会社には様々な役職があります。時にこの役職はどんな仕事や役割をしているのだろう、と疑問に思うこともあるでしょう。
「常務取締役」もそんな1つではないでしょうか。
今回の記事では、常務取締役の仕事やポジション・年収、専務取締役との違いだけでなく、取締役と執行役員との違い、取締役の義務も含めて徹底的に解説します。
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常務取締役の仕事は社長を補佐することです。
常務取締役は「取締役」という言葉が入っているように、取締役会の一員として会社全体の意思決定を行うという業務があります。
さらに、「常務」という言葉からも連想されるように日常の業務も常務取締役の仕事の一つです。日常の業務を管理する立場である部長や課長の一番上にいるのが常務だと考えるとわかりやすいでしょう。
つまり常務取締役は、現場の観点と経営陣としての観点を持ち合わせた役職と言えます。
常務取締役は会社で何番目のポジションか皆さんは想像できますか?常務取締役は一般的に会社で5番目のポジションとされています。
上から、会長、社長、副社長、専務、そして常務です。常務の下には、役職がついていないヒラ取締役が続きます。
常務取締役はNo.5のポジションだと説明しましたが、実は明確に決まっているわけではありません。
というのも、常務も専務も会社法上では同じ役職つき取締役というポジションだからです。しかし、一般的には専務の方が上である会社の方が多くなっています。
会社でのポジションも近く混合されることも多い常務取締役と専務取締役ですが、二つの役職にはどんな違いがあるのでしょうか?
先ほど説明したように、常務は「会社の経営層」としての役割と「日常業務のトップ」の二つの役割があります。
一方専務の業務の中心は、会社の経営の舵取りです。社長が不在の時に社長代理として専務が業務を行うことも少なくありません。会社全体の意思決定に加え、日常業務を行う常務に比べると専務の方がより社長や副社長に近い役職といえます。
取締役と執行役員も違いが難しい言葉です。一見似ているようですが、明確な違いがあります。
それは、取締役は会社法で決められた正式な名称である一方、執行役員は社内での呼び名に過ぎないということです。
さらに、大きな違いは執行役員はあくまで従業員だということです。取締役は、役員として会社の重要事項や経営方針を決定する役割がありますが、執行役員は従業員として実行するだけで、決定権は持っていません。
取締役は以下のような場合で責任が問われる場合があります。
従業員の場合はミスをしたことで会社から損害賠償を請求されるということはかなり稀ですが、取締役の場合は賠償責任を負うことがあります。
取締役は会社と委任契約の関係にあり、会社経営に関して強い責任が問われます。
職務を全うしない、不合理な判断を行い会社に損害が出た場合には損害賠償を請求される場合もあります。
また、後ほど解説する利益相反行為を行なった場合も同じように賠償責任が発生する可能性が高いです。
取締役は会社だけではなく、株主や取引先などの第三者に対しても責任を負っています。
会社法429条1項では、「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。
放漫経営による倒産など、職責を果たさず取引先や株主などの第三者に損害を与えることがあれば、損害を受けた第三者から責任を追及される場合があります。
仮に名目だけの取締役だったとしても損害賠償が認められた事例もあるため、取締役に選ばれた際はしっかりと職務を全うすることが重要です。
取締役は以下のような義務を負っています。
善管注意義務とは「善良な管理者の注意義務」の略称で、その職業や地位にある人に対して通常求められる程度の注意を払って業務を行うことが義務付けられています(民法644条、会社法330条)。
つまりは、「取締役という立場や役職にふさわしい、常識的かつ合理的な判断に基づいて職務を全うするべき」ということが定められていると言えます。
この善管注意義務に違反して、会社に損害を与えた場合は損害賠償を求められる可能性も十分にあり得ます。
善管注意義務と似た内容の「忠実義務」も会社法で定められています(会社法355条)。
忠実義務は、「会社の決まりに則って会社の利益になるよう努めなくてならない」ということを定めたものです。一般的には、善管注意義務と表現が変わるだけで内容はほぼ同じものとされることが多いです。
善管注意義務とは別に会社の不利益に繋がるような行為を制限する決まりも定められています。
その一つが競業避止義務で、会社法第356条には以下のような競業行為については取締役会に承認を受ける必要があると記載されています。
「所属組織と競合する事業を営むこと」や「競合企業との取引を行うこと」は会社の不利益につながることがあるため、制限がかけられています。
同じく会社法第356条では、「自分または第三者の利益にはなるが、会社の利益にはならない取引」を行う場合についても取締役会もしくは株主総会の承認が必要とされています。
上記については、会社を踏み台にして取締役が自由に利益を得ることに繋がる恐れがあるため、制限がかけられています。
企業規模/役名 | 社長 | 副社長 | 専務 | 常務 |
全規模 | 4,622.1 | 3,923.6 | 3,189.6 | 2,461.4 |
3,000人以上 | 7,372.6 | 5,449.6 | 4,501.5 | 3,396.2 |
1,000人以上3,000人未満 | 4,554.3 | 3,460.3 | 3,066.9 | 2,382.0 |
500人以上1,000人未満 | 3,963.1 | 2,856.4 | 2,461.8 | 2,126.6 |
(単位:万円)
従業員視点で見ると十分な報酬を得ているように見えますが、取締役以上の役職の中では一番報酬が低い傾向にあります。
専務と混同されることの多い常務取締役ですが、実際には業務内容や報酬には差があることがわかります。
出典:人事院「令和元年度 民間企業における役員報酬(給与)調査 第3表」
会社を経営する上で、重要なポジションである常務取締役について解説してきました。
常務取締役を含めて、会社の役職やポジションについて理解することは会社の仕組みを理解することにつながります。
会社の仕組みを理解して、より良い経営につなげていきましょう。
画像出典元:写真AC、O-DAN
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