021で、165カ国の中で日本は18位でした。他の主要国では、韓国が28位、アメリカは32位、中国は57位です。

日本のSDGsへの取り組みは一定の評価を受けていますが、下記の5つの目標に対しては達成度が低いと指摘されています。

「5:ジェンダー平等を実現しよう」と「17:パートナーシップで目標を達成しよう」は上昇傾向にありますが、元々の水準の低さから評価が低くなっています。

評価が低い日本のSDGsの目標

  • 5:ジェンダー平等を実現しよう
  • 13:気候変動に具体的な対策を
  • 14:海の豊かさを守ろう
  • 15:陸の豊かさも守ろう
  • 17:パートナーシップで目標を達成しよう

参考:Sustainable Development Report 2021

 

2030年までに達成は難しい?

SDGsは、2030年までにSDGs17の達成を目標としていますが、各国の取り組み状況に差があり、今の取り組みスピードでは難しいと言われています。

国連は、SDGsの前身「MDGs(ミレニアム開発目標)」は目標未達で終わった原因として「政府や特定の地域に対しての施策」だったことをあげています。

SDGsは、MDGsの目標未達の経験から、政府や特定の国だけでなく「民間企業の参画」を強化した施策です。

継続して社会問題の解決を目指すには、民間企業からSDGsビジネスへの参入が必要不可欠になっています。

企業がSDGsに取り組むメリット4つ

企業がSDGsに取り組むメリットは、ボランティア的な社会貢献ではなく、ビジネス的な面でもメリットがあります。

1:ビジネスチャンスの拡大

SDGsの17目標を起点に問題解決のための新規事業の創造や他業種とのコラボなど、新しいビジネスモデルや市場開拓を行うことに「ビジネスチャンスがある」とSDGsに取り組む日本企業は年々増加しています。

SDGsの17目標と自社に関係があるものを洗い出し、他社に先駆けて取り組めば競争優位に立つことが可能です。

2:ステークホルダーとの関係性向上

企業がSDGsに取り組むと、CSR活動(企業の社会的責任)を果たしていることでステークホルダーとの関係性も向上します。

逆に、SDGsに取り組まない企業は社会課題に無関心という印象を与え、株主や地域の支援や業界との連携が難しくなる可能性があります。

3:企業価値の向上

SDGsに取り組む企業は、社会に対して責任を果たす企業として認識され、企業価値やイメージの向上に効果的です。

また、SDGsのような先進的な取り組みを行う企業には、先進的な考えをもった優秀な人材が集まる傾向があります。SDGsに積極的に取り組むことで、人材の採用にも有利になり、事業継続と新規展開などに繋がります。

4:ESG投資による資金調達が有利

SDGsに取り組むと、ESGの評価が高くなり、ESG投資による資金調達が見込めます。

ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から投資先を選定した投資方法です。

近年は投資先を選ぶ時の評価を財務情報だけでなく、環境問題や雇用問題などSDGsに取り組む姿勢も評価基準にするのがトレンドです。

SDGsに取り組んでいる会社は、成長性や持続性が見込めると投資家から投資先に選ばれる可能性が高くなります。

日本企業のSDGs取り組み事例3つ

SDGsに取り組む企業は、トヨタ自動車「環境チャレンジ2050」や米スターバックスコーヒーの「脱・プラスチックなどの3R施策」など大企業が行う取り組みが有名ですが、中小企業や地方自治体の取り組みも増えています。

事例1:KOSE「健康促進・廃棄物削減・海を守る」

KOSEのSDGsに対する取り組みは、新しいワークスタイルの提案や復興支援など多岐にわたります。

中でも「健康促進」「廃棄物削減」「海を守る」の3点に注目が集まっています。

「健康促進」では、スポーツをすることで血行促進や免疫力向上などのプラスの作用が生まれ、結果的に病気の予防につながる考えて、スポーツ専用化粧品ブランドの立ち上げやスポーツ団体のスポンサーになりスポーツ全体の発展を支援する取り組みを行っています。

「廃棄物削減」では、容器や包装の樹脂使用量の削減の強化、リサイクル材料の使用、詰め替えボトルを推進して樹脂量の削減に取り組んでいます。

また、SAVE the BLUEプロジェクトという「購雪肌精を購入すると容器の底面積と同じ面積のサンゴを植えるための寄付ができる」キャンペーンを定期的に行い「海を守る」取り組みに貢献していることが評価されています。

貢献しているSDGsの目標

「3.すべての人に健康と福祉を」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「12.つくる責任 つかう責任」「14.海の豊かさを守ろう」など

参考:KOSE公式ホームページ

事例2:中小企業の成功例「大川印刷の環境印刷」

神奈川県横浜市にある大川印刷は「環境に配慮した印刷=環境印刷」を中心にSDGsに取り組む中小企業です。「ゼロカーボンプリント」というCO2の排出削減や違法伐採防止・森林育成という取り組みが評価されています。

ゼロカーボンプリントによって通常の印刷よりも高付加価値を付け、環境の少ない印刷方法でカレンダーやカタログを依頼したい顧客を持つようになり、売り上げアップに成功しています。

また、社内でSDGsの勉強会を開き、トップだけではなく従業員全員がSDGsを理解してディスカッションできる社員教育も評価されています。

結果的に、SDGsに取り組む企業として知名度が上がり、人材の確保や従業員のモチベーション向上にもつながった成功例です。

貢献しているSDGsの目標

「8.働きがいも経済成長も」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「12.つくる責任 つかう責任」「15.陸の豊かさも守ろう」など

参考:大川印刷の例

事例3:自治体「鹿児島県大崎町のリサイクル事業」

鹿児島県大崎町のSDGsの取り組みは、「大崎システム」という「焼却炉に頼らない、 廃棄物の80%以上をリサイクルする資源循環型の社会形成」が評価されています。

大崎システムとは、「混ぜればゴミ、分かれば資源」という考えからごみを27品目に分別して、ごみの量とごみの処理費用の削減に成功したリサイクルシステムです。

リサイクルシステムのために民間のリサイクルセンターを作り新規雇用を創出し、リサイクルの利益とごみの処理費用の削減分を利用した奨学金制度を作ったことで住みやすい街というブランディングに成功し、知名度アップにもつながった例です。

貢献しているSDGsの目標

「4.質の高い教育をみんなに」「8.働きがいも経済成長も」「11.住み続けられるまちづくりを」「14.海の豊かさを守ろう」など

参考:鹿児島県大崎町の公式HP

 

企業がSDGsに取り組む時に参考になるのは?

企業がSDGsに取り組む時は「ジャパンSDGsアワード」が参考になります。

ジャパンSDGsアワードとは、日本のSDGs推進本部が「普遍性・包摂性・参画型・統合性・透明性と説明責任」を基準に日本を拠点としている企業や自治体などに表彰する賞です。

大手企業だけでなく、中小企業や自治体など幅広い実例が紹介されていますので、自社の事業に近いものなどを参考にしてみましょう。

また、SDGsの社会問題に取り組むビジネスとして「ソーシャルビジネス」というビジネスモデルも参考になります。

 

まとめ

SDGsの基本概念と17の目標と169のターゲットについてまとめました。

近年のSDGsは、社会貢献だけでなく、ビジネスの観点としても注目されています。

SDGs17を理解して、新規のビジネスモデルの検討や、自社の既存ビジネスから派生できるかをしてみましょう。

画像出典元:O-DAN、Shutterstock

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